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「本当にこの10年で今が一番楽しい」
新生モノブライトがメンバー脱退の真相から
この10年の忘れられないあの光景、輝ける今を語る!
『Bright Ground Music』インタビュー&動画コメント

 桃野陽介(vo&g)が開口一番「ネタに出来ない変化を遂げないといけない感じはすごいあった」と漏らした今回のインタビューは、この2年半の変遷を如実に物語っているようだった。これまでのキャリアにおいて、その都度エンタテインメント精神旺盛なチャレンジとチェンジを繰り返してきたモノブライトだが、昨年のオリジナルメンバー瀧谷翼(ds)の脱退劇を経て、結成10周年を迎えた今年4月にリリースした7thアルバム『Bright Ground Music』は、曰く“モノブライトの原点回帰ではなく、原点のやり方で作った新しいモノブライトが生まれた作品”。人生の潜む表裏一体の善と悪、真実と嘘をモチーフに日常を歌う今作は、桃野のルーツである90年代の洋楽のフレーバーを音楽愛たっぷりにアップデート。モノブライトのこれまでを知るリスナーにはこのバンドの新たな躍動と底力を証明し、新規のそれにも存分にフックするポテンシャルに満ちた素晴らしい1枚に仕上がった。バンドの誕生から10年。何より音楽が好きだった夢見る青年は、変わり続けた10年後の今も、己の音楽を鳴らし続けている――。

 
 
ネタに出来ない変化を遂げないといけない感じはすごいあった
 
 
――モノブライトの10年の歴史の中で変化は常にあったわけだけど、話題を振りまく変化ではない、本当に変わるとき、変わらなければいけないときが来たのが、この2年半でしたよね。
 
「いやもう、まさにそうですね。だから、ネタに出来ない変化を遂げないといけない感じはすごいあった。ある意味リスタートで、ある意味進化というか」
 
――前作『MONOBRIGHT three』(‘13)のインタビューで、“オリジナルメンバーで白ポロメガネ復活という意味でも、ナンバリングを再開したという。これで次のタイトルは多分『four』になると思う”って言ってたのに、白ポロメガネはまた辞めてるし、タイトルも『MONOBRIGHT four』じゃないし(笑)。もう着たり脱いだり(笑)。
 
「アハハハハ!(笑) もう全然守らない」
 
――さらには、“もう音楽続けられないんじゃないかって言いながら続けるタイプなんだろうなっていうのはすごく感じます(笑)”って言ってたのに、あれ? 続けねぇヤツが1人いたぞっていう(笑)。
 
「そうです!(笑) でもまぁ理由的なことで言うと、シンプルに限界が来てたんだと思います。モノブライトを続けていくというよりは、音楽をやること自体に限界を感じてたというか。言ってしまえば、この2年ぐらいはそんなムードがずっとありながらやってたところもあって。でも、僕の理想としては怒髪天とか、言っちゃえばローリング・ストーンズじゃないですけど、同じメンバーでずっと続けてくカッコよさというか、それが僕の好きなバンド像だったんですけど、ちょっと付き合わせちゃったかな?っていう気持ちもありますね。とっくに本人の中では限界が来てたかもしれないし、そういう意味では、絶対に“辞める”と言わなそうなタイプのヤツがそれ口にした意志を、10何年付き合って1つも見えなかった意志をやっと見せてくれた嬉しさで、“辞めるなよ”って引き止める気持ちには不思議とならなかったんですよ。そういう意志で彼が辞めていくってことは、やっぱりバンドは変化しなきゃいけない。“モノブライトが3人になってどうしようか?”って、これからを前向きに捉えるきっかけになったと言ったらアレですけど、何かそんな感じはありましたね」
 
――じゃあそんなに、いなくなってぽっかり穴が…みたいなのは。
 
「ビックリするぐらいないんですよね(笑)。それは薄情云々と言うよりも、やっぱり30代のどのミュージシャンも考えることなんで。バンドで出来ることを4人でやるという意味では1周してたし、その悔いはなかったんですよね」
 
