全シングルを収録した絶品セレクション・アルバム
『3shine!〜Singles & More〜』携え2年半ぶりの全国ツアー中!
ベッキー♪♯がタレントとしての15年、アーティストとしての5年、
そして、1人の女性としての現在を語る撮り下ろしインタビュー
彼女の姿をテレビで見ない日は、今果たしてあるだろうか!? 多くのバラエティ番組やCM、ドラマなど数々のフィールドでその才能を煌かせるベッキーが、’09年に“半人前の自分がステップアップ出来ますように”との意味を込めてベッキー♪♯名義で音楽活動をスタート。抜群の歌唱力と作詞や作曲に加え、ステージ衣装等ビジュアル面でもその個性を発揮してきた彼女が、音楽活動5周年の幕開けを迎えた昨年12月、3rdアルバム『3shine!〜Singles & More〜』(サンシャイン)をリリースした。自身も「私の曲を1回も聴いたことがない方に聴いてもらいたくて作ったアルバム」と語る今作は、歴代の全シングル9曲に加えライブでの人気曲、GReeeeNとのコラボ曲も惜しみなく注ぎ込んだ、ハイクオリティ・ポップスがズラリの絶品“セレクション・アルバム”だ。同作を引っ提げ2年半ぶりの全国ワンマンツアー『My 3shine!』の真っ只中にいる彼女が、タレントとしての15年、アーティストとしての5年、そして、1人の女性としての現在を語った撮り下ろしインタビュー。まっすぐなまなざしと言葉の中に潜む、揺れ動く想いと覚悟を受け取って欲しい。
只々ありがたい15年だったなぁと思います
――まずは、昨年12月に芸能生活15周年を迎えて、自分にとってこの15年間はどういう時間だったと思います?
「早いなとも、まだそんなものかとも思わないし、本当に“15年だな”って感じですね。昔のアイドルさんとかって、“忙し過ぎてあの頃の記憶が全然ない!”っておっしゃったりするけど、私は毎朝日付を確認して、“私はこの日を生きるんだ”って1日1日を意識して生きてきたので、15年歩んだなという感じですね」
――なかなかそういう感覚って気付けなかったりすると思うんですけど、何なんでしょう。
「何でしょうね…何となく生きたくなかったんでしょうね。あとは、お仕事をたくさんいただけるのは本当にありがたいことなので、それを噛み締めながら日々を過ごしたかった。仕事は1つも手を抜かなかったと言い切れますね。でも、15年やってきていろいろなことが当たり前になりがちですけど、感謝は深まるばかりで。感謝する項目がどんどん増えていって、只々ありがたい15年だったなぁと思います」
――その中で2009年から始めた音楽活動も5周年に突入すると。
「音楽はすごく楽しい部分と大変な部分がありまして。ただ、こんなに成長させてもらえて、こんなにいろいろなことが勉強出来るものだとは思わなかったですね」
――そんなに違うもんですか?
「違いますね。そうだなぁ…これだけバラエティとかをやってきたのに、実は1人で何かをしたことがなかったんだなというか。ステージに出てしまうと、台本もないし、共演者もいないから、全部自分で空気を変えていかなくちゃいけない。セルフプロデュース能力は身に付いたように思いますね」
私の曲を1回も聴いたことがない方に聴いてもらいたくて作ったアルバム
――久々のアルバムをどんなものにしようっていうプランはあったんですか?
「5周年に突入するのもあって、一旦ここで自分の歩みをまとめてみたかったというか、私の歩みを知ってもらいたかったという感じですね。私の曲を1回も聴いたことがない方に聴いてもらいたくて作ったアルバムですね」
――ここまでガッツリ全シングルを入れるのも珍しいですよね。もったいぶらないというか(笑)。
「ハイ(笑)。思い切ってます」
――これだけ自分がやってきた足跡を改めて見てどうですか?
「このアルバムが出来上がったとき、“全ての曲が大好き”って純粋に言えることは、ホントに大きなことだなぁと思いました。一歩一歩を積み重ねて今の場所まで来れたので、全部の曲を愛せていますね。ホントにバラエティに富んでるので飽きないと思いますし、意外といろいろなジャンルを歌ってるんだなって思ってもらえると思います」
――ちなみに普段詞とか曲はいつ作ってるんですか?
「詞はちょこちょこ書き溜めてるんですが、〆切があるとそこに向けてガッと燃えるタイプですね。一番多いのはキッチンなんですけど」
――キッチンで!?
