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「俺たちがまた立ち上がることを、みんな分かってたのかもしれない」
“何度でも始めようぜ”、不屈のa flood of circleから届いた
希望と再生のロックンロール
『ベストライド』インタビュー&動画コメント

 ロックンロールの神様は、何度このバンドに試練を与えるのだろう? ギタリストの失踪、ベーシストの脱退という、バンドにとって致命傷にも成りかねない幾つもの傷跡を刻みながら、遂に運命の出会いを果たしたギタリストDuranが、加入から僅か半年で衝撃の脱退。だが、再び3人体制となったa flood of circleから早くも届いたミニアルバム『ベストライド』に注入された、この生命力はいったい何なんだ!? “YES 何度も立ち上がる君にだけ 辿り着ける場所を/YES 何度も立ち上がる君にだけ 叶えられる夢を”(『YES』(M-3))。佐々木亮介(vo&g)がこの新作が生まれた激動の季節と、不屈のロックンロールバンドの未来を語ってくれたインタビュー。どうやらこのバンドの物語は、まだまだ終わらない――。

 
 
結局、契約がどうとか事務所がどうとかじゃなくて
Duranと俺がやるかやらないかだから
 
 
――本当にもぉ…(笑)。
 
「本当にもぉ~(笑)」
 
(一同笑)
 
「どうも、アンラッキーボーイです(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) いや~でもねぇ、何かこっちもちょっと耐性が出来てるから(笑)。
 
「もはやね、驚かないっていう(笑)」
 
――うわっ…って最初は思うけど、同時に“まぁ今までもこんなことあったしな”みたいな(笑)。ドタバタでしたね。
 
「ドタバタでしたよ~。去年の10月に入って、今年の3月に辞めるとはもちろん夢にも思ってなかったですから」
 
――本当に寝耳に水やったんや。
 
「本当にそうですね。今年の1月ぐらいからそれが一気に分かってきて。DuranのやってるMade in Asiaっていうバンドに、何ヵ月とかのスパンでスケジュールが取られちゃうかもっていうことが分かってきて。何ヵ月もライブをやらないa flood of circleなんてa flood of circleじゃないよって…逆に言うと彼がワガママで辞めたっていうよりは、俺もそれを待てないよってなっちゃったから。ある意味、お互い様みたいな感じですけど」
 
――散々いろんな人にも言われただろうけど、普通はその辺のことをクリアにしてから加入するよね?(笑)
 
「って思いますよ(苦笑)。でも、向こうの事務所もMade in Asiaをちゃんと売り出していきたいから、契約もめちゃめちゃしっかりしたやつで。全く分かってなかったんですよね、あいつが(笑)。ま、そこもむしろ好きだったんですけどね。でもまぁ結局、契約がどうとか事務所がどうとかじゃなくて、Duranと俺がやるかやらないかだから。ただ、a flood of circleを一緒にやり始めるようになって、俺がバンドの真ん中で“みんな着いてこい!”って言うのを見れば見るほど、彼も自分のバンドではフロントマンだし、メンバーもそれぞれ自分たちのバンド辞めてMade in Asiaをやってるから、“俺がちゃんとケツを持つべきだって、思っちゃったんだ”って。それはある意味の決断というか…もちろん散々口説きましたけど、それでも揺るがないんだったら、もうしょうがないなぁと思って」
 
――この物語は結局、佐々木くんの横顔を見てDuranがフロントマンとして目覚めるっていう、何とも切ない。
 
「めちゃめちゃ切なかったですよ、あいつがフラッドやりたい気持ちがあるまま抜けていった部分もちょっとあったから。でも、そんな中途半端な状態でライブとか制作をして、毎回半年間みんなを待たせるとかはちょっと違うよなって。だから結局、選んだのはあいつというよりはむしろ俺なんですよ。この道を俺が選ぶから別れようって」
 
