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「ジャズの楽しさを全面的にフィーチャーした作品にする」
菊地成孔、quasimode、ジルデコ、スカパラ、SOIL&“PIMP”…
豪華メンツが機能する最新作『NOTHIN’ BUT JAZZ』ツアー開幕!
クリヤ・マコト・オールスターズインタビュー&動画コメント

 SOIL&“PIMP”SESSIONSのタブゾンビ(tp)と元晴(sax)から菊地成孔(sax)、ボーカリストのSHANTI、英国のスノーボーイ(perc)まで。スタイル、世代、国籍を超えた総勢22名の実力派を迎えてジャズの楽しさを伝える最新アルバム『NOTHIN’ BUT JAZZ』を発表したピアニストのクリヤ・マコト。現代ジャズの最先端的な音から、ポップス系シンガーの楽曲プロデュース、そして『新世紀エヴァンゲリオン』のサントラまで。あらゆる音を多彩にこなしながら、近作では優勝者と準優勝者を自身のライブに出演させるアドリブコンテストを開催して無名の才能に門戸を開く彼に、最新作とそのアルバムに伴うツアー、そして単なる作品リリースだけでは終わらせないアクティブな姿勢の根幹にある考えについて語ってもらった。

 
 
ジャズの楽しさというのはライブにあるから
 
 

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――最新作『NOTHIN’ BUT JAZZ』は、多彩なフィールドを横断しながら活動するクリヤさんならではの顔ぶれが一堂に集った、まさにオールスター的な作品ですね。
 
「デビュー20周年に出した『Art For Life』(‘11)というアルバムでも、総勢27名のゲストを迎えて、ジャンル的にも本格的なブラジル音楽からヒップホップまでとかなり間口を広げてやったんですけど、今回はその第2弾という形でありながら、音楽的にはちょっと凝縮しようと思ったんですよ。『Art For Life』は3年かけて作った作品で、ゲストもタップダンサーの熊谷和徳くんや津軽三味線の上妻宏光くんまでも参加していたんですけど、今回はそこまではせずに、タイトルにも『NOTHIN’ BUT JAZZ』と書いてあるように、ジャズの楽しさを全面的にフィーチャーした作品にするという明確なコンセプトで、ゲストも絞って選んでいきました。だから今回は、フュージョン寄りの則武裕之(ds)や大坂昌彦(ds)のようなモロにジャズの人もいるかと思えば、クラブジャズのquasimodeやSOIL&“PIMP”SESSIONSのメンバーもいて、あくまでも“ジャズの中で”バラエティ豊かな総勢22名というか。あとは、コレは結果論的なことなんだけど、ジャンルだけではなくて年齢や世代のギャップを超えてジャズの楽しさを伝えられる作品になったと思うし、もう1つは国籍を超えたメンバーを1枚のアルバムに集められたこともポイントですね。ロンドンで僕のプロジェクトにいつも献身的に協力してくれるスノーボーイや、イタリアで今進めている日本人や南米の人も含めた新しいラテンジャズのコンフント(=グループ)にも参加してくれているフランチェスコ・ブルーノ(g)など。彼らとの交友関係をココで形にしておくことができたのも良かったですね」
 
――その多種多様なメンバーが、曲ごとにいつもとは異なる組み合わせで、クリヤさんの作品の中でセッション的に音を交わしているのが楽しいですね。
 
「そうですね。今回のアルバムはライブ感を伴ったものにしたかったというか、それこそライブの演奏を録りっぱなしにして出すくらいの勢いで、ヴィヴィッドな音にしたいと思っていました。スタジオ盤らしい構築美は3年前のアルバムでやり尽くしたし、今回は普段はライブで演奏するだけで僕のアルバムには収録しないようなスタンダードを何曲か取り上げているのも、それが理由ですね。何故かと言うと、ジャズの楽しさというのはライブにあるからで、まるでライブで聴いているような活き活きとした音を今作では提供したかったんです」
 
 
僕からすればカッコ良くて当たり前なんですよ
カッコ良くてウマい演奏をするのは当然のこと
 
 
――演奏の楽しさはもちろんのこと、各曲での組み合わせの妙も面白いですよね。シンプソンズや美女と野獣、ロッキーのテーマ曲などがメドレー形式になった『Great American Melodies』(M-3)では菊地成孔さんが流麗なソロを取ったり、ホレス・シルバーの『Sister Sadie』(M-11)では大坂さんのドラムの上でソイル~のタブゾンビと元晴さんの2人、スカパラのトロンボーンの北原(雅彦)さんがジャズ色の強いソロをたっぷりと聴かせていたり。
 
