センスと閃きを注入した新世代のロックンロールをかき鳴らす
go!go!vanillasのメジャー1stアルバム『Magic Number』!
牧達弥(vo&g)がクールな視野でバニラズのルーツを巡る
インタビュー&動画コメントが到着
ロックのルーツを掘り下げた音楽的な豊かさとクレバーな思考。go!go!vanillasを聴いていると、“ロックンロール”というワードが古臭くなく、現代にフィットする不老不死の音楽なんだと実感する。インディーズで頭角を表し、昨年、満を持して11月にメジャー1stアルバム『Magic Number』をリリース。まずは洋楽を聴くように、音感や語感の気持ち良さを感じてみて欲しい。その思わず身体が反応する軽快なビート感、ポップなメロディと冴え渡るリリック。このトビキリのセンスと閃きはいったいどこから生まれてくるのか? ビートルズと吉田拓郎をフェイバリットに挙げる中心ソングライターの牧達弥(vo&g)に、自身のルーツとバンドに懸ける想いを訊いた。
リバティーンズに出会って…彼らの音楽がその後の自分を作った
――大分出身の牧さんが、東京で結成したバンドがgo!go!vanillasなんですね。
「そうですね。長谷川プリティ敬祐(b)が中学からの幼なじみで、前身バンドから一緒にやっていて、あとの2人は東京で出会いました。大学進学で東京に来て、バンドでオリジナルをやり出したのはそこからなんです」
――“ロックンロールバンド”の中でも、go!go!vanillasはポップで洗練されたイメージがありますが、牧さんのロックのルーツはどういうところにあるんですか?
「中学2年生ぐらいのときに、友達のお兄ちゃんにハイ・スタンダードの『アングリー・フィスト』(‘97)を聴かせてもらって、ロックという音楽に目覚めたように思います。最初は暴力的に聴こえて何か怖かったんですけど(笑)、その型にハマらない部分に魅力を感じましたね。それまではJ-POPが中心で、友達と話せる音楽を主に聴いていたんですけど、ハイスタのルーツをたどっていく中で、アメリカ西海岸の“スケートロック”と呼ばれるような人たちの音楽を聴き出して。“この人たちは何を聴いてこんな音楽をやるようになっていったんだ?”というようにどんどん遡っていって、ラモーンズやストゥージズとかの初期衝動的な部分に惹かれるようになりました。さらに、高校に入ってから、リバティーンズに出会って…彼らの音楽がその後の自分を作ったというか、無茶苦茶影響を受けまして」
――2000年代前半にロンドンから出てきたリバティーンズと出会って、“ロックンロール・リバイバル”的なムーブメントを知った人は少なくないと思います。牧さんは特にどういったところに影響されたんですか?
「リバティーンズって、それまで聴いていたパンクほど激しさもないし、見えてくる情景がイラだってもいない。けだるい感じもそうだし、ロックに対して自分たちの人生をバンドで表現しているんだけど、曲にストーリー性を感じてしまったというか…彼らのアルバムを通して聴いたときに、その人たちを“もっと知りたい!”と思っちゃったんですよ。そういう感覚は初めてで。そこからいろんな音楽を聴いていって、ビートルズなんかのスゴさを知ったのは大学に入ってからですね」
――それにしても、ハイスタからものすごく掘り下げていったんですね。
「そうなんですよ。キンクス、ザ・フーと聴いてる内に、いいなと思ったのがどれもイギリスのバンドだったから、俺はこの国の音楽に何か通じるものを感じるんだなと。あと、イギリスと言えばビートルズは神みたいな存在なので、ちゃんと聴いてみようと。最初に聴いたアルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』(‘63)には、とにかくすごい衝撃を受けましたね。めっちゃパンクだなぁって思った。そこから『ウィズ・ザ・ビートルズ』(‘63)を聴いて“これはヤバい!”と確信してからは、アルバムを全部揃えてひたすらビートルズばっかり聴いてました。で、“ビートルズ以外聴かなくていい”ぐらいになってしまったので(笑)、1回リセットしようと思って…持っていたギターを弾きながら遊ぼう!みたいな感覚で、自分でメロディをつけながら歌ってみたんです。そのときに、何か今までと違う気持ちよさを感じて…。それまでは音楽に関して全て受け手だったけど、そこから自分で表現することに興味を持ち始めましたね。バンドもそうやって始めたので、ビートルズはかなり重要なアーティストです。コードの使い方や曲作りにおいても、かなりお手本になりました」
