目指せロックの桃源郷=『シャングリラ』!
へヴィに、そしてポップに、結成15周年のアニバーサリーイヤーに
変幻自在のサウンドスケープでたどり着いたMUCCの新世界!!
逹瑯(vo) & YUKKE(b)のインタビュー&動画コメントが到着
3月にリリースしたシングル『ニルヴァーナ』(TVアニメ『妖狐×僕SS』オープニングテーマ)が3万枚を超えるヒットを記録。さらに、6月9日=“ムックの日”に行ったバンド史上最大規模の単独ライブ・幕張メッセ公演を成功させるなど、シーンにおける存在感を増すMUCC(ムック)。そんな彼らが、前作『カルマ』から2年ぶりとなるニューアルバム『シャングリラ』を11月28日にリリースした。これまでも作品毎に世界観とサウンドを大きく変化させてリスナーを驚かせてきたが、今作でもその衝撃は健在。初期のファンが聴けば衝撃を受けるであろうウエディングソング『Marry You』(M-9)や、9月に行われた結成15周年記念ツアー大阪公演のオーディエンスのコーラスが入った『YOU& I』(M-11)など、ジャンルの垣根やイメージを軽々飛び越えた楽曲群が収録されている。MUCCを突き動かす原動力と、変化し続けながらもファンが離れない魅力とは何なのか。そもそもMUCCとはどんなバンドなのか。この逹瑯(vo)とYUKKE(b)へのインタビューから、少しでも感じとってもらえたら嬉しい。
逹瑯(vo)とYUKKE(b)からの動画コメントはコチラ!
――今年で結成15周年を迎えたわけですが、率直な感想としてはどうです?
逹瑯(vo)「いろいろやってきたなぁって感じがしますね。ずっと遠回りしてきたバンドだなっていう気がしますけど、楽しかったからいいか!って」
YUKKE(b)「そのときそのときで常に忙しくやってきたので長くも感じなかったし、早かった気がしますね。今年は特に今までのことを振り返る機会が多かったので、本当にいろんなことをやってきたバンドだなって思いますね。今年の6月9日に行った幕張メッセのライブが分かりやすい例だと思うんですけど、時代ごとに分けて3部構成でライブが出来るっていうのがまずスゴいなと。本当に空気感とかステージとかもガラッと変わるんですけど、どれもムックだし、それが強みというか。なかなかいないだろ、こんなバンドとは思いました」
――確かに初期、中期と現在ではガラっと変わりますね。正直、初期のムックに関しては怖かったイメージが(笑)。
逹瑯「まぁ今も怖いんですけどね。隠しているだけで(笑)」
――え(笑)。ちなみに、その15年を総括するライブで改めて見えたものってありました?
逹瑯「結構ありましたね。詞の部分とかは特に。今作の作詞をする期間に昔の振り返り企画が被ってきてたから、いい刺激になりました」
YUKKE「昔の雰囲気が好きだなって思う部分もあれば、今のダンサブルな感じも好きだし、どの時代の曲もそのとき好きでやっていた曲だから、自分の血肉になっている感じもしました。あとは、自分のキャラクターの魅せ方とか、歴史も振り返られたし、その上でちょっと新しい自分になってみたいなっていう想いも出てきましたね」
――なるほど。あと、ムックって過去のダークな時代を否定しないですよね。
逹瑯「好きですからね。今でも昔の曲も好きだなっていうのはありますし、他人の曲でも暗い曲とか好きですし。昔から好きなもの、やってることが変わっているわけじゃなくて、好きなものが増えているだけじゃないですかね。上書き保存っていうタイプじゃないので。だから、幕張メッセのライブのように振り返り企画も全然やるし。フォーク、歌謡曲、ヴィジュアル系も好きだし、J-POPが好きなメンバーもいるし。ただ、みんなに共通しているのは、カッコいいとか言うよりは、純粋に“いい歌”が好きなメンバーが多い気がする」
――だからこそ、歌やメロディを引き立たせる楽曲が多いんですかね。そんな中でも、作品毎にヴィジュアルやサウンドは変化しているわけで。それでも、お客さんが離れないのはある意味スゴいなと思うのですが、掴んで離さないバンドの魅力は何なのでしょうね?