――図らずしもね、俺はちょっと早めにこのことを知ることになって。Duranはもうすぐいなくなるっていう状況でまさか『GOLDEN TIME』のリリースツアーを観ることになるとは思ってなかったから、何かもう、メンバー紹介とかもすっげぇ切なくて。
 
「でも、あのときの気持ちに切なさはあっても、全く嘘はないから。でも、言われてみれば本当そうで、あのツアーが終わるまでは、あんまり気持ちが整理出来てなかったですね。3月7、8日の東京2DAYSの打ち上げで、もう1回その話をしてたぐらいなんで、本当にギリギリまで分からなかったんで。まぁでも、辞めることが決まってからは、むしろ早かったですよね。以前の失踪のときみたいなガムシャラ感じゃなくて、“悲しいけど世の中にはこういうことがあるんだ”って分かりながらやってる部分もあるから(苦笑)。普通ならここでバンドが止まることも考えられたんでしょうけど、そこはa flood of circleですから(笑)。Duranとやろうと思っていた曲は全部捨てて、今の3人で、しかもデカい景色が観れるような、突き抜ける曲を1ヵ月で書き切って出そうって決めたんですよ。姐さん(=HISAYO・b)とナベちゃん(=渡邊一丘・ds)も、全然へこたれてなかったというか」
 
――俺ですら耐性が出来るぐらいだから、2人はもっと出来てるもんね(笑)。
 
「アハハ!(笑) ヘンな話、脱退の発表のために、前もって文章を考えたり写真を撮ったり準備をしてたから俺たちは先に切り替えられてるけど、ファンの人たちはそんなにすぐには受け止められないよなと思って、それだけが申し訳なくて。でも、6月のリリースに向けて一丸となったのは、やっぱりすごくデカかった。『ベストライド』っていう言葉もそのとき思い付いたものだったし、“是が非でも今をベストにするんだ”っていう気持ちは、そこから芽生えたのはありましたね。お客さん、メンバー、スタッフ、奥さん(=筆者)みたいに毎回話を聞いてくれる人もそうですけど、そういう人たちにいい景色を見せることが、自分にとっても一番いいことだから。そこだけ考えて曲を作りたかったんで、今回は絶対に明るい曲がいいと思ったんですよね」
 
 
多分2人はもう…慣れてるから(笑)。やっぱり覚悟が決まってたんですよね
 
 
――しかしこの、バンドを止めることに対する恐怖心というかは何やろね? それがこのバンドにとって最もNGなわけやんか。時間をかけてしっかり態勢を整えるのも、1つのやり方ではあると思うけど。
 
「まぁ音楽が好きなんですよね(笑)。裏を返すと、このシチュエーションだからこそ、今の3人でしか書けない曲が出来るんじゃないか? みたいな、ズルい頭も働き出すから(笑)。それを聴きたいし、それをライブで演奏したいっていう動機だけなんですよね。今書ける曲をちゃんと作れば、ここまで積み上げてきた状況をもっとよく出来るんじゃないかと思ったし、“止まりたくない”というよりは“ここで止まる意味もないな”っていう感じ。“だって音楽やりたいもん”っていうだけなんですよ(笑)」
 
――今作はもちろん聴いてくれる人に対してのメッセージでもあるけど、やっぱり今までで一番、自分に対しても鼓舞する空気が感じられましたね。
 
「今はライブをやればやるほど、誰かに向けたメッセージと自分を鼓舞することは同じなんだなぁって思い始めてて。それはこのアルバムの制作中に一番感じたことかもしれない。『心臓』(M-5)とかは音像をいつもより広めにしてるんですけど、それに対して今まで通りの言葉だと、何か弱い気がしちゃって。もっとグッと踏み込んで自分の経験を書き切った方が、デカいステージで歌うべき言葉になるんじゃないかって。そこは結構こだわって書きました」
 
――ストックを破棄してこのアルバムのために書き下ろしたっていうことだったけど、曲はガンガン出てきたわけ?
 
