沈黙を打ち破れ! 高橋優が高橋優を取り戻した
渾身の3rdアルバム『BREAK MY SILENCE』!!
シンガーソングライターとして、1人の男として人生と覚悟を語る
撮り下ろしインタビュー&動画コメント
‘09年、ミニアルバム『僕らの平成ロックンロール』で彼を知った。愛も哀しみも内混ぜに痛快なまでに世間に咆哮を上げ、葛藤すらも血に変えた真性シンガーソングライターは、’10年にメジャーデビュー以降、瞬く間に多くの人に知られる存在となっていった。その理想的なステップアップを横目で眺めると同時に、大衆に支持されるということ、その中で自らの声を上げるということ、表現すること、戦うこと、維持すること、多くのことを考えた。そして今年、デビューから3年という月日を経て、その男は『BREAK MY SILENCE』というアルバムを遂に完成させた。“自らの沈黙を打ち破れ”と名付けられたこの作品には、あのときの男が今まで以上に大きな声を張り上げていた。この3年間抱いていた疑問への回答の全てがあった。弱さも迷いも受け入れて、高橋優が高橋優を取り戻した、間違いなく分岐点となる重要作『BREAK MY SILENCE』。現在は、初の日本武道館公演を終着点とした全国ツアーで、きっとその想いを爆発させていることだろう。幾重にも別れた回り道が遂に1つの太い道となった今、高橋優が歩むこの先を照らしたインタビュー。愛すべきシンガーソングライターの再出発、とくと見届けて欲しい。
高橋優からの力強い動画コメントはコチラ!
極論言えば、高橋優じゃなくてもいい
でもそれだと、歌っている意味もなければ
衝動が死んでしまったことになると思ったんですよ
――やっぱり去年末にリリースされたミニアルバム『僕らの平成ロックンロール②』('12)以降、高橋優に明らかな変化が感じられたと思うし、あの作品があってこその今年の2枚の先行シングル『(Where’s)THE SILENT MAJORITY?』(M-2)『同じ空の下』(M-10)、そして今回のアルバム『BREAK MY SILENCE』だと思うんですけど。僕自身、高橋優に惹かれたきっかけであるあの『僕らの平成ロックンロール』(‘09)の②が出ることが嬉しい反面、今の高橋優を取り巻く状況からすると“いいのか!?”ってちょっとビックリした部分もあったんです。
「去年、ホールツアーを2回やらせてもらった辺りって、“自分は何をどう歌っていくべきなのか?”みたいなことを、一番考えていた時期だったんですよ。もっと深いところで、自分は何を歌っていくか以前にどう生きていくのか、どういう男でありたいのかを、改めて考える機会だった。それってやっぱり、ホールツアーに来てくださった方々の顔を見たからなんですよね。すっごく嬉しいし幸せな反面、まだまだ現状やれることもあるはずなのにやれてない自分がいて、このままだと自分の好き嫌いとは無関係なところで人生が動いていってしまう気がして、すごく怖かったというか。やっぱり地に足着いていたいし、自分のやりたい音楽を全うする人生でありたいと、去年1年を通して思ったんですよね。そこから結構悩んだ時期もあったんですけど、ちょっとずつ曲を書き始めて出来たのが『僕らの平成ロックンロール②』だったんですよ」
――メジャーデビューしてからの高橋優は、誰が見ても分かるぐらいのステップアップをしていく中で、『僕らの平成ロックンロール②』のオフィシャルのインタビューでも“常に追われているような感覚があった”とか、好きなことをやらせてもらっているけれど、“どこかで受け身になっていないか”、“自分がやりたいことをやっていると強がっていないか”みたいに、ホントに素直な言葉が多くあったんですけど、これって同時に、僕もこの3年間高橋優に対して思っていたことと同じで。もちろん大きな流れの中で、多くの人に聴いてもらうための活動はすごく意義があることだけど、出来上がった状況やイメージをひっくり返すのって、すごく難しいしリスキーじゃないですか。その辺はどうやって自分の中でアクションを起こせたのかなっていうのが気になって。
「ホントに悩んだし、いろんなことに不安になったし。多分ちょっとずつ積もり積もっていったモノだと思うんですよね。デビューして嬉しいなぁ楽しいなぁという気持ちがありつつも、やっぱりインディーズの頃に比べると、自分の意図してないところで音楽を聴いてくれる人がいたり、全く持って思ってもいない受け取られ方をして、誤解が生じて誰かを傷付けてしまうこともある。最初はそれを気にしていかなきゃいけないんだと思ってたし、そういう想いが積もり積もっていくと、ドンドン自分の色よりもメジャーに合うかどうかとか、主流に寄せる考えの方が強くなっていったんですよね」