逹瑯「それはオレじゃないですか?(笑)」
YUKKE「逹瑯だと思います(笑)」
――それもあるでしょうけど、バンド全体の魅力を教えてください(笑)。
YUKKE「アルバムでも毎回曲の振り幅とか種類とか、本当にいろんなことをやるんで、そういうのも魅力なのかな」
逹瑯「好奇心と遊び心を絶やさないっていうことがデカイ気もしますね。楽曲でも遊ぶし、歌詞でも遊ぶし、企画でも遊ぶ…面白いことが好きなメンバーが集まっているので」
YUKKE「バカなことでも本気でやるっていうのがムックらしさでもありますね」
――遊び心を絶やさないからこそ、作品毎に音楽性が違うんでしょうね。それにしても、ムックって掴みにくいというか説明しにくいバンドですよね。
YUKKE「自分としても説明しにくいです(笑)。初対面の人とかに、“どんなバンドやってるの?”って訊かれるのが一番困りますね。音源を聴いてもらうのが一番良いんですけど、その場でこれ聴いてって渡せるものでもないので」
逹瑯「ヘンなヴィジュアル系って感じじゃないですか?(笑)」
YUKKE「ヴィジュアル系の端っこにいる感じがします。どっち側の端っこかは分からないですけど(笑)」
2年ぶりのムックのアルバムに入っていて面白いか、面白くないか
――2年ぶりのアルバム『シャングリラ』が11月28日にリリースされました。手応えとしてはいかがですか?
逹瑯「Twitterとかで感想を書いてくれるような子は、CDを手に取って聴いてくれている人の中でもほんの一握りだと思うから、ライブでどういう風に化けていくのか、そこで一番ダイレクトに手応えを感じられると思うんですよね。そこが楽しみかな~。ここ最近のライブの核になっているのが『カルマ』(‘10)と『球体』(‘09)の曲で、2年も3年も引っ張ってきたんですけど。一緒に新しいところに行きたいと思ってもらえるようなアルバムが出来たと思います」
――今回のアルバムでも、新しいことに挑戦していますよね。逹瑯さんとミヤさん(g)のツインボーカルっぽい曲も多いですし。
逹瑯「(ツインボーカルになる曲が)ここまで多くなるとは思ってなくて。うちのリーダー(=ミヤ)は自分で仮歌を入れて持ってきたりしているので、“オレでは思っている通りのニュアンスにはならないから、リーダーが歌った方がいいよ”みたいなやり取りがあったり、『Mr.Liar』(M-1)なんかはシャウトを交互にやった方が面白いなと。ライブを落としどころとして見た場合、ギターを弾きながらシャウトで会場がワーッとなって、ボーカルと交互に歌うっていうのも結構好きなので」
――逹瑯さん作詞作曲の『Marry You』も、ハッピーな空気感に満ちたウエディングソングなんですけど、歌詞がブーケ目線っていうのが面白いですね。
逹瑯「この曲調で湿っぽいモチーフを持ち込みたくなかったから、結婚式にあるもの…新郎新婦でもないし、友達でもないし…って考えてたときにブーケがポンっと出てきて、これは面白いかもっていうところからでしたね。それと、新郎新婦とか、友達じゃない分、一歩退いて冷静に物語を進められるなっていうのもあったんですよね」
――昔の逹瑯さんだったら書いていない曲じゃないですか?
逹瑯「まぁ、書かないよね。曲調的には好きな曲だし、昔のオレに聴かせても好きだと思うんですけど、“自分のバンドで歌いたいか?”って思うと、そうじゃなかったかもと思います。正直、この曲はこのタイミングでアルバムに入らなくてもいいなと思ってたんですよ。ムックのシングルのカップリングなのか、オレがソロをやるときなのか…何かしら時が来たときにオレが歌って出せればいいや、っていう感じだったので。でも、早いにこしたことはなかったので、熱がある内に出せて良かったかなって思います」
――それにしても、『Marry You』にいくまでの流れも面白いですよね。YUKKEさんが作ったジャジーな『ピュアブラック』(M-7)からカオスな『狂乱狂唱~21st Century Baby~』(M-8)を経ての『Marry You』という。
逹瑯「歌詞の統一性は出せないですから(笑)。どう考えてもこの曲順にしかならなかった。『狂乱狂唱~21st Century Baby~』『Marry You』のどっちも極端な曲なので、どの曲の後に入ってもスゴいことになる(笑)。意外とこの並びがしっくりきたかも」
YUKKE「1曲目の『Mr.Liar』と最後の『シャングリラ』(M-13)がビシッと締めてくれているので、本当に間でいろんな曲が出来るんだなって思いましたね」
――本当に多彩ですよね。選曲の基準は何だったのでしょう?
逹瑯「2年ぶりのムックのアルバムに入っていて面白いか、面白くないか。じゃないですか。毎回そうですね。そのときのムックの最新作に入っていて面白いか、面白くないか。だから、タイミングが合わないだけで、まだ世に出てない良い曲もたくさんあるんです。ただ、今回のアルバムに入れても良さが引き立たないとか、良い曲なんだけど面白く見えないとかいうだけで。それとは逆に、そういう感じでずっと眠っていた『終着の鐘』(M-6)がこのタイミングで引き出されたりしてね」
変わっていくのが楽しいし、その余白が残っているからライブって楽しい
――選曲の基準もそうですけど、バンドの原動力は面白いか、面白くないかだったりしますか?