「何か一番落ち着いて、アイディアが出てくるんです。あとは乗り物で西に向かうと、何故か詞が出てくる(笑)」
――マジで(笑)。
「だから大阪行きの新幹線とか、ヨーロッパ行きの飛行機とかは、結構出るんです(笑)」
私は音楽で“悲しみのリサイクル”が出来ると思っていて
――アルバムの冒頭を飾る最新シングルの『ぎゅ。』(M-1)も、海外の作曲家を起用したり作詞を委ねたりと新しい挑戦もあって。今の時代のトレンドもしっかり出ているエレクトロな楽曲ですね。
「すごく新鮮でしたね。また、中村彼方さんの歌詞が、私の中にある感覚と結構似ていて、もう自分が書いたんじゃないかって思うっちゃうぐらい(笑)。いい風を吹きこんでいただいたなぁと思います」
――収録曲の中で印象的なエピソードはあります?
「『GOOD LUCKY!!!!! starringグッキー』(M-14)からGReeeeNのJINさんにプロデュースしてもらうようになったんですけど、それまでやってきたレコーディングと全く違って、ホントに3~4回歌って、ハイOKっていうような感じだったので(笑)。上手く歌うことよりもフィーリング、楽しいのが一番大事だから、それがもう十分伝わったからって。私が“いや、もうちょっと歌い直したいんです”とか言っても、“大丈夫、もう録れたから”って(笑)。衝撃的でしたね。でも、それぐらい信頼出来る方なんです。あとは『エメラルド』(M-9)の歌詞がなかなか出なかったなぁとか、『好きだから』(M-3)は宇多田ヒカルさんが使ってるスタジオで歌わせてもらったなぁとか」
――宇多田ヒカルさんは音楽を始める1つのきっかけだということですもんね。あと、『好きだから』の歌詞なんかも、普段は“疲れた”と口にしないようにしてるベッキー♪#さんが、歌詞の中では言ってしまうところが、逆にすごくいいなって。
「ありがとうございます。シングルで一番『好きだから』の歌詞が好きかもしれない。いつもは悲しくても必ずプラスに転じて終わらせたりしてるんだけど、『好きだから』はこのアルバムの中で唯一、只々悲しいだけの歌なんですよね。好きですね。スカッとします」
――こういう曲こそ、普段はテレビで観るベッキー♪#さんを歌によってすごく近くに感じる瞬間だなぁと。
「嬉しい。私は作詞家の小竹正人さんをすごく尊敬していて仲良くさせてもらってるんですけど、その小竹さんも“『好きだから』が一番いい”って言ってくれてるので。それは嬉しいですね」
――自分を出せる場所でもありますもんね、音楽って。
「そうですよね。そうなんですよ。私は音楽で“悲しみのリサイクル”が出来ると思っていて。悲しい出来事が起きても、音楽をやってなかったらそれがただ心の中に存在していたけど、今はその悲しい出来事を詞にして、それが誰かの背中を押すかもしれない。それは音楽と出会えて良かったなって思うことですね」
――そう考えたらやっぱり、音楽をやる前の10年と、やってきた5年って、またちょっと違いますよね。
「うん、全然違います。ホントに違います。親友にも言えない本音を、歌詞の中では書けたりもするんで」
20代は、実はずっと泣いていた気がします
――ベッキー♪#さんのシンガーとしての活動は、ただ歌うというよりも歌詞ありきじゃないですか。以前出されたフォトエッセイ『ベッキーの♪心のとびら』(‘09)もそうですけど、言葉への意識がすごくあるなと思ったんですよ。
「何か…“言葉”っていうものに、ホントにこだわりがあって。やっぱり活字より手書き文字の方が伝わったり…ぬくもりを持っていたいんですよね。他人の言葉だとやっぱり温度を感じにくいから、出来るだけ自分の言葉で届けたい。私は目に見えないパワーっていうものを信じているので。その方が伝わる気がするんです」
――俗にいう“言霊”というか。それがまた音楽に乗ったときにね、すごい広がり方をしますもんね。
「まさにそうです。そうなんですよね。歌詞を書き始めて、より思いました」
――さっき歌詞には本音が出るという話がありましたけど、逆に音楽を始めるまでって、あれだけ忙しく仕事していて、フラストレーションも含めてどう自分をどうコントロールしていたんだろう?って。
「1人で泣く。って感じかなぁ(笑)。何か20代は、実はずっと泣いていた気がします。でも、仕事の喜びがいろいろと解決してくれたり、私を救ってくれましたね。いや、本当に奇跡ですもん。こんなにお仕事をいただけるなんて」
――やっぱり楽しいことだけじゃないし、かと言ってしんどいことだけじゃない。そんな中で、音楽っていう新しいチャンネルがあったここ数年は、すごく充実してますよね。
「うん、充実してます。新しい世界が出来た感じですね」
人並みに痛い思いも苦しい思いもしたし、ありがたいこともたくさんあった
大事な節目になったような気がします
――そんな中でも昨年は、ボーカリストとしてもK-POPグループのINFINITEや、ORANGE RANGEの新ユニットNaotoHiroki & Karatesystemsとのコラボレーションがあったり、いろいろと変化があった年で。
