女の本音を綴った『愛とか夢とか恋とかSEXとか』で
センセーショナルなデビューを果たした注目新人さめざめが
早くも入門編ベストアルバム『さめざめ問題集』を発表
さめざめ誕生のいきさつとその特異な世界観に迫るインタビュー
『コンドームをつけないこの勇気を愛してよ』『午前一時、スカートを脱ぐ』『ズボンのチャック』etc、そのセンセーショナルなタイトルもさることながら、女の本音を綴った歌詞の世界とキャッチーなメロディで一躍脚光を浴びた笛田さおりによるソロプロジェクト、さめざめ。昨年12月にさめざめ誕生のきっかけとなった代表曲『愛とか夢とか恋とかSEXとか』でメジャーデビューを果たした彼女が、楽曲名や歌詞に含まれる単語から一部放送でオンエア自粛となる問題作であり、さめざめの真骨頂とも言える楽曲をコンパイルした入門編ベストアルバム『さめざめ問題集』を5月15日にリリースした。そこで、5月19日(日)梅田Shangri-La、同31日(金)渋谷クラブクアトロにてメジャーデビュー後初の東阪ワンマンライブを控える彼女に、ルーツからさめざめ誕生のいきさつ、独特の視点で形成する楽曲の世界観に迫るインタビューを敢行。そのエキセントリックなイメージとは裏腹に、1つ1つ丁寧に解答していくその様は、音楽としてどうアウトプットすべきか、どう響くのか、一過性にならないためにどうすべきかに意識を張り巡らせた知的なソングライターとしての佇まいと、あなたのすぐ傍の日常を生きる1人の女性としての目線が共存する。注目新人のはじまりのストーリー。
――そもそも音楽をやるようになったいきさつから教えて頂けますか?
「父親が元々音楽をやっていたので家にギターがあったり、その影響で小学生の頃からエレクトーンを習ったり、楽器を鳴らす環境がスゴく身近にあって。高校受験と同時期にエレクトーン自体は辞めてしまったんですけど、タイミング的にはその後ぐらいから歌詞を書くようになって、ギターを弾くようになって、そこからシフトチェンジと言うか。いつの間にか詞を書くようになって曲を作るようになって、じゃあ歌った方がいいかな、みたいな感じですね。最初は恥ずかしくてカラオケで歌えないぐらい人前で歌うのは苦手だったんですけど、曲を作るようになってからはそれが自然になって。誰かに聴かせたいっていうところから人前に出るようになったので」
――曲を作ろうと思ったキッカケって何かあるんですか?
「思春期の頃にやっぱりいろんな悩みとかを抱えたりして、そのときに日記なのか詞なのか分からないようなことを結構書いていて。そこから曲を作ってみようかなっていうところに発展しました」
――でも、それが=さめざめというわけではなくて。
「バンドをやったり、個人名義でやったりといろんなことをやった上で、行き着いた答えがさめざめでした(笑)」
――それまでの活動ではある意味、手応えがなかったり、何か行き詰まった?
「なりたいミュージシャン像みたいなモノがあったにも関わらず、やってることがちょっと違ってたり、ホントはこういうイベントに出たいとか注目されたいっていう気持ちと、そこまでの過程にスゴいギャップがあって。一旦リセットじゃないですけど、自分の音楽自体を変えていかないと、目指しているところにいけないなぁって」
――自分の理想像があるのに、何で違う音楽をやっていたんですか?