――うんうん。バランスを取るじゃないけど。
「はい。まあバランスが取れたら良かったんですけど、僕の場合そのバランスが取れてなくて、逆に寄せる方にばかりいきかけてたんだと思うんですよ。それはそれで僕の中ではいい経験だったんだけど、やっぱりどこかで、“もはやそのポジションのソロシンガーだったら他にもいるんじゃね?”っていう気がしたんですよね。極論言えば、高橋優じゃなくてもいい。でもそれだと、歌っている意味もなければ、そもそもこうやっていろんな人に聴いて欲しいと思った衝動が死んでしまったことになると思ったんですよ。それじゃいかんと。じゃあ何をやりたいのか?って改めて思ったとき、それはやっぱり“正直なことを歌に書く”ことだったんですよ。もしかしたら、“今までの高橋優の方がよかった”って悲しむ人がいるかもしれない。そんな危険性を孕みながらも、もっと正直に、誤解を恐れず、余計なことにビクビクしないで曲を書き、それをパフォーマンスしていくことだと思ったんですよね」
――溜まり溜まったものがある中で、そこから自分を引き出してくれたのは、やっぱり曲を書くことだった。
「時にそれが何にも形にならなくとも、“あ、こういう曲も書けるんだ自分”というか、“書きたかったんだな、やっぱり”って、何はともあれ曲が完成することですごい充実感が得られるんですよ。ただ“面倒臭ぇ!”って歌う『ボーリング』もそうですし、良いこと半分嫌なこと半分みたいな『昨日の涙と、今日のハミング』が出来てから(※どちらも『僕らの平成ロックンロール②』収録)、どういう風に曲を書き、どういう風に生きていくのか、今後の方向性みたいなものも見えてきましたね。あと、出会いにはホントに恵まれてるんですよ。例えば僕の歌を映像化しようとしてくれる人とか、文面に起こしてくれようとする人とか、そういう才能に溢れた、自由に生きようとしている方と接する機会が多くて。何でこの人はこんなにまでしてカメラを持っているんだろう? 何でここまでして文章1つに命を懸けようとしてるんだろう?っていう人たちと接してると、すごく元気をもらえるんですよね。僕が歌でそれをしていくこと、自分らしい歌にこだわってやっていくことも、1つの人生なんだなって。お金とかチャートとか、芸能界がどうっていうことじゃなくて、自分の音楽を、自分らしくやった方がいいよって、身をもって教えてくれる人が周りにたくさんいるんですよ」
――高橋優が周りの人に鼓舞されたように、僕も今回のアルバム『BREAK MY SILENCE』に、そう思わされたんですよ。自分らしくこのまま行こうと思えたというか…いろんな立場がある中で、“こいつはこのまま歌い続ける覚悟を決めたな”っていう絶対的な意思が、詞だったり歌から感じられて。
「それは嬉しいですね。例えば、『(Where’s)THE SILENT MAJORITY?』で一緒にやらせてもらったBRAHMANって、高校のときからコピーもしてたし、憧れのバンドだったんですよ。そういう自分が、音楽をもっとやりたいと思うキッカケになったバンドと今一緒にやれるっていうのは、想像以上にやっぱり貴重な経験で。どういうスタンスで楽曲を製作し、どういうアプローチで完成させようとするのかを、あんなに間近で見られることは今までなかったし、恐れ多くもそこに自分が参加させてもらっている。でも参加するからには、ブン殴られてもいいから嫌なものは嫌だとか、こうしたいっていう意見を本気でぶつけ合おうって。『同じ空の下』に関しても、カメラマンの大橋仁さんと一緒にミュージック・ビデオを作らせてもらって。自分の曲がまさか関根さんっていう64歳のおじさんのドキュメンタリーになるとは思ってなかったですから(笑)。それはそれで“俺はこうするんだ”っていう大橋仁さんのアピールじゃないですか。1つ1つの事柄に自分の爪痕を残そうとする人たちの影響は、間違いなく僕に活きていて、このアルバムを作るにあたっては、そういった出会いにかなり影響されていると思います。自分以外の人たちがどう生きて、何をやっているのかを見て、改めて自分を顧みるっていうのは、この近年の、特に今年に入ってからの僕の大きな発見なんですよね」
替えの効かない1人のシンガーソングライターとして
ちゃんと唯一無二になっていきたい
――今回のアルバムを作り出したのはどのタイミングから?
