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デビュー30周年を間近に控えた稀代のロックボーカリスト
浜田麻里が新作『Legenda』を発表!
3.11への新たな回答となるダークなサウンドの由来とは!?
新作からキャリアを総括するインタビュー&動画コメントが到着

 世界照準の圧倒的な歌唱力で、約30年もの間音楽シーンをサヴァイブし続けるロックボーカリスト、浜田麻里。’89年にリリースしたシングル『Return to Myself~しない、しない、ナツ~』、続くアルバム『Return to Myself』がオリコンチャートで1位を獲得し大ブレイク。80年代後半~90年代前半にかけてスマッシュヒットを連発した彼女は、アメリカ、アジア、そしてヨーロッパへとその活動の舞台を広げつつも一転、シーンにおけるメジャーな展開からは突如距離を置き、ストイックな活動形態にシフトチェンジ。強い信念と共に自身のスタンスを貫き通してきた彼女が、2月15日に24枚目のアリジナルアルバム『Legenda』をリリースした。昨年の東日本大震災により引き起こされた閉塞感を打ち破る、毒をもって毒を制すかのようなハードでヘヴィなダークネスサウンドは、3.11以降の希望と優しさに視点を置いたあまたの楽曲とは一線を画す内容だ。そこで、現在は『Legenda』に伴う全国ツアーを展開中の彼女に、今回のアルバムにたどり着いた意図、そして来年に迫ったデビュー30周年への想いをインタビュー。常に先駆者として歩まざるを得なかったキャリアを振り返ってもらった。

お美しす! 動画コメントでは関西での知られざる思い出も…

――前作から2年の間に、音楽業界も然りですけど世間的にもやっぱり震災があって、音楽の立ち位置、ムードが一変してしまったというか。浜田さんは自分の中での考えの変化や、揺さぶられるもがあったりしました?

 
「自分のスタンスは全く変わらないですね。元々日本ってずっと閉塞感に包まれたような空気があったので、今回のアルバムの方向性がより強く、よりヘヴィになったのは、時代背景としてもある程度自分の中では決まっていたことなんですけど、震災があって…よりそういう方向に向かったのかもしれないです。と言うのも、やっぱりいろんな表現者の方が人と人との絆だとか、優しさだとか、そういうことを表現されている。メディアもそうですよね? だけど私の場合は、人のホントに壮絶な苦しみとか悲しみを癒やす方法はそれだけじゃないんじゃないかって、感じるんですよね。だから自分は、やっぱりロックシンガーとしての立場で、ダークで陰鬱なんだけれども、だからこそカタルシスを感じるような、そういう人の気持ちの癒やし方というとちょっとおこがましいんですけど、消化のさせ方というか、昇華のさせ方というか、浄化のさせ方があるんじゃないかなって。今回は優しい曲、穏やかな曲を外して、敢えてそういうスタンスで音楽を作りましたね」
 
――絆や優しさの表現に向かえば、ある意味無難じゃないですけど、非難を浴びることはない。その逆に振り切れることへの怖さはなかったんですか?
 
「いつも人とは違った新しい自分でいたい、人と違う視野を持っていたい理想みたいなものがずっとあるもんですから怖さはなかったんです。言葉の選び方とかでちょっと強過ぎるかな~と悩んだことも正直ありましたが、敢えて変えずに今回はやり通しましたね」
 
――震災云々ではなく前作から2年の間に、ハードなサウンド志向に傾いていったのには何かあったんですか?
 
「やっぱりここ何年か、自分のオリジナリティって何だろう?っていう自問自答をよくするようになって。作品作りにおいてもそうですよね。それが結果的に、エッジのあるロック色の強い作品に結び付いていったんだと思います」
 
――デビューから約30年もの間活動していく中でも、自分のオリジナリティについて改めて考えさせられたりするんですね。
 
「逆に長いから余計そうなんだと思うんです。あと私はやっぱりボーカリストであってバンドではないので。歌については器用な方なので、極端に言うとどんな音楽性でも自分がやりたいと思えば選べたというか。そういう形でずっとやってきたもんですから、この30年、皆さんにとっての自分って何なんだろう?っていうことを突き詰めていくのは、そんなにたやすいことではなかったかなと思います」
 
 
自分の納得度をまた超えなきゃいけない緊張感はいつもある
 
 
――アルバムの方向性がある程度決まってきて、いざ制作に入ったとき何か苦労された点はあったんですか?
 