「やりたい曲をやってはいたんですけど、実際に着くお客さんだったり、自然と出だしたライブハウスに思惑と違うカラーがあって、自分が思う方向とドンドン違う活動をしてしまったり(笑)。結構インディーズとかアマチュアミュージシャンによくあることだと思うんですけど、1番ハマってはいけないローテンションにハマりつつあって、同時にその環境も居心地がよく(笑)。いろいろ経験した上で、さめざめという在り方で勝負をしようって。それは、20代も徐々に過ぎて自分が想像と違う現実にいたときに、将来をスゴい考えるようになりまして。安定した平和な道を進むのか、いばらの道を進むのか。そう思い悩んだとき、最後にいばらの道を選んでみようかなぁって(笑)。どうせいばらの道を進むのであれば、元々の私自身から出てくるのは負の言葉が多かったりしたので、そういった自分を全面に出して勝負していこうと」
――よくそのギアを入れられましたよね。そうは思いながらもそのまま進んでしまうのも人生でもあると思うんで。
「そこはもうホントに、語弊があるかもしれないですけど、反面教師じゃないですけど、そうやって同じ環境で活動している人たちを見て、自分が5年後10年後になりたいイメージがここではなく違うところだなと思ったんで。そのときの変化で負ったマイナスもいろいろあって1~2年は辛かったんですけど(笑)。元々ちょっとエッジの効いた言葉は歌詞に使ってはいたんですけど、逆にそういう内容を分かりやすく曲にしている人が少ない気がしたので、まぁ絶対に何かしら風当たりもあるなぁと思いながら、そこは勇気を出して踏み入れてみようみたいな。やっぱり人に知ってもらうまでが大変だったりするので、さめざめを聴いて反応してくれること自体が、途中経過ですけどよかったなぁっていうのはあります」
――さめざめの存在とか立ち位置は知っていたものの、今回のインタビューに向けてどんな人かなぁっていろいろ調べていたら、めっちゃちゃんとしてる人やわって(笑)。
「アハハハハ(笑)」
――これでエキセントリックでイッちゃってる女性だったらまんまじゃないですか。でも、音楽としてどうアウトプットすべきか、どう響くのか、一過性にならないためにどうすべきか。それを考えているのが今までの発言からも分かる。すごくいいギャップだなぁと(笑)。あと、さめざめでは一見女性の“どぎつさ”が歌になっている感じもしますけど、男の立場から聴くとむしろ、慈悲深いとも思えて。
「フフフ(笑)。あ~でもそうですね。うんうん。男性の意見は結構貴重だったりします」
――歌詞を見たら、何でこんなしんどい恋愛ばっかりしてるんだみたいな話になるわけじゃないですか(笑)。そうは言ってもそれを受け入れてくれる女性の方が大きいみたいな。まぁ楽曲にはホントにいろんな修羅場が描かれていますけど(笑)、曲のアイデアってどこから出て来るんですか?
「日常生活でこうやってお話をしてるときに本当に生まれてきたりもしますし、いざ作ろうというよりは、ちょっと鼻歌を歌っていたり、帰り道にぼんやり考えているところからふと生まれたりすることが結構多いんですよね」
敢えて言葉に出すことによって伝わるモノもある
――デビュー曲でありさめざめを象徴する1曲『愛とか夢とか恋とかSEXとか』が出来たときのことを覚えてます?
「覚えてます。渋谷駅でもう終電ギリギリで息を切らして…歌詞そのままなんですけど、ラブラブなカップルとかを見ながら、何だアイツら…と思って電車に乗って(笑)。そこからかすかに東京タワーが見えるんです。その東京タワーを見たとき、ちょっと悲しくなってしまって。そのときに、“今のシチュエーション曲にしてみたい”と」
――早く家に帰って、残像が残ってる内に曲を書かなと(笑)。
「そうです(笑)。携帯でちょっと歌詞を書いておいて…衝動のまま書いた感じです」
――楽曲自体にはフィクションもノンフィクションもあると思いますけど、この曲に関してはモロ自分と言うか。
「そうですね。その頃の等身大の私自身ですね」
――駅の改札口って何であんなにカップルがケンカしてるんですかね?(笑)
「そうですよね(笑)。何かもうめんどくさい(笑)」
――彼氏がめっちゃキレてて、女の娘が半泣きでうつむいてるっていう…(笑)。全国どこでもこの光景を見るけど、デートの最中じゃなくて、最後に何か言いたくなるんかな? 柱のところとかで(笑)。
「ありますあります(笑)。本当に、特に週末の夜とかよく見かけるなぁと」
――その歌詞でスゴく印象的だったのが、“あたしの人生もよくあるもので終わるの?”というフレーズで。さっきのこのままでいいのかって思ったとき、自分のギアを入れられるか? そこでスゴく肝になる1行だと思ったんです。
「自分が特別だと思ってる人って、結構いると思っていて。私はどうにかなる、他人とは違う、ホントに根拠のない自信を誰もがそれぞれ持っていると思うんです。私の人生がこのまま終わっちゃったら、何かスッゴい普通じゃんとかつまんないじゃんって思うことが、やっぱり私自身にもスゴいあった。これじゃあ漫画でも打ち切りになりそうなつまんない物語だって思ったとき(笑)、それを言葉に、そのまんま出してみようと思って」
――女性としての幸せもあるわけじゃないですか。結婚して、子供を産んで、幸せな家庭で、旦那にちゃんと稼ぎがあって(笑)。そういう生き方もあったと思うんですけど、それだけじゃ満たされない何かがある?
