インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 「今は音楽をやってて、すごく幸せ」 浅田信一という1人の男の人生を描いた新たな円熟期 12年ぶりのアルバム『Blue Moon Blue』から、SMILEへの想い プロデュースワークまでを語るインタビュー&動画コメント


「今は音楽をやってて、すごく幸せ」
浅田信一という1人の男の人生を描いた新たな円熟期
12年ぶりのアルバム『Blue Moon Blue』から、SMILEへの想い
プロデュースワークまでを語るインタビュー&動画コメント (2/2)

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


変化球のつもりで書いたんだけど、結果、46になった
自分の最新の形が、『First Light』で出来たんじゃないかな
 
 
――曲を書き溜めていく中で、どういったアルバムにしようというビジョンはありました? 結果、弱気のミニじゃなくてちゃんとフルアルバムになったわけですもんね(笑)。
 
「そうだね(笑)。森山に“俺も頑張ってそろそろアルバム作ろうかなぁ。でも、フルアルバムは無理かもよ~やっぱりミニアルバムかなぁ”って言ったら、森山が“信ちゃん、ミニアルバムなんか今まで買ったことあります?”って言われて、“あ、ないね”って(笑)。アルバムのコンセプトみたいなものは、曲を書いていく中で炙り出しのように浮かび上がってくるものだと思うけど…やっぱり“1人の男の人生”っていうことなのかもしれないな。若い頃は人生観とか恋愛観も含めて歌うんだけど、ある種不特定多数なことだった気がするのよね。それが今、この年齢になって歌うことって、すごく個人的なことで、本当に“1人の男の人生”でしかない。そういう変化はあったかもしれない」
 
――このアルバムには本当に瑞々しい曲たちが入ってますけど、それこそ1曲目からそれを象徴するような『First Light』から始まって。ミュージシャンあるあるの夜型人間ではなく、朝方に変化した浅田さんの(笑)。
 


「すごいでしょ?(笑) 元々アルバムの1曲目にするとか、リード曲にするつもりは全くなくて、変化球のつもりで書いたのね。他にもっと自分の中での王道の曲があるから、そっちの方がリード曲になるんだろうなって思ってたんだけど、結果出来上がってみたら『First Light』が今の自分に一番フィットした。ということは、変化球のつもりで書いたんだけど、結果、46になった自分の最新の形が、この曲で出来たんじゃないかなって」
 
――でも、その話を聞いてると、『First Light』は未来と過去しか歌ってこなかった、浅田さんの“現在”ですよね。だから、ずっと書けなかった現在がこの曲で書けたんじゃないですか。だから、12年出来なかったアルバムが出来たんじゃないですか。
 
「あ、そうだ…。さすがだねぇ~!(笑)」
 
――未来を書くだけじゃもう歌えなくなっていたのが、年齢を重ねて過去を得て、今ここでようやく現在を書けた。もうこれからは全部書けますね、1人の男の人生を。
 
「本当だ。何かね、やっぱり新しいもの書けた感覚はすごくあったんだよね」
 
――『You And I』(M-3)ではファンであったり、仕事を共にする人だったりとの、いい関係が描かれていますね。
 
「さっき10代の頃の利害関係のない友達付き合いっていう話になったけど、今は俺はメジャーでも何でもないし、そこにあまり損得が生まれない状況にいる中で、ファンの人もそうだし、今回のアルバムに関わってくれたミュージシャンとかもそうだけど、やっぱり人間って結局1人じゃ何にも出来ないから、みんなにやらせてもらってるんだなって思うんだよね。このぐらいの年齢になると、そういうものをすごく感じる」
 
――縁とか感謝みたいなものを、押し付けじゃなくて自発的に思うと。
 
「そうなの。例えばプロデュースなんかで若いバンドと一緒に仕事すると、やっぱりフロントマンとかは“別にメンバーなんていらない、俺の才能でやってるんだ”じゃないけど…これから音楽業界をサヴァイブしていくにはそれぐらいの自信がないとダメだし、それはすごくいいことだとも思うんだけど、多分ヤツらもこのぐらいの年齢になったら、“やっぱりバンドのメンバーがいてこその俺だ”って思う日が、解散してなければいつかきっと来るだろうし」
 
――浅田さんの話を聞いていたら、歳をとるのもあながち悪くないっていうことが形になってますよね。そうじゃないとこの作品にはならなかったというか。
 
「そういう風に思ってもらいたいよね、同世代の人に。本当に“1人の男の人生”の歌の集まりでしかないんだけど、こんな俺でも長い間続けてきてまた新たに見えるものがあって。そういう意味では、今はやっぱり、音楽をやってて、すごく幸せなのね。今は音楽で生きていくのも大変なことだしさ、若い人たちもそうだし、同世代だって行き詰まってる人がいっぱいいて。でも、やっぱり嫌なことばっかりじゃないって思いたいし、思ってもらいたいから」
 
