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ホーム > インタビュー&レポート > 椿屋四重奏解散、3.11、そして初のソロアルバムにして キャリア最高の輝きを放つ傑作『école de romantisme』! 激動の2011年を経て中田裕二がたどり着いた現在地を紐解く ツアークライマックス突入目前・撮り下ろしインタビューが到着!!


椿屋四重奏解散、3.11、そして初のソロアルバムにして
キャリア最高の輝きを放つ傑作『école de romantisme』!
激動の2011年を経て中田裕二がたどり着いた現在地を紐解く
ツアークライマックス突入目前・撮り下ろしインタビューが到着!!

 昨年、1月11日に突如として発表された椿屋四重奏の衝撃の解散。着実に、そして虎視眈々とブレイクポイントを見据えていたバンドが、約10年の歴史に幕を閉じたのも束の間、椿屋生誕の地・仙台が未曾有の大震災に襲われる…。この第二の故郷の危機に際し、すぐさま配信にて『ひかりのまち』を発表。バンド時代より並行して活動していた、カバー曲を中心に歌に焦点を置いたプロジェクト・SONG COMPOSITEを再起動し、全国を廻った中田裕二。フロントマンとして楽曲の全てを手掛け、歌謡の血を宿したドラマチックなロック賛歌を数々生み出してきた彼が、ソロとして挑んだ初のフルアルバム『école de romantisme』は、アダルトでジャジーなサウンドアプローチで緩やかに幕を開け、ダークなプログレからネイキッドで優しい弾き語り、リズミックでアーバンなAORに、グラマラスで力強いロックチューンと、時折顔を出す異国情緒と彼が生きた80~90年代歌謡を地下水脈に、類まれなソングライティングが冴え渡った傑作に仕上がった。そこで、同作を携えたツアーもいよいよ終盤戦へと差し掛かった今、中田裕二の現在に迫るロングインタビューをお届け。歌を羅針盤に新たなロマンを追い求めたミュージック・ボヘミアンが、行き着く先は光か、闇か――。

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“俺はミュージシャンをやっていくんだ”って


――ベクトルは椿屋とは似て非なるものというか、新しい肌触りを持つ作品が出来たと思いますけど、実際のリスナーの反応ってどうでした?

 
「思ったより…」
 
――素直に受け入れる、みたいな。
 
「うん。もっと…」
 
――賛否両論が出るかと思いきや。
 
「そうですね。“受け入れ難し”みたいな(笑)。ありがたいことに、ホントに」
 
――ここまでの流れをたどっていくと、バンドが解散しましたと。ここから丸1年動かないパターンもあるし、ライブはするけど音源はまだ出さないとか、いろんな再始動のスタイルがありますけど、ソロの始動としては、音源もフルアルバムのサイズで全国ツアーもあってと言ったら、割と早いリスタートだったと思うんだけど、そのリスタートまでの時間の短さは意識してた?
 
「う~ん、やっぱりこのスピードは震災があったからっていうのはありますね。なかったらもっとゆっくり準備してたかなぁと」
 
――まずはSONG COMPOSITEでじっくり全国廻って曲作りみたいな。
 
「そうですね。具体的にどういう形態でソロをやるかも決めてなかったし。何だろうな…まぁああいうことがあったんで、もうなんか自然に“動かなきゃ!”って。当初、ソロ活動をどうしていくのかはモヤモヤしてたんですけど、なんかそれでいろいろとハッキリしたというか。まぁここでハッキリしなかったら俺、やる意味ないなとも思うし」
 
――そのハッキリと見えたものって、具体的にはいったい?
 
「もうシンプルに“俺はミュージシャンをやっていくんだ”っていうこと。まぁ俺が人様の役に立てることって、やっぱもう音楽しかないんで。それをやっていくことが一番なのかなぁと」
 
――去年、取材したアーティストってみんな、特にあの時期に制作がかぶっていた人はやっぱり、音楽なんかやってていいのかとか思う人もいれば、音楽の力を改めて感じる人もいれば、無力だなって思う人もいて。中田くんに関しては、その音楽の持ってる力を感じた側だったってことですよね。
 