「2コーラス目に出てくる“忘れられない人がいる”っていうのがそうなんですけど、今その人と一緒にいないっていうことはもしかしたら、自分にはちゃんと夢があって、やりたいことがあるから、1人で頑張ってるんだろうなって気持ちも入っているんです」
――だったらきっと、夢を追いかけなさいっていうことじゃないかと。
「過ぎてしまったから愛おしく思ったりもするし、自分が経験した失敗をまた繰り返したくない気持ちだったり。自分へのリベンジみたいなモノが強い気がしますね」
――さめざめは性をモチーフにした歌詞に注目が集まるとは思うんですけど、この曲なんかは特に、“SEX”という言葉は出てくるけど、極端に言えばそれなしでも全然成立する。物語として万人の心に届くような曲ですよね。そう思うからこそ、SEXって言葉1つでこんなに見方が変わるんやって思いますね(笑)。
「アハハ(笑)。何で歌詞にSEXって入れたんですか?ってよく聞かれりもするんですけど、やっぱり大人になるとそういったものって、付き合ってる人がいれば当然そうだし、特に非日常ではなかったりして。そういった意味で、ヘンに隠さず表現したいっていうのはありました。敢えて触れないやり方があるのは自分でも分かってはいるんですけど、じゃあそこで敢えて言葉に出すことによって伝わるモノもあるんじゃないのかなって。この言葉を聞いただけで不快感を感じる人も少なからずいらっしゃるとは思います。でも、奥底にあるさめざめの純粋な部分を、そういう人たちに知ってもらえたら何よりだなぁと」
――さめざめにとっては大事な転機になった曲だと思いますが、出来たときに手応えはありました?
「出来た頃は、さめざめ名義じゃなかったんですけど、“これはもうテーマソングだ!”って(笑)、そこから広がっていきましたね。何かスゴい大きな子が産まれてきたけど、いい子なのか問題児なのか分からないみたいな(笑)」
――ここから全てが始まったという感じですね。
「まさにそうですね」
最後の最後まで愛し抜くっていう、さめざめの女の娘像があって
――今まで活動してきて良くも悪くも注目されたと思うんですけど、それを経験として楽しめるのか、苦しいのか。
「今のところは楽しませて頂いていてます。やっぱり注目されなければ始まらないと思うので。そういった部分では、今はスゴくポジティブに考えてますね」
――スゴく冷静な目線を持っているし、作家的な活動もしていたんですよね。
「何だかんだ言ってさめざめも、どこかで客観的に見ていたりもするので。言葉の表現自体がスゴい好きなんです。メロディの覚えやすさは重視してますけど、そこから歌詞を詰める作業が1番好きで。歌うことより楽しいかも(笑)」
――ただ曲としてリフレインしたらいいというよりは、やっぱり1つ1つが独立した物語というか。極論に言えば、音が鳴っていなくても楽しめる。女性からの反応ってどんな感じなんですか?
「やっぱり、“私のことかと思いました”っていう方がスゴい多いですね。あと、さめざめの曲自体に何か不倫のイメージがスゴいあるみたいで(笑)」
(一同笑)
――基本的に報われないというイメージが(笑)。
「何かこう、都合のいい女っていう(笑)」
――ただ、読み進めていくと、これはそれ以上の愛だと気付く。男からしたら単純に都合いいなで終わってるかもしれないけど、女はそれも承知の上でこうしてくれてるっていうデカさを感じて、女はスゲェって感じました(笑)。
(一同笑)
「ホント仰って頂いた通り、最後の最後まで愛し抜くっていうさめざめの女の娘像があって。だからこそ最後に“殺す覚悟であたしを捨ててね”って言ったりもする。でも結局、俗に言う浮気だったりで男性に非があっても、怒りの矛先が最終的には相手の女性にいってしまうのは、やっぱり女性特有の怒りだと思いますね。結局甘いんですよねぇ。土下座して抱きしめられれば許しちゃうっていう(笑)」
やっぱSEXで大変だったし
次はそりゃあSEXばっかり言っててもなぁと
いろいろ思ったりもするんですけど(笑)
――それこそデビューして少し経ちましたが、率直な気持ちとしてはどうですか?