「音楽的作業自体は割とスムーズだったと思います。前作のツアーが終わってすぐに曲作りに入って、大量に自分の曲をストック出来た安心感がまずあったので、時間的には全然休んでないんですけど、気持ち的にはゆっくり出来たと思います。でもまぁ一番苦労したのはやっぱりミュージシャンのブッキングというか、調整ですね。毎回そうなんですけど忙しい方たちなので、アメリカでも東京でもいつもそこが一番大変です。スケジュール待ちで時間が経っちゃうみたいな(笑)」
 
――でも、アルバムの制作やリリースが迫ってきてから追い立てられて曲を書くんじゃなくて、前回のツアー終わりでそこまで書き溜めておくってことは、夏休みの宿題を7月中に終わらせるみたいなタイプなんですかね(笑)。
 
「でも、ギリギリになってもいつもバタバタしてるんですけど(笑)。ただ、私の場合はソロなので自分から発信しないと何も始まらないので。自然とそうなります」
 
――じゃあ詞曲がある程度溜まってきたからアルバムを作ろうって、周りのスタッフがスケジューリングして…。
 
「あの、スケジューリングも全部自分でやってるんです(笑)。お恥ずかしい話ですけど(笑)」
 
――そうなんですね! でもある意味、浜田さんが直接声をかけた方が話が早いっていうのはあるでしょうね。“浜田さんが言うんだったら空けときます”って(笑)。
 
「そうですね(笑)。エンジニアとかミュージシャンは全員個人的に声をかけてやってます」
 
――今作『Legenda』は24枚目のオリジナルアルバムということですけど、コンスタントに作品を出し続けることは創作的にもモチベーション的にも状況的にもすごく難しいことだとは僕は感じるんですけど、“今でもすごくワクワクドキドキする”みたいな発言を他のインタビューでも見たりして。
 
「やっぱりドキドキしますよね。自分の納得度をまた超えなきゃいけない緊張感はいつもあって、実際簡単な作業ではないんですけど、自分にとって“いい意味でのルーティン”になってるのかもしれないです。私みたいなロックシンガーだと、まずライブがあって、そのライブを形に、CDにするための作業がレコーディングという考えの方も多いと思うんですけど、私は逆で。やっぱり作品があって、それを持ってライブへ、ツアーへと向かう。まず核となるものを作ることで自分の活動を継続させているので、次に向かうときにはまず作品作りなんですよね。歌をやめようと思ったことがないので、自然と次の制作へという形になるんだと思います」
 
――逆にライブとは浜田さんにとって今どういう場所ですか?
 
「やっぱり待ってくださる方、私をいつも推してくださる方、私の音楽を何かの糧にしてくださる方のために、直接訴える場を作っているという感じかもしれません。自分がエネルギーをもらう場が欲しい気持ちもありますし、逆にいつも応援してくれている方へのお礼としてのライブという気持ちも私の中にあります」
 
――今回のツアースケジュールを見ていても、もう各地ほとんど売り切れ状態で。ライブをすればそこに駆けつけてくれるお客さんがコレだけいるのは頼もしいですよね。
 
「そうですね~ホントに。感謝しかないです。あと、最近のツアーだと、お客さんが私を盛り上げようとしてくれるようになって(笑)」
 
――え、そうなんですか?(笑)
 
「お客さんもライブで私の“人生”を見てるんでしょうね。だから、長年のファンの方は気持ちの入れ方が違うのかもしれません」
 
――浜田さんは30年近くやってこられて、音楽業界の移り変わりもダイレクトに体験していると思いますけど、その中で何か感じることはありますか?
 
