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今年結成10周年を迎えるmouse on the keysの中心人物
川崎昭(ds)が再び絶頂期を迎えようとしているバンドの現在を語る!
ライブ会場限定盤『LIVE AT RED BULL STUDIOS TOKYO』
リリースツアー直前インタビュー!!

 2006年に元nine days wonderの川崎昭を中心に結成されたmouse on the keysが今年結成10周年を迎える。昨年、6年ぶりにリリースされた2ndフルアルバムは、バンド結成以来初めて川崎以外のメンバーや外部のクリエイターも作曲に携わり、複雑なアンサンブルで構築されながらも随所に挿入されたハッとするほどキャッチーなフレーズが印象的な、外に開けた作品に仕上がった。そして、ハードコア出身ながらも、ポストロックやジャズなど様々な音楽をきっちり消化し、ロックバンドとしてはもちろんのこと、インストバンドとしても世界レベルで他の追随を許さない孤高の存在へと登り詰めた。  3月にはライブ会場限定のライブレコーディング盤のリリースや世界各地でのライブを控えるなど、かつてないほどに精力的に動き回る彼ら。今、再び絶頂期を迎えようとしているバンドの現在地を、川崎に訊いた。



 

mouse on the keysは今までの自分に対する皮肉


――mouse on the keysってすごくストイックなイメージがあったんですけど、川崎さんは、日本のインディロック界きってのハイテンション男でもあるCOMEBACK MY DAUGHTERSのCHUN2と仲が良いって話を聞いて、その意外さに驚きました。

「前にやってたバンドからの付き合いなんで、かれこれ17年ぐらいになるのかな。CHUN2はあれだけポップな人なので、僕もたまに動揺しますけどね」

――でも、CHUN2のあのテンションに乗っかっていけるっていうのはなかなかだと思いますよ。

「実はそっちのノリも僕にはあるんですよね。mouse on the keysで出してるイメージとは違うと思いますけど。後CHUN2はああ見えて実は影があったりするのでその振り幅にシンパシーを感じます(笑)」

――自分の中にあるユーモアを音楽に反映させる人たちもいますけど、川崎さんはそういうタイプではないんですか?

「僕からするとmouse on the keysもユーモアだと思ってるんですよ。というのは、元々僕はコミカルでおちゃらけていて、あまり格好つけるのが好きじゃなかった。つまり、今は格好つけてるってことなんですけど(笑)。それまでの自分っていうのは、パリッとしたスーツを着てピアノを弾いたりするようなイメージとは真逆な人間で、酔っ払って植木に突っ込んだりするようなタイプだったんですよ。音楽に関しても、mouse on the keysやその前にやっていたバンドをやる前は照れからくるおちゃらけみたいな傾向があったんですけど、社会に出て揉まれてみたところ、これまでは若気の至りでやってたなっていうことに気付くわけです。それで、今までの固定観念を捨てて違う見方で音楽をやれないかと思い、その結果、シリアスな感じのバンドをやることにしたんです(笑)。だからある意味、mouse on the keysは今までの自分に対する皮肉なんですよ」

――それは面白いですね! ところで、今年で結成10周年ですが、これまでの活動を振り返ってみていかがですか? 数年前には隠れ脳梗塞を患ったり、決して順風満帆ではなかったと思うんですが。

「隠れ脳梗塞になるまでは、mouse on the keysと前のバンドも含めてかなりハードに活動してたし、私生活でも工事現場の解体現場などで働いたり寝ずに練習もしてたので、無理が祟ったんでしょうね。それで、隠れ脳梗塞が発見されてから方向を変えていこうとした結果、結成から10年が経った今、いい意味で初期の雰囲気に戻ってきた感じはありますね。創作意欲が高まりつつあるというか。去年アルバムを出したばかりなんですけど、ライブレコーディングしたCDを3月に物販限定でリリースするんですよ。そこには新曲も1曲入れるし、今年はガンガン曲を作って、また何かしらの形で音源を出したいですね」

――これまでの活動のペースを考えるとかなり活発ですね。

「そうですね。でも、去年アルバムを作った時まではかなり苦労したんですよ。2ndフルアルバムっていうことで内容にパンチを持たせたくて、バンド立ち上げ当初のモチベーションと同じぐらいの気持ちで挑もうと決めたんです。それで、悔いのないように、完全に納得できるようなイメージで曲を作りたいと思って始めたんですけど、けっこう大変で1曲作るのに1年ぐらいかかっちゃって……今までは自分で全部コントロールしてやることがいいと思ってほぼ全ての曲を僕が作ってたんですけど、ここ5年はスランプで、音楽を作ることだけに没頭できなくなっちゃったんですよ。それで、もうちょっと高いレベルで何か出来ないかと考えた末に、読書ばかりして、哲学とかに興味が高まりまして。その結果、現状を打破する為に、制作する上での考え方を変えてみようと思ったんです。普通に自分だけで曲を作ると大体どんなモノになるのか予想がついちゃうんで、自分以外の人に作曲を委ねるというアイデアに行き着いたんです。そんな流れで、9年目にしてようやく自分以外のバンドメンバーが率先して曲を作るようになって来たりとか。」