「『(Where’s)THE SILENT MAJORITY?』を作ったすぐ後からですね。声を上げようぜ、沈黙を破ろうぜっていう想いが、『(Where’s)THE SILENT MAJORITY?』の中にもあったし、それに沿った曲たちというか。自分自身の沈黙を壊すモノを書いていきたいという想いで、今回のアルバムの8割がたは『(Where’s)THE SILENT MAJORITY?』以降に書いた曲なんですよ」
――“リアルタイム・シンガーソングライター”と称される自分の、その“リアルタイム”を作り上げる外的要因に揺さぶられ葛藤してきた今までに対して、今回はそれが逆にいい風に作用するというか。楽曲に全て落とし込まれている気がします。
「まさしくそうだと思います。前より自分のことを好きになってるし、自分の慎重さを今回は敢えて取り払って。自信を持って自分の全てを赤裸々に出すことを、今回はこのアルバムの中で十分にやれたと思うので」
――そういう意味でも、『人見知りベイベー』(M-4)なんかはすごく良かったですね。声質が違う肌触りなのも面白いし、めちゃくちゃ自分が出てますよね?(笑)
「はい(笑)」
――いやぁ~もう面倒臭ぇヤツだなぁとも思いましたけど(笑)。それはもちろん愛すべき言い方ですけどね(笑)。
「それはよく言われます(笑)。“愛すべき”という言葉付けずに言う人もいっぱいいますけどね(笑)」
――アハハハハ!(笑) 言葉にはならなくとも、絶対に“愛すべき”が入ってますよ。人に向かって面倒臭ぇって言えないですよ、愛してないと。
「嬉しいですね。この曲はホントにまんま自分なんです。誤魔化したくなかったんですよ。人見知りって、だんだん誤魔化すのが上手になってくるじゃないですか? ホントはちょっとビビってたり縮こまってるのに、別に…みたいな態度を取るばっかりが、29年間生きてきて上手くなってきてる気がして。これは良くないと。自分はそもそもそんなに出来た人間じゃないし、そんなに社交的な方でもない。でも、そういう自分を理解した上で、ちゃんと社交的になっていこうというか、一歩ずつ地に足付けて前に進みたいと思ったときに、自分の弱い部分を堂々と、ちゃんと曝け出したい想いはあったんですよね」
――うんうん。しかし、人見知りについてここまで細かく書いてくれた歌って、かつてないんじゃないですか(笑)。
「そうかもしれないです(笑)。僕もあんまり聴いたことがないですね」
――この曲には高橋優の傾向と対策が詰まってる感じですよね。あと、『空気』(M-5)の楽曲同様ドラマティックなベースラインもシビれるし、『蝉』(M-8)とかもスタジオライブ的な生々しさがあって。ワイルドなロックナンバー『スペアキー』(M-7)もちょっと歌謡の風味もありながらと、アウトプットも自由というか、すごく風通しの良いアルバムだなぁと。
「今回は逆にバンドサウンドにこだわらなかったからこそ自由にやれたんですよ。『蝉』なんかはドラムとエレキギターの一発録りなんですけど、バンドだったらメンバーがいるからベースも鍵盤も入れる場合が多いじゃないですか。僕の場合は1人で完結していて、突き詰めればどの曲も弾き語りでいい。歌詞とメロディさえ聴いてもらえればいいという前提があるからこそ、サウンドは如何に自由に遊べるかってことなんじゃないかって。『スペアキー』はベースとドラムとアコースティックギターだけだし、かと思ったら『ジェネレーションY』(M-1)はモロ弾き語りだったり…1人の自由さというか強さみたいなモノは、今回はかなり意識しながらやらせてもらいました。だからレコーディングはすごく楽しかったですね」
――『スペアキー』の歌詞の突き放す感じも、世間の高橋優のイメージからしたらちょっと新鮮かもしれない。この辺の気持ちは分かるな~別れ方にもよるけど(笑)。
