真性ライブバンドにして重度のバンドアディクトが贈る
原点回帰の“ありのままのスクービードゥー”!
バンドの快感と中毒性が生み出した新作『かんぺきな未完成品』
コヤマシュウ(vo)&マツキタイジロウ(g)インタビュー
痛快にして強靭なファンキー・グルーヴに満ちたサウンドで、結成18年目にしてさらなる高みへと登りつめ続けるスクービードゥー。60年代ソウルマナーな名曲揃いの傑作『MIRACLES』(‘11)を経て5月15日に発表された最新作『かんぺきな未完成品』は、ロック度アップの原点回帰的なノリを強めつつも、近年のバンドの好調ぶりをしっかりと音に反映。ライブにおける彼らをブレなく捕らえたような“完璧な”仕上がりとなっている。ギターのマツキタイジロウとボーカルのコヤマシュウに話を訊いた。
毛がハネてカワイイぞコヤマ(vo)&マツキ(g)による動画コメント
――前作『MIRACLES』は、60年代のモータウンなどのソウルからの影響を色濃く反映して、スクービーの“楽曲の良さ”が最大限に発揮された会心作でしたが。
マツキ(g)「そうですね。で、最初は次もその続編的なものをという感じで曲を作ったりしてたんですけど、何となく面白くなくなってきたんですよね(笑)。『MIRACLES』の世界をさらに推し進めると、やっぱり楽曲的にもワンランク上のものを作らないといけないし、前作では鍵盤とかも僕が自分で弾いていたんですけど、次は本職の方を呼んでこないとネクストレベルにはならないな…と考え始めるとあまり楽しそうではなくなってしまって。じゃあ、どうすればと考えている内に、やっぱり4人でバーン!と鳴らしてライブ映えするような曲がスクービーは一番イイのかなと思ったし、前作のツアーでも派手な楽曲をやったときにお客さんも“待ってました!”とイイ顔をしていたんですよね。だから、今作では一番ありのままのスクービードゥーをやってみっか、みたいな感じになったというか。今年でバンドを結成して18年目になるんですけれど、結成して数年くらいのセットリストは半分が他人の曲や60年代のソウルやブルースのカバーをやっていて。その頃の感覚でやれる楽曲を作ってみようという結論に至ったのが去年の秋くらいで。そこから一気に曲を作っていきましたね」
――なるほど。確かに、今回の『かんぺきな未完成品』は前半からロック~サイケ色の強い曲が並んで、ライブのスクービーに近い生々しさに満ちています。
マツキ「ある意味で『MIRACLES』は、僕らのような60~70年代の古いロックに影響を受けたバンドが“ポップスとしての名盤”を作るみたいな、コンセプトとしてはちょっと異質な作品だったと思うんですよね。それに対して、今回は逆にありのままの素の自分たちを今の気分で鳴らした盤、という感じですね」
――ただ、やはり単なる原点回帰ではなく、前作があっての今作という連続性もしっかり感じられますけど。
マツキ「もちろん自分の中では前作と今作はしっかりと繋がっていて。表現としては『MIRACLES』の“生きているだけでも奇跡だ!”みたいな世界観を、もう一歩推し進めたものになっていますね。表面的な希望とかではなくて、何も手助けのない困難な現実の中で、正しい答えみたいなものはなくても前に進んでいこうとすることが、“生きている”ということなんじゃないか、というか。『かんぺきな未完成品』というタイトルには、そういう意味合いも込められています」
ライブをやるのが大好きなんですけど
それと同じくらい“曲”も好きなんですよ
――サウンド面ではロック色を強めた今作ですが、コヤマさんが歌うメロディの立ち方が前作『MIRACLES』と同様に強く際立っている点も印象的だったのですが。
コヤマ(vo)「そこは意識して歌ったわけではなく、“カッコいいアルバムにしよう”と歌っていただけなんですけど。でも、そう聴こえるキッカケは曲だと思いますね。僕たちはバンドだから、バンドでライブをやるのが大好きなんですけど、それと同じくらい“曲”も好きなんですよ。オレが歌っていれば何でもスクービードゥーっぽくはなると思うんですけど、そんなことよりも曲がカッコ良くなることの方が一番というか。聴いた印象で歌が立っているように聴こえたとすれば、そういう曲だったんだと思います。だから『MIRACLES』のときもそうだったんだろうな、きっと」