「ギリギリまでアレンジは悩んじゃったんですけど、『ベストライド』(M-1)『YES』(M-2)のメロディは、かなり早くからあったんじゃないかな。『ベストライド』が出来たときに、“あ、これだな”って思ったし、そこからは結構一気に出来ましたね」
 



――改めて3人になって取り組んで、何か変わったと感じるところはありました?
 
「まず『ベストライド』を聴かせたときに、2人はビックリしてましたね。『GOLDEN TIME』は結構マイナーキーでスピードも速くて、ちょっとストイックなところがある曲が多かったから、“どういう曲が来ても着いていこうとは思ってたけど、こんなに明るい曲が来るとは思ってなかった”って喜んでくれて。それは俺も嬉しかったし。“今のフラッドがやるべき曲のテンションってこっちだよね”って、すごく納得してくれてたので。多分2人はもう…慣れてるから(笑)。やっぱり覚悟が決まってたんですよね。3人で新しい写真を撮ったときも、“4人からまた3人になったところを見て、昔からのファンの人とかが不安になったとしても、『ベストライド』を聴かせたら絶対に大丈夫”っていう話をしてたんで。その前のめり感は、姐さんもナベちゃんもすごく持っててくれたんですよね」
 
――『ベストライド』はタイアップを受注されたんかなっていうぐらい“JRA感”を感じてんけどね(笑)。
 
「そう! JRAのタイアップを狙ってたんですけどね(笑)。『ベストライド』ってそもそも競馬用語というか、“武豊のベストライドはあの馬で”とか言うらしくて。あとは、和製英語なのか“BEST RIDE”って検索してもちゃんとした言葉が出てこなくて、間のスペースを消して“BESTRIDE”と書くと1つの英単語になることが分かって。それが“(馬などに)またがる”っていう意味で、2つ目の意味が“虹が架かる”なんですよ。“土砂降りの中を走ってゆけ”っていう歌詞は最初からあったんで、その曲の裏の意味が“虹が架かる”ってめっちゃいいじゃん!って」
 
――いやぁ~ロマンティックですね。
 
「ですよね。そのダブルミーニング的なところも含めて気に入って。あとは、ボロボロになったはずなのに、ベストアルバムでもないのにベストと言ってしまうこのアホさ加減(笑)。これだ!って」
 
――この曲で分かるよね。ある種、今後のa flood of circleの意識表明というか。
 
「『I'M FREE』(‘13)のときは“逆ギレ感”みたいなところも多分あったけど、今はもっとシンプルというか、キレてない。…何か、長州小力みたいになっちゃいましたけど(笑)」
 
(一同爆笑)
 
「そんな感じでね、本当に楽しさが前に出てよかったなと(笑)。自分たちが置かれてる環境に対しても感謝しかないし、Duranとのことがあった今、ガムシャラ感だけじゃなくて、本当に観たい景色があるから。それが例えば武道館だったり、1万人2万人の会場だったり…それに対してすごくピュアで、貪欲でいられる感じがすごくあるんで」
 
 
今までもたくさん判断してきたけど
その1つ1つが正しかったんだって、絶対に証明したいから
 
 
――今回のミニアルバムは、当初のイメージとはやっぱり変わった?
 
「『GOLDEN TIME』は作っていく流れの中でDuranが入ってきた感じだったんで、じゃあ今度はじっくり腰を据えてどんなものが出来るかやってみようっていう音源になる予定だったんですけど、まぁ当然その線はなくなりましたと(笑)。ただ、1人の作曲家人生としては、今回で世に100曲ぐらいリリースしてるんですよ。20代のバンドで100曲はなかなかないと思うんですけど、作曲家としてもちゃんとチャレンジしてる状態にしたかったんで、ストーリーとか統一感とかそんなことじゃなくて、全曲キャラが立ってるアルバムにすることだけを考えてましたね。例えば、『ベストライド』だったら“アイリッシュ・パンク”とか。サッカースタジアムに5万人のサポーターがいて、みんなで“チャッチャッチャチャチャ♪”みたいにやってるイメージだったんですけど」
 
――ギターもファンファーレな感じというかね。だからまぁ“JRA感”なんだけど(笑)。
 
「まさに。JRAのファンファーレの動画、見まくりましたもん俺(笑)」
 
――レースの緊迫感とか爆発感みたいなものは、フェスとかライブにも共通してあって。じゃあ『One Shot Kill』(M-2)のテーマは?
 