 
今ある日常を押し付けるわけでもなくちゃんと歌いたい
 
 
――体制が変わろうが変わるまいが『Bright Ground Music』に向けて動いていたとは思いますけど、次に目指していくビジョンはあったんですか? 脱退がもたらす余波も多少なりともあったのか。
 
「やっぱりタッキー(=瀧谷翼)のドラムを想像して作ってたアルバムだったんで、それを選び直したり曲も作り直したのはあったんですけど、やりたいことは決まってて。曲自体は自分の中に染み付いた“90年代”みたいなイメージがあったんですけど、日常だったり、より自然なモノブライトの音楽性をちゃんと届ける作品を作りたいなと。その片鱗は『MONOBRIGHT three』にもあったんで、その延長線上ではありますね。ただ、ドラムが変わる=サウンドがガッツリ変わるんで、変われるところはどんどん変わろうっていう発想でしたね」
 
――日常に根ざしたものにモノブライトを寄せていく発想はどこから?
 
「元々は“おもちゃ箱のようなアルバムを作りたい”とか“3分間のポップソングで”とか、自分の中でのイメージはあったんですけど、今までにやったことがないという意味でも、30代の等身大を伝えるという意味でも、今ある日常を押し付けるわけでもなくちゃんと歌いたいなって、何か普通に浮かんできましたね。3人になったモノブライトの自然な成り行きで出来るモノを、ちゃんと残したかったのはありますね」
 
――残りの2人のテンション的にはどう?
 
「タッキーが抜けるときに3人で集まったときも、最初はバンドを続けるか続けないかの話になるのかなと思ったんですけど、“次は何やる?”みたいな感じだったんで、“あ、みんな全然やる気はあるんだ”と思って。何かそのまんまツルッとポジティブな感じで話が進んでいったというか。結構ドライに感じちゃうかもしれないですけど、おもしろい音楽を作るんだという気持ちが、3人の中では割と一緒でしたね」
 
――それこそ、この間に桃野くんはgolfの関根(卓史)くんと別ユニットのHocoriをやったり、出口(b)くんはDJをやったり、メンバーが個々に主張できる場がモノブライト以外にもあったにも関わらず。
 
「元々そういう活動も、それをどうモノブライトに持って帰るかということで始めたんで。“持って帰ろうと思ったら危うくなくなりかけてないかモノブライト?”みたいな状況が(笑)、やっぱりもったいないなと思ったんですよ。バンドが出来る環境はまだあるから、やりたいことをやりたい、ですよね」
 
――常にみんなモノブライトのことを考えてたんやね。
 
「そうです。だから誤解されたらすごいイヤだなとは思いましたけどね。“辞める前提で他のことをやってたんじゃねぇか?”みたいには絶対思われたくなかったし」
 
――Hocoriはそもそも何で始めたの?
 
「打ち込み的な感じも1stアルバムのときから漠然と匂わせてはいたんですけど、トラックの作り方とかノウハウが僕にはないんで、そういうこと出来るトラックメーカーとの出会いがあればやりたいなと思ってたら出会った、という感じなんですよね。“合うんじゃない?”みたいな感じで紹介してもらったらすごくハマった。バンドも曲作りがパターン化してたのはありましたから、もうちょい新しい作り方はないかなとすごく探してましたし」
 
 
もう一生出ないと思ってたんですけど(笑)
 
 
――アルバムの中で、『こころ』(M-3)は上京したての頃には原型があった曲だと。この曲だけが全く別の次元で生まれた曲になりますね。
 



「そうですね。この曲は常に出したい曲ではあったんですけど、大事にし過ぎてアレンジも上手くハマらなかったんで、出し惜しみじゃないですけど出せなかったんですよね。さすがに歌詞は今見ると“何言ってんだこいつ?”っていう感じだったんでちょっと変えましたけど(笑)。この曲の“真実”というテーマ自体は変えずに、伝わりやすく書き換えたのはありますね」
 