「プライベートでもバラエティでもお芝居でも歌でも変化と気付きがあった、いろいろと鍛えられた1年でしたね。例えば麦って、種を蒔いて、芽が出て、“麦踏み”っていう作業があるんです。せっかく育ったのに何度も何度も踏みつけて刺激を与えて、大きく育つようにする。まさに麦踏みみたいな1年でした。マイナスな感じに捉えちゃうかもしれないけど、人並みに痛い思いも苦しい思いもしたし、ありがたいこともたくさんあった。去年1年で鍛えられたから、今年からパワーアップしていくのかなぁっていうような年でした。大事な節目になったような気がします」
――そして、今作は『3shine!〜Singles & More〜』と名付けられています。
「まずは3枚目のアルバムだったので3を使いたいなと思ったときに、数字の3と英語のSUNで“3shineだ!”って、ポーンと出てきて。これしかないと思ったので、それ以降はもう考えるの止めました(笑)。元々“太陽”をすごく意識していて、音楽を作るときも皆さんの道を照らしていけるようにという意識で作っていたので、もうピッタリじゃないかなって。やっぱり…私は“言葉”なんですよね。さっき話に出た『ベッキーの♪心のとびら』が歌手デビューのきっかけにもなったんですけど、そこで初めて自分の想いを言ったんです。あれが30万部を突破して、“私も思ってることを言っていいんだ”、“受けとめてくれるが人いるんだ”ってすごく思えた。“私も発信していいんだ”という気持ちが、歌という形になった感じがします。だったら発信し続けようって」
――オーディエンスとか視聴者から見たらすごく華やかな世界にいて、それこそいろんな発信をしてるように見えたけど、それが100%の自分自身とはまた違ったってことですよね。
「そうですね。ずっとバラエティに出させてもらってますけど、収録中に“人生って素晴らしいですよね!”なんて思っても言えないし(笑)、番組自体を、共演者さんをおもしろくっていう意識なので。歌は自分が主役になっていいし、自分のタイミングで気持ちが伝えられる。そこがいいんですよね」
やっぱりライブをして、目の前にいる人にその曲を届けて
初めてスタートする
――今作に伴う2年半ぶりのツアーもあって。
「リリースっていうのは自分の見えないところで広がってる世界だから、やっぱりライブをして、目の前にいる人にその曲を届けて、初めてスタートする感じがしていて。多分私のライブを観に来てくれる方って、最初はほとんどがタレント・ベッキーに会いにくる感覚だと思うんです。でもそれがきっかけでベッキー♪#の曲に興味を持ってもらって、はじめましての方と一緒にライブが楽しめるのも嬉しいし。もう、私に興味を持っていただいてる時点でありがたいです(笑)」
――(笑)。緊張とかはするもんですか?
「本番前のザワザワ感みたいなものはあるんですけど、“緊張”じゃないんだよなぁ。“もう早く出たいんだけど、まだですか?”みたいな感じ(笑)。血が騒いでる感じ。すごく緊張する方もいますけど、それは緊張した方が力が出せるから神様はそういう身体にしたんだと思います。私は緊張するとダメになるから(笑)、神様が緊張を与えなかったんだと思ってるんですけどね」
――そう考えたら、ツアーがある3月は刺激的な月になりそうですね。
「そうですね。ただ、今までは全力で頑張ることが素晴らしいし正しいと思ってたんだけど、去年いろんな体験をして、力を抜くことを覚えたというか。今は頑張ることと力を抜くことのいいバランスが自分の中にあるから、この状態のライブで、どんな自分に出会えるのかが楽しみ」
――最後に、よく“夢の途中”とベッキー♪#さんは言いますけど、それで言うところの夢って何なんだろう?なと。
「音楽に関して言うと、ずっといずれは“武道館!”って思ってたんですけど、遠くばっかり見て歩いてたらつまずいちゃうから、まずは手前の一歩一歩が大事だなって思うようになって。だからライブを1本1本大切にしていきたい。注目ポイントが変わりましたね。人生の目標で言うと…“いっぱい笑いたい”(笑)。ホント、ウルフルズさんの“とにかく笑えれば~♪”みたいな感じというか。そりゃあ欲しい幸せを言い出したらキリがないんだけど、そういう贅沢病になっちゃう人だから私は。笑えてればいいな。今はそれが全て!ですね」
――音楽を始めるまではとにかく泣いていた人が、今こうやって“笑えてればいい”って言える。人生って何だかおもしろいものですね。ライブ、楽しみにしてます!
「今日は楽しかったです! ありがとうございました!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
Photo by 渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)
![becky_ending.jpg](https://kansai.pia.co.jp/interview/1403music/becky_ending.jpg)
(2014年3月13日更新)
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