――そう思うと、今作のタイトルが『Blue Moon Blue』っていうのがまさにですよね。このタイトルは、年に1度だけ月に2回満月が観られる月があって、その2回目の満月=“ブルームーン”からきていると。
 
「あの頃の満月もやっぱりキレイだったけど、2回目の満月があるわけだから。それはいくつになって迎えられるか分からないけど、人には絶対にそういうタイミングがあると思う。俺は今までやってきたことが1つ形になって、今が新たな円熟期なんじゃないかなぁ。そうなったらいいなと思って、このタイトルにしましたね、うん」
 
 
コータローさんは、1人の男と男として、親友だと思うんだよね
 
 
――あと、『グッバイ・イエスタデイ』(M-6)とか、nicotenに提供した『さよならは云わない』(M-11)みたいなポップソングを書けるのもさすがだなと。
 
「いやいや、ありがとうございます。『さよならは云わない』なんかは、絶対に自分じゃやらないと思って書いてたからね(笑)。コードとかもいわゆる王道のJ-POPなんだけど」
 
――この12年の間にリリースされてきたEPの表題曲、『無常の世界』(‘11)(M-8)と『Over & Over』(‘15)(M-10)も収録されていますね。
 
「『Over & Over』はこのアルバム制作の初期段階の曲で、『無常の世界』は最初は収録するつもりはなかったんだけど、完全にインディーでやってるから、EPがもう廃盤になってて(笑)。お陰様でライブで『無常の世界』をやってると、盤が欲しいと言ってくれる方もいらっしゃって。この間ちょっとヤフオクを見たら、5000円ぐらいで落札されてるのね(笑)。5000円も払ってまで聴きたいと思ってくれるのはありがたいんだけど、そういう風にみんなが思ってくれてるんだったら、今回の盤に入れようかなって」
 
――『無常の世界』は3.11の震災以降に生まれた曲で、“現在”を書こうと試みた1曲目かもしれないですね。
 
「そう思うね。だから入れたというか、結果的に入ってもおかしくない曲だったから」
 
――『堕天使達のラプソディー』(M-7)はアルバム制作のきっかけを作ってくれたコータローさんに書き下ろしてもらった唯一の提供曲ですが、今では本当に盟友と言える仲のコータローさんとの出会いはどれぐらい前なんですか?
 
「元々はSMILEでデビューして間もなくのとき、THE COLLECTORSと一緒にイベントに出させてもらって。コータローさんの知り合いの方がSMILEのファンで、大阪城野音の楽屋にSMILEのCDを持ってきて、“友達がファンなんでサインをください”って言ってきてくれたのが最初で(笑)」
 
――えぇ~! すごい。しかも大阪なんや(笑)。
 
「もちろんコータローさんはTHE COLLECTORS、俺はSMILEがあったから、その後もイベントで一緒になるぐらいだったんだけど、SMILEが活動休止して、これからどういう風に活動していこうかなぁっていうときに、コータローさんにギターを弾いてもらえたら、何かいいもの出来るんじゃないかと思って、声をかけさせてもらったのね。それからサポートもやってもらったり、それがANALOG MONKEYS(=浅田信一と古市コータローのユニット)になったり、そういう感じの付き合い」
 
――浅田さんにとってコータローさんはどういう存在ですか? 頼れる兄貴だとは思うんですけど。
 
「もう、何て言うんだろう。歳も5つ違うとやっぱり大先輩じゃない? なんだけど、そこを飛び越えて、1人の男と男として、俺の口から言うのはちょっとおこがましいんだけど、親友だと思うんだよね」
 
――そんなコータローさんは楽曲提供のみならず、今作のアートディレクションもしてくれてますね。
 
「コータローさんのセンスとか嗅覚を信頼してるのもあるけど、コータローさんのソロアルバム『Heartbreaker』(‘14)をプロデュースさせてもらったときに、“信ちゃんがそう言うんだったらいいよ”って、100%俺に委ねてくれたのね。彼もアーティストだし、それってすごく勇気がいることだと思うんだよね。そこまで信頼してくれたのが、やっぱり器が大きいなと。だから、今回は音楽的なところではセルフプロデュースだけど、コータローさんに何か委ねたいと思ったのね。自分もアートワークは嫌いじゃないからやろうと思えば形にはなっちゃうんだけど、コータローさんに全部お任せしてやってもらったら、きっといいものになるんじゃないかなぁと思ったんだよね」
 
――そんなアルバムが完成して、改めてどう思います?
 