「はい(笑)。まあ何も残さないっていうね。いろんな愛の形があると思うんですけど、相手のことを思うのであれば、余計な余韻を一切与えないことも1つだと思ったりしたんですよね。この曲に関しては、みんなに想像して欲しい曲でもあるんですよ。これはもう男が女々しくてしょうがなくて、ただ嘆きながらこう言ってるだけ。“ホントは弱いクセに!”って聴いてもらうもよし、血も涙も無いような冷徹な男がバサッと言ってると思うもよし。この曲って女性の方の感想は様々なんですよ。だからそれも面白いなぁって」
――今作は、冒頭でも話したそれこそ“もはやそのポジションのソロシンガーだったら他にもいるんじゃね?”っていう曲ではなくて、やっぱり高橋優にしか歌えなかった、元々持っていた世界観が3年の熟成期間を経て、いざ出してみたらこんなにもドロッとして、痛快な音楽になりました、っていう感じがしていて。俺が今作を聴いて思ったのが、『僕らの平成ロックンロール』に代表される世間に痛烈に物申す高橋優とか、みんなの期待を背負う高橋優とか、いろんな役割がこの何年間かにあったとしたら、このアルバムでその何本かの道がようやく1つになった感じがしたんですよ。
「まあ道は楽ではないと思うんですよ。これからもメジャーで活動していく以上は、それこそ全然売れなかったら、こうやって話すことも出来なくなる部分ももちろんある。だけど、やっぱり自分の人生を、自分っていうシンガーソングライターのことを考えたとき、何を歌っていきたいかは絶対に考えなきゃいけない。そのバランスみたいなモノをちゃんと取れる人が残っていくんだと思うし、逆にそういう難しいことを大切に考えていければ、これからもきっと納得のいくモノを作っていけると思うんですよね。今はまだホントに始まったばっかりで、メジャーデビューして3年っていう状態ですけど、そういう自分なりの色を濃くしていくこととか、こだわるところにこだわってやっていくことで、替えの効かない1人のシンガーソングライターとして、ちゃんと唯一無二になっていきたいんですよね。そして誰かをしっかり勇気付けていくというか、リスナーと一緒に歩んで行ける存在でありたいと思ってるので。そういう意味ではその第一歩というか、まずは狼煙を上げることが出来たんじゃないかと思っています」
以前は“僕みたいなもんが歌わせてもらってどうもすみません”
みたいなところもあったと思うんですよ
だけど今は“今自分に歌わせてください”っていう気持ちになってきてる
――このアルバム自体も、今日話したことにも強さを感じられるけど、元々そうだったけど僕らが気付いてなかったのか、それとも強くなったんですかね。
「やっぱり少し自信が付いたんですよね。以前は“僕みたいなもんが歌わせてもらってどうもすみません”、みたいなところもあったと思うんですよ。だけど今は“今自分に歌わせてください”っていう気持ちになってきてる。“うるせーな!”って言われても、“黙れ!”って言われても、“何このー!”って言い返せるぐらいの基礎体力みたいなものが付いてきてるんだと思うんですよね。サウンド面に関しても、音圧を上げるというよりは自分の弾き語りを主軸にする。ソングライティングについても、きっとこれで唯一無二になっていけるはず、高橋優でいられるはずっていう何かを、前よりは少し持ってるんですよね」
――『CANDY』(M-6)とかも、聴けばイジメがテーマの曲だと分かるけど、そうとは一切明言しないじゃないですか。でも、それを感じさせるストーリーと言葉のチョイスがちゃんとあって。これもグッとくる曲だなぁと。
