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今年最も注目すべきインストバンド・Yasei Collective
事務所の移籍、心境も新たに新作発表…
バンドの今と、これから向かう先とは。
松下マサナオ(ds)インタビュー&動画コメント 

 見る者の度肝を抜く圧倒的な演奏力を兼ね備えたパフォーマンスで、音楽ファンはもちろんのこと、音楽業界~関係者も大注目する次世代インストバンド・Yasei Collective。柳下〝DAYO″ 武史(SPECIAL OTHERS)、浦山一悟(ACIDMAN)、在日ファンクホーンズら豪華11組のアーティストを迎えてリリースした前作から1年半。その間に自身らでレーベル「Thursday Club」を立ち上げ、さらにはACIDMANのマネージメント事務所「FRRESTAR」に移籍するなど、活動をより濃密にするべく動いてきた。今回移籍後初となるアルバム『Lights』を発表し、5月から全国4カ所の2マンツアーが始まるのを前に、バンドの中心人物・松下マサナオ(Dr)にバンドの今とこれから、そして作品のことやツアーへの意気込み、果ては趣味の話まで余すところなく語ってもらった。


Yasei Collective "Lights" (Official Music Video)

 
事務所の移籍によって起こった変化
 
――マネジメント事務所をACIDMANが立ち上げた「FREESTAR」に移籍して、大きな変化はありましたか?
 
「やっぱり気持ちの区切りとして大きいですね。根本的には今やっていることを何も変えないで、露出とか見え方が自分らの思っている方法でもっと広がればいいなっていうことを常に考えていました。なので、今の自分たちにとって一番理想的な形で付き合える人が見つかったっていう感じです。「FREESTAR」は社長が大木さん(ACIDMAN)なので、そういう〝ミュージシャンによるミュージシャンのための事務所″だし、なにより「お前らがやりたいことをやればいい」って言ってもらえたのは、いろんな意味で自由になった感じがしました。あと、声をかけてもらってACIDMANとご一緒するようになってから、見てもらえる人の幅がグッと広くなったのを感じています」
 
――そんなふうに事務所を移籍することで、曲作りやアルバムの制作にも少なからず影響するところはあるんでしょうか。
 
「移籍して一発目に出したシングルの『radiotooth』は、僕らとしては初めて外部からの意見を汲み取って作った曲なんです。僕ら、ずっと音楽的なところは自分たちがプロデューサーでありディレクターでもあるつもりでやっているので、外からは絶対口は出させないって感じでやってきたんですけど、今回初めて大木さんとキャッチボールして作り上げました。とはいえ、基本は僕らの音楽なのでイメージとしては曲にお化粧してもらうような感じでした。バンドにとってすごく新鮮で面白かったし、とても勉強になりましたね」
 
――外からの意見を受け入れる気になったのはなぜだったんですか?
 
「“移籍後第一弾どんなん出すの? できたら聞かせてよ”って大木さんに言ってもらっていたんですけど、“Yaseiってこういうも曲やるんだね、意外”って言われる感じの曲を気合い入れて持って行ったら、“こんな分かりやすいのやんなくていいよ”って言われて(笑)。もっと今までやってきたことにそのまんまやったらいいんじゃないの? って言われた時に、移籍もしたし、無意識にポップなことやろうみたいになってたかもしれないと気付いたんです。で、その後実はこういうのもあって…って『radiotooth』を出したら“これでしょ!”って言われて。その後何度かやり取りして、その中でここは僕らのやりたいことで削れないけど、ここは確かにそういう意見もあるんだなぁって感じで曲が出来ていきました。その結果、次のステップとしてふさわしい作品ができたと思いますね。避けていたこともあって、外からの意見を自分の中に反芻して曲として吐き出すことは難しいと思っていたんですけど、今回初めてやってみて意外と違和感はありませんでした。そこに違和感がなかったのは、尊敬している人からもらった意見だっていうのはもちろんあると思います」
 
――実際に意見を取り入れた曲を出してみて、周りの意見や心境の変化はありましたか?
 
「本当にすごく変わりました。驕りとかとかじゃなく、『radiotooth』は今までの曲以上に僕らにしかできない内容になっていると思うんです。技術的なことを言えば、ファンや同業のミュージシャンからも“これどうやって演奏してんの?”ってよく聞かれるんですが、人力でやらなくてもいいことやってる感じっていうんでしょうか。そういった意見とか感想を、今回は今まで以上に頂いてます。外部のアイデアを取り入れたら逆に自分たちのカラーがぐっと前に出たことで、そういった反響が多くあったんじゃないかと思ってますね。あと、完全一発録りでやったのが逆によかったのかなと。今回のアルバム全体にもすごくそれが出ていると思います」
 
