「いろんなことに落とし前をつけて、より前に進むべき時期が来た」 結成20周年ベスト『SKA BRAVO』と復活後の最高傑作『F』携え レジェンド集うスカパンク頂上決戦を皮切りにツアーが開幕! KEMURI伊藤ふみお(vo)インタビュー
日本のスカパンクシーンを代表する存在として、今年で結成20周年の節目を迎えたKEMURI。『AIR JAM 2012』での復活以降、単なる期間限定の再結成ではないスタンスで精力的なライブ活動と作品リリースを続けてきた彼らだが、アニバーサリーイヤーを迎えて2枚のアルバムを立て続けにリリース。初期の代表曲の現メンバーで新緑した8曲を含むベスト盤『SKA BRAVO』、そして復活後の最高傑作と呼べる『F』は、いずれも現在の彼らの充実ぶりを伝える会心の仕上がりとなっている。新たな黄金期を迎えつつあると言ってもいいバンドの今を伝える2作について、伊藤ふみお(vo)に話を聞いた。
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やっぱり人が変われば音楽も変わる
――前作『RAMPANT』(‘14)から1年足らずでのニューアルバム『F』ですが、その間にもバンドがライブを続けながらより強靭にパワーと切れ味を増してきたことが、ありありと伝わってくる会心作になっていますね。
「前作も1年足らずでのリリースでしたけど、今回は『RAMPANT』のツアーが半年くらいと長くて。それが終わって1ヵ月くらいで米国に行って録音を始めていたんですけど、ライブモードのまま録音に入れたことで、アルバムに対してすごくフレッシュな気持ちで臨めたところがありましたね」
――長期にわたったツアーは手応えも大きかったですか?
「やっぱりミュージシャンとしては、毎回違うお客さんの前でライブとして数をこなすことが出来るのは、いくつになっても成長するもんだなと学べましたね。KEMURIは進むべき道に進めているんじゃないかと思っているんですけど、今回『SKA BRAVO』と『F』を作れたことで、改めて手応えを感じることが出来ました」
――今回の2枚は、近年ずっとサポートを務めてきたトランペットの河村光博さんとトロンボーンの須賀裕之さんも加わって、ライブと同じベストメンバーで録音されたことも大きいと思いますが。
「このライブメンバーでは解散前からやってきたんですけど、いろんな事情があって須賀裕之にホーンアレンジも含めてレコーディングで参加してもらえたのは今回が初めてで。やっぱり人が変われば音楽も変わるのは当然のことで、よりシンプルで今のKEMURIに近い形で録音が出来たのがよかったと思います」
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思考停止して自分たちのルーティンの中だけで生きようとする社会に対して
“Fuck You!”とちゃんと言う気持ち
――『F』というアルバムタイトルは、’03年にツアー移動中の事故で亡くなったトランぺットの森村亮介さん作のインスト曲『Song For My “F”』から取られたとのことですが、その意味やアルバムのテーマを聞かせてください。
「森村亮介が亡くなってから、今年で13回忌なんですよ。個人的にもバンド的にも、いろんなことに落とし前をつけて、より前に進むべき時期が来たのかなと感じているし、バンドを結成してから20周年、再結成してから3年でもある節目に、森村亮介に対してこうしてしっかりやっているという気持ちも含めて『F』にしましたね。当時に森村亮介が言っていた“FamilyとかFriendとか。そういう大切なもののFなんです”という意味は当然のこと、これからに向かってという意味でのFutureや、牙(Fung)や、思考停止して自分たちのルーティンの中だけで生きようとする社会に対して、“Fuck You!”とちゃんと言う気持ちも忘れずにやっていこう、という意味での『F』です」
――ライブを経てよりタフさを増したサウンドはもちろんのこと、伊藤さんの歌と歌詞もまた聴き手に刺さる強さを増してきた気がしました。
「今回は『SKA BRAVO』を録ってから『F』をレコーディングしたんですよね。1stや2ndアルバムのときに自分が書いた言葉とか歌い方を聴き直してみると、やっぱりすごく心に響くものがあって。『F』の歌詞は、もっと思っていることが剝き出しで、今の年齢なりのことを自然な形で書けないかと、最後の最後まで精査した感じですかね。だから、久しぶりに今思っていることを剝き出しにして歌った歌詞になっていると思います」
