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デビューから30年! 中村美律子にその歩みを聞いた
インタビューをお届け! 新曲「土佐女房」や
夏の新歌舞伎座公演についても語ってもらった

1986年に「恋の肥後つばき」でデビューして以来、力強い歌声で演歌の心を届けてきた中村美律子。歌手生活30年の歩みと新曲「土佐女房」の魅力、そして7月に開催される新歌舞伎座公演など、節目の年を華々しく歩む彼女の歴史と展望に迫る。

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■河内の櫓から演歌の大海原へ

――美律子さんは河内音頭の歌い手としてキャリアをスタートしていますが、当時はどのような活動をされていたのですか?

母が亡くなって家族が一時的に離れ離れで生活をするようになったのですが、私のことは、その時、河内音頭好きな近所のおじさんが引取ってくれました。そのおじさんに音頭や太鼓を教えてもらったのですが、もともと産まれも育ちも河内ですから、音頭のリズムは体にしみこんでいたみたいですね。それで櫓にも上がらせてもらって…。女の子が河内音頭をやるのも珍しかったし、高校時代は毎晩、櫓を掛け持ちして、結構売れっ子だったんです。でも、私としては小学校二年生の時に歌謡教室にも通っていたし、本心としては、ずっと演歌歌手になりたいと思っていました。

――では、歌への興味は早くから持っていたんですね。

両親が銭湯に住み込みで働いていたんですけど、お風呂場で大好きな美空ひばりさんや三橋美智也さんの歌を歌うのが私の習慣になっていました。エコーがかかって上手に聞こえるから気持ち良いんです(笑)。青春時代には都はるみさんに憧れていました。でも、うちは母が早くに亡くなって妹たちの面倒を見なくてはいけなかったので、とても歌手を目指せるような状況ではなくて。それでも好きで歌っているうちにヘルスセンターやキャバレーで歌わせてもらう機会が増えて次第に歌で生計を立てられるようになりました。一応プロ歌手という肩書きでしたが、いかんせんその時期が長すぎて、なかなかメジャーデビューできなかったのも事実で。

――デビューに向けての取り組みなどは、どのようにされていたのですか?

歌の仕事をしているのにオリジナル曲がないのも寂しいので自主制作盤を作ったり、当時はもう30歳も過ぎていたので、長く歌い続けられるようにと浪曲の勉強をしたり、いろいろやっていました。そんな中、大阪の音楽事務所の方から、「歌ってほしい曲があるんやけど」ということで声をかけていただいたのがデビューのきっかけですね。

――メジャーデビュー前にはいろいろなところで歌っていたとのことですが、当時の思い出などは?

一番強烈だったのは「台湾で歌ってこい」と言われた時ですね。帰ってきたらレコーディングさせてやるからという条件でした。最初は1ヶ月で迎えに来ると言われていたのが、待てど暮らせどその気配がない。台北、台南、台中といろいろな場所に連れ回され、3ヶ月経った頃にやっと迎えが来ました。まだ20歳ぐらいだったし、もう帰れないんじゃないかと思って向こうでずっと泣いていましたよ(笑)。

――30代を過ぎてからのデビューということで特に意識されたことなどはありましたか?

今の演歌シーンだと何歳でデビューしても遅くないという状況ですが、昔は30代なんていったらオバハン扱いですからね。五木ひろしさんもはるみさんも年齢的にはあまり変わらないけど、私はデビューが遅かった分、その差を少しでも埋めなければと思って普通の人の倍、マイペースならぬ「倍ペース」で走っていました。

――そんな中で3作目のシングルとして代表曲「河内おとこ節」がリリースされますが、この曲に関しては、最初から手応えを感じていましたか?

ありました! 櫓で河内音頭を歌って育った私の姿がそのまま描かれていたし、売れるかどうか以上に「これは私の歌や!」という思いでした。もし、この曲が売れなかったとしても私は満足やと。この歌が私の元に来たというだけでうれしかったからね。平成元年に発売されて平成4年にはこの曲で「NHK紅白歌合戦」に初出場するんですけど、関東にもじわじわ浸透していった時期なので、皆さん「中村美律子、くるで!」という感じで見てくれていたのかなと思います。

――同時期にはテレビ番組「乾杯!トークソング」のパーソナリティーとしても活躍されていました。

「乾杯!トークソング」は紅白初出場の翌年から出演して、この番組を通して関西以外の方からも声をかけていただくことが多くなりました。テレビ番組はそれ以前にも「演歌一夜」という番組を5年半やらせてもらって、30分間、他の人の歌や懐メロ、ブルース、タンゴ、ブギなど、さまざまな歌を一人で歌ったことで自分の中の引き出しを増やすきっかけになりました。村田英雄さんが関西に来られた時に番組をご覧になって、「この人はすごい。ぜひ、うちのレコード会社に来てもらおう!」と言ってくださったんですが、そのときはすでに村田さんと同じ東芝レコードだったんですよ(笑)。あの番組の影響はすごく大きかったと思います。

――長く歌い続けるために浪曲も勉強されていた、ということでしたが、他に取り組まれていることなどは?