――ここまで“真実”という言葉を1つの曲の中で繰り返し聴く曲はないですよね。
 
「ジョン・レノンが『Imagine』(’71)とか『LOVE』(’70)で、同じことばっかり言うじゃないですか。だから最初は、“同じことを言ったら売れるんじゃねぇか?”っていう安易な発想でやってみたものの(笑)、シンプルな題材なんで同じ言葉で展開していくのがめちゃくちゃ難しくて。やっぱり結成1~2年のバンドが出来る曲じゃなかったんですよね。で、ずっと試行錯誤。毎年アルバム曲の候補には挙がってる。もう一生出ないと思ってたんですけど(笑)」
 
――アハハ!(笑) なのに今回はそれが出来たと。
 
「今回は本当にこねくり回したんで。一時はthe band apartみたいな変拍子とかになっちゃったりもしてて、もうめちゃくちゃになってて(笑)。3人になって“1回普通にやろうよ”ってやったら、案外すんなりいったという(笑)。意外と元々のデモにヒントがあったというか、本当に最初のアレンジに近いですね」
 
――この曲は、“日常で感じる真実と嘘が目の前にあった時、自分にとって何が正解かを、自分で決めていった方がいいよ、という思いを込めて作りました。”とHPにも書いているコメントを、本当に端的に表したような曲ですね。
 
「そうですよね。真実も嘘も今はネットとかで情報がいっぱい集まる時代ですけど、正論と正解は違うってよく思ったんですよね。だから、正論じゃなくて、自分が思ってる正解をちゃんと見た方がいいよって。それは真実でも嘘でもどっちでもよくて。自分の指標がないと、嘘でも真実でも傷は付くなっていう、“心の歌”というか」
 
――そう考えたら、当時に出すより今出す方が響く曲ですね。
 
「そうそう! まさに。たまたまですけど、昔にそのまま出すより、今届いてよかったなってすごく思ってますね」
 
――こんな時代になるとは想像もつかなかったもんな…。
 
「そうですよね。ただ、情報も錯綜しててややこしいけど、逆に自由も多いというか。僕が絶対に“昔はこうだった”って言いたくなくて。時代との付き合い方じゃないですけど、ちゃんと今の音楽がおもしろいと感じながら、“自分の音楽はこうです”って言えたらいいなって。そういう意味でも今回のアルバムは、今の時代に対する想いも歌えてるけど、自分らしい90年代の歌っていう部分もありますね」
 
――“近頃の若いもんは…”みたいな常套句も、案外思っちゃうもんだなっていう。
 
「そうなんですよね。僕も子供の頃はオヤジギャグとか絶対に言いたくないと思ってたんですけど、もう喉元まで自然と出てくるじゃないですか?(笑) 昔はああだったみたいなおじさんの説教だと思ってた言葉も出てくる。それを何とか抑えながらやってるんですけど」
 
――だから、今の若いヤツがとりわけダメなんじゃなくて、上の世代から見たら常にそうなんだなとも思うし。
 
「いや、本当にそうですよね。バンドマンあるあるで言うと、僕らが怒髪天のツアーで廻らせてもらったとき、増子(vo&g)さんに“若いヤツは演奏のクオリティが高いなぁ~!”とか言われてたのと同じことを、僕らはOKAMOTO’Sに思ったし、多分OKAMOTO’Sも次の世代に思う。感情的な部分の仕組みは結局変わらないですよね。そういう意味では、もしかしたら普遍的な作品でもあるのかなと思います」
 
 
今回の作品は、ある意味モノブライトも無視してる
 
 
――バンドが今充実期にあるのが、聴いて分かる作品になりましたよね。
 
「そうですよね。ある意味“ロックバンドであることを捨てた”と言ったら大げさですけど、あまりバンドの形態にこだわらず、曲に必要な音を詰めることが出来たんで。もしかしたら今までは、心のどこかで“4人が鳴らす音”っていう想像で作るものが多かった分、のびのび出来たのかもしれないですね。どうせドラムは誰かに頼まなきゃいけないし、ってことはもう、人の力を借りなきゃ音楽が作れないって、直感的に思ったんですよね。だったらもう、いろんな人に助けてもらってでもいいものを作りたいと思った。ピアノのアレンジが分からなかったら、アレンジャーを立てた方がいいと思ったし」
 