「それぞれの良さを活かしながらも、当たり前にならない組み合わせにワザとしています。アレンジも奇抜だけどただのヘンテコなものではなくて、ちゃんと意味の通っているものにしていて。例えば、マリーナ・ショウの『Street Walking Woman』(M-1)は元々は最初からテンポが速くて途中から変わる曲だけど、じゃあ僕は反対からいきましょうということで、遅いアレンジから始めてそのまま終わるかと思ったら速くなるという発想でやっているし、アルバムの発売から時間が経って一番ウケがいいのは、実は4~5曲目の『Cherokee Introduction』~『Cherokee』なんですよ。ジャズの代名詞みたいなスタンダードだし、編成もただのピアノトリオで今回のアルバムの中でも一番地味なんだけど、最初にバラードで始めて後から誰もが演奏するように速いテンポで演奏しています。僕はそう演奏するのがこの曲の美しさが一番よく伝わると思ったからそうしたんだけど、ライブで“今日は『Cherokee』やらないんですか?”と言われることが一番多いんですよね。僕はこれまでにいろんなことをやってきて最も『Cherokee』から遠い人間のはずなんだけど(笑)、実はバラードで演奏するとこの曲の良さが出るんですよ。テンポを速めてからの部分で5拍子で演奏している人はあまりいないと思いますけど(笑)」
 
――僕もこの『Cherokee』の良さには耳を惹かれました(笑)。
 
「ただ、僕が最近よく考えているのは、音楽はもう“単独で”発表していく時代ではないんじゃないかということで。もっと複合的な活動でというか、今までの制作などのあり方を見直していくべき時期に入っているんじゃないかとすごく思うんですよ」
 
――もう従来のようなアルバムの作り方では限界があると。
 
「それも含めてだけど、発信する側のメンタリティとか、考え方としてね。海外の状況などを見ていても、それを気にしているというか、危惧していますね。例えば今度、僕はイタリアでコンフントをやりますけど、イタリアは日本どころかフランスやロンドン以上にいいミュージシャンはたくさんいるのに全く演奏する場が供給されてなくて、みんな食いっぱぐれているんですよ。超ウマいのに。つまり、音楽におけるウマさという基準がもう危うくなっている状況というのがあるんですよね」
 
――ウマい人間は世界中にゴロゴロいて、それだけでは食えない時代というか。
 
「ま、それも含めて状況が変わりつつある中でも、音楽に対するパッションやスピリットは変わらないし、むしろ深まっていかなければいけないと思うんだけど、ミュージシャンの立ち振る舞いなどは時代の変化に合わせてもっと変わっていかなければならないと思うんですよ。その一環として、今回のアルバムでもアドリブコンテストをしてみたりしているし、単に自分のアルバムを自己顕示のために出すだけじゃなくて、もっと周りと共存したところに自分の作品やライブがないとダメなんじゃないかな、ということを最近はよく考えています」
 
――アルバムの中に課題曲(『Interlude』(M-10))としてリズムトラックだけが収録されているアドリブコンテストにはそういう意図があったんですね。
 
「だから、今回のアルバムにしても皆さん褒めてくれるんだけど、僕からすればカッコ良くて当たり前なんですよ。カッコ良くてウマい演奏をするのは当然のことで、ヘタクソだったりアップアップしているレベルのものは、お呼びじゃないんですよね。それどころじゃない(笑)。もちろん最終的には音楽の力、ということになりますけどね」
 

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――そんなシビアな現状も直視しつつ、ジャズの楽しさを多彩に伝える新作を携えてのツアーが、11月13日(木)ビルボードライブ大阪からスタートします。
 
「曲は全てこのアルバムからやります。(大阪・名古屋公演のメンバーの)矢野沙織(sax)とNAOTO(vl)はアルバムには参加しませんでしたけど、NAOTOは1回目のアドリブコンテスト優勝者と準優勝者を含めた3年前のアルバムのツアーのときにも入ってもらいました」
 
――今回のアドリブコンテストを勝ち上がってきたプレイヤーの演奏にも期待大ですね。
 
「前回の大阪公演でも、そのときのビルボードでの演奏が生まれて初めてのライブだったというタッピング・ギタリストは凄かったですよ。もう1人の大阪の参加者だったトランペット奏者はカルメラのメンバー(=小林洋介)で、今年の3月にSOFFetのビルボードでの公演で共演もしましたし。今回も楽しみにしていてください!」
 
 
Text by 吉本秀純



(2014年11月12日更新)


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Release

ジャンルを超えた豪華メンバーが集結
名曲満載の鬼気迫る最新アルバム!