一応、120歳まで歌うとは言ってますけど(笑)、ずっと続けてきた倍ペースをどこまで続けられるか、あと何年歌えるかというのは、やはり気になります。衰えることなく歌い続けていくには体力づくりは必須なので、今は週一回、水泳をやっています。もともと泳げなくて息継ぎも出来なかったのが、コーチについてもらって今では50メートル泳げるようになったんですよ。あとは以前からやっている卓球やシェイプアップ体操も欠かさず続けています。

――同年代の方にとっては、美律子さんのそうした姿は励みになっているでしょうね。

皆さん、私に会うと元気になるとかパワーをもらったとか言うてくれるから、その期待を裏切らないようにしないとね。先日もファンの皆さんと大阪でウォーキングをしたんですよ。鶴見緑地公園を2時間ほど歩きました。歩いてお弁当を一緒に食べて、写真も撮って、ほな、さいなら!という感じの交流会をこれまで47ヶ所でやってきて、今でも地方の仕事に行った時には、いつも「みんなで歩きましょう」って告知しています。先日は歌番組で一緒になった華原朋美ちゃんのファンという若い人たちが参加してくれて、そうやって世代を越えた交流が広がるのも楽しいですね。

■“はちきん”の健気な一面を

――新曲「土佐女房」のお話もお聞かせください。こちらは30周年の記念曲ということですが、どのような思いで製作されましたか?

最近、年に2枚シングルを出させてもらっているので、「土佐女房」は30周年の第一弾ということになりますね。おかげさまで曲の舞台である高知県の観光特使にも任命していただき本当に嬉しい限りです。前作やその前の曲がしっとり系の女歌だったので、ファンの方からは「美っちゃん、そろそろ男歌を出して!」という要望をいただいていました。この曲は女歌ではあるけど男っぽい力強さもあるので、ちょうどいい感じに仕上がったなと思います。

――主人公はいわゆる“はちきん”(男勝りな女性を意味する土佐弁)と言われるような高知の女性ですが、この人物像を表現するにあたって意識したことは?

主人公の旦那さんは漁師なんですけど、沖に出るとなかなか帰ってこないじゃないですか。そうすると意思が強くて芯のある女性を表現しないとこの曲の世界観を伝えられない。男勝りなようで、漁から無事に帰って欲しいから「茶断ち塩断ち操を守り」って願を込めるという、実はとてもしおらしいという一面を大切にしながら歌っています。

――美律子さんから見た高知の印象は?

みんなお酒が強いですよね。それも単なる酒飲みという感じではなくて、晩ごはんで居酒屋に行っても、お酒を呑むための遊びがいろいろあって、知らない人とでもお酒を酌み交わすことで、すぐに意気投合できる。高知の皆さんは、そんなコミュニケーションを心から楽しんでらっしゃるなと思います。

――歌っていてお気に入りのフレーズなどは?

1番、2番、3番通して最後のフレーズが好きですね。特に2番は、なんてうまく書いてくださっているのだろうと思います。この歌詞は石本美由起先生が生前に書き遺してくださったものなんですけど、本当にしびれます。

――歌ってみての印象はいかがですか?

曲調も明るいし、頑張るのでもなく抑えるのでもなく、という力の入れ具合が心地良いです。レコーディングも全然苦労しなくて、もうちょっと歌わせてよ~って思ったぐらいすぐに終わりました(笑)。お客さまからも「爽やかでいい気分になれる」と好評をいただいています。

――今後はコンサートやお仕事で高知に行く機会が増えそうですね。

これまでは意外とおじゃますることが少なかったので、ぜひ増やしたいですね。先日、キャンペーンで行った際には知事さんから観光特使の委嘱状をいただいたんですけど、これがまた若くてイケメンな方でね~(笑)。「高知をしっかりアピールしていただけたらうれしいです」とお言葉をいただき、俄然張り切っています(笑)。

――カップリング曲の「美律子の河内音頭~酒飲め音頭」は、美律子さんの新たな定番曲になりそうですね。

全国の皆さんが「河内おとこ節」で踊ってくださるのを見て、せっかくだし、もっとど真ん中の河内音頭を作ったら、さらに楽しんでいただけるのではないかと思ったんです。今、海外でも「河内おとこ節」で踊ってくれている人がいるらしいので、その盛り上がりに一役買えたらいいですね。

――作曲は美律子さんご自身ということで、注目も集まりそうです。

河内音頭ってもともとアドリブのようなスタイルなので、作曲というより節付けという言い方がしっくりくると思いますね。制作にあたってピアノを弾ける友だちに採譜してもらったんですけど、そんな特徴があるものだから言葉が変わると節も変わるし、それをある程度そろえるのが大変で。1番と2番で違う節を歌っちゃうから、「それ、さっきと違います!」なんて言われながら作っていました(笑)。


■激動の半生を描いた期待の演目

――7月からは新歌舞伎座で特別公演が開催されます。今回の見どころは?