「何か…ちょっと恥ずかしいんですけど、“今までで一番ダークな曲”を書こうと思ってたんですよね。あと、今回はライブで歌う意味がある曲ばっかりにしたかったんですよ。ライブで一番やるべきこと=一撃必殺=『One Shot Kill』だなって思ったんですけど、そこでまたポジティブ・スイッチが入って、それが“君を生き返らせる”っていう言葉になったんですけど。あと、ナベちゃんをイジメるっていう裏テーマもありましたね(笑)。ドラムをむっちゃ大変にするっていう」
 
――続く『YES』(M-3)までの頭3曲は、マウントポジションでボコボコに殴り続けるような感じというか、止められるまで徹底的にフラッドの武器で攻め立てるというか。
 
「そうですね。そういった意味では、『YES』が一番ストレートなa flood of circleのイメージなんで」
 
――このオープニングのリフとか、いかにも!っていう(笑)。
 
「アハハ!(笑) この曲はミックスも含めて余計なギミックはなしで最初から最後までいきましょうって。歌詞も…これは今初めて言うんですけど、登場人物が全部過去の曲の登場人物になってて。旅人とか道化師とか、亡霊とかオーロラとか、今までの曲のモチーフだけで書いて、そいつらが“まだ行こうぜ”って歌ってる。だから自分全肯定ソングなんですよね、これ(笑)」
 
――“YES 何度も立ち上がる君にだけ 辿り着ける場所を/YES 何度も立ち上がる君にだけ 叶えられる夢を”の2行は、これこそまさにa flood of circleというか。
 
「だから例えば、俺が死んでもナベちゃんがボーカルになるんで(笑)」
 
(一同笑)
 
――でも、すぐにみんなも慣れて、“そっか!”って(笑)。
 
(一同爆笑)
 
――“次のアルバムからナベちゃん歌うんや~”、“いや、何かバンドを止めるなって言われてるんで”みたいな(笑)。
 
「アハハハハ!(笑) ヤバイっすね」
 
――でも、ちょっと怖くも思ったけどね。痛みに鈍感になってしまわないかと思って。タフになり過ぎてね。
 
「あ~でもそれはすごい思ってて。それこそガムシャラ感ばっかりになって、聴き手の気持ちを全く想像出来なくなるのはヤだなって思ってたんですよね」
 
――『リヴェンジソング』(M-6)にも“真正面から食らい続けて まだ笑う俺はパンチドランカー/打ってきたなトドメの一発を もういい加減あきらめさせてくれ”とありますけど、『YES』とかこの『リヴェンジソング』は、a flood of circleならではの、このタイミングだからこその説得力とか意志が感じられますね。
 
「うん、そうですね。もうこういう曲を書かなくていいようなバンド人生を歩みたい(笑)。ただ、俺たちがまた立ち上がることを、みんな分かってたのかもしれない。3人の新しい写真を発表したときも、一番の反応が“まぁフラッドは止まらないもんね、分かってるよ”っていうことだったんで。思った以上にa flood of circleを信頼してくれてるんだなって俺、嬉しかったんですよ。“これでへこたれないのがフラッドでしょ!”っていうぐらいに受け止めくれてたのが、すげぇ嬉しくて。だから俺たちも迷いなく明るい方に行けたというか。そこは感謝ですよね」
 
――ずっと物語が途切れてないから、夢中になる部分もあるのかも。
 
「そうですね。今までもたくさん判断してきたけど、その1つ1つが正しかったんだって、絶対に証明したいから。やり切りたいですね。“あ、ちゃんとデカいステージに行ったな”とか“ちゃんとCDが売れたな”っていうところまで行って、これが正しい道のりだったんだってね」
 