――『SKA BRAVO』で初期の曲と改めて向き合ったことが、『F』にもかなり好作用を及ぼしていたんですね。
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「1stや2ndの曲を歌い直してみて、何かいろいろ思い出したんですよね。例えば、1stアルバムの『New Generation』という曲が『SKA BRAVO』にも入っていますけど、当時は誰に期待されたり求められていたわけでもないし、ただ言いたいこととカッコいいと思う音楽があって、それをやっただけだったから。今は全てが変わって、そのときには全く持っていなかったものをたくさん手にしているような状況ではあるけれど、20年前と何ら変わらないのは、何か言いたいことがあるから音楽をやっているということ。あとは、曲を作ったらそれを1人でも多くの人に聴いてもらいたいという気持ちも当時と変わっていないので、ヘンにベテランぶったりしないで、もっとさらけ出していきたいという心境になれたんですよね」
――20年やってきたキャリアと深みがある一方で、『F』からは初期に通じるような熱さやイイ意味での“青さ”まで感じさせるというか。その両方を同居させることは、どんなバンドでもなかなか出来ることではないなと。
「やっぱり何で今音楽をやっているのかと考えると、もちろん仕事としてもなんだけど、職業意識みたいなものだけだと、いくら頑張ってもやっぱり作れないんですよね。仕事としてもある程度までは頑張れるんだけど、1人の作り手/発信側として考えると、作る根源として大きな力になっているのは、仰ったような“青さ”とか、素直に音楽への愛みたいなところで。『SKA BRAVO』を作って歌いながら、それを考えさせられたんですよね。それが今回のレコーディングで一番大きかったと思う。誰しもが(キャリアを重ねる中で)ちょっと分からなくなってしまうことなのかもしれないけれど、こういう感覚は少し漠然としていたな、と改めて気付かされましたね」
――『SKA BRAVO』を経たからこそ、『F』でより高いところへ到達出来たと。
「そうですね。で、結果として『F』は、今までで一番メンバー1人1人の個性がより自然な形で楽曲になって、アルバムとして存在出来ている印象があるんですよね。結成20年目にしてコレが出来たのは、自分にとってもすごく意味がある。何か“音楽している”感覚があるというか。やれパンクだ、スカパンクだというポーズだけではなくて、もうちょっと深いところで(音楽が)出来ている気がします」
ブームとして聴いていた人たちにも
スカパンクの楽しさをもう一度感じてもらいたい
――そんな結成20周年にふさわしい2枚のアルバムを完成させ、いよいよ新たなツアーがスタートします。まず、9月25日(金)には、なんばHatchにてREEL BIG FISH、LESS THAN JAKE、SKANKIN' PICKLEというシーンを牽引してきた大物たちを米国から迎え、スカパンク頂上決戦的な組み合わせが実現します。
「やっぱりスカパンク大好きで結成した頃から聴いていたバンドだし、今もやっているので日本に呼んで一緒にやりたいなと。ブームとして聴いていた人たちにもスカパンクの楽しさをもう一度感じてもらいたいし、初めて聴く人たちにも実際にライブ会場で聴いてもらえればなと。SKANKIN' PICKLEは再結成ですけど、20年以上ずっとスカパンクをやり続けている人たちの凄みも感じてもらえれば」
――そして、10月からは来年1月まで続く全国ツアーがスタートします。
「再結成から3年間続けてきて、この歳になってもこれだけ力を傾けて、言い訳ナシでスカパンクをずっとやっていくことに対して、メンバーも腹を括れたところがあるので。それがお客さんにも、イイ形で“信頼”として感じ取ってもらえるライブになればいいなと思っていますね」
ライター吉本秀純さんからのオススメ!
「再結成するならば1回限りや期間限定などではなくキッチリと活動を続けるものに、と腹を括っての再始動。バンドやファンに対してどこまでも律儀にスジを通したスタンスについては前回 語ってもらったが、最新アルバム『F』は完全にそれを音そのもので証明したかのような強靭なグルーヴに満ちた作品となっていた。結成20周年のキャリアを誇るバンドならではの説得力や懐の広さと、復活から3年を経て着実に増してきた勢いやソリッドさ。それを両立させている今のKEMURIの充実ぶりを、ライブで確かめてみてください」
(2015年9月23日更新)
Check
Release
新録含む20周年オールタイムベストに 9ヵ月のインターバルで最新作も!