「やっぱり水物なので、私は自分のスタンスを貫き通すしかない。あんまり左右されなかったからこそ、極端に悩むことなくやってこれたんだと思います」
 
 
いつも何か選択して、新しくいよう、冒険しようとやってきたことは
勇気がいったなと自分でも思うんです
 
 
――来年は30周年ということで、振り返ってみて何か思うことはありますか?
 
「私の場合、女性ロックシンガーとしてはやっぱり出始めで。ヘヴィメタル/ハードロックというジャンルの中で本格的に作品を作ってきたつもりなんですけど、すごくアイドル的な売り方をされたんですね。今となっては当たり前なんですけど、当時はありえなかった。その頃はやっぱり戸惑いましたけど、今考えてみるとすごく新しいやり方だったんだなって思いますし、ロールモデルがいなかったのでずっと手探り状態で、暗中模索で、自分で考えて方向を決めてきた。それを何とか30年続けてきたんで…頑張ってこれたのかな。元々人とちょっと違った自分でありたいとか、人の先を見ていたいとか、そういう理想を持って若い頃からやってきたので、何をするにも第1号になることが多かったんですね。ハードロックでアイドル的な売り方もそうですし、ハードロックが飽和状態になったときにメジャーな展開をしたり、大きなタイアップを受けてテレビに出たりするのも、誰もまだその頃はやっていなかったことなので。そこで自分が思った以上にファンの方が付いてくださって商業的にはすごく成功したんですけど、やっぱり反発もありましたし」
 
――確かに当時は鮮烈な印象がありましたね。やたらと歌が上手い人がポップスをやってるという(笑)。
 
「(笑)。そういうやり方も全て、私みたいなハードロック出身の人間としては第1号だったと思うんですよ。この考え方が『Legenda』のタイトルにも結びつくんですけど、その時点で自分に共感してくれた方もいれば、気持ちを分かってくれる方が少ない時代もあって…それはそれで良かったんじゃないかなって今は思うんです。10年、20年、30年と経ってから、“あれってすごくエポックメイキングだったよね”って気付いてくださる方がいれば、それでいい。そういう自分の過去の足跡だとか未来についてもそういう気持ちでいますから、それも含めてレジェンド的に受け取ってもらえたらと思ってやってきたので、今回はちょっと大仰なタイトルを…希望的観測も含めて付けたんです。そういう風にいつも何か選択して、新しくいよう、冒険しようとやってきたことは勇気がいったなと自分でも思うんです。逆に皆さんにとってはきっとマイナスで私にとってはプラスだったのは、すごくメジャーな活動をしていたのに一気にストイックな活動に戻したっていう(笑)」
 
――そうですよ~!(笑)
 
「普通は誰も怖くてやらないと思う(笑)」
 
――ゆっくりとシフトチェンジ、とかはありますけど。
 
「そのことも今となっては良かったと思ってるので。そういう人もいなかったし、いろんなやり方を残せたような気がするんですよね。私がその後すぐいなくなってしまっていたら別なんですけど、今でもとりあえず現役でやっているので。そういう人間もいるんだっていう道を残せたと思います」
 
――早く後継者が出てきてもらわないとっていう(笑)。
 
「そうですね(笑)」
 
――最近GALNERYUSとかを取材しても思ったんですけど、ハードロック/ヘヴィメタルって日本のマーケットではメインストリームではないですけど、実際のセールスは結構コンスタントに売れている。ライブの環境にしても、実はJ-POPと言われる類の人よりも世界の大きな舞台で活動してることがすごくあるな~と感じたり。
 
「私なんかも、今はもう日本の皆さんに聴いてもらいたいと思ってアルバムを作ってますけど、海外に向けて作っていた時期もありますし、その内容は絶対に世界基準のつもりなんですよね。その辺はブレないし、ずっとそうありたいなと思ってます」
 
――技術的なところとかも含めて言い訳が出来ないジャンルだと思うんで、そこで世界と戦えるレベルのものを発信し続けているのはやっぱりすごいことで。来年の30周年で具体的にやろうと思っていることは現時点であります?
 