――このアルバムがいきなり鍵盤から始まるのも顕著で。アダルトな曲だし、その意思も分かりやすいですよね。
 
「そうそう。僕的にはエリオット・スミスとかそういうシンガーソングライターものは、ただ単にバンドでやってなかっただけで好きな音楽としてはあったので、そういうことも出来たらいいなとか。モノブライトを始めるときにXTCにどハマりしてたのが、やっぱり今までのモノブライトの大きな部分を占めてたんで。でも、ニューウェイブ世代かって言ったら、きっかけではあったけど後追いだし、そういう意味でも今回の作品は、ある意味モノブライトも無視してる。単純に自分のルーツの音楽性で勝負したという。昔だったら『HELLO』(M-1)みたいな曲は絶対に1曲目にしないだろうし。自分の発想の中にある音として、ピアノでも何でも受け入れられるようになったと」
 
――歌詞も、モノブライトのちょっとハイテンションできりきり舞いな部分よりは、もうちょっとどっしりしてるというか。桃野くんの人生の“いなし方”もすごく入ってるなと。
 
「そうですね(笑)。自分の意見が正しいとも思ってないんですけど、“何かもう辛くない?”っていうところで、ちょっとでも気が楽になればいいなって。そんなことを考えてるとストレスで早死にするだろうし…思想は山程あると思うんですけど、ちょっとひと息が欲しくなることが僕は多いんで。そういうものを作りたかったんですよね」
 
――『HELLO』なんかもう、ちょっとした浮気肯定ソングみたいなもんですからね(笑)。
 
「ヘヘヘ!(笑) いやいや(笑)。そのワードめちゃくちゃ気まずいなぁ…使われたくないなぁ~それは(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) 『末裔シンドローム』(M-7)は、自称・武田信玄の末裔でモデル、危険ドラッグや覚せい剤で捕まるミュージシャンがイヤで作ったと。
 
「すごい子がいたんですよ。もう最初は笑って見てたんですけど、だんだん腹が立ってきて。最後は万引きで捕まって全部発覚するっていう。あともう1つは、本当の天才は地味な人というか、続けられる人なんじゃないかって。20代で死んだ天才肌のニルヴァーナよりも、怒髪天のように同じメンバーで続ける方が才能だと思いたいんですよ」
 
――桃野くんは常に中途半端な自分を認識してて、でもそういうヤツだからこそ何か出来たらって言ってたもんね。
 
「そうですね。どっち着かずの僕というか、極端な話、僕は音楽に触れる行為の中で、音楽を聴くことが最高の幸せなんで。そういう普通の人が普通の感覚で作るすごい音楽が出来るに越したことはないと思ってるんですよね」
 
――確かに、『末裔シンドローム』もそういうエキセントリックな話題を取り上げてるけど普通に曲がいいっていう。『MOTHER』(M-5)もオカンのことを歌ってるけどサビがいいとか(笑)。『MOTHER』なんかは今の年齢にならないと歌えない、歌おうとも思わなかった曲でしょうね。
 



「そうですね。うちのお袋が“本当はお父さんは全然タイプじゃない”みたいなことを僕が高校生のときに言ってて、当時は結構ショッキングだったんですよ。でも、お袋は親父のことが大好きなんです。歳を重ねて自分もいろんな恋をして気付いたのが、長く愛せるいい距離感があるんだなって。そういう知らなかったことを知った、今になって気付く言葉がいっぱいありますね」
 
――ちなみに、『テクノロジックに抱いて』(M-4)のライナーに“テレビで好きな芸能人を見て、夢に出てきた時の疑似恋愛を歌ってます”とありますが、実際に夢に出てきて好きになるみたいなことはあった?
 