YUKKE「そうかもしれないですね」
逹瑯「何をやっても面白いと思えなくなったら辞めるでしょうね」
YUKKE「ヘンなアルバム出来たなぁ、出したくないなぁってね(笑)」
逹瑯「ワクワクしないけど、とりあえずちょっとは売れるかもしれないから出してみるかって(笑)。取材とかでも、“何か…一応録ったんですけどね。それなりに頑張って書いたんで、ライブでも多分やるんでしょうね”とか言い出して(笑)。辞めちまえと(笑)」
――(笑)。面白いと言えば、CDにも遊び心のある仕掛けをしていますね。
逹瑯「久しぶりにボーナストラックを入れたりだとか、すげーインディーズっぽい遊びが入っていて」
――これは買った人だけのお楽しみですよね?
逹瑯「みんな気付いているでしょうけど、iTunesで買っちゃう人には分からない仕掛けだから。CDを買わないと見れないメッセージっていうのも、遊び心があっていいですよね」
――発見したときのワクワク感は大きいですよね。ボーナストラックに関してですが、まぁぶっ飛んでますね(笑)。
逹瑯あれだけシャウトをガンガンする曲を毎回ライブでやるのか?ってちょっと不安だったんですけど、やるっぽいですね(笑)。大丈夫か? 頑張れるか? オレ?って(笑)。今回はシャウト系のみならずキーが高い曲も結構あるので頑張らないと」
――ライブを重ねるごとに曲のイメージも変わりそうですね。
逹瑯「変わるでしょうね。変わると言うか、変わって欲しい。曲が出来て、CDを出して完成じゃないから。変わっていくのが楽しいし、その余白が残っているからライブって楽しいんだと思います。どう転ぶか見えなくて楽しみなのは『狂乱狂唱~21st Century Baby~』じゃない? この曲では暴れるというか、はっちゃけて欲しいな~。あとは『Mr.Liar』とかが、どう化けていくのか」
YUKKE「『MOTHER』(M-12)はすでにライブでやってたりするんですけど、今回のセットリストに組み込まれた『MOTHER』っていうのは、また変わりそうな感じがするんですよね」
――それをまさに感じられるツアーも、これから後半戦を待つばかりですが、結構意外な場所が多いですよね。
逹瑯「行ったことがない場所が結構ありますね。そういうコンセプトでもあったし。しばらく行っていないところに行こうよって」
――関西は奈良だけというのが意外でした。
逹瑯「大阪は来てるし、いいんじゃないかって(笑)。京都、神戸もちょいちょい行ってるけど、奈良って行ったことがないなって。行ったことがないから、どうなるのか分からないっていうのが楽しみですね」
――奈良NEVERLANDのキャパは250人くらいだったかと…。
逹瑯「そんなもんですか!? ネバーランド=子供たちの世界だから、子供だったら400人くらい入るんじゃない?(笑)」
――(笑)。後半戦はまた違う雰囲気になりそうですか?
逹瑯「必然的になるんじゃないですかね。前半戦でコツや感覚を掴むだろうし。…と思いきや、掴んだ感覚から2ヵ月空くからまた再構築みたいな(笑)。終わる頃のNHKホール公演が良い感じになるのかな…って喋りながら今思ったんですけど、NHKはホールなんでライブハウスともまた違うなって(笑)」
YUKKE「このアルバムツアーはいろんな見方が出来ると思いますよ。ZEPPみたいに演出も出来る大きい会場もあれば、小さいところもあるので」
――それでは最後に、ぴあ関西版WEB読者へのメッセージを頂けますか?
逹瑯「30を越えた大人が本気で遊んでいるバンドですし、おもちゃ箱をひっくり返したようなアルバムが出来たので、手にとって聴いてもらえたら何かしら面白い出会いがあると思いますね」
YUKKE「同感です。便乗します(笑)」
――最後にムックの目指すシャングリラ=桃源郷とは?
逹瑯「昔からあまりないんですよね。これは自分の良いところでもあり、悪いところでもあると思うんですけど、“こうなりたい”っていうものが明確になくて。あった方がいいパターンもあるんですけど、意外に自由に、のらりくらりとそのときそのとき好きなことをやって、最終的に自分がいたいところにいればいいかなって」
YUKKE「自分たちの飽きないこと、楽しいことをずっとやったその先に、たくさんの人に見てもらえる機会として大きな場所でやってみたいですね。東京ドームでライブ出来るくらいの音楽性になったら興味深いですけどね」
逹瑯「想像出来ないなぁ(笑)」
――(笑)。本日はありがとうございました!
Text by 金子裕希
(2012年12月20日更新)
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