「たくさんの方によりさめざめを聴いて頂く機会が増えたので嬉しい反面、誤解される部分も増えてきてはいるんですけど、そこから好きになってもらえればアリだなぁとは思っているので、とりあえず復旧作業を(笑)。していく時期なんだろうなぁと」
――ただ、変わる努力と同時に、変わらない努力もしなきゃいけない。
「いろんな方からアドバイスを頂いたりする中で、いつの間にか方向性が変わっていってしまう気がしたんですけど、何よりもメジャーでやるからこそ、インディーズの気持ちを忘れず、変わらない状態でいなくちゃいけないなとは思ってます」
――別に事務所とかレーベルから言われてないのに、こっちの方がウケるかなぁ?とかこうした方がいいかなぁ?って、勝手に自主規制じゃないけど。
「それはやっぱり思った時期もあって。やっぱSEXで大変だったし、次はそりゃあSEXばっかり言っててもなぁとか、いろいろ思ったりもするんですけど(笑)。でも、批判も1つの宣伝だったり、名前を知ってもらえる機会だったりはするので。どんなバンドなんだろう? どんな音楽なんだろう?って思ってもらえれば、それはそれで万々歳で」
――日々を生きていれば、日常生活でも恋愛でも楽しいことも嫌なこともありますけど、例えばめっちゃ嫌なことがあっても、“あ、これ曲になるわ”とか思うんですか?
「スゴい思います(笑)」
――アハハハハ!(笑)
「男の人にスゴい嫌なことを言われても、“あ、この吐きセリフ最高だな”って、携帯メールに保存したりして(笑)。結局、自分の人生もネタになる部分はあるので、そういう部分では全てが情報収集的な感じ(笑)」
――幸せだったら曲が書けなかったりするもんですか?
「そういう時期もありました。“あ、このまま本当に結婚してもいいかな”ぐらいに思ってしまうと、全然何も生まれてこなかったりとか(笑)。逆に別れてからの方が曲が生まれたり」
――自分でちょっと不幸をキープしないとダメ(笑)。
「よくマネージャーに、幸せになって欲しいんですけど、なって欲しくないって言われます(笑)」
さめざめ自体、CDだと現せないモノがスゴいあると思っていて
――東京・大阪でのワンマンライブも控えていますが、さめざめにとってライブってどんな場所ですか?
「さめざめ自体、CDだけでは現せないモノがスゴいあると思っていて。ライブに行くとその曲がより味わい深かったり、ホントに破壊力があったり、生で聴いたことでまた違う一面が見られると思うんです。さめざめライブには特にそれがあると思うので、また一段とさめざめを好きになってもらえる場所なんじゃないかなと」
――ちなみに大阪のお客さんってどんな感じですか?
「初めて大阪に来たときは、ホントによそ者みたいな気持ちで行ったので、スゴい怯えながらライブしてたんですけど(笑)、去年何回かやらせて頂いている内にファンの方も増えてきて。新しくさめざめを知ってくれた方が来てくれれば、相乗効果でよりいいライブになるんじゃないのかなぁと」
――お客さんも、いざ会ったらこの人めっちゃちゃんとしてるやん!ってならないんですか?(笑)
「ただのチキンなのかもしれないですけど、歌でそういうことを上手く伝えられても、社会的にホントにお仕事していく上では、礼儀は必要だと思いますし。そういう意味では普通に真面目(笑)。ホントはカッコよく、いきなり煙草吸いながら、お酒呑みながら出られたら皆さんが想像しているさめざめだったと思うんですけど、実際は本当にもう禁煙を好むような…(笑)」
――アハハハハ!(笑) ただ、歌詞的には波紋を投げ掛ける内容かもしれないですけど、曲自体はポップである種の歌謡曲的な懐かしさもありますよね。
「歌詞が歌詞なので、メロディはやっぱりキャッチーで親しみがあって、どこかで聴いたことがあるような懐かしさが私自身も好きなので、そこをウマく融合させて。これでメロディをこねくり回したりすると、それこそ本当に届かない曲になると思うので(笑)。キャッチーなフレーズなので、逆に小学生とかが覚えてしまったら怖かったりもするんですけどね(笑)。そうした危険性はこれからもあるんだろうなぁと思いながらも、カラオケとかで歌って欲しいですね、やっぱりさめざめは」
――今、この曲がテレビで流れてたらチャンネルを変えるとか、家族といて気マズくなる音楽がないじゃないですか?(笑) そういう意味では久々に出てきたというか。
「最近はラブシーンがあるドラマも少なかったり、そういうドキドキ感ってあんまりないと思うんで。今さめざめを聴くと親と気マズいんだよねっていうのは、何か1つの社会的反骨心があっていいのいかなぁと思います(笑)」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2013年5月16日更新)
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