――前作と今作は、歌(メロディ)と言葉の存在感がより一層増してきている印象がとてもあります。
コヤマ「“言葉をハッキリと歌いたい”、というのはあるかもしれないですね。それは昔からもそうですけど、やっぱり日本語の歌なので。何かね、曲がバーッと進んでいくのに対して、言葉の意味やイメージがちょっとその速度に逆らう感じが好きなんですよ。ビートのある音楽だとやっぱり体は前に進んでいくと思うんだけど、言葉は逆方向に入ってくるというか。他の人の音楽を聴いていても、そういう風に言葉やメロディが自分の中に入ってくるものがいいなと思うんですよ。タイちゃん(=マツキ)の作る曲も僕の中ではそういうイメージで、すごく簡単な日本語を使っていろんな意味に取れる言葉なんだけど、意味がないということは絶対にないというか。いわゆるシュールではなくて、全ての言葉にちゃんと意味があって、1つも無駄な言葉がないから、全部の言葉がちゃんと入ってくるように歌いたいと思いますね」
――ファンク色の強い音だとグルーヴ優先になりがちですけど、スクービーは言葉がしっかり入ってきますね。
マツキ「多分好きなところが狭いんですよ。こうなり過ぎてもイヤだし、こうでもイヤみたいな感じが多いんですけど、うまいこと地雷を踏まないように作るとこんな感じになるという(笑)。例えば、歌詞カードを読むとものすごくいいことを言っているんだけど、音を聴くと何を言っているのか分からないのも僕の中では地雷だし(笑)、言葉足らずで考えさせ過ぎるシュールな歌詞もそうで。やっぱりリアリティがある程度ないとダメですね」
――サウンド面でも歌詞の面でも、この2作は揺るぎのないブレのなさみたいなものを感じます。
マツキ「レコーディングワークに関しても、今作はピース・ミュージックというスタジオで作るようになって5枚目のアルバムなんですけど、前作くらいからやっと納得のいく音が出来てきたかなと。それまではどちらかと言うと、“どうやったらお客さんや今の音楽シーンにウケるか?”ということをものすごく意識して作っていたので。今振り返ってみると、サウンドをイメージしづらい楽曲になっていたところがあったんですよね。それが、前作辺りから楽曲と音のアプローチが一致してきた気がしています」
――バンドの結成から18年目にして、また新たな高みに向かいつつある感じがあるのがスゴいと思います。
マツキ「いまだにこの4人で合わせて演奏することに、相当な中毒性があるんですよね。リハに入れば全てが解決するバンドというか。ちょっと迷ったり、コレは次どうしようかとなったときに、とりあえず4人だけで集まってリハスタに入って音を出してみると、今までも全て解決してきたので。それぞれの音への絶対的な信頼があるから、こうしてやれているんでしょうね」
――そんなバンドとしての中毒性を保ったまま、夏を挟んで11月まで続く新作に伴うツアーがいよいよスタートします!(関西エリアは6月15日(土)京都・磔磔、10月3日(木)神戸・太陽と虎、11月4日(月・休)大阪・umeda AKASO)。
マツキ「このアルバムを中心にしつつ、既発の曲も出来るかぎりやりたいと思っているので。そこでまた見たことのないスクービーにしたいというか、ノリだけではない感じで見せられたらなと思っています」
コヤマ「アルバムの曲も、ライブで聴くとまた印象が変わるだろうな、と思いますね」
――そして、関西では7月7日(日)に『京都大作戦2013』(※チケットは完売)への初参戦もありますよね。
マツキ「そうですね。パンクバンドに挟まれてファンクバンドが…。PとFが違うだけなので、何とかなると思いますけど(笑)」
コヤマ「お祭りのようになると聞いているので、楽しみにしていますね。“オレらの音楽をどんな風に楽しんでくれるんだろう?”って、初めて行く場所ほど楽しみになってくるので。スクービードゥーの音楽を全力で鳴らしたいと思っています!」
Text by 吉本秀純
(2013年6月13日更新)
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