――よく“過去は変えられない”みたいな話をするけど、未来によって過去が変わるというか。未来を変えていけば、過去の意味合いが変わっていく。
 
「そうなんですよね。起こったことは変わらないけど、意味は変わっていくとすごく思うから。積み重ね続けたいですよね。今までのメンバーのことも含めて、このストーリーをなかったことにしたくない。リセットしたくない。恥ずかしいとか、ダサいとか、泥臭いとか、本当に起こってることだからいいんですよ。それを踏まえた上で、包み隠さずいい曲を書くっていうね」
 
――先輩方にも、ホンマに“こち亀”(※)みたいなバンドがいっぱいいるからね(笑)。
(※)…=こちら葛飾区亀有公園前派出所。『週刊少年ジャンプ』の最長連載作品。主人公は両津勘吉。
 
「本当ですよ。もうすぐ200巻とかだから、みんな(笑)。こっちはまだ50巻ぐらいなんだけど、みたいな(笑)」
 
――向こうが止まらない限りは追い越せないから、連載を続けないといけない(笑)。
 
「両さんは何があっても死なないからな~(笑)。ロックンロール業界、両さんとゴルゴ13ばっかりなの。で、(怒髪天の)増子さんが両さんでしょ(笑)」
 
――アハハ(笑)。両さんはロケットでどこかに飛んで行っても、次の回には派出所のデスクに座ってるからね(笑)。
 
「アハハハハ!(笑) 本当ですよ」
 
――そして、この『リヴェンジソング』の裏テーマとしては、バンドを長年支えてくれた、今は北海道にいる元マネージャーへのエールが発端としてあって。
 
「おもしろいのが、歌詞はそういう感じで書いたんですけど、この曲の6/8拍子のヒントをくれたのは、今のマネージャーなんですよ。この辺がちょっと、未来と過去がミックスしたポイントなんですよね」
 
――バトンが渡ってるわけですね。
 
「しっかり渡ってます。リベンジを誓って、それが果たせるかどうかは、これからの俺たちに掛かってる。レコーディングもライブも、“この日のために生きてきたんだ”っていう演奏をしたいから、ちゃんと言葉にしておこうと」
 
 
俺にとってはライブ=生きてることが分かる時間
 
 
――『Trash Blues』(M-4)と『心臓』はちょっと新鮮な印象ですが、『Trash Blues』のピアノは誰が?
 
「これは元オトナモードの山本健太(key)くんですね。前作の『Party!!!』でも弾いてくれたんで、その流れもあってちょっとジャズっぽいピアノをお願いしました。ヘヴィなアルバムにはしたくなかったというか、手渡した相手が快く受け取れるものにしたかったんで、こういう曲が1曲あってもいいなって。あとはもう、“弾き語りでもa flood of circleなんだから大丈夫、この形がベストでしょ”って2人が理解してくれてるから録れたのもあるし。ギターはちょっとレゲエ風にして、夏が似合わない俺たちから6月リリースへの精一杯の形なんですけど(笑)」
 
――あと、『心臓』が素晴らしい曲じゃないですか。もう何なんですかこの曲。
 
「アハハハハ!(笑) ありがとうございます! 嬉しいです。個人的にもめっちゃいい曲が出来たなぁと思ってるんですよね。この曲は2つの意味で特別で、まず歌詞で言うと、これは甥っ子が生まれたときに出来たんですけど、(胸の辺りを指して)普段はここに心臓があるとかいちいち意識しないけど、抱き締めると“あ、生きてるな”って分かる。俺にとってはライブもそれで=生きてることが分かる時間だと思っていて。そういう普段気付かないこととか大事なことを見逃して生きていくと、さっきの話じゃないですけど本当に麻痺していくと思うし、麻痺した心で物事を決めていくと、絶対に良くない世の中になっていく。そう思うと全部がつながってくるなぁって。だからその気持ちをちゃんと曲にしておこうと思ったのが歌詞の始まりですね」
 
――そしてもう1つの特別は?
 
