いよいよ『未来へのスパイラル』全国ツアー開幕!!
人力でシーンに巨大な渦を巻き起こすグッドモーニングアメリカが
メジャーデビューまでの波乱の12年と現在地を語る
金廣真悟(vo&g)&たなしん(b)インタビュー&動画コメント
高らかに幕を開ける冒頭の『ファイティングポーズ』がこうも感動的に響くのは、このバンドの歩いてきたその長い道のりに、音楽を志す誰もが味わう苦悩と喜びが、確かに刻まれているからだろう。エネルギッシュなライブパフォーマンスで現在のギターロックシーンを牽引するグッドモーニングアメリカが、遂に1stフルアルバム『未来へのスパイラル』を完成させ、メジャーへと進出。さらには、自ら音頭を取るオムニバスアルバム『あっ、良い音楽ここにあります。』、それに伴う自主企画イベント『あっ、良いライブここにあります。』では、志を共にする盟友たちを有名無名問わずフックアップするなど、今まさにシーンを活性化する役割を一身に担っている。そこで、7月11日(木)の千葉LOOKより『未来へのスパイラル』を引っ提げた全国ツアーを遂にスタートさせるグッドモーニングアメリカに、12年に及ぶバンドの波乱のヒストリーを紐解くインタビューを敢行。ハイエナジーな楽曲に潜む痛みをグッドメロディに乗せ、聴く者の心臓を打ち抜く彼らの音楽の根幹とは? 第二のスタート地点に立った4人は今何を思うのか? ソングライティングを手掛ける金廣真悟(vo&g)と、ライブにおける起爆剤的な役割を担うたなしん(b)との会話の中に流れる、ミュージシャンとして歴史とプライド、そして誠実さに、このバンドの未来を見た。浮かれるには遅過ぎる、諦めるには早過ぎる。泣きながら拳を突き上げライブデイズを生きる、全てのオーディエンスに捧ぐインタビュー。
金廣(vo&g)とテンションMAXたなしん(b)の動画コメント!
――いいバンドって、バンドマンから名前を聞くんですよね。それって信頼出来る意見だと思っていて。ある種ライバルでもある中で、それでも人に対して“あいつらいいんですよね”って言えるのは、嫉妬や羨望を越えたものがあると思うんで。グッドモーニングアメリカはここ数年よく名前を聞くバンドであったし、個人的に印象的だったのが2年くらい前の『MINAMI WHEEL 2011 EXTRA-MIDNIGHT EDITION-』 at なんばHatchで。あの時点ですでにそこよりデカいステージにいく空気があるライブだったんですよ。だからすごく覚えてて。
金廣(vo&g)「ありがとうございます!」
たなしん(b)「その頃は初めてワンマンやって、ここまで大きいステージでやるのは初めてくらいだったかな?」
金廣「Hatch自体も初めてだったし」
――まさに、その先が見えるステージというか。かと言って、ポップでキャッチーな方に寄せて、メインストリームのド真ん中に行きますっていうパフォーマンスでも曲でもない。なのに、その予感を感じられたから、すごい面白いバンドだなって。
金廣「嬉しいですね~」
――それから2年ぐらい経って、お客さんの愛じゃないですけど、今では大阪での盛り上がりもすごいものがあって。とは言えキャリアは実は長くて、結成は前身バンドを合わせると2001年ってことですよね?
金廣「そうですね。高校からなんで」
――遡って、そもそも2人が音楽をやり始めたきっかけって?
金廣「僕の場合は一番最初はピアノですね。妹だけずるいわ~と思って、やり始めたのがきっかけです(笑)。あとは、小2のときに高松先生が、『ガラガラへびがやってくる』(‘92)とかマッキー(槇原敬之)とかチャゲアスを入れたテープをくれたのがきっかけで、音楽が、歌うことがすごい好きになって。そこからレンタル屋さんにめっちゃ行くようになったのはありましたね。バンドをやろうと思ったのは中2で、そのときは石川県に住んでたんですけど、たまたまイギリスに1ヵ月くらい行かせてもらうことがあって。ホームステイ先の人がギターを弾く人で、ライブバーみたいなところに毎日のように連れて行ってもらって、バンドってカッコイイな~って。日本に戻ってきて今度は東京に引っ越すことになって、たまたま一番最初に知り合いになったのが、今のQUATTROのボーカル(岩本岳士)と、The Mirrazのベース(中島ケイゾー)で。そいつらとバンドやろうぜって始めたのが、一番最初ですね」
――今考えたらめっちゃ面白いメンバーやな~。さらに同級生がTOTALFATで後輩がBIGMAMAって、なんちゅう校区だって話ですよ(笑)。
金廣「面白いですよね(笑)。高校に入ったらこいつ(たなしん)とか、TOTALFATがいて。当時からすでにTOTALFATはガンガンライブをやってたんでそれを観に行くようになって、“ライブやりてぇ!”ってバンドを組んで。その流れで今がある感じですね。」
このバンドには同じ人種が集まらなかったのがすごいよかった
――たなしんの音楽遍歴はどこからスタートしたんですか?