――川崎さんが教えている専門学校の生徒にも曲を発注したそうですね。

「そう、メンバーが曲を作ることにプラスして、何かあり得ないことはないかと。思いもよらないことが起きるような方法はないかと。それで、自分のコントロールが効かないところにお願いしてみたら何が出てくるかなと思って、20人ぐらいの生徒に“採用するから”ってコンペを開いて一人選んだんですよ。こういうことはシンガーソングライターとかアイドルならともかく、バンドではまずやらないですよね」

――クリエイターとしての懐の深さを感じます。これまではデモから自分一人で作っていたのに、メンバーはおろかバンド外の人間にまで制作を委ねられるようになったっていうのはかなりすごいです。

「この10年で違う回路が発達したんでしょうね」

――結果としてはとても良い作品になったと思います。一聴すると難解なんですけど、聴きこんでみると決してそんなことはなく、不意に印象的なフレーズが耳に飛び込んできたり、そのへんがちょっと坂本龍一っぽいというか。

「坂本龍一さんもキャッチーさと実験的なものを混ぜてアルバムを出されてるので、そこは影響を受けてますね。キャッチーさと実験性という点で、他には大友克洋さんからも多くを学びました。新しい手法や面白い考え方でそれまでの価値観を更新するような格好良さが彼らにはあるので、僕もハードコアとかライブハウスの文脈で音楽をやってますけど、このフィールドで何か新しいことができないかと考えた結果こうなってる気はします」




自分たちが作っているものの魅力の純度を深めて、その良さを知ってもらいたい


――なるほど。だからこそ、mouse on the keysの音楽は他にはない独特なものになってるんですね。ちなみに、先ほどの話にも出た3月にリリースされるライブレコーディング盤ですが、制作に至った経緯をもうちょっと詳しく聞かせてください。

「2016年は活動を盛んにしたかったので、早速何か音源出せないかなぁと。さらにRed Bull Studios Tokyoさんからのサポートもあり、バンド史上初のライブアルバムを制作することになったわけです。9年近くライブでやってる曲とか、今や音源で表現できてない雰囲気のタッチになってたりするんで、それを一度録ってみたくなったのもありますね。この音源は3月5日(土)愛知から始まる国内4ヶ所ツアーから会場限定販売されます。ぜひみなさんライブに来て手に取って欲しいですね。なおCDは無くなり次第廃盤になります」

――今回は結成10周年記念ライブ的な意味合いもあるんですか?

「初ライブは10年前の10月28日なので、そのあたりに何かやろうかなと。それに向けてライブの切れ味を高めつつ、新曲を増やして音源も出そうかと思ってます」

――今のモードだと、11年目以降の活動にも期待が持てますね。

「今までは間が空いたり、自分の中で変化があったり、なかなか今みたいにいろんなことを進められなかったんですけど、この10年目を機にコンスタントにできたらなと思いますね。ようやくそういう余裕が出てきたのかもしれないです。今はなんとか体調も維持して健康体でやれてるし、そのことに感謝してしっかりやらなきゃなって。今後は、これまでの型をキープしながらも新しい試みやもっと独自性を生み出せるような気がしてきてるので、ライブの機会をいっぱい設けて、その中でどんどん進化していくような状態を着実に作りたいなと。これからは音楽的にもっともっと独自性にフォーカスしていくので、お客さんが減る可能性はあると思うんですよ……今、初めて話すんですけど、最近、1,000人よりも500人のお客さんが入ればいいかなと思っていて」

――それはどういうことですか?

「自分がやりたい音楽性や表現だと、O-EASTクラスでたくさんお客さんが入るより、UNITクラスをコンスタントに埋められるぐらいが理想かなと。1,000人以上になってくると音楽以外の要素がもっと必要になってくる恐れがある。僕は、販売促進のために音楽を変えたくない」

――自分たちだけでライブを完結させたいと。

「自分たちが作っているものの魅力の純度を深めて、その良さを知ってもらいたい。世界の主要都市どこへ行っても毎年このぐらいの数を入れられるようなバンドになりたい。これは決してネガティブな意味ではないし、もちろんそれ以上の人が来てくれるようになってもいいんですけど、あくまでもこのスタンスで増えることが大事だと思ってます」

 

text by 阿刀大志




(2016年3月 1日更新)


Check

Release

初のスタジオライブ盤は
新曲を含む全10曲!!