「これは、“したたかさ”をテーマに書いたんですよね。クレバーであることというか、ただやられたらやり返すことが強いのかと。でも世間的にはそうだと思うんですよ、論破したヤツが勝ちみたいな。でも僕はそれは強さじゃなくて、弱い者同志のどんぐりの背比べみたいなものだと思っていて。本当に強くあるためには、あのときよりも間違いなく今が充実してると言えるかどうかだと思うんですよね。言い返して相手をねじ伏せて幸せな人はそれで良いけど、僕はそうじゃなかった。かつてイジメられてたときは、やっぱり憎しみに満ちていたと思うんですよ。“何で自分がこんなことをされなきゃいけないんだろう?”って。それに“自分はイジメられてました”って言ったら、“うわ、弱!”みたいなこと言われるような気がして怖かったし。だけど今は、それをフラットな気持ちで話せるんですよ。イジメられてたけど、別にイジメ返したいとは思わないし、それで誰かが傷付いて不幸になればいいとも思ったことはない。でも、イジメは今も起こってる。それはすごく悲しい。だけど、人は変わっていける。したたかに生きてさえいれば、絶対に幸せはあるし、強くなることが出来るって言いたかったんですよね。この曲は何が起こったとしても、強く生きていくことの意味について考えたくて書いたんですよね」
――それこそ、最近BRAHMANのTOSHI-LOWさんにもインタビューしたんですけど、まさにその強さについて話していたときに、力でぶちのめすのが強さじゃなくて、自分の弱いところとかヒリヒリした部分を、どこまで持ち続けながら生きていけるかどうかなんだ、みたいな話をして。そう考えたらやはり、このタイミングで一緒に曲を作り上げることになるのも必然だったかもしれないですね。
全部出し切った気持ちがあるのに、漠然ともっと作りたい
もっと言いたい、もっと歌いたいっていう想いが、まだあるんです
――そして一転、『泣く子はいねが』(M-9)は確信犯的な方言ロックですけど(笑)。これがやれちゃうのも今だからでしょうね。ライブでも盛り上がりそうですね、コレ。
「これも今までだったら出来なかったと思うんですよね。僕は秋田出身だからってどうこうじゃなかったんですけど、そこに意味がないからこそ歌う価値があると思ったんですよ。例えば、大阪出身で大阪弁を躊躇せずに話す人は全国各地にたくさんいるけど、秋田出身だからって秋田弁ばっかり喋る人はいないし、僕もそんなことはしてなかった。でも、それぐらい秋田の魅力って薄いのか?って言ったら、そうじゃねぇだろう!と思ったんですよね。秋田の魅力っていっぱいあるし。過去には脳卒中で死ぬ人No.1だったし、高齢化率No.1だったんですけど」
――アハハハハ!(笑) 魅力じゃねぇじゃん!(笑)
「良いところも悪いところも濃厚にあるんだから、それをもうちょっと出していこうぜ秋田!みたいな(笑)。くよくよしてる場合じゃねぇだろうっていう想いは、秋田以外の場所に住んだからこそすごく感じるんですよね。札幌に6年住んで、東京に6年住んた今、“おい、秋田!”みたいな(笑)。一緒にやっていこうぜっていう自分の想いがここで爆発したんです」
――でも、秋田の人も“え、今!?”って思ってるかも(笑)。
「デビューして3年目にして秋田を歌うっていう(笑)」
――そして一転、最後の『涙の温度』(M-11)はめちゃくちゃスケールがデカくて。何か…いいこと言うね。
「ありがとうございます(笑)。アルバムとしては割と個人的というか、すごくミクロの方に集約されている気がしたので、そのまま終了するというよりはもっと客観的に、俯瞰するマクロの目線が自分には間違いなくあるということを、ちゃんと歌っておきたいなと。この曲が出来た時点でアルバムの最後の曲にしようっていう想いはありました」
――このアルバムにあるのは“リアルタイム”だけじゃなくて、やっぱり“29年の人生”みたいなものが出てますよね。