今回、第一部のお芝居「雲の上の青い空」は、20年前に初めて上演した演目で、私の半生、小学5年生の頃から始まって、紅白に初出場するところまでを描いたお話です。自分で自分を演じるなんてこの上なく恥ずかしい(笑)。でも、ジェームス三木さんが素晴らしい脚本を書いてくださったおかげでお客さまにも泣いて笑って楽しんでいただける作品になっていると思います。

――お芝居を通して美律子さんの育った様子も分かるんですね。

小さい頃に家族と過ごした日々、櫓の上で河内音頭を歌ったことや初恋の人のこと、父に黙って交際していた人との間に子どもができちゃって……とか、そういったこともお芝居の中で赤裸々に描かれています。私としてはそんなことまで言いたくないんですけど(笑)。でも、すべてをさらけ出すことで、嘘のない私の生き様みたいなものを知っていただくこともこのお芝居の大事な意義だと思っています。

――今回の再演は30周年の節目に合わせて?

このお芝居、すごく評判が良くて新宿コマ、御園座、博多座など全国の劇場で上演して、たくさんのお客様に見ていただけたんです。私にとっても大事な演目なので、再演するなら、このタイミングしかないでしょうということで。

――劇中では歌う場面が多いのですか?

10曲ぐらい歌っていますね。お芝居では私が紅白に出場するまで、第二部のオンステージでは、その後の私が出てくるという構成になっています。また、30周年のお祝いということで同じ事務所の増位山太志郎さんが友情出演してくださったりもするので、ショーの内容もバラエティー豊かになると思います。

――最後に30周年への思いと今後の抱負お願いします。

私の真骨頂と、人様にはよく言われるのですが、やっぱり歌謡浪曲ですね。これまでは「瞼の母」「壷坂情話」がステージの定番だったのですが、このたび30周年を機に「無法松の恋~松五郎と吉岡夫人~」(詩・池田政之 曲・弦哲也)という作品を新しく作りました。こちらは7月6日に発売になります。21分10秒の大作なんですけど、「土佐女房」と共にそちらもみなさんに聴いていただけるように頑張ります。「歌謡浪曲といえば中村美律子」とアピールしていきたいですね。あとは健康に気をつけて。少しでも長く、元気よく歌い続けていきたいと思います。

 

構成・取材・文/伊東孝晃(クエストルーム)




(2016年5月13日更新)


Check

Release

マキシシングル『土佐女房』/『美律子の河内音頭~酒飲め音頭~』

発売中 ¥1204 + 税
キングレコード
KICM-30705

<収録曲>
01.土佐女房
02.美律子の河内音頭 酒飲め音頭
03.土佐女房(オリジナルカラオケ)
04.土佐女房(一般用カラオケ半音下げ)
05.美律子の河内音頭 酒飲め音頭(オリジナルカラオケ)

ミュージックビデオ
http://www.kingrecords.co.jp/cs/artist/artist.aspx?artist=34462

中村美律子 デビュー30周年記念公演

5月15日(日)10:00~チケット発売

Pコード:449-092

「雲の上の青い空 ~中村美律子物語~/中村美律子オンステージ浪速の夏祭り2016」

▼7月25日(月)11:30
▼7月26日(火)11:00/16:00
▼7月27日(水)11:30
▼7月28日(木)貸切/16:00
▼7月29日(金)貸切
▼7月30日(土)11:00/16:00
▼7月31日(日)11:00/16:00
▼8月1日(月)11:30
▼8月2日(火)11:00/16:00
▼8月3日(水)貸切
▼8月4日(木)貸切/16:00
▼8月5日(金)11:30
▼8月6日(土)11:00/16:00
▼8月7日(日)11:00/16:00
▼8月8日(月)11:30
▼8月9日(火)11:00/貸切
▼8月10日(水)11:30
▼8月11日(木)11:30
▼8月12日(金)11:00/16:00
▼8月13日(土)11:30

新歌舞伎座

1階席-12000円
2階席-6000円
3階席-3000円

[監修]富田梓仁
[作][演出]ジェームス三木
[出演]中村美律子/林与一/三林京子/増位山太志郎(友情出演)/他

※特別席は取り扱いなし。未就学児童は入場不可。

[問]新歌舞伎座
[TEL]06-7730-2121

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その他公演

発売中

Pコード:288-427

▼5月20日(金) 14:30/18:00
新宿文化センター 大ホール

SS席-6500円

[問]ベルワールドミュージック
[TEL]03-3222-7982

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Profile

なかむらみつこ●7月31日生まれ、大阪府東大阪市出身。1986年に「恋の肥後つばき」でデビュー。「河内おとこ節」「瞼の母」「壷坂情話」などヒット曲多数。健康法は「よく食べて よく寝ること」。いつも元気を与えてくれるステージが人気を博す。 アルバム「中村美律子 ベストセレクション2016」も発売中。