Album
『LIVE AT RED BULL STUDIOS TOKYO』
3月5日(土)発売 2000円(税込)
※ライブ会場限定発売
※音源の在庫が無くなり次第SOLD OUTとさせていただきます。

<収録曲>
01.completed nihilism
02.spectres de mouse
03.aom
04.reflexion
05.the arctic fox
06.saigo no bansan
07.ouroboros
08.leviathan
09.soil
10.untitled

昨年7月にリリースされた約6年振りの
アルバムはレッドブルスタジオ東京
でのレコーディング作品

Album
『the flowers of romance』
発売中 2484円(税込)
MULE MUSIQ
MMD-52

<収録曲>
01. I Shut My Eyes in Order to See
02. Leviathan
03. Reflexion
04. Obsession
05. The Lonely Crowd
06. Mirror of Nature
07. Hilbert Dub
08. Dance of Life
09. The Flowers of Romance
10. Le Gibet

Profile

マウス・オン・ザ・キーズ…日本におけるポストハードコア/ポストロックシーンのパイオニアバンドのひとつであるnine days wonderの元メンバーであった川崎昭(ds/p)と清田敦(p/key)により2006年結成。2007年日本のインスト・ポストロックの雄toeの主宰するMachupicchu Industriasより1stミニアルバム『sezession』をリリース。この頃、新メンバーとして新留大介(p/key)が加入し現在のトリオ編成が形成される。2009年、1stフルアルバム『an anxious object』をリリース。同年9月に渋谷O-eastにて行われたリリースツアーファイナルはソールドアウト。以降、朝霧jamやkaikoo,Taicoclubなどの野外フェスティバルに多数出演するようになる。
 2010年3月『sezession』と『an anxious object』を海外リリース。それに伴いEU圏を中心にtourを行う。延べ10,000人を動員し好評を博す。2011年3月に行われた3rd EU tourの模様を収めた初のDVD作品『irreversible』を同年9月にリリース。また、このツアーの際に見舞われた東日本大震災を受け、mouse on the keys×灰汁による完全一発録りのライヴ・セッション4曲を音源化し、ネット配信限定リリース。被災された方たちに一部手数料を除いた全額を義援金として寄付を行う。
 2012年7月にnew ep『machinic phylum』をリリース。JT缶コーヒー『Roots AROMA BOTTLE』CM曲やUSアンダーグラウンド・ハウス・シーンを牽引する存在Levon Vincentとのコラボレーション曲『memory』など全4曲収録。リリースツアーに伴い、その活動圏をアジアへと広げ、台湾・香港・マニラ・クアラルンプール・シンガポールでのライブは各地で反響を呼んだ。2013年5月にはカナダツアーを行い、6月新興のアナログ専門レーベルRetalkより、第1段リリースとして『mouse on the keys REMIXES』発表。kuniyuki/Calmによるremixが収録された。
 2014年7月ブラジルでの単発公演を大盛況のもとに成功させ、2015年7月、待望の2nd full album『the flowers of romance』がMule Musiqよりリリースされた。Jojo Mayer率いるNerveや、Moritz von Oswald Trioのメンバーとしても知られるVladislav Delayとの共演を果たすなど、多岐に渡るその活動範囲は国境を越えた広がりを魅せている。

mouse on the keys オフィシャルサイト
http://mouseonthekeys.net/

Live

スタジオライブ盤を引っさげての
リリースツアーは全国4公演

”LIVE AT RED BULL STUDIOS TOKYO” RELEASE TOUR

【愛知公演】
チケット発売中 Pコード285-861
▼3月5日(土)18:30
Live&Lounge Vio
スタンディング3000円
[ゲスト]BLACK GANION
ジェイルハウス■052(936)6041

【東京公演】
チケット発売中 Pコード285-843
▼3月6日(日)19:00
UNIT
スタンディング3000円
[ゲスト]LITE
スマッシュ■03(3444)6751

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード285-405
Shangri-La
スタンディング3000円
[ゲスト]LOSTAGE
SMASH WEST■06(6535)5569

【広島公演】
POPLIFE PRESENTS RADIO WAVE VOL.97

チケット発売中 Pコード286-998
▼3月12日(土)19:00
JOHN Burger&Cafe
スタンディング3000円
[共演]DJ POPLIFE CREW
[ゲスト]shuly to 104kz
JOHN Burger&Cafe■0848(25)2688

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