――このアルバムを通しで聴くと、仕事や遊びで夜通し起きていた日の明け方みたいなクリアになっていくような空気感を感じました。
 
「あ、それ嬉しいです。癒しのアルバムみたいなイメージを制作中すごく意識したんです。通しで聴くとだんだん盛り上がっていって、最後すーっといってまたリピートして頭に戻る、みたいな感じで。それと今回はジャズに原点回帰するっていうのは最初からコンセプトとしてありました。中でも大事にしたのが、一発録りで後から(音を)足すとかはなしにしようっていうことでした。エディットもテイクもですが、何回もやるともっとこういう風にしとけばよかったっていう希望とか、もっとこういう風にできただろって期待が上回って、できないのにやろうとするから時間だけがかかって、結局最初の方のテイクがいいってことになるんです。だから今回のアルバムに関してはその時点でライブでできることしかやっていません。よくライブ見てくれた人が、“そうやってやってるのか!”とか、“本当に生でやってるんだ”とか言うんですよ(笑)。でもやればできるし、大体は練習すればできるんですよね。できなかったら技術が足りないってことだから練習するしかないし。今回は録りまでリハでちゃんとやったのがそのまま音になって出たので、良いものが録れました」
 
――制作していて苦労したところはありましたか?
 
「いつもは録音予定の曲をライブでやって、ツアーを回りきったあとに録音するんですけど、今回はライブを一切やらずにまず録りました。苦労というか、今回初めてのスタイルなんですよね。ある意味これから進化していく曲が多い感じです。これからツアーまでのゲネプロでかなり詰めていく中で、また上手くなっていくだろうし。ツアーが終わる頃には自然に曲の尺も変わってるんじゃないかな。僕らすごいライブ盤出したがる癖があるんですけど、それは最終的にこっちの方がもっといいじゃんってなるからで。それでついライブ会場限定で100枚だけ出したりしちゃうんですよ。出したくなっちゃうの(笑)」
 
 
〝Yasei Collective的″これからのライブスタイル

 
――Yasei Collectiveは音源を聴いているとバンドとしてのまとまりを感じるんですが、ライブになるとドラムがフロントに配置されていて、圧倒的にドラムがぐいぐい引っ張っていくようなジャムバンドの印象を受けますね。
 
「そうですね。僕がかなり前に出ちゃってますからね。全然下がってもできるんですよ。ハコによってはドラムの位置変えられないこともありますし。でもそうなると音が聞こえて来る位置がいつもと全然違うんでやっぱりやりにくいんです。今の場所からバンドの音を聴いて叩くのが僕にはベストです。…余談ですけど、8ottoのマエソンさん(Vo&Ds、ライブ時はフロントのセンターでドラムを演奏しながら歌う)には勇気もらってます! あそこでセット組んで歌うっていうのは勇気いるんですよ。2年ぐらい前に初めて8ottoと対バンしてからは、僕も絶対下がんないぞと。Yaseiである限りは一番前でやろうみたいに思いました。それと実はうちのバンドのステージの中音って、めちゃくちゃ小さいんです。リハの時モニターの音はゼロ状態から始めて、アンプで出てる音と、ドラムの生音だけで1曲やってみて、いいんじゃない? ってなったらそれ以上出しません。あとは状況に応じてちょっと足すか、それぐらいがちょうどいいですね」
 
――ちなみに次のツアーの会場でもある大阪・Shangri-Laはどうですか?
 
「Shangri-Laはもう最高です。キイさん(Shangri-La店長)がいるし、スタッフさんも素晴らしい。そもそも俺ら大阪だったら絶対ここって決めてます。“いつかShangri-Laでワンマンやって売り切らないと!”と。大阪のホームはShangri-Laって勝手に思ってます」
 
――今回のツアーで関西は大阪と京都ですが、どちらの公演も「関西らしさ」がじわりとにじみ出るブッキングになりましたね。
 
「とにかく単純に一緒にやりたい人にお声がけしました。今回は特にゆかりがある人をと。溺れたエビ! は何度か一緒にライブをやっていて、お互い露出が増えてきて状況が変わっているのでどうなるか楽しみです。ゴッチさんはSNSで絡む機会があって、nanoなら弾き語りとかかっこいい! と思い、“やってもらえないでしょうか”ってまずは直接お願いしました。そこにDJでDAWAさん(FLAKE RECORDS)に入ってもらうので…僕的にはゴッチさんとDAWAさんの2人はずっと組めたらって思っていた理想のカードですね」
 
――今回のツアーを通して、自分たち自身に期待することはありますか?
 