「すごくね…好き(笑)。今話しながら“何でかなぁ?”って思ったら、このジャケットもすごく好きなのよね。俺も客観的に1枚のレコードとして見れてる。自分が全部ディレクションしてたら、もうちょっとこう出来たかな? あれも出来たかな?っていうところが絶対に出てくると思うんだよね。自分が他人をプロデュースするときはやっぱり細かいし、エンジニアに対して注文も多い。でも今回は、曲の細かいところは全部ミュージシャンに委ねたし、エンジニアに関してもほぼ何も言わず。だから、みんなが与えられた責任の中で100%以上の力を発揮して作ってくれたアルバムだと思うんだよね。全部自分で打ち込んで、エンジニアも自分でやってたら、自分の鏡みたいなものだから、多分聴き返さないと思うの。だけど、今回は客観的に聴いてもやっぱりいいなと思えるのは、そういうところが大きいんじゃないかな。だから一緒に作ったみんなのアルバムのような気がするんだよね」
 
 
今回のアルバム一緒に作ったミュージシャンとか、ファンの人とか、
音楽業界にいるビッグアーティストもプロデューサーも新人バンドも
1つの音楽という船の上に乗ってる仲間だと思う
 
 
――東京、大阪、地元の浜松を廻るバンドツアーに向けてはどうですか?
 
「箇所は少ないけど、バンドで廻るっていうのは、もう10何年ぶりだからね(笑)」
 
――そもそもフルアルバムを携えたリリースツアー自体、ここ12年はまずなかったわけですもんね。
 
「だから想像もつかないの(笑)。SMILEの頃は自分が頑張んなきゃと思って一生懸命仕切ってたんだけど、今回はアルバムがそうだったように、もうバンドのメンバーに楽しんでもらいながら、いい意味で責任感を持たずに自分も楽しめたらいいかなと。コータローさんの口癖があって、“信ちゃん、楽しんじゃった者勝ちだから! ハッピーに行こうよ!”っていつも励まされて。俺はどちらかと言うとさ、いつも眉間にしわを寄せて、いろいろと細かいことを考えちゃう質で。きっとコータローさんにもそういう一面はあると思うんだけど、表舞台に立ったときはハッピーに行こうよ!っていうスタイル。そこはやっぱり見習いたいなぁと思うし。観に来る人ってみんな、やっぱり俺のそういう姿を観たいと思うんだよね。笑顔になって帰りたいだろうし。俺が舞台の上で眉間にしわを寄せてたらさ、きっとみんなも心配になっちゃうだろうし(笑)」
 
――お披露目のプレツアーでも、1曲やるごとに“どう?”って反応を伺う感じ(笑)。かわいかったなぁ、あれは(笑)。
 
「いやいやいや(笑)」
 
――楽しそうだなって思いましたし、観てるこっちも嬉しくなるというか。そういう意味では、バンドツアーでも各地でいい夜が生まれそうですね。その後は弾き語りのツアーもあったり、浅田さんのシンガーソングライターとしての人生が改めて動き出した感じがしますけど、今後どう歩んでいくのかを最後に聞きたいなと。
 
「多分死ぬまでミュージシャンであることは変わりないと思うんだよね。あと、作品を作る人とそれを聴く人という隔たりも、今後はなくなっていくと思うんだよ。今回のアルバム一緒に作ったミュージシャンとか、ファンの人とか、ヘンな話、音楽業界にいるビッグアーティストもプロデューサーも新人バンドも、1つの音楽という船の上に乗ってる仲間だと思う。今はそんな感覚があってね。みんな音楽が好きで、音楽を聴きに来て、音楽を作って…ヘンなこだわりとか、小っちゃなプライドも捨てて、みんなで音楽を楽しんでいける世の中になったら…きっとそうなるような気がするのよね。そこで自分にはいったい何が出来るのかと思ったとき、聴いてくれる人と距離を出来るだけ縮めて、一緒に音楽を楽しんでいけるような、そういうスタンスで音楽が出来たらいいなぁと思ってます」
 
――これからも浅田さんの新しい音楽が聴けるのを楽しみにしています! 本日はありがとうございました!
 