たなしん「やっぱり高校が大きかったですよね。それまでは表現するとかバンドをやる発想は全くなかったんですけど、ラジオが好きだったんでそこから流れてくる洋楽だったり90年代のポップスだったりを、普通に生活の一部として聴いてましたね。で、俺も目立ちたがりだし(笑)、皆さんに誘われて始めたのが今のバンドですね」
――じゃあこれが最初のバンド?
たなしん「そうです、ずっと。これ以外やったことないです」
金廣「俺はこれで3つめかな。大学1~2年くらいのときに呼ばれて入ったんで」
――それぞれ別に活動していた時代は、お互いどんなベーシストだとか、ボーカリストだとか印象はあった?
たなしん「高校で一番歌がうまいなと思ってましたね。あと、金廣がやってたバンドの曲がすごい好きだったし、グッドモーニングアメリカの一番最初の原型となるバンドでメンバーが抜けちゃったんで、“金ちゃん一緒にやんない?”って声をかけたのがきっかけかもしれないですね」
金廣「でも、俺はこいつのことがあんまり好きじゃなかったんですよ。今はいいんですけど、当時は“適当にモノを言うなや”ってすごい思ってたんで(笑)」
たなしん「なるほど!(笑)」
――ハハハハハ!(笑)
金廣「当時のドラムのドラミングとか曲のセンスがすごい好きだったんで、そいつと音楽をやってみたいなって。ベースはこいつだけどまぁいっかって感じです(笑)。でも今はいろいろ経験もしてきたし、言うこともは適当でも重みがちょっとあったりするんで、信頼は出来るんですけど。今となっては(笑)」
たなしん「人生何があるか分かんないってことさ(笑)」
――でも、そのドラマーが1つのモチベーションで加入したのに、いなくなっちゃったんですね。
金廣「曲の世界観を作ってきた片方がいなくなって。正直もう違うバンドを組もうと思ってたんですよ」
――脱退が解散の引き金になることはよくあることですもんね。
金廣「でも俺1人でグッドモーニングアメリカじゃないし、全員でグッドモーニングアメリカで。ただ、人間だからいろんなバイオリズムがあって、その頃はこいつがあんまりよくない時期だったんで一緒にいたくねぇな~と内心思ってたし、向こうもそう思ってるだろうなって。だから、ドラムと一緒に辞めて新しいバンドをやるんだろうなって。そしたら残るって言ってきたから、“え~やるの~!?”って(笑)。それでギターの渡邉が仲が良かったペギ(ds)を誘って今の形になって」
――そう考えたら、その時点では続けるに値するとはまだ確信が持てないくらいの温度だったと?
金廣「と言うか、全然うまくいってなかったんですね。活動的に前に進んでいる感じもないし、のれんに腕押しみたいな感じで。やるにはやってるけど、何も進んでないし、何も引き寄せてないし、手応えもなくて」
――たなしんは選べたわけじゃないですか。旧知の仲のドラムと一緒に新しいバンドに行ってもいいし、金廣くんとはギクシャクしてるし(笑)。そんな中でまだこのメンバーとやりたいと思ったのには何かありました?
たなしん「正直、辞めようと思ったんですよ。でも、TOTALFATのBunta(ds)とは親友で今も一緒に住んでるんですけど、前のドラムが抜けるって決まった翌日にたまたま連絡があって、“実はこんなことが…”って伝えたら、“新しいドラムなんていっぱいいるから、絶対うまくいくよ! それでまた対バンしようよ”って言われて。そいつが気軽に言ったその言葉が、何かスーッと入ってきたんですよ。そいつに言われたからやるわけではなく、腑に落ちたんでしょうね。それがあって、“俺、やっぱやるわ”って言った気がします」
金廣「でも、その頃には俺、速攻違うベースとドラムを誘ってましたけどね(笑)」
――早いな~!(笑) でも、タイミングですね。
たなしん「そう。それがもっと遅かったりしたら、こうはなってなかったと思いますね」
金廣「結果、このバンドには同じ人種が集まらなかったのがすごいよかったな~と思っていて。同じタイプの人間が集まってたら、こういうスタンスとか見せ方を絶対に選んでないし、もっと1人で聴くような音楽というか、ライブを観て楽しい!とか、喜びを与えるようなバンドにはなってなかったと思います。自分の中で大事にしてることがあるんですけど、自分がどの道を選ぶか選択するとき、他人から“こっちの方がいいよ”って言われた方が正しいっていう、人生論みたいなものがあって。実際そういう風に選んで今ここにいるんで。田中(たなしん)とは高校からの付き合いだし、こういう選択を自分にさせてくれたって、今は思ってます。当時はマジか~って思ってましたけど(笑)」
やったことに対してのリアクション=反応が返ってくるって、すごく大切
――その“のれんに腕押し感”はいつ頃解消されたんですか?
