ホーム > インタビュー&レポート > デビュー15周年! 新曲『東京紙芝居』も好評! キャリアと実力を兼ね備えた注目の演歌歌手、 竹島宏のこれまでの軌跡を辿るインタビュー
――まずは竹島さんと音楽との出会いをお聞きしたいのですが、物心ついた時からすでに演歌・歌謡曲に親しまれていたのでしょうか?
いえ、子供の頃に好きだったのは光GENJIさんですね。ローラースケートで走りながら歌う姿がかっこ良くて、僕も買ってもらって真似していました(笑)。演歌・歌謡曲に目覚めたのは小学5年生の時、曾祖母に連れて行ってもらった坂本冬美さんのコンサートがきっかけでした。コンサートというものを見たのも生まれて初めてだったんですけど、地元・福井のフェニックス・プラザで、2000人の観客を前に冬美さんがフルバンドの演奏で歌われて……すべてが衝撃的で、その日を境に「演歌歌手になりたい!」と思うようになりました。
――では、そこからは自分でいろいろな方の曲を聴いて。
そうですね。中学校に入った頃に香田 晋さんの『手酌酒』や山本譲二さんの『奥入瀬』のカセットテープを自分で買いに行ったことは今でも覚えています。
――演歌歌手になりたいという夢に対して周囲の反応はいかがでしたか。
両親は演歌にまったくなじみがないので驚いていましたが「学校の勉強はちゃんとやりなさいよ」という感じで(笑)。友人には歌手じゃなくて演歌歌手になりたいという話はずっとしていたので、僕の思いの激しさは伝わっていたと思います。
――演歌歌手になるための具体的な行動は何かされていたんですか?
高校生の時に『NHKのど自慢』に応募して、一度はハガキで落ち、二度目は歌いに行ったけど予選で落ちて。普通ならそこで諦めそうですよね。でも、当時の僕は、もう勉強が手につかないぐらい演歌歌手になることしか考えていなくて。とりあえず何かきっかけを掴もうと、まずは東京の大学への進学を決めました。両親や先生は4年の間に考えも変わると思って送り出してくれたけど、僕としてはこれ以上ないチャンスだと思って。
――上京してから歌手デビューに至るまでは、どのような過程で。
最初はボーカルスクールに通おうと思ったんですけど、しばらくは勉強の方で手がいっぱいでした。3年生の頃にはそれも落ち着き、そろそろ行動を起こさないとこのまま卒業してしまうと思い、あるカラオケ番組の予選会に参加しました。歌い終わって帰ろうと思っていたら、若い子が演歌を歌うのが珍しかったのでしょうか、見知らぬご婦人が声をかけてくださって。「どなたか作曲家の先生に習っているの?」と聞かれ、先生はいないですと応えたら、その方が主催するカラオケの審査会にお誘いをいただいたんです。そこで後にお世話になる作詞家の久仁京介先生と出会いました。
――ようやく演歌の世界と接点ができたんですね。
久仁先生が今の事務所の社長を紹介してくださってバイトとして使っていただき、大学4年生の時には事務所で「演歌がええじゃん」というテレビ番組を作るからアシスタントで出るか?と声がかかりました。2年後には『いいもんだ いいもんだ』という曲でデビューするのですが、この曲は番組中のおみやげ屋さんを回るコーナーで歌う用に作られたもの。手拍子も入った陽気な曲調で、今の僕しか知らない人が聴いたら、きっと驚かれるでしょうね。
――久仁先生からは歌の手ほどきも受けられたのですか。
番組の中で「せっかくだから歌ったら?」ということで懐メロや事務所の先輩の曲を歌う時間をいただき、その頃からレッスンを受けるようになりました。久仁先生はその昔、遠藤 実先生のもと歌手志望で修行されていたこともあり、言葉の伝え方以外にリズムの取り方についても重点的に教えてくださいました。ただ、当時の僕は今以上に未熟だったこともあり、頭では理解できてもなかなかそれを消化できなくて……。ずいぶんご苦労をかけてしまったかと思います。
――そんな時代を経て、今の竹島さんは演歌からムード歌謡、ポップス調のものまで、幅広い音楽性を展開されています。どのジャンルも違和感なく表現されているのが印象的です。
それは、自分では特に竹島 宏の色というものを定めず、スタッフがさまざまな方向性に導いてくれた結果だと思います。あと、演歌はもちろん大好きですが、僕の場合、物心ついた頃からどっぷりという環境ではなかったし、普段はジャズなどを聴いていることから、自分で歌う際に出てくる演歌のエキスがあまり濃くないんですよね。そういったことも関係していると思います。
――歌手としてのターニングポイントや自信がついたのはいつ頃からですか?