「それをどうやって曲で表現しようかなと思ったとき、ドラムもベースも心臓の音をイメージして演奏してくれてるんです。俺の中ではギターも心電図が動いてるようなイメージで3拍ずつ進んでいくんだけど、リズムは4/4拍子でちょっとヘンなリズムで、その歪さが何か人間っぽいなって(笑)。あと、『ベストライド』と『心臓』の2曲は、とにかくデカいステージで演奏してやろうと思ってたんですよ。“この2曲があったから、フラッドはデカい場所に行けたね”って言わせたいなと思ってたから。『ベストライド』のイメージは5万人のサポーターだし、『心臓』はフェスティバルの一番デカいステージで、最前列から一番後ろにいるヤツらまでを感動させる曲っていう狙いがあったんですよ。だから音像をすごく広くして。人間の赤ちゃんの小っちゃい心臓から、全てを包み込むデカさまでが、同時に存在する曲を作りたかったんですよね。それが、ちゃんと表現出来た気がして、すごい気に入ってます」
 
――心臓の音って、言ったら最も原始的なビートというかね。
 
「“ハートビート”って言うぐらいですからね。俺らは今まで『I LOVE YOU』とか『FUCK FOREVER』とか、恥ずかしくて誰も言わないようなことをたくさん歌ってきたから(笑)、全てを包み込むぐらいの大きさで歌えたらいいなっていう。誰かが生まれると同時に、今もどこかで誰かが死んでいる。それがずっと続いてる中で、たまたま触れ合った新しい命、それが生まれる瞬間の感動って、やっぱりすごいなって」
 
――この曲を聴いたときに、同時にa flood of circleも“再生”していく感じがすごくしましたね。また生まれたというか、生まれ変わったというか。
 
「そうでなんすよね。音楽の再生ボタンが俺、すごい好きで。何度でも蘇らせるじゃないですか。だから“再生”って言葉は俺、結構しっくりきますね」
 
――もうa flood of circleが第何期か分からないけど(笑)、確実に始まりの音源でもあるし。前回のインタビューでも、“ロックンロールバンドって延命治療じゃダメだと思うんですよ。毎回ギリギリまでやんないと転がれないと思うから”って。まさにな生き方!
 
「これはもう自分の言葉が返ってくるよなぁ~(笑)。そうなるつもりはなかったんですけどね!(笑) まぁ自分の全てを懸けてやってる仕事だから、それでいいんですよ」
 
 
出会いの運がエゲつないんですよ。別れの悪運もエゲつないですけど(笑)
 
 
――新たなサポートギタリストとしてThe SALOVERSの藤井清也くんが加わりましたけど、接点はどういう感じで?
 
「一番最初は5年ぐらい前の札幌で対バンしたことがあったんですよ。The SALOVERSってまさに青春の勢いを感じるバンドで大好きなんですけど、そのときあいつはまだ10代で、いい意味で浮いてたというか、甘いトーンでちょっと渋いフレーズばっかり弾いてたんですよ。何でこんなことやってるんだろう?って思ったら、あいつだけ好きな音楽がブルース・ロックだったんですよ。ジェフ・ベック・グループとか、(エリック・)クラプトンとかそんな感じだったから、“あ、コイツは趣味が合うな”と思ってて。Duranが辞めたときにThe SALOVERSが休止しますってこれ、今でしょ!? みたいな(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) 年齢的にもそうやけど、今までとは違うタイプの人間が入ってきて新鮮やね。
 
「そうなんですよ。むしろ年上だしナベちゃんがしっかりしなきゃ、みたいな(笑)。だから、ナベちゃんもここで今、変わろうとしてると思うんですよね。レコーディングに対する姿勢とかもやっぱり変わったなって思うし、出来ないことに対しての言い訳も減ったし(笑)」
 