金廣「ペギが入って1年くらいしてからですかね。それまではライブもめちゃくちゃやってて、八王子だけで月13本とか(笑)。絶賛のれんに腕押し中だったんですけど、そうこうしていく内に、元々こういうキャラではあるんですけど田中がカスタマイズされていって、お客さんの心の扉を開く作業をしてくれるようになって、それによって曲がちゃんと届いている実感があって。それに対してお客さんからのレスポンスがあって、俺らがもっと、っていう相互作用で、“のれんに腕押し感”は減っていったのかな~って思いますけど」
――たなしんはお客さんのハートを掴むような今のパフォーマンスをやろうと思ったのはいったい?
たなしん「最初はなりふり構わず、試行錯誤だと思いますね。それこそ八王子で13本とか…今考えたら意味ねぇだろ~!って(笑)、そうやって1つ1つ、今日もダメだったな~みたいなことの繰り返しで。反応が良かった部分をかいつまんでやっていった結果だと思います。活動の仕方だったり、曲作りだったりも、この5年間ぐらいで少しずつ積み重ねてやってきたというか」
――そう考えたら、グッドモーニングアメリカはすごく真摯なバンドですね。それこそさっきの“カスタマイズ”っていうのがまさにで、レスポンスに対してちょっとずつ改善してきたことが、ちゃんと反応になって返ってくるっていう、本当にいい循環で。
たなしん「これは僕が特に感じることなんですけど、“のれんに腕押し感”。これってバンドの永遠のテーマで。音楽性の変わり目で一時的に活動を休止してたときって、ライブもせずに、自分たちだけでスタジオに入って…」
金廣「自分たちの殻にこもって、4人だけのために、4人がいいと思う曲を書いて」
たなしん「それが、どんどんライブをやってお客さんが1人2人と増えていったり、他のバンドマンの先輩に相談したり、今レーベルを一緒にやってくれてる人がアドバイスしてくれたり。やったことに対してのリアクション=反応が返ってくるって、すごく大切なことなんじゃないかって今は思いますね。それまではランキング外、ビリにも入ってないみたいな感覚だったので」
――レースにすら参加出来てないみたいなね。
たなしん「そうですね。ようやくレースに出られたからこそ、上に行きたいとも思ったし。感触があるからまた余計に、っていう繰り返しは、今でも続いていると思います。ずっと続いていくんじゃないかと思います(笑)。そのステージに行こうと行動出来たきっかけは、ペギが入ったのが1つのターニングポイントなのかもしれません。今話をして思ったんですけど」
――それこそエンジニアも高校時代からの仲の方だったり、グッドモーニングアメリカって、4人でどうこうしていくというよりは、“チーム”というか。お客さんにもそれこそ“グドモクルー”っていう名前が付くくらい、みんなで肩を組んで上がっていくところがある。それってどのバンドもが出来ることじゃないと思うんですね。主催のオムニバスCD『あっ、良い音楽ここにあります。』といい、それに付随するイベント『あっ、良いライブここにあります。』といい、最初にも話しましたけど、自分たちだけがどう上がるかじゃなくて、“こいつらいいバンドなんだよね”って人に紹介したりすることって、極論言えばシーンを生き抜く上ではやらなくてもいいことじゃないですか。
金廣「好きなんでしょうね、そういうのが。要するにTOTALFATも仲間だし、でも敵っちゃ敵だと思うし(笑)。でもやっぱ一緒にやりたいなって思うし、間違いなくいいよって友達に薦められるバンドだし。そういうバンドっていっぱいいると思うんですよ」
たなしん「そういう質の人が集まってきますね。元々八王子で10代でバンドを始めたときのシーンがメロコアだったりするんですけど、そこでバンドのスタンダードが出来た気がすごくするんですよね。毎回打ち上げに出て、先輩方がいろんなバンドを紹介してくれてとか」