今年でデビュー15周年、振り返れば迷ったりふらつくこともあって、やめようとは思わないまでも「このままじゃ歌手を続けられないかも……」と悩んだことはありました。だから、本当にもう大丈夫だなと思えるようになったのは、ここ1、2年のことです。
――そんなご苦労があったんですね。では今後、挑戦したいことなどは?
曲に関してはこういうものを歌いたいと言ったことはないのですが、ライブに関してはやりたいことがたくさんあって、デビューから10年目まで、さまざまなことに挑戦させていただきました。今後も、そんなに奇抜なことは考えていませんが、昨年からやっているクラシックの方々とのコラボレーションを広げて、海外の方とも何か一緒に作ることができればと思っています。あとはアルバムの制作をさらに充実させたいですね。
――ここからは新曲『東京紙芝居』のお話を。今回も幸 耕平先生が作曲を手がけられていますね。
幸先生にはイケメン3(※竹島、北川大介、山内惠介の3人で結成されたユニット。2008~09年にかけて活動)の曲を作っていただいた時に初めてお会いし、僕個人では2010年の『この身を投げて』以来お世話になっています。作曲の際は僕がテレビで歌う姿を細かくチェックしながらイメージを描かれているとのことで、『東京紙芝居』やこれまでの作品も僕の声質や歌唱を隅々まで把握して作っていただいていると思います。
――今回は恋愛がテーマではなく、大舞台に立つことを夢見る青年の姿が描かれています。
初めて歌うタイプの主人公ですが、自分とオーバーラップする部分もあるなと感じます。それだけにこの曲は今まで僕が人前に出していない、どちらかといえば隠していた感情を使わないと歌えないと思いました。ただ、レコーディングでも試みたのですが、その歌い方だと若干の抵抗を感じてしまって……。どう表現するかすごく悩みましたが、全体のメリハリがはっきりしている曲なので最終的には言葉やメロディーの響きに乗せ、素直に歌うことで落ち着きました。
――曲調に関しても、これまでと比べて渋さが際立った作りになっていると感じます。
今回は、これまでの竹島 宏とはまったく違う姿を届けたいというプロデューサーの思いが込められていて、その中で渋いと感じられる声の使い方、歌いまわしが出てきたのかなと思います。ちなみにプロデューサーは、僕が“一人ミュージカル”をやるとしたら、そのテーマ曲になるようにということで、この曲のアイデアを固めていったそうです。
――主人公のパーソナリティーについては、どのように捉えていますか?
僕の中では、彼が目指している舞台は音楽関係ではなく、演劇方面、役者さんなのかなと想像しています。夢を抱きながらも今ひとつ掴みきれず、不安を……いや、まだそれ以前のどうしていいか分からない状況なのかなと。投げやりではないけど、踏ん切りの付けどころがわからないというか、大事な一歩を踏み出すことに躊躇しているんでしょうね。
――曲の聴かせどころや歌唱のポイントは?
歌いごたえのある、おいしいところが盛り沢山な1曲ですが、やはり一番はサビでしょうね。中盤まではゆったりと中低音や高音を使って柔らかく表現していますが、サビで一気に盛り上がり、畳み掛けるような攻めた歌いまわしになるんです。自分で歌う際も、ここはかなり意識しています。リズムの置き所も一つ場所が変わると全部がずれてしまうので、カラオケで歌っていただく際は、しっかり聴きこんでいただけたらと思います。
――お話も終盤ですが、ここからは昨今の若手演歌・歌謡歌手の皆さんの盛り上がりについて竹島さんのご意見を伺いたいと思います。まず、現在の状況については、どのようにご覧になっていますか?