――何やかんやですごいスリリングなタイミングやけど、出会えていってるね。
 
「出会いの運がエゲつないんですよ。別れの悪運もエゲつないですけど(笑)。こうやって出会いがあるから、もっと前に進もうと思えるんでしょうね。それにはサポートだけど清也くんにも本当に感謝してます。そういう意味でも、ちゃんと進化した曲を作らないと意味がないとも思うし、ガッカリさせたくないのもあります」
 
――いやぁ~でも、次回作が“今回は何のアクシデントもなくCDが出るんですね”みたいな話になると、物足りなくなったりして(笑)。
 
「事件に期待したくないですけどね(笑)。何もなく成長したいです!」
 
 
意地でもロックンロールバンドのまま、ド真ん中まで躍り出たい
 
 
――ライブに関してはどうですか?
 
「すでにライブでも、『ベストライド』の手応えが、大きいステージでの浸透率がハンパないというか。初めて聴く状態であの景色を作れてるのは、我ながら“これはアンセム出来たな”って思ってるんで、もっともっと成長してくる曲だなぁって。ツアーに関しては、今回は敢えて昔からやってる自主企画『What's Going On』という位置付けにして、自分たちの場所をもう一度確かめるというか。3人になって、もう一度イチから作りますよっていう、スタート地点にしたかったんですよね。年内にまた大きいヤツを仕組んでるんで、それに向けた最初の一歩っていう感じで」
 
――大阪と名古屋ではtricotと対バンです。
 
「今回のテーマとして、まだうちとやったことがないバンド、うちのイベントに呼んだことがないバンド、しかも俺が観たいなと気になってるバンド、だけを呼ぶようにしたんですよ」
 
――tricotも年下だし、下の世代も出てきてますね。
 
「しかもみんな刺激的でおもしろいから。やっと最近、先輩風を吹かせられるようになってきたという(笑)」
 
――今までがやっぱりね、先輩に好かれるバンドだったもんね。
 
「それはいまだに継続中なんですけど(笑)。そういう意味では俺、友達がいないと思ってたんですけど、最近いろんな人をつなげることが多くて。若手が“あの人怖そう”とか言ってても、先輩が“どう喋っていいか分からないよ”なんて言ってても、“大丈夫ですから! 何ビビってんですか!”みたいな(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) まぁでも楽しみですね。止まらないわけやから、このバンドは。
 
「ロックンロールって、どうしても今はシーンの端っこに寄せられちゃってる。だから俺らが、率先してド真ん中に持っていってやろうと思ってるんですよ。来年は10周年なんでいろいろとデカい花火も打ち上げたいから、意地でもロックンロールバンドのまま、ド真ん中まで躍り出たいなと思ってるんですよね。同世代の仲間も結構増えてきて、それがまた嬉しかったりもするし、“こいつらには負けらんねぇ”みたいな想いもあるし。それも本当に続けてきたからこその出会いなんでね。だから今、すげぇ燃えてますよ!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2015年6月24日更新)


Check

Movie Comment

インタビューに新作&ライブと饒舌な男
佐々木亮介(vo&g)からの動画コメント

Release

高らかに新章を告げる躍動の全6曲
新体制初となるミニアルバム!