金廣「遠征7連ちゃんとか(笑)。炊飯器持って行ってね」
たなしん「それも最初は、地方のライブとかは先輩が手配してくれたりして。ツアーファイナルのときに、すごい感動があるんですよ」
金廣「泣いちゃうんですよね(笑)」
たなしん「例えば今日知り合って、そこからどんどん積み上げてって、武道館やりますって…“良かったやん! 目指したことが実現したやん!”ってなることが、一番幸せなことだと思うんですよ。バンドを始めたとき、それを最初に体感として教えて頂いた気がするから、バンドを続けていく上で自然とそれを欲しがっちゃってるな(笑)。特にギターロックのシーンでね」
金廣「メロコアから方向性が変わってグッドモーニングアメリカをやり始めたとき、最初はビックリしたもんね」
たなしん「打ち上げに行ってもみんな“帰ります”とか、そっけなかったりして」
――俺も“東京って打ち上げないんだ”って思うことがよくあった(笑)。
金廣「アハハハハ!(笑)」
――だからグッドモーニングアメリカがやってきたことが、めちゃくちゃデカい渦になっていっているというか。それこそ“未来へのスパイラル”じゃないけどね(笑)。
たなしん「いろんな意味で(笑)。ありがとうございます。いろんなインタビューがあると思うんですけど、今日は他ではしてない話も結構してると思います。それもまた1つの新しい」
――発見をして、次のインタビューで何か変わって、また新しい人巻きこんで渦になる。
たなしん「それはすごく思いました」
金廣が作るメロディに対しては、絶対的な信頼がある
――今回はメジャーで出すというのもトピックですが、何より今までフルアルバムを出してなかったのが意外で。
金廣「ミニばっかりでしたね。実際、フルを出す実力もなかったと思うし、それは本音ですね。自信もなかったかな。“出したい!”っていう気持ちは人一倍、12年間もやってきたんであったんですけど。でも、ようやく出せたのですごい嬉しいですね」
――メジャーデビューって、やっぱり単純に嬉しいですよね。
金廣「嬉しい半面、結果を残さないととは思ってるんですけど、その前に単純にもっとちゃんとしようって感じですかね(笑)。アーティストとしての生活にどんどん変えていかないと、この責任をちゃんと背負えないなと思います」
たなしん「あとシビアに、デビュータイミングって関わる人が増える時期、つまりお金をかけてもらえる時期じゃないですか。そこで、結果を残さないとその後も難しいと思うので。バンドは長く続けていきたいと思うし、この時期に立ち位置をもっと上げて、そこで自分たちの地盤を広く固めていける1つのチャンスだと思ってるんで。そういう風にみんなが、チームが思ってる。今まで以上に音楽に対してとかインタビューに対しても考えるし、自ずと姿勢も変わってるんだろうなと思うと、メジャーに来れたのはすごくプラスな状況だと思います」
――それこそ今まで作ることがなかったフルアルバムですけど、今回の制作の際にどんなものを作ろうっていうのはあったんですか?
金廣「気持ち的には基本的には変わらず、作り方も変わらず。でもフルアルバムなんで、名刺的なものをもちろん入れつつ、音楽性はもっと広げていきたいなって。J-POPから激しい曲まで、いろんなリズムも入れたいと思ってたし、実際にそれが出来たし」
――今回の曲作りは、金廣くんが山中湖でひとり合宿したんですよね。メンバーでセッションするというよりは、まず元になるものをガチっと作る感じなんですね。
金廣「完全にハモリまで入れてガッツリ作り込んで、まずはペギに聴かせて。そうすると自分の中にないリズムとかを入れてくれるんで、その曲が持ってる表情が変わる。そのいいところだけを取って、取捨選択を繰り返して。そこからベースを考えてください、ギターを考えてくださいって。もちろんその土台は全部作っていくんですけど」
――たなしんはもらった曲に何か変化は感じました?