前にやっていたバンドは洋楽に傾倒し過ぎていたんですけど
そもそも僕は英語が全然喋れないし、そこにだんだん嘘を感じ出して
――牧さんはフェイバリットアーティストに吉田拓郎さんも挙げていましたね。
「映画『クレヨンしんちゃん(嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲)』(‘01)に使用されていた吉田拓郎さんの『今日までそして明日から』('71)っていう曲を何気なく聴いて、すごくドキッとして。それから拓郎さんをちゃんと聴いてみたら、初期の曲にすごくいい曲が多いのに気付いて、日本のアーティストをもっと知ろうと思ったんです。前にやっていたバンドは洋楽に傾倒し過ぎていたんですけど、そもそも僕は英語が全然喋れないし、そこにだんだん嘘を感じ出して、日本のバンドをもっと勉強しようと。それで、はっぴいえんどなんかも聴くようになっていって、松本隆さんの小説のような歌詞に新しさやセンスの良さを感じたんですよ。僕は昭和を経験したことがないけど、“昭和ってこんな感じだったんだな”っていう匂いを感じるようなものを歌詞で表現されていて、“日本語すげー!”って思ったんです。そこから、自分が思う日本語のカッコよさを残しつつロックに乗せるっていうのを、僕なりにちゃんと表現しようと思うようになりました。それがgo!go!vanillasのテーマだったんです」
――洋楽も邦楽もすごく真面目に掘り下げていって、自分たちの指針もしっかり定まったんですね。
「自分の中で“普遍性”はすごい重要なんです。ビートルズにしろ、はっぴいえんどにしろ、今聴いても全然古さを感じない。それぐらい時代を超えて通用するものを作りたい!っていうのがあるから」
ルーツをしっかり知らないと普遍性は絶対に生まれない
――昨年11月にリリースされたメジャー1stアルバム『Magic Number』はどのように制作されたのですか?
「前作の『SHAKE』(‘13)は僕の弾き語りをベースに、それをメンバーに聴かせてスタジオで好きにやってくれっていう感じだったんです。でも、今回のアルバムからは、もっと“僕の表現したいものを忠実に再現して欲しい”という想いが強くなりましたね。同時にライブもすごく忙しくなってきて、会場も大きくなって、今まではメンバーそれぞれの個性が出ていれば大丈夫だと思ってたんですけど、それだけじゃダメだと実感したんですよ。go!go!vanillasとして、お客さんに提示するものをもっと明確にしてあげないと曖昧だなって。俺が完璧にテーマを作って、それをメンバーにちゃんと理解させて作ろうと」
――そのテーマとは?
「今までは歌詞に抽象的な部分も多かったんですけど、日本語で何を伝えたいのかを考えるようになりましたね。もっと日本のことを歌って、若い子たちと共感したい気持ちが芽生えてきたんです。そのためにも愛国心みたいなものは、持っていないとダメだなと。日本の国民性としてそういうことをネガティブに考えがちだけど、日本にはいいものがいっぱいあるし、暮らしの中で僕らがありがたみを持つことってたくさんあると思うんです。今回はそういうことを1曲ずつ意識して作っていって、その第1弾として出来たのが『オリエント』(M-5)だったんです」
――1曲目からライブ向きの勢いのある曲で始まって、中盤の『トワイライト』(M-4)『オリエント』『春眠』(M-6)辺りはちょっとミディアムな曲調になっていますが、この辺りは今までにはなかったタイプの楽曲ですか?