Album
『ベストライド』
発売中 1600円(税別)
Imperial Records
TECI-1460

<収録曲>
01. ベストライド
02. One Shot Kill
03. YES
04. Trash Blues
05. 心臓
06. リヴェンジソング

Profile

ア・フラッド・オブ・サークル…写真左より、HISAYO(b)、佐々木亮介(vo&g)、渡邊一丘(ds)。’06年、東京にて結成。’09年に1stアルバム『BUFFALO SOUL』でメジャーデビューしたのも束の間、ギタリストの失踪という不測の事態が発生。ゲストギタリストを招き緊急制作された2ndアルバム『PARADOX PARADE』をリリース。’10年には3rdアルバム『ZOOMANITY』を発表するものの、年末にベーシストが脱退。同時期にHISAYOが加入。’11年には4thアルバム『LOVE IS LIKE A ROCK’N’ROLL』を発表。’12年にはレーベル移籍第1弾となるミニアルバム『FUCK FOREVER』をリリース。’13年4月にはシングル『Dancing Zombiez』を、7月には5thアルバム『I’M FREE』リリースし、47全都道府県を廻るバンド史上最長のツアーを敢行。’14年4月にはシングル『KIDS/アカネ』を、6月には47都道府県ツアーファイナルとなった東京・日比谷野外大音楽堂ワンマン公演を収めたライブDVD『I'M FREE The Movie-形ないものを爆破する映像集-』をリリース。同時期に、サッカーをモチーフにした朝日新聞CM『サムライに告ぐ。』篇に新曲『GO』が使用され大きな話題を呼び、7月にはこれまでリリースした全曲を演奏する公演“レトロスペクティヴ”を、3日間にわたり東京キネマ倶楽部にて敢行、全公演ソールドアウト。11月には6thアルバム『GOLDEN TIME』をリリース。その渦中に再び起こったメンバーの加入・脱退という不測の事態を乗り越え、今年6月17日にはミニアルバム『ベストライド』をリリース。

a flood of circle オフィシャルサイト
http://www.afloodofcircle.com/
 

Live

対バンツアー阪名のお相手はtricot!
秋には過去最大キャパにも挑戦へ

Pick Up!!

【大阪公演】

『AFOC presents What's Going On
 Tour 2015 “BRAND-NEW RIDERS”』
チケット発売中 Pコード260-708
▼6月25日(木)19:00
梅田クラブクアトロ
オールスタンディング3240円
[共演]tricot
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、
未就学児童は入場不可。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 
【名古屋公演】
▼6月26日(金)名古屋クラブクアトロ
[ゲスト]tricot
【東京公演】
▼7月3日(金)CLUB QUATTRO
[ゲスト]GLIM SPANKY
【東京公演】
Thank you, Sold Out!!
▼7月4日(土)CLUB QUATTRO
[ゲスト]the band apart
 

Pick Up!!

【大阪公演】

『the pillows presents
“About A Rock'n'Roll Band”』
チケット発売中 Pコード264-641
▼7月17日(金)19:00
BIGCAT
オールスタンディング4000円
[共演]the pillows
夢番地■06(6341)3525
※未就学児童は入場不可。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 

Pick Up!!

【大阪公演】

『AFOC presents VS tour
“BATTLE ROYAL 2015”』
一般発売9月12日(土)
Pコード269-017
▼11月20日(金)19:00
なんばHatch
オールスタンディング3300円
[共演]有
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、
未就学児童は入場不可。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 
【名古屋公演】
▼11月22日(日)ダイアモンドホール
[ゲスト]有
【東京公演】
▼11月27日(金)Zepp DiverCity(TOKYO)
[ゲスト]有
 

Column

俺たちの『GOLDEN TIME』は
続いてく――幾度もの分岐点を越え
転がり続けるa flood of circleの
ツアークライマックスに捧ぐ
前回の撮り下ろしインタビュー

Comment!!

テイチクの情熱プロモーター
村上友菜さんからのオススメ!

「初めて彼らのライブを観たのはインペリアルレコードに移籍する1年ほど前。カッコよくて、不器用で、でも光って見える、そんなイメージでした。そんな彼らの宣伝を自分が担当するとは思いませんでした。東京・新宿のバンドを“絶対大阪で火をつけてやりたい!!”と躍起になって、丸3年が経ちました。信じ続けて丸3年。おかげ様でシンパや応援してくれる人の数がどんどん増えているのを感じるようになりました。転がる石が周りを巻き込みどんどん大きくなるように、彼らも回りを巻き込んでどんどん成長しているように感じます。来年は結成10周年イヤー! みんなで大きな花火ぶち上げようぜ!!」