たなしん「アルバムを意識して、幅広く作ってきてくれてるなっていうのはありましたね。最初は歌詞がないパターンが多いんですけど、金廣が作るメロディに対しては、絶対的な信頼があるので。そこに対してのアプローチは自分なりに考えますね」
――金廣くんは“痛みのある曲を書きたい”と他誌のインタビューでも言ってましたが、その想いってどこからきてるんですか? 誰もが思うことではないと思うんですけど。
金廣「逆にそれがすごい不思議というか、痛みのない曲を書いてみたことがあるんですけど、それが嘘だなって感じたんです。今だったら、曲自体の持ってる雰囲気に全く痛みがないパーティーチューンを作ったとしても、そこに歌詞で痛みを乗っける面白さはありますけど、『空ばかり見ていた』(‘10)の頃とかはそういうことが出来るような人間じゃなかったんで(笑)。痛みっていうものは、メロディにもなきゃいけないし、歌詞にもなきゃいけない。それが全くないっていうのは自分じゃないし、説得力ゼロだなって。痛みのある音楽が好きだし、そうじゃないと受け入れたくないというか…自分が曲を作る上ではそうありたいと思います」
――例えば、『下らない毎日が』(M-11)の“屍のように生きている”っていうフレーズって、すごくローな言葉じゃないですか。でもそれを乗せているメロディはめちゃくちゃアガる。そこがグッドモーニングアメリカの面白いところだと思うんですよね。自問自答だったり、身につまされることだったりを重たくて暗い音楽に乗せるんじゃなくて、信頼感のあるメロディに乗せて、みんなのパフォーマンスで表現する。いい意味でのギャップがあるというか。
金廣「俺もそこはすごい面白いなって思ってるところで。逆に最近やりたいのは、すごい悲しいメロディ悲しいアレンジで、“楽しい”って歌いたいな~って(笑)。それを想像すると鳥肌立つので、いつかやりたいですね」
――今回のアルバムが出来上がったとき、思うことはありました?
金廣「自分たちが作った音楽自体にも納得してるんですけど、今回はマスタリングでこんなに変わるんだ!っていうことを経験出来たのが、すごいよかったことですね。音がきらめき出すというか、ツヤが出るというか。ちゃんとパッケージングされたアルバムになったことに対しては、すごく満足してますね」
たなしん「例えば、他の売れてるバンドの音を聴いたり、ちゃんとお金がかけられてるPVを観てカッコいいな~!って思ったり。そういうところに少しでも近付けた満足感はありますね。そういう意味でも、1stアルバムでこの作品が作れた喜びはすごくあります」
ハイとローとか陰と陽という純粋なものが、どうしたって自分の中にはある
――あと、『キャッチアンドリリース』(M-2)やタイトル曲の『未来へのスパイラル』(M-4)は、“売ってやるぞ”という強い気持ちで書いたところもあるみたいですね。
たなしん「すごいですね。本当に全部知ってくれてる(笑)」
金廣「どこで知ったんですか(笑)」
――どこで知ったかは忘れたけど(笑)。
たなしん「いつも聞かれることだったら金廣が全部喋っとけばいいや~ってたまに思うんですけど(笑)、ちゃんと話したいって思いますね」
金廣「『キャッチアンドリリース』と『未来のスパイラル』に関しては、お客さんをグッチャグチャにさせてやろうと、そこだけの意識で作った曲で。ライブを意識して曲を作るっていうのは自分の中の曲作りの根本で、サビにはもちろん覚えやすいフレーズと、痛みがある。それが推し曲として起用されたんで自信にもなったし、そういう意味ではよかったです。推し曲を作ろうと思ってちゃんと作れたんで、間違ってなかったなって」
――昨年、金廣くんとカミナリグモの上野くん(vo&g)が他誌で対談したとき、音楽に対して誠実でいられるかと考えることもあったみたいで。ライブからは陽のエネルギーを常に感じるけど、作っている本人はいろいろと揺れ動いているんだなって。
金廣「やっぱり曲を作るって、純粋なことだと思うんですよ。あの頃は、本当にこれは純粋なんだろうか、純粋じゃないんだろうか、本当に好きなことをやってるんだろうか、好きな生き方をしているんだろうかって…いろんなものを捨ててきて、悩んでいたわけじゃないですけどそう感じてたし。でも、『キャッチアンドリリース』を作ったときに、振り切れたんですよね。悩んでてもしょうがねぇやって。ハイとローとか陰と陽という純粋なものがどうしたって自分の中にはあるから。表現を突き詰めたい気持ちと、お客さんと共有したい気持ち。俺の中ではどうしたって別物なんですけど、最近はその2つがぶつかり合うから面白いのかなって」
――だからこそ他にはないものになってるっていうのはね。
金廣「そうありたいなと思いますね」
――そして、アルバムのタイトルは『未来のスパイラル』ということですが、これは?
たなしん「推し曲がこれに決まりましたってことは、この曲を届けるために、皆さんにより広げるためにはこのタイトルがベストだなって」
――よりこの言葉を聞いてもらうことになりますからね。
たなしん「潔いなと思って。まさにそういうアルバムだと思うし」
――今作に伴うツアーにも、各地でいろんなバンドがサポートしてくれて。このスパイラルがより大きな渦になっていくことを期待してます! 本日はありがとうございました~!
金廣&たなしん「ありがとうございました~!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2013年7月10日更新)
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