「10年ごとに出しているベストアルバムの『Inclination Ⅲ』を、一応作るつもりではいますね。あとその後に30周年のツアーはしたいと思っていますね」
 
――最後にぴあ関西版WEB読者にメッセージをお願いします!
 
「あんまり大人のアーティストに納まりたくはないんですけども、ある意味では大人のアーティストとして日本の皆さんに、何をお伝えしていこうかを日々考えて音楽を作ってますので、私のそういう気持ちと皆さんの気持ちが共鳴する瞬間が多ければすごく嬉しい。今回のアルバムはちょっとヘヴィでダークですけど、今の時代のこの閉塞感の中だからこそ、私の心意気みたいなものが伝わればと、すごく思っています」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2012年4月20日更新)


Check

Release

24枚目のオリジナルアルバムは
闇を貫く歌声が冴え渡るヘヴィネス

Album
『Legenda』
発売中 3000円
徳間ジャパンコミュニケーションズ
TKCA-73740

<収録曲>
01. Crisis Code
02. Momentalia
03. Heartstorm
04. Crimson
05. El Dorado
06. Forest
07. Ransei-Conscientia
08. The Greatest Cage
09. Étranger
10. Get Together
11. Aurea

Profile

はまだ・まり…中学時代よりスタジオボーカリストとして、CMソング等の仕事を開始。大学時代に参加した女性ロックバンド・MISTY CATSをきっかけにスカウトされ、’83年にアルバム『LUNATIC DOLL』でデビュー。アイドル全盛時代に、本格派女性ロックボーカリストとして瞬く間にスターダムにのし上がり、ヘヴィメタルの女王として確固たる地位を確立する。’87年よりレコーディングの拠点をL.Aに移し、海外のトップミュージシャンとのコラボレートを開始。それと同時に、それまでのハードロック/ヘヴィメタル色の強い作品だけでなく、より幅の広い音楽性を発揮するようになる。’88年にはソウルオリンピックNHKイメージソング『Heart and Soul』が初のベスト10入りとなるオリコンチャート6位を獲得。それまでのロックファンだけでなく、一気に認知度を高める。翌’89年にリリースしたシングル『Return to Myself~しない、しない、ナツ~』、そして、アルバム『Return to Myself』がオリコンチャートで1位を獲得。’90年にはTOTOのメンバーとのセッションやL.Aのライブハウス・ROXYでのライブを成功させる等、国内外で精力的な活動を展開。’93年にはMCA Internationalと世界契約し、アジアを中心とした海外でも活動を開始。’94年にはヨーロッパに進出し、キム・ワイルドと共にヨーロッパツアーを敢行。’02年より、日本での精力的な音楽活動が再び展開。圧倒的な歌唱力と表現力を兼ね備えた、世界を知る数少ない日本人アーティストである。

浜田麻里
オフィシャルファンクラブサイト

http://www.mari-family.com/


Live

関西圏で残すは高知公演のみに
各地でSold Out続出の全国ツアー

『Mari Hamada Live Tour 2012 “Legenda”』
【大阪公演】
Thank you, Sold Out!!
▼4月22日(日)18:00
なんばHatch
全席指定6500円
夢番地■06(6341)3525
※未就学児童は入場不可。

【高知公演】
チケット発売中 Pコード161-750
▼5月18日(金)19:00
高知BAY5 SQUARE
前売6500円
BAY5 SQUARE■088(834)4177
※未就学児童は入場不可。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

Present!!

ツアーグッズと直筆サインを
セットにして2名様にプレゼント!

Mari Hamada Live Tour 2012
“Legenda”オリジナルツアーグッズ
●マフラータオル&直筆サイン
【1名様】
●トートバッグ&直筆サイン
【1名様】

【締切】5月28日(月)15:00
※商品のご希望がある場合は、
ご意見・ご感想の欄に明記ください。

※当選は発送をもって代えさせて頂きます。
※受付は終了致しました。たくさんのご応募ありがとうございました。