「1~3曲目辺りは勢いがあって“みんなで踊ろう!”っていうような感じだけど、僕らの音楽はそれだけじゃないよって。どっちも出来るのが僕らの強みだと思うし、そこを意識した部分はありますね。『春眠』ではサビで初めてファルセットを使ってみました。あと、この曲のギターリフと最後のソロは僕が弾いてるんですよ。ちょっとスティールドラムみたいな音色で。前作ではギター(宮川怜也)に任せることが多かったんですけど、自分もギターが好きだし、ボーカルギターが弾くギターとギタリストが弾くギターって全然違うんですよ。『トワイライト』のソロも僕が弾いてますし、そこも新しい変化かな。ライブでもそこが面白みになっている気がします」
――勢いだけのバンドとは思われたくないというような想いも?
「“初期衝動”とか“荒削り”って、“ヘタクソなんじゃないの?”っていうところに行きかねないから(笑)。確かに初期衝動みたいなものが出てるアルバムは大好きだし分かるけど、それは聴いた人が言うことで、自分たちがそう思った瞬間にダメだと思うんです。前作では余計なことを考えず全部出しちゃおうっていう感じで作ったので、そういう意味では初期衝動だったし、その粗さもいいなと思ったけど。でも、今回のアルバムでそれをしちゃダメだと思った。自分をコントロールしたらちゃんと自分の思うことを伝えられるし、“ちゃんと出来るんだよ”っていうところを、今回のアルバムでは出したかった。しっかり考えて作りましたね」
――知れば知るほどしっかりと練られていて、音楽的な深みや広がり、歌詞の旨味も楽しめるアルバムですね。
「でも、自分たちのルーツに関しては、お客さんに強要する気は全くないんですよ。例えば『セルバ』(M-1)だったら、“ジャングルビートを使って、ボ・ディドリーとか、ロックンロールを感じるね”って思ってくれる人もいるかもしれないし、若い子はそんなことは全然知らなくても“ロックンロールっていいなあ”って思ってくれたら嬉しいし。多分、今の子ってあんまり(音楽を)知らないから新しく思っちゃうみたいだけど、こっちはいいと思ってもらうためにはルーツをしっかり知らないと普遍性は絶対に生まれないと思うし、土台がしっかりしていないとすぐに崩れちゃうと思うんです。僕らはそういう部分は忘れずにやっていこうかなと思ってますね」
今年はgo!go!vanillasにとっての未開の地に行きたいなと思っています!
――ライブに関してはどうですか?
「僕らの音楽を知ってくれて、楽しもうとしてくれている人たちがどんどん増えていっているのは実感しています。でも、同じようなライブをやっていると飽きられると思うので、常に変化と進化をしていかなきゃいけないなって。今作の曲もライブではまた違ったものにしようと思うし、ライブでしか聴けない部分を大切にしようと思ってます」
――年明けからワンマンツアーがスタートしますね。
「東京以外でのワンマンは初めてなんですよ。今まではだいたい30分でセットリストも限定されていたけど、ワンマンでは時間も長くやれるので、今作の『トワイライト』とか『春眠』のような曲もやろうと思う。そうすれば、ライブに来てくれた人もよりバンドの本質の部分が見えてくると思うし、もっと深いところまで入ってくることが出来ると思います。それでよりgo!go!vanillasを好きになってもらえたら嬉しいですね」
――最後に2015年の抱負をお願いします。
「届けたい人はいっぱいいるし、若い子だけじゃなくて、僕らより年上の人にももっともっと聴いて欲しいですね。そういう人たちにも僕たちの音楽は絶対響くと思ってるから。そのためにも、もっと行ったことがないところでライブをやりたい。今年はgo!go!vanillasにとっての未開の地に行きたいなと思っています!」
Text by エイミー野中
(2015年1月 8日更新)
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