「ツアーを終えてまたうまくなりたいっていう技術的な部分と、最近特に意識してるMCとかを作りこまないでとにかく演奏を楽しんで、その補足説明を自然にちょっとするぐらいの感じでやれたらいいなと思ってます。MCは好きでよくしゃべるんですが、“京都—−!”とか“大阪—−!”とか地名であおったりするかっこいいやつ言えるタイプじゃないので…今まで通り音楽的なとこで貫くっていうのをやろうと思って。それが形になるのかどうか試したいところですね」
 
――いわゆる安室奈美恵スタイルですね。
 
「わははははは!  初めて言われた! 安室ちゃんですか!」
 
――本当にMCされないですもんね。
 
「それ最高ですよね。そこ目指してます(笑)。安室奈美恵スタイルかー。そうかー。全くしゃべんないわけじゃないけど、ガッと演奏して“そういえば来週あれあります”ぐらいの感じかなと。リビングで演奏してるぐらいのリラックスしたイメージでしょうか。僕らとしては演奏があんななので、それ自体が既に気負った感じでして。それ以外では極力気負わないように。それが今回やって、貫いてどうなるか。ふわーっと乗ってられるような空間で、ちょっとMC足すぐらいのイメージでやれたらいいなと思います」
 
――ちなみに何度もライブで関西には来ていると思いますが、関西に来たら必ずやることや行く店はありますか?
 
「古着屋に行きます! 関西の古着屋は相場が東京の古着屋の半額ぐらいなんですよ。なんか店員さんほんとにわかってんのかな、これあれだよ? みたいなものとかいっぱいあって。もう古着大好きなんで、オフがあればメンバーみんなで行きますね。ずーーーーっとネルシャツ探してます(笑)。僕、特定の掘り出し物探すのが趣味なんですよ。古着屋とかリサイクルショップとかそういうところで、9割クズみたいなものの中からいいもの探した時の喜びがね、たまらなくいいんです。楽しいんですよ」
 
――音楽以外の趣味っていうと古着ですか?
 
「あと山行ったり。山菜採るのが好きで、ちょうど5月に行くんですけど」
 
――山菜!?
 
「そう。たらの芽を採って天ぷらにするんですけど、これはバンド全員で行きます。僕の実家に行って山菜採って、おふくろが料理して。バンドの研修も兼ねてます(笑)。楽器は東京において、バンドの車は普段機材入れてるとこに席をつけてそれで山は入ります。今までは山菜に合わせて前後にライブ入れたりしてたんです。それが最近どっちも本気になってきて、ライブやった後の感じで山菜採れないってなりまして。ライブ後の体力で行ったらもったいない、たらの芽はたらの芽だから!っていうことで! 今年は2泊を予定しています(笑)」
 
――なんかバンド名とはリンクするような気もしますよね。
 
「そうですねー。僕とギターの拓郎は長野の“プロでやってます”っていうおじさん達より全然採ります。普通の人から見たらただの枝に見えると思うんですけど、僕は運転中でも“あー、あるなー”ってわかります。今年はいつもより標高の高いところに行く予定です。これがバンドの趣味かな。めちゃくちゃ美味しいですよ。ほんと。こればっかりは実際に行かないと本物は食べられないですからね(笑)」
 
 
Text by 桃井麻依子



(2016年5月 6日更新)


Check

Movie Comment

Release

事務所移籍、心境新たにリリース
内容充実の4thアルバム!!

Album
『Lights』
発売中 2400円(税別)
Thursday Club
XQMW-1302

<収録曲>
01.Intro
02.Lights
03.Nice
04.Kraft
05.Lindner
06.radiotooth
07.Fever
08.RhodesPhet
09.Countrydad
10.Suzumebachi

Profile

ヤセイコレクティブ…2009年、アメリカより帰国した松下マサナオ(Dr)、中西道彦(Ba、Synth)が斎藤拓郎(Vo、Gt、Synth)と共に結成。翌年、別所和洋(Key)が加入し、現在の体制に。1stアルバム『Kodama』をリリース、2012年には『FUJI ROCK FESTIVAL’12』に出演し、話題を集めた。その後2015年の9月よりACIDMANの所属事務所でもある「FREESTAR」に移籍し、それに伴い自主レーベル「Thursday Club」を設立。Yasei Collectiveとして楽曲制作にライブにと精力的に活動を続ける傍で、メンバーがそれぞれに別のバンドやサポートミュージシャンとしても活躍中。

Yasei Collective オフィシャルサイト
http://yaseicollective.com/

Live

リリースツアーは全国5公演
ツアー初日は5/15(日)大阪から!

WE ARE ALL “LIGHT” TOUR 2016

Pick Up!!

【大阪公演】

発売中 Pコード293-778
▼5月15日(日)19:00
Shangri-La
前売3000円
[共演]溺れたエビの検死報告書
Shangri-La■06(6343)8601

【愛知公演】
発売中 Pコード294-004
▼6月10日(金)19:00
ハートランド
全自由3000円
[共演]egoistic 4 leaves
[オープニングアクト]AWA
ハートランド■052(212)9018

【静岡公演】
▼6月11日(土)19:00
G-side
[ゲスト]HUMANAME
前売2,500円
G-side■053(541)5067

【京都公演】
▼6月12日(日)19:30
nano
前売3500円
[共演]Gotch 
[DJ]DAWA(FLAKE RECORDS)
nano■075(254)1930

【東京公演】
発売中 Pコード293-302
▼6月17日(金)18:00
UNIT
オールスタンディング3000円
[ゲスト]katsina session
ホットスタッフ・プロモーション■03(5720)9999

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