Album
『NOTHIN' BUT JAZZ』
発売中 2800円(税別)
日本コロムビア
COCB-54083

<収録曲>
01. Street Walking Woman
(feat. Geila Zilkha)
02. Afro Feet
03. Great American Melodies
(feat. Naruyoshi Kikuchi)
04. Cherokee Introduction
05. Cherokee
06. The Stranger
(feat. SHANTI)
07. MANTECA
08. Sakura Garden
09. On The Ridge
10. Interlude(アドリブコンテスト課題曲)
11. Sister Sadie
12. Discovery

<参加ミュージシャン>
クリヤ・マコト(p&key&アレンジ)/
ギラ・ジルカ(vo)/SHANTI(vo)/
kubota(g) from JiLL-Decoy association/
菊地成孔(sax)/タブゾンビ(tp)、元晴(sax)
from SOIL&“PIMP”SESSIONS/
北原雅彦(tb) from 東京スカパラダイス
オーケストラ/スノーボーイ(perc)/
松岡“matzz”高廣(perc) from quasimode/
鳥越啓介(b)/早川哲也(b)/納浩一(b)/
大坂昌彦(ds)/則竹裕之(ds)/天倉正敬(ds)
/太田剣(sax)/グラハム・パイク(tp)/
中川英二郎(tb)/類家心平(tp)/
安井源之新(perc)/
ジェームス・ホアレ(ナレーション)/
フランチェスコ・ブルーノ(g)

Live

日替わりメンバーで贈る東名阪ツアー
大阪公演より間もなくスタート!

Pick Up!!

【大阪公演】

『リリース記念ライブ&
東日本大震災被災地復興支援チャリティー
クリヤ・マコト・オールスターズ
「NOTHIN' BUT JAZZ」
リリース記念ツアー』
チケット発売中
▼11月13日(木)18:30/21:30
ビルボードライブ大阪
自由席6900円
【メンバー】クリヤ・マコト(p)/
早川哲也(b)/大坂昌彦(ds)/
NAOTO(vl)/SHANTI(vo)/
ギラ・ジルカ(vo)/
松岡“matzz”高廣(perc)/
矢野沙織(sax)/タブゾンビ(tp)/
元晴(sax)
※1stステージ:齋藤真友子(key)
=アドリブコンテスト準優勝
※2ndステージ:持田道太郎(tb)
=アドリブコンテスト優勝
ビルボードライブ大阪■06(6342)7722
※未就学児童及び高校生同士の入場不可。18歳未満は成人の同伴が必要。

【名古屋公演】
チケット発売中
▼11月14日(金)18:30/21:15
名古屋ブルーノート
ミュージックチャージ6900円
【メンバー】クリヤ・マコト(p)/
早川哲也(b)/大坂昌彦(ds)/NAOTO(vl)/
SHANTI(vo)/ギラ・ジルカ(vo)/
矢野沙織(sax)/タブゾンビ(tp)/元晴(sax)
※1stステージ:深見光明(g)
=アドリブコンテスト準優勝
※2ndステージ:藤井トシ(harm)
=アドリブコンテスト優勝
名古屋ブルーノート■052(961)6311

【東京公演】
チケット発売中
▼12月10日(水)・11日(水)18:00/19:30
テーブル席(指定)5500円 立見(自由)5000円
Dinner Set
(mini Dinner・1Drink付)12000円
2日間通し券
(テーブル席のみ/限定30枚)10000円
【10日(水)メンバー】クリヤ・マコト(p)/
納浩一(b)/則竹裕之(ds)/ギラ・ジルカ(vo)
/松岡“matzz”高廣(perc)/菊地成孔(sax)/
太田剣(sax)/類家心平(tp)/KOTETSU(vo)
※平木LAGGY宏隆(g)
=アドリブコンテスト優勝
※友田ジュン(pf)
=アドリブコンテスト・菊地成孔賞
【11日(木)メンバー】クリヤ・マコト(p)/
早川哲也(b)/大坂昌彦(ds)/SHANTI(vo)/
タブゾンビ(tp)/元晴(sax)/KOTETSU(vo)
/北原雅彦(tb)/Kubota(g)
※葛西玲緒(tp)=アドリブコンテスト準優勝
※Tsuneta(g)
=アドリブコンテスト・クリヤ・マコト賞
目黒ブルースアレイジャパン■03(5496)4381