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『心理の森』のパワープレイで話題を呼んだ
神戸発、驚異の17歳。現役高校3年生のポップ・マエストロが
ルーツに現在、戸惑いも未来も語る
シンリズム『NEW RHYTHM』インタビュー

 高校1年生のときにWEB上のSoundCloudで公開された音源が話題になっていた神戸在住のシンリズムが、遂に1stアルバム『NEW RHYTHM』をリリースした。高校2年生でレコーディング、3年生でリリースという時間軸自体も驚きだが、何よりもすごいのは『NEW RHYTHM』のクオリティの高さである。初アルバムのインタビューということで敢えて小難しい音楽談義ではなく、シンリズム少年がどのように音楽に目覚めていったかを、丁寧に聞いてみた。

 
 
今まではだいたい何をやっても三日坊主で終わってたんですけど
ベースは1ヵ月続きましたね
 
 
――まずは、ルーツミュージックからお聞きしたいなと。
 
「自分から聴いてみたいと思ったのは『イッツ・ア・スモールワールド』とか、ディズニーランドのサントラですね。あとは、サンボマスターですかね。『青春狂騒曲』(‘04)だったと思うんですけど、サンボってガーッと勢いでいくイメージがあるのですが、テクニック的にすごく難しかったり。レコード屋さんに行って初めて試聴したのは、お父さんに教えてもらったスタイル・カウンシルの『Shout To The Top』(‘85)ですね」
 
――渋いですね~。いわゆる、楽器を始めたのはいつ?
 
「中1くらいでベースを始めました。吹奏楽部でトロンボーンを吹いていて、中3のときにはパーカッションも叩けるようになってましたね。ベースはお父さんに須磨のBOOK OFFで買ってもらって(笑)、アズテック・カメラやアークティック・モンキーズやビートルズをカバーしていました。今までは何をしても三日坊主で終わってたんですけど、ベースは1ヵ月続きましたね。その後、フェンダーのベースをりんくうのアウトレットで買ってもらいました(笑)」
 
――そんなに三日坊主だったんですか? 今までは何にハマッたりしました?
 
「元々ゲームが好きで、友達にマリオカートをやらせてもらってハマッたり。テニスのゲームをやるようになってから実際にテニスを始めたんですが、それもすぐ辞めましたね。ゲームだと何でも出来る気になるんですが、元々球技は苦手だったので(笑)」
 
――楽器には違う手応えがあった?
 
「まぁ元々“趣味はこれ!”というものがないタイプで、楽器も何となく始めましたけど、“これだ!”というのはあったかもですね。友達でドラムが叩ける子がいたんですが、そのお父さんがニルヴァーナやメタリカが好きで、一緒にスミスのカバーをやっていたときに“おもしろくない…”と言われましたけど(笑)」
 
 
すごく早く物事が進んで、驚いています
 
 
――曲を書き始めたのは、いつになるんですか?
 
「ベースをやり始めた半年後にはギターを弾いていましたし、曲を作り始めたのは中3ですね。お父さんが電子ドラムを買ったりもしていましたし」
 
――お父さんはなかなか積極的ですね(笑)。音楽が好きなんですね。
 
「はい(笑)。YMOやクラフトワークやDEVOが好きというのは他の取材でも言っているんですが、“イレイジャーが一番好きだ!”と言っといて欲しいと言われています(笑)」
 
――曲作りはお父さんの先導もあったのですか?
 
「“曲を作ったら?”とは言われましたね。お父さんにパターンを教えてもらいながら何となく作っていて、高1のときにはアルバムが出来るくらいは曲がありましたね。それをCD-Rに焼いたものをタワーレコードやヴィレッジヴァンガードに持って行ったら、置いてくれるもんだと思っていました。でも、そんなことはなくて(笑)。その幻の音源は、三宮の島村楽器だけが5枚置いてくれましたね。あとは、お父さんの知り合いの店とか。そこからはすごく早く物事が進んで、驚いています。地元のタワーに挨拶回りに行ったのも違和感があって、“こないだ、ここでブラーを買ったばかりなのに…”って思いました(笑)」
 
――(笑)。曲はどんな流れで作るんですか?
 