「あとは、“許容すること”だと思ってるんですよ。包容力じゃないですけど、ライブをやるからにはやっぱりいろんな人の喜びも悲しみも、言葉は悪いかもしれないですけど怨念みたいなモノでも、ステージの上に全部ぶつけてもらってしかるべきだと思うんです。そういう日頃の鬱憤を晴らして欲しいじゃないですか。今までは自分がどれだけちゃんと立派なステージやれるかどうかみたいな気持ちが強くて、そんなところまで頭が回ってなかったと思うんですよ。でも、自分が立派かどうかなんてほんの一部でしかなくて、やっぱ1人1人が主役の人生で、1人1人が主役のライブ会場なんだとしたら、誰もが幸せな気持になるべきだし、あー良かったなぁとか、スッキリしたなぁっていう気持ちになって欲しいんですよね。僕が“声を聞かせてくれ”って言うのはそこにあって。僕がただ声を上げるんじゃなくて、これからはいろんな人たちの想いを、弱さも強さも僕がドンドン許容して受け入れていって、僕の根っからの強さも弱さもまた出していかなきゃいけないなって。さっきのTOSHI-LOWさんの話じゃないけど、弱さをちゃんと持っていることが強さだっていうことも共感出来ますよね。僕も確かに自分の弱さを誤魔化したくはないし、弱さがなくなりゃそりゃいいなと思うけどやっぱりあるし、あることをちゃんと確認出来た方が強くなれると思うんですよ」
――許容するとか歩み寄るって言葉にするとマイナスなイメージがあるけど、ここ最近の高橋優のそれは攻めの姿勢というか。今回のアルバム、手応えはあったんじゃないですか?
「手応えはあります。ただ不思議なのは、全部出し切った気持ちがあるのに、漠然ともっと作りたい、もっと言いたい、もっと歌いたいっていう想いが、まだあるんです。それがまた、このアルバムの感想を聞いたり、それをライブでどう観てもらったとか、本を読んだり映画を観たりすることかもしれないですけど、自分が感じたものが言葉になって、楽曲になるんじゃないかなって思いますよね」
今までももちろん高橋優だったけど
これぞ丸裸の高橋優が今のライブには出てるから
――今作に伴うツアーもありますが、昨年のホールツアーで見たお客さんの顔が自分を変えてくれたように、またこのアルバムを出して廻るのもまた楽しみですよね。
「今は地に足が着いているので、この状態でまた新しい発見とか、やりたいことが見付かったりしていくんじゃないかなぁと思います」
――Twitterでも見たけど、ライブに向けて毎日こんな夜遅い時間に走り込んでるのかって(笑)。
「そうなんですよ(笑)。メンタル面でも緊張を如何に楽しむか、乗りこなせるかっていうことが、僕の中では今すごく大事で。不安だったり嫌なことって誰にでもあるけど、それを逆手に取って如何に爆発出来るかがテーマになってきてる。それも多分、この『BREAK MY SILENCE』っていうアルバムがきっかけだと思うんですよね。今までももちろん高橋優だったけど、これぞ丸裸の高橋優が今のライブには出てるから、観て欲しいですよね」
――今年の年末には三十路に突入するわけですけど、高橋優がどういう30代を過ごしていくのかも楽しみですね。
「面白がっていたいっていうのはずっとありますね。何をやるにしても僕が楽しんでいないと、やっぱり周りの誰も楽しくないんですよね。僕がやらされてる気分で歌を歌ってたらお終いだと思うんですよ。ステージの上であれどこであれ、まずは僕が楽しんで、人生を十分に全うしている状態を続けていかないと。自分の全てを出し切り続けることで、誰かの希望になったり元気の源になったりっていうような状態を、もっともっと広げていきたい。このシンプルで迷いのない想いはいい状態だと僕は今思ってるので、この感覚はこれからも覚えておきたいと思います」
Text by 奥“ボウイ”昌史
Photo by 河上良(bit Direction lab.)
撮影協力:喫茶スワン
(2013年8月21日更新)
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