Best Album 『SKA BRAVO』 【CD+DVD】 発売中 4200円(税別) ONECIRCLE CTCD-20023/B 【CD】 発売中 2500円(税別) ONECIRCLE CTCD-20024 <収録曲> 01. New Generation(※) 02. Prayer(※) 03. I am proud 04. Standing in the rain 05. 白いばら(※) 06. ima-sorewo-hikarini-kaete-susume! 07. Ohichyo(※) 08. Mr. SMILING 09. Slow Lights(※) 10. SUNNY SIDE UP! 11. Ve-Ri-Ha 12. Ato-Ichinen(※) 13. PMA (Positive Mental Attitude)(※) 14. Along the longest way...(※) (※)…新録 <DVD収録内容> ・『PMA (Positive Mental Attitude)』 Music Video [New Version] ・2015年4月、17年ぶりに実施したKEMURI USツアー・ドキュメンタリー映像
Album 『F』 【CD+DVD】 発売中 4200円(税別) ONECIRCLE CTCD-20025/B <収録曲> 01. VEGA 02. WIND MILL 03. O-zora 04. creed 05. RAG 06. HATE 07. LADYBUG 08. somebody 09. Aye! Aye! 10. FLY 11. FAITH 12. We want to know! 13. PAIN <DVD収録内容> 01. 『O-zora』 Music Video 02. TOUR 2015 RAMPANT 2015 -LIVE AT STUDIO COAST 2015.02.28 【通常版】 発売中 2500円(税別) ONECIRCLE CTCD-20026
Profile
ケムリ…写真左より、河村光博(サポートtp)、津田紀昭(b)、須賀裕之(サポートtb)、伊藤ふみお(vo)、平谷圧至(ds)、田中“T”幸彦(g)、コバヤシケン(sax)。‘95年結成。‘97年に初のアルバム『Little Playmate』、翌年にはゴールドディスクも獲得した『77days』を発表し、一気に日本のスカパンクをリードする存在へと登り詰めた。‘03年にはツアー移動中の事故で長期の活動休止を余儀なくされるも、常に試練を乗り越えて復活を遂げながら、‘07年12月に解散。‘12年9月に宮城県で『AIR JAM 2012』を開催したHi-STANDARDの呼びかけに応え、再び復活を遂げた。今年6月17日にベストアルバム『SKA BRAVO』、7月15日に11thアルバム『F』をリリースした。KEMURI オフィシャルサイト https://kemuri.com/
Live
海外より大物招聘の東名阪に続き 来年1月まで続くツアーがスタート!
『KEMURI 20th Anniversary Japan Tour “SKA BRAVO”』
Pick Up!!
【大阪公演】
チケット発売中 Pコード256-212 ▼9月25日(金)18:00 なんばHatch 1Fスタンディング6000円 2F指定席6000円 [ゲスト]REEL BIG FISH/ LESS THAN JAKE/SKANKIN’PICKLE SMASH WEST■06(6535)5569 ※未就学児童は入場不可。 小学生以上は有料。
チケットの購入はコチラ!
【愛知公演】 ▼9月26日(土)ダイアモンドホール
【東京公演】 ▼9月27日(日)STUDIO COAST
『KEMURI 20th Anniversary Tour 2015「F」』 【北海道公演】 ▼10月4日(日)Zepp Sapporo
Pick Up!!
【神戸/京都公演】
Thank you, Sold Out!! ▼10月10日(土)18:00 神戸VARIT.Thank you, Sold Out!! ▼10月11日(日)18:00 KYOTO MUSE スタンディング4000円 SMASH WEST■06(6535)5569 ※小学生以下は保護者同伴に限り無料。
【千葉公演】 Thank you, Sold Out!! ▼10月16日(金)千葉LOOK【埼玉公演】 ▼10月17日(土)HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1Thank you, Sold Out!! ▼10月18日(日)HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3【茨城公演】 ▼10月22日(木)水戸ライトハウス【栃木公演】 ▼10月23日(金)HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2【千葉公演】 ▼10月24日(土)柏PALOOZA【長野公演】 ▼10月31日(土)松本Sound Hall a.C【石川公演】 ▼11月1日(日)金沢EIGHT HALL【新潟公演】 ▼11月3日(火・祝)NIIGATA LOTS【神奈川公演】 ▼11月7日(土)横浜ベイホール【静岡公演】 ▼11月8日(日)Live House 浜松 窓枠【宮城公演】 ▼12月5日(土)仙台Rensa【岩手公演】 ▼12月6日(日)club change WAVE【長崎公演】 ▼12月12日(土)DRUM Be-7【福岡公演】 ▼12月13日(日)DRUM LOGOS 【広島公演】 ▼12月19日(土)広島クラブクアトロ【香川公演】 ▼12月20日(日)DIME
Column
今のメンバーと1曲でも多く 1分でも長く音楽を続けたい 結成20周年イヤーKEMURIが 充実作『RAMPANT』を語る 前回インタビュー&動画コメント