「いろんな曲を聴いて、“こんな感じでやりたいな”と思いながら、浮かんできたイメージやアイディア通り何となく進むというか。レコーディングは僕が土日しか無理で、その上で東京でだったので、去年の冬休みも入れて6ヵ月くらいかかりました。今回は今までに作った曲がほとんどなんで、新曲が中心になる次の作品が今回を超えられるかは不安ですね。でも、そのデモを聴いたお父さんは“超えるぞ!”と言ってくれているので、自信を貰っています(笑)」
 
――今作をご自身で振り返ってみて、いかがですか?
 
「コード進行がベタだったり、構成が唐突だったり、もうちょっと展開を足せたかなとか、いろいろと思います。コード進行を知らずに、たまたま出来たメロディもありましたし。お父さんには“考え過ぎない方がいい”と言われてますけど、意見が全く合わないときもあります(笑)。でも、『心理の森』(M-1)には王道の直球感がありますね」
 



――ほぼ宅録で作っていた曲を、プロのミュージシャンと一緒に作り上げていく作業は、いかがでしたか?
 
「NONA REEVESが好きだったので、小松シゲル(ds)さんが普通にスタジオにいてビックリしましたね。ドラムも自分で叩けないようなリズムは簡単にしていたのが、小松さんのプレイを聴くと全然違いました。あと、元々自分にベースのテクニックがあるとは思っていませんでしたが、改めてプロとして求められているレベルに対して、自分がまだまだだなとは思いましたね。鍵盤でプロデューサーの高野勲さんもいろいろと新しいアイデアを入れてくれましたし、アレンジの幅が広がりました」
 
 
人の意見もどんどん取り入れていきたい
 
 
――そのレコーディングのメンツも加わってのライブも、本当に楽しみです。
 
「今までのライブはほとんど弾き語りで、バンド編成でのライブは1回だけしかしたことがなかったんです。ただ、今回のメンバーがみんなすご過ぎて、自分が一番出来ていませんから(苦笑)。でも、ライブは本当に楽しみです。弾き語りだと妥協してしまうところも、バンドだと完全に再現出来ますから」
 
――さっき軽く話にも出ましたが、次のアルバムも気になりますね。
 
「ジャンルもいろいろなものに挑戦したいですし、単純にウッドベースにも挑戦したいですし、楽譜読みもちゃんとは出来ないので、いろいろと学びたいですね。スウェーデン・ロックの要素を入れたりもしたいですし」
 
――1stを作ったことで、考え方や捉え方も変わってきたかもしれませんね。
 
「最初は、ほぼほぼ自分がやりたいことをやっていましたが、最近は聴いてくれる人がいることが分かってきたので、その人たちをイメージして考えていますね。人の意見もどんどん取り入れていきたいです。今回の半年のレコーディングでも、高野さんから理論をいろいろと教えてもらったので、これからも把握していきたいですね。音楽を知っている人と喋るのは元々大好きで、その上でプレイヤーの視点から教えてもらえるのは大きいです。今回のアルバムを出したことで、自分の声にも自信を持ててよかったなと。前は他にボーカリストがいたら、その人に歌ってもらってもいいとさえ思ってましたから」
 
――歌い手としての魅力もすごく感じているので、ライブも、次のアルバムも本当に楽しみにしています。
 
「ありがとうございます、楽しかったです!」
 
 
Text by 鈴木淳史
 




(2015年7月31日更新)


Check

Release

末恐ろしい才気溢れたポップアルバム
アナログ盤でも間もなくリリース!