「藤崎奈々子ですね(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
「僕はもう本当に恋したんで。当時、ロンブーの淳と付き合ったのが発覚して諦めましたけど(笑)。やっぱりね、夢に出てきたときにあんなに優しかった娘が、現実世界では誰かに抱かれてるんだなっていう切なさとか(笑)、そういう失恋もありますよね。でも、受けた傷はマジですから!(笑)」
 
――夢に出てきたら、かなりの確率で好きになる?
 
「僕は87%ぐらいなりますね(笑)。ここ最近だと尾野真千子なんですよ。尾野真千子と修学旅行に行ってて(笑)」
 
(一同爆笑)
 
「何か男女6~7人でワイワイ仲良いんですけど」
 
――修学旅行ってめちゃくちゃ楽しいもんな~甘酸っぱいね。
 
「そう! で、先生がお前ら何起きてんだ!って注意しに来てみんな逃げるんですけど、尾野真千子がいる部屋の扉がパッと開いて、そこに僕が逃げ込んだら2人しかいなくて…何かこう、過ごすという(笑)。これが一番元々のモノブライトっぽい曲かもしれないですね。ユーモアもあるし、ちょっと妄想の中から出てくるというか」
 
――それを荒ぶるバンドサウンドに乗せて、みたいな(笑)。


音楽は裏切らないんです
 
 
――以前ライブで観たときも思いましたけど、『ビューティフルモーニング(Wake Up!)』(M-2)は新境地であり、素晴らしい曲ですね。聴いてて鳥肌が立った。
 



「この曲はこのアルバムの中で一番新しい曲だったと思うんですけど、シリアスでメッセージが届くような曲を作れた手応えは、何となくありましたね。ちゃんと大人の気持ちを歌ってるし。ってまぁホストのことを歌ってるんですけど(笑)。ホストってチャラチャラしてるとか下世話なイメージで見られがちだけど、本当は普通に日中仕事したかったり、真っ当に生きたいとか、ちゃんと誇りを持ってやってる人もいると思うんで。何かその辺を肯定したい気持ちは、他の歌詞にも通じるというか」
 
――色恋でもなく、ユーモアでかわすわけでもなく、しっかりと描いて。それこそ歌舞伎町のホストのことを思ったり、武田信玄の末裔のことを思ったり(笑)、この歌詞の全てをファミレスで書いてると。
 
「そんな感じの人たちがファミレスに結構いるんですよね。僕らは北海道から上京して、やっぱり東京がホームとは思えないところがずっとあったので。どこが落ち着くかなって考えたとき、僕にとってはそれがたまたま近くにあったファミレスで。ドリンクバーを頼んで、なかなか歌詞が浮かばないときでも、歌詞に出てきそうないい感じの人物が来たりするんで、いっつもそこで歌を作ってるという」
 
――ファミレスって程よい雑音があるけどうるさ過ぎなくて、めちゃくちゃ作業しやすいよね。家より緊張感はあるけど、でもガチガチじゃなくて。
 
「そうそうそう! だからすごい効率がいいというか、何か居心地がいいですよね。僕なんかはだらしない人間なんで、家にいるとすぐ寝たりテレビ見たりしたくなるから、ちょっと出掛けて」
 
――そんなファミレスの曲も最後に入ってますからね(笑)。でも、この曲には生きるヒントがある気がします。
 
「『ファミレス』(M-11)で歌ってることはただの情景ですから、何てことはないんですけど、僕としては“音楽が世界を救う”とかいうデカいことよりは、気が紛れたとか、何かひと呼吸おけた存在としてちゃんと歌が届くといいなっていうのがあるんですよね」
 