歌手の層も厚くなり、それぞれの色を持った方々が出てきていることが嬉しいですね。若手の皆さんの動きがあることで演歌・歌謡界も活気づくし注目度も集まるので、この勢いが続いてくれることを願っています。
――イケメン3で活動されていた頃よりも、その実感は増していますか?
とにもかくにも歌手の数がすごく増えました。そして、ただ多いだけではなく強烈な個性や魅力を持った人がいることで、お客さまには「あの人もこの人もいいよね」と思っていただける。その空気感は大切ですね。この状態をさらに良く、音楽性も高めながら続けるには、自分本来の歌をどこまで磨いていくかが鍵になってくると思います。もちろん、それと同時にパフォーマンスの向上やお客様とのふれあいも重要です。ただ、活動の軸となる音楽でどれだけ勝負が出来るかで、今後の僕らの立ち位置は、いかようにも変わってくるでしょうね。この状況をもっと進めて若手歌手のみんながソロでライブが出来るようにしていくことが、まずは課題だと思います。
――竹島さんや同年代の方々は、年齢的にもキャリア的にも今、まさに先輩方からバトンを託されているという印象がありますね。
自分としては今後、CDを買ったり、ライブに来てくださるのが従来の歌謡曲ファンの方なのか、それともまったく違うところから興味を持ってくださった方なのかを意識すべきかと思っています。それを知ることが演歌・歌謡界の状況をさらに良くすることに繋がると思うので。こういうことを考えるようになったのは、自分が37歳になったからでしょうね(笑)。20代や10代の若手の方々は、目の前のことにひたすら取り組んで、今はそんなことを考える必要はないと思うし。最近、僕と同世代の人たちが頑張っていて、その姿にはすごく刺激を受けています。そんな状況こそが、まさに切磋琢磨なのかなと思います。
――最後に、ぴあ関西版WEBの読者にメッセージをお願いいたします。
今の僕の人生だけでは足りないぐらい、やりたいことはたくさんあるのですが(笑)、少しでも多くの方に歌声を届けられるよう頑張っていきたいと思います。そして、今年の夏からデビュー15周年に突入しますが、秋にはそれを記念して京都と東京でコンサートの開催を予定しています。ぜひ、遊びに来てください!
構成・取材・文/伊東孝晃(クエストルーム)
(2016年4月 1日更新)
『東京紙芝居』
発売中 ¥1204(税抜)
テイチク
TECA-13651
<収録曲>
01.東京紙芝居
02.あなたの唇
03.東京紙芝居 (オリジナルカラオケ)
04.東京紙芝居 (メロ入りカラオケ)
05.あなたの唇 (オリジナルカラオケ)
発売中
▼4月2日(土)13:0/17:00
エル大阪
前売-5000円
[出演]竹島宏/蒼彦太/天野涼
[ゲスト]成世昌平/キム・ランヒ/Kenjiro
[問]株式会社オフィスK[TEL]03-6416-8867(平日10:00~17:00)
発売中
▼6月5日(日)12:30/16:00
大丸心斎橋劇場
全席指定-5000円
[問]株式会社オフィスK[TEL]03-6416-8867(平日10:00~17:00)
▼9月24日(土)京都劇場
▼9月25日(日)グランシップ静岡
▼11月6日(日)さくらホール(渋谷)
全てのお問い合わせは:03-3460-7500(竹島宏ファンクラブ)平日10:00~17:00
たけしまひろし●1978年8月28日生まれ、福井県福井市。明治大学経営学部卒業。小学5年生の時、坂本冬美のコンサートを見て歌手を目指す。1996年、18歳で上京。直後のカラオケの審査会で、ゲスト審査員で来ていた作詩家の久仁京介にスカウトされ、現所属事務所のアルバイトを始める。2002年、シングル『いいもんだ いいもんだ』でデビュー。2008年12月、『NHK歌謡コンサート』の企画で北川大介、山内惠介と演歌歌手トリオ「イケメン3」を結成。2009年7月には「イケメン3」に黒川真一朗と松原健之を加えた演歌ユニット「五輪の華」を結成した。以降も精力的にリリースを重ね、活動中。デビュー15周年を迎える今年、秋には京都、東京でのコンサートも予定している。第55回日本レコード大賞 作曲家協会奨励賞受受賞。