Album
『NEW RHYTHM』
発売中 2700円
ANO(t)RAKS
XQFQ-1501

<収録曲>
01. 心理の森
02. superfine
03. 放人主義
04. 手のなる方へ
05. 喫茶aori
06. カクテルの歌
07. 処方箋
08. きっとなるだろう
09. 夢見るふたり
10. Beautiful Sunday Morning

Analog
『NEW RHYTHM』
8月5日(水)発売
3500円
ANO(t)RAKS
FMER-1501

<SIDE A収録曲>
01. 心理の森
02. superfine
03. 放人主義
04. 手のなる方へ
05. 喫茶aori

<SIDE B収録曲>
06. カクテルの歌
07. 処方箋
08. きっとなるだろう
09. 夢見るふたり
10. Beautiful Sunday Morning
 

Profile

シンリズム…’97年7月17日生まれ、神戸在住の高校3年生。作詞・作曲・編曲はもちろん、vo、g、b、key、ds、syn、tb、プログラミングまでを1人でこなすマルチプレーヤーにしてシンガーソングライター。高校1年生のときに中学時代から作りためた楽曲をSoundCloudに公開。その音源がネット上で話題を呼び、耳の早いリスナーやアーティストの間で“天才現る”と、話題騒然となり、現在の制作チームと出会う。ニューウェイヴやインディロック、ルーツロック、ソウル、ファンク、R&Bにポップスまで、時代も国境も越えた様々な音楽のエッセンスを吸収した上で生み出される楽曲・サウンドは、10代ならではの自由な感性と10代とは思えない洗練された完成度が同居し、新世代のポップ・マエストロとして注目を集めている。今年4月18日のREDORD STORE DAYに7inchアナログEP『心理の森』をリリース。5月にはFM802、cross fmをはじめ、全国各地のFM・AMラジオ局で最多となる33局のパワープレイに選出される。そして、同20日には高校2年生の夏から約半年にわたり制作していた1stアルバム『NEW RHYTHM』をリリース。7月からはクラブクアトロを含むワンマンツアーを東京・名古屋・大阪・福岡で開催。

シンリズム オフィシャルサイト
http://shinrizumu.com/


Live

充実のリリースツアーを終えれば
『OTODAMA'15~音泉魂』に出演!

 
『シンリズム1st TOUR「NEW RHYTHM」』
Thank you, Sold Out!!
▼7月31日(金)19:00
梅田CLUB QUATTRO
オールスタンディング
(チケット必要・整理番号付き・
入場時、別途ドリンク代500円必要)
[メンバー]高野勲(key)/
小松シゲル(ds・NONA REEVES)/
藤井謙二(g)/酒井由里絵(b)/
西岡ヒデロー(per&tp・
Conguero Tres Hoofers)
清水音泉■06(6357)3666
 

Pick Up!!

【大阪公演】

『OTODAMA'15~音泉魂~』
チケット発売中 Pコード264-155
▼9月5日(土)11:30
泉大津フェニックス
1日券(5日)6800円
[出演]Analogfish/TK(凛として時雨)(アコースティックセット)/clammbon/SCOOBIE DO/東京スカパラダイスオーケストラ/ハナレグミ(弾き語り)/フィッシュマンズ/bonobos/Polaris/真心ブラザーズ/METAFIVE/YOUR SONG IS GOOD/レキシ/シンリズム(湯わかしアクト)/赤犬(湯あがりアクト)/ガリガリガリクソン(入浴宣言)
清水音泉■06(6357)3666
※雨天決行・荒天中止。小学生以下は無料(入場券をお持ちの保護者の同伴が必要)。出演者変更に伴う払戻しは行いませんので、予めご了承ください。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


Comment!!

ライター鈴木淳史さんからの
オススメコメントはこちら!

「もう年寄りなのか、流行旬の四つ打ちを聴いているのが、しんどかったりする。だからと言って、一部の人だけが満足してる感があるシティポップも、個人的にはパンチが足りない。そんな中、聴こえてきた “心理の森 心理の森♪”…老若男女誰もが思わず口ずさんでしまう良質のメロディ。しっかりとルーツがあるけれど小難しくなく、大衆性があって自然に街に広がっていく音楽…。これこそが真のシティポップなのかもしれない。17歳にも関わらず、37歳の僕をはじめ多くの音楽好きの大人と話が合ってしまうのもすごい。しかし、音楽好きの大人のものだけにしてしまってはいけない。先ほども記したように、老若男女に伝わる音楽であり、何よりも音楽好きフェス好きの現代のキッズたちに是非とも聴いて欲しい。少しでも、この素晴らしい音楽が多くの人に伝わるように、お手伝いが出来たらと思う次第である」