――桃野くんは、“音楽を聴いているときだけは嘘をつけない”と。
 
「そうそう。失恋したりショックなことがあったりしても、結局、そういうときの気持ちに合った音楽を聴いて救われることがずっとあったんで。音楽は裏切らないんですよね」
 
 
好きなことはやってますけど、好きなことやる過程というか
日々日常は地獄だと思いますね(笑)
 
 
――あと、モノブライトはぬるっと結成10周年なわけですが(笑)、あまりガーン!と謳わないですね。
 
「10周年があんまりすごいと思えないというか。だって、音楽を好きでやってるわけじゃないですか。いや、別に“10周年ですイェーイ!”ってやってる人のことをディスってるつもりはないですよ?(笑)  10年じゃまだまだというかこれからな感じがするから、記念的なことはね。でも、“おめでとう”とかは言われたいですけど(笑)」
 
――アニバーサリーと謳わないモノブライトですけど、この10年を振り返って何か印象的なことはありましたか?
 
「僕が一番手応えを感じたライブが、実は大阪城音楽堂の『SWEET LOVE SHOWER 2007 SPRING EXTRA-FREE』なんですよ。まだミニアルバム(『monobright zero』('07))が出たぐらいの頃で、お客さんは僕らのことなんて全然知るわけがない。やっぱりライブが始まったときは僕らに何も興味がないんですよね。でも、曲が進んでいくにつれてだんだんお客さんが沸いてくるのがいまだに感動的というか…すごく嬉しかったんですよ。物販でも“こんなに並ぶ!?”っていうぐらいCDも売れて。ライブの後も余韻でずっと鳥肌が止まらないというか。その感動が実はいまだに一番嬉しかったことですね。“こういうライブって最高だな”と思う理想の姿としてそれがありますね。それをまた味わいたいなと思ってずっとやってるんですけど、違う感動はいっぱいあっても、あの感動になかなか出会えない。あのときは“売れたな”と思ったんですけどね。“こうやってビッグスターが生まれてくるんだな”と本当に思いましたもん。その後は別に売れてないですけど(笑)」
 
――(笑)。ある意味、それを追い求めてる間はまだまだやれそうですね。
 
「そうですね、あの感動をもう1回。でも、10年やってるのに1回しかないって、ヤバくないですか?(笑) やっぱり上京して知らない人の前でそういう刺激を与えることが出来たのが、しかも大阪なんて全然知らない土地じゃないですか。そこでそういう歓迎をされたのが…あれをやりたいんですよね、もう1回あのライブを」
 
――逆に、“もう無理だ~終わった”みたいなことはありましたか?
 
「うーん、好きなことはやってますけど、好きなことやる過程というか、日々日常は地獄だと思いますね(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
「ミュージシャンって収入も全然安定しないし、不安しかない。それを10年続けてるんですけど、ずっと安心しないんですよ? 危険ですよ(笑)。でも、僕自身が割とポジティブなんで」
 
――バンドが崩壊するような危機はなかったんやね。
 
「辞めたくなったらとっくに辞めてますから(笑)。そういう意味では、辞めたいと思ってないんでしょうね」
 
――今回の脱退劇でもみんな前を向いてたし、それを危機とも思わないっていう。
 
「曲が作れなくなることもないですからね。10年経ってもそういう調子なんで、書けないってどういうことなんだろう?って。“じゃあ他の曲を作ればいいのに”って思っちゃうんですよ。妥協しまくってるって思われたらアレですけど(笑)。ヘンな言い方ですけど、産みの苦しみがある人はもう、1曲1曲が子供なんですよ。僕はカエルとか魚みたいに卵パーン!みたいな(笑)。でもまぁ、曲を作ること自体がやっぱり楽しいから、そこはあまり辛くないんですよ」
 
 
日常を非日常のライブハウスで発散するように歌えたら
 
 
――今回のアルバムが出来上がったときは、何か思いました?
 