「ありがとうございました!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2016年4月25日更新)


Check

Movie Comment

声がよい!&なくならない少年性
ツアー中の浅田信一から動画コメント

Release

12年ぶりのアルバムが遂に完成!
5月にはアナログ盤もリリース予定

Album
『Blue Moon Blue』
発売中 2778円(税別)
BLAZE Inc. / GROOVECOUNCIL
DQC-1517

<収録曲>
01. First Light
02. Are You Ready? I’m Ready
03. You And I
04. Light & Shadow
05. Blue Moon Blue
06. グッバイ・イエスタデイ
07. 堕天使達のラプソディー
08. 無常の世界
09. Walking In The Rain
10. Over & Over
11. さよならは云わない

Profile

あさだ・しんいち…’69年、静岡県浜松市生まれ。乙女座、O型。’95年、SMILEのボーカル&ギターとしてメジャーデビュー。’00年にSMILEが活動休止。’03年にはソロとして2枚のミニアルバム『GRAND CITY APARTMENT』『I'm Stupid』を、’04年にはアルバム『Odyssey』をリリース。同年にSMILEは解散。’05年にはセルフカバーアルバム『モアベター・スマイル』('05)、1stシングル『悲しみストレンジャー』('05)を発表。なお、バンドの解散以降は、自身のリリースやライブ等のソロ活動と並行し、楽曲提供(Kinki Kids/CHEMISTRY/V6/他)、プロデュースワーク(高橋優/クリープハイプ/HY/GOING UNDER GROUND/古市コータロー/赤色のグリッター/他)など幅広く活躍。’11年には『無常の世界 EP』、デビュー20周年を迎えた’15年には『OVER & OVER e.p』をリリース。’16年4月6日には12年ぶりのアルバム『Blue Moon Blue』を発表。同作を携えてのバンドツアー(4月・全国4公演)、弾き語りツアー(5月・全国6公演 )を開催。

浅田信一 オフィシャルサイト
http://www.asashin.net/

Live

10年以上ぶりのバンドツアー
大阪公演が間もなく開催へ!

 
『NewAlbum Release Band Tour 2016
「Blue Moon Blue」』

【東京公演】
チケット発売中 Pコード285-624
▼4月22日(金)19:30/23日(土)18:00
LIVE HOUSE FEVER
オールスタンディング5000円
[メンバー]浅田信一(vo&g)/
古市コータロー(g)/高間有一(b)/
古沢“cozi”岳之(ds)
新代田FEVER■03(6304)7899

 

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード285-624
▼4月26日(火)19:30
心斎橋JANUS
オールスタンディング5000円
[メンバー]浅田信一(vo&g)/
古市コータロー(g)/高間有一(b)/
古沢“cozi”岳之(ds)
Music Club JANUS■06(6214)7255

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


【静岡公演】
チケット発売中 Pコード285-624
▼4月30日(土)18:00
Live House 浜松 窓枠
オールスタンディング5000円
[メンバー]浅田信一(vo&g)/
古市コータロー(g)/高間有一(b)/
古沢“cozi”岳之(ds)
Live House 浜松 窓枠■053(451)3035

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 
 
『Solo Acoustic Tour 2016
「always on your side~君に会いにいく」』

【福岡公演】
▼5月18日(水)sound Bar brick
【北海道公演】
Thank you, Sold Out!!
▼5月20日(金)円山夜想
【宮城公演】
▼5月22日(日)JAZZ ME BLUES noLa
【愛知公演】
▼5月25日(水)K・D Japon

Pick Up!!

【兵庫公演】

▼5月27日(金)神戸VARIT.

【東京公演】
Thank you, Sold Out!!
▼5月29日(日)Zher the ZOO YOYOGI


Comment!!

ぴあ関西版WEB音楽担当
奥“ボウイ”昌史からのオススメ!

「音楽業界には、ミュージシャン兼裏方や、元バンドマンのそれが結構多いんです。プレイヤーはもちろん、ライブハウスのブッカーしかり、レコード会社のディレクターしかり。でも、そんな裏方としての世界を生きながら、しぶとく曲を書き、ステージに立っている人が僕は大好きで。浅田さんは、SMILEの解散以降、プロデューサーとして知られることが多くなりました。それは、それだけの仕事をしてきたということでもあります。でも、浅田さんの曲を一度でも聴いたことがある人なら、浅田さんのライブを一度でも観たことがある人なら、絶対にこの日をずっと待っていたと思います。振り返れば学生時代、SMILEの2ndシングル『昨日の少年』(‘95)(なんちゅういい曲書くねん! 泣く)を聴いて、ハイトーンボーカル全盛の当時のシーンに、浅田さんの低音が利いたボーカルがとてつもなくカッコよく響いて。その詞曲を含めたソングライティング能力の高さと、ポップだけどどこか儚く、影のある感じ…オリジナルアルバムも全作持ってますが、もうね、“男の歌”なんですよね。そのときに僕は知ってしまった、この世には“歌うべき人”がいるんだって。一緒に仕事をするようになった今、そんな人が1曲でも多く曲を書き、1秒でも長くステージに立ちたくなるようなきっかけを、僕は作り続けたいと思いました。『Blue Moon Blue』を聴いて、この人が素晴らしい音楽家だと、改めて知ってしまったので」