「毎回手応えはあるんですけど、今回に関しては何か…ある意味モノブライトのことを取っ払ったという意味では、自分っぽかったですね。“モノブライト”よりも“自分”という気持ちで作った作品なんで、みんながこのアルバムを好きだったら嬉しいなぁ。どのアルバムが好かれるよりも、このアルバムが好かれることが=自分を好きでいてくれてる気がする。自信にはつながるだろうなって思ってます。こういう日常を非日常のライブハウスで発散するように歌えたらいいなと思うし、多分このアルバムの感覚をみんなが持ってると思ってるんです。そういう人がみんなライブを観に来てくれたらいいなと思いますね」
 
――リリースツアーもありますが、前回のライブでもホーン隊を入れてみたり、4ピースのロックバンドとは異なる表現をライブでもするようになっていて。
 
「今回も引き続き、メンバー編成もコロコロ変えながらアルバムの曲と昔の曲をリアレンジしながら上手くやれたらいいなと。前は自分のことばっかり考えられたんですけど、MAXで8人編成なんで一応バンマスじゃないですけど、曲についてちゃんと説明しないといけない部分もあるんで、そこは結構マジメにやってますね。まぁ練習できっちりやっておけば、ライブではもうご自由にっていうポジションがボーカルだとも思うんで、のびのびやってますね。そこは昔と案外違うと思います。昔はみんなもそれぞれやりたいことがあるし、それがウワッと暴れて時々一致するのが楽しかった。今はちゃんと1曲1曲、こうやろうああやろうっていう思惑をみんなで共有してる感じがしますね」
 
――メンバーは変わらず仲良いの?
 
「今はめっちゃ仲良いと思いますよ」
 
――仲良くないときもあったんですか?
 
「いや、ドラムがいたときはもう、そうですね…」
 
(一同爆笑)
 
――最後に脱退の理由が出てきた(笑)。
 
「いやいや! 本当に喋んないヤツだったんで。おとなしかったから、仲良い/悪いじゃなく、元から喋んないから」
 
――で、ようやく喋ったら“辞める”と(笑)。
 
「そうそうそう。ようやく自分の意思が出たな、と思ったら(笑)」
 
――そして、『Bright Ground Music』というタイトルは、頭文字が“BGM”でもあります。
 
「正座して聴く音楽というよりは、日常の中でふと入ってくるワンフレーズが何か忘れられないみたいな、生活の中で自然と聴こえてくる音楽になってくれるといいなという想いで、“BGM”というニュアンスもちょっと残したくて」
 
――逆に今までは何を想像して曲を書いてたんですか?
 
「やっぱり“憧れ”が全面に出てた気がする。ミュージシャンはカッコいいっていうところから派生して、バンドをずっと続けるのはカッコいい、初期衝動はカッコいいとか、そういうものがベーシックにあって曲を書いてたところはありますね。日常を歌ってないわけではないけどカッコつけてるというか、初期衝動が毎回生まれるわけじゃないんで。そういう意味では無理をしてたのかもしれない。今はすごくいい状態なんですよね。僕の感覚で言うと、本当にこの10年で今が一番楽しい。逆に言うと、この状態は本当に今だけな気がするんで。来年になればちょっとそれが間延びするじゃないですけど、今しか観られないものを観ておいて欲しいですよね。今が一番調子がいいんで」
 
――多分、来年には3人であることに慣れてくるしね。
 
「そうそう。だからこの初々しさみたいなものは、今しかないということですよね。今年から、このアルバムから発信するモノブライトと付き合ってもらえたら最高だな、と思います!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
 




(2016年6月13日更新)


Check

Movie Comment

新作とライブと晴れ男について
桃野陽介(vo&g)からの動画コメント!

Release

90年代と日常をテーマにたどり着いた
10年目の新境地となる7thアルバム!

Album
『Bright Ground Music』
発売中 2700円(税別)
kiraku records.
ASCU-2016

<収録曲>
01. HELLO
02. ビューティフルモーニング(Wake Up!)
03. こころ
04. テクノロジックに抱いて
05. MOTHER
06. ショートホープ
07. 末裔シンドローム
08. TOWER(instrumental)
09. 冬、今日、タワー
10. 愛飢えを
11. ファミレス

Profile

モノブライト…写真左より、出口博之(b)、桃野陽介(vo)、松下省伍(g)。’06年、北海道の専門学校時代の同級生で結成。UKロックシーンを背景にした、感情と刹那がたたずむ音像は桃野というシンガーソングライターの手によって、ひねくれポップロックへと変遷していく。白ポロシャツにメガネをトレードマークに、シングル『未完成ライオット』で’07年にメジャーデビュー。その後も、’09年には白ポロシャツを突如脱皮、’10~12年にはヒダカトオル(THE STARBEMS、ex.BEAT CRUSADERS)の加入&脱退とサプライズを仕掛け、’13年には再び白ポロシャツを身にまとい、ベストアルバム『Remain in MONOBRIGHT』、6thアルバム『MONOBRIGHT three』をリリース。’14年には自身初となるZepp Tokyoでのワンマンライブを開催。’15年6月のツアーをもって、結成当初からのメンバーであった瀧谷翼(ds)が脱退。夏にはそれぞれのソロ活動を経て、同年10月に新体制での再始動を発表。3人体制となったライブ編成に大きな注目が集まる中、サポートメンバーとして、ドラム、キーボード、そしてホーンセクション3名を加えた8人編成でステージに現れ、今年1月には東阪にてワンマンライブを開催。4月20日には先行配信された『冬、今日、タワー』『ビューティフルモーニング(Wake Up!)』を含む7thアルバム『Bright Ground Music』をリリース。6月には彼らの地元・北海道、大阪、東京の3都市でツアーを実施。なお、同ツアーにて現在放映中のフジテレビ系アニメ『ぼのぼの』主題歌『bonobonoする』を会場限定シングルとして販売する。

モノブライト オフィシャルサイト
http://www.monobright.jp/

Live

豪華編成で挑むリリースツアー!
大阪公演が間もなく開催へ

 
『Bright Ground Music ~B.G.M~ Tour』

【北海道公演】
チケット発売中 Pコード288-211
▼6月9日(木)19:00
BESSIE HALL
スタンディング3500円
マウントアライブ■011(623)5555

 

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード288-141
▼6月15日(水)19:00
梅田クラブクアトロ
オールスタンディング3500円
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、
未就学児童は入場不可。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


【東京公演】
チケット発売中 Pコード288-260
▼6月17日(金)19:00
LIQUIDROOM
スタンディング3500円
VINTAGE ROCK■03(3770)6900

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


Column

ヒダカトオル脱退
白ポロメガネ復活
ブッチャーズ、北海道etc…
三十路男4人の迷いも覚悟も
詰め込んだ痛快ロックアルバム
『MONOBRIGHT three』~
初Zeppワンマンへの道のりを語る

Comment!!

ぴあ関西版WEB音楽担当
奥“ボウイ”昌史からのオススメ!

「桃野くんとは個人的なつながりも共通の知人のバンドマンも多くて、取材する前に何か知り合いというよく分からない関係から(笑)、前作『MONOBRIRHT three』でようやく初取材。golf関根氏もそれなもんでHocoriでちょくちょく会いつつお茶を飲んだり酒を呑んだり呑まれたりを経ての今回の『Bright Ground Music』でしたが、素晴らしいんじゃないでしょうか。キャリアをかけたモノブライトのドタバタ劇にある種の先入観を持つ人ですら華麗に裏切り虜にするような、持ち前のポップセンスと培ったサウンドデザインが10年目にして花開いた1枚。インタビュー中盤の『テクノロジックに抱いて』のエピソード笑ったな~中二だな~(笑)。でも、男っていつまで経ってもこんなもんです。僕も学生時代夢に出てきたとある女性アーティストのCD、すぐさま買い揃えましたもん(笑)。いつまでも夢を見られるわけじゃないけど、新たな夢を見ることはできるような、そんな桃野陽介の音楽人生が、このアルバムをもって再び始まりました」