「まぁ当初はやっぱり…音楽なんて何の役にも立たねぇなと思いましたよ。でも、ファンの人とかがやっぱり、求めてくれるじゃないですか。“曲をラジオで流してくれてありがとう”とか言われると、間違ってないんだって思えた。お客さんのおかげっていうのもありますね。ただ正直、やっぱり無力感はありましたよ。それまではロックやってたから。ロックなんてめちゃめちゃ電気使うじゃないですか(笑)」
 
――うんうん(笑)。
 
「俺、あんときに一番(ロックが)リアリティがないと思ったんですね。やっぱ平和なときこそラウドな音が出せて、何となく世の中の文句を言っても成り立つ。あのときはもう、そんな次元じゃなかったんで。そう考えてみるとやっぱり“歌”だなと思ったんです。例えばアコギ1本でも成り立つもの。それで成立しないと、ミュージシャンとしてやっていく資格もないと思ったんですよね」
 
――仙台は椿屋が活動の拠点にしていた場所でもあったし、そう考えたら自分の音楽というか人生にも、影響が大きい出来事だった感じですね。
 
「相当大きかったですね、うん。でも…歌の力を、もう1回信じてやっていきたいなと。音楽をやることが世の中のためになるとは言い切れないんですけど、求めてくれる人がやっぱりいるから。そこにはちゃんと応えたいなっていうのはあります」
 
――その感覚って以前からあったものなのかな? 自分の表現を世に届けるとか知らしめるという感じはあったけど、中田くんはリスナーとか周りの何かにあまり揺さぶられる人ではないのかなって、俺は思ってたんだけど。
 
「なかったですよ、ホントに。一方的な表現こそがロックと思ってたんで。でもやっぱり、僕らみたいな仕事って、時代と共にありますから。そこは無視出来ない。ちゃんとやってることに意味がないと…そういう意味では変わったかもしれない」
 
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ただ延長線上にあるから。椿屋という季節を経て、今がある
 
 
――俺は正直、このアルバムを聴くのがちょっと怖かったというか、これを聴いて自分はどう思うんだろうなって。どこかで“椿屋の方が良かった”って言いたかった自分がいると思ってたんだけど、でもこのアルバムを聴いたらもう、“そりゃそうだな”って思った。中田裕二というソングライターが今まで世に発表してきた作品では、俺は最高傑作だと思いました。
 
「あぁ、ありがとうございます。嬉しい」
 
――だからなんか理由が分かったというか、こうなるべきだったんだって。聴いたときにすごく思いました。
 
「嬉しいです。たぶん俺自身が、椿屋と全く違ったものをやろうとか、椿屋を否定して、椿屋で出来なかったからソロになったとか、そういう意識がないんですよね。ただ延長線上にあるから。椿屋という季節を経て、今がある。それが届いたのかなって」
 
――うんうん。バンド時代はソングライターでありフロントマンだから文字通りバンドの中心人物だし、もっともっとワンマンバンドになってもよかった。でも、やっぱ中田くんって、最後の最後まで“俺の言う通りにやれ”とは言い切らない。この4人で、この3人でやるからこそっていうことに、ある種すごくこだわるじゃないけど。
 
「そうですね。こだわってましたね。うん。自分でほとんどやっちゃうくせに、このメンバーじゃないと成り立たないっていう、なんか…そこは結構ありました、ヘンにね」
 
――だからそれこそもう“俺が全部やる!”みたいにやり切ってたら、また何かが違ったのかも。
 
「ホントはそうした方がもっと上にイケたかもしれない。もう完全に全部俺、みたいな(笑)。でも、性格的にやっぱりなぁ~。だから、その若干のイキ切れなさが…やっぱりロックバンドってイキ切んなきゃいけないじゃないですか? そうは成り切れなかったですね。やっぱりみんなの見せ場もちゃんと作んなきゃって。なんか事をちょっと客観的に見過ぎちゃうところがありましたね」
 
――ストレートに自分がやりたいようにワンマンでやってしまうのもひとつの手だったけど、ある種のプロデューサー気質というか、優しさというか。
 
「そうそうそう。それが…まぁダメだったっていうか(苦笑)。まぁでも、それのおかげもあってああいう素晴らしいバンドが出来たのはありますから」
 
――そうだね。そのバランスでしか生まれないものがあったし。
 
「うん。ただやっぱ今もね、ロックバンドっていうのは、やっぱ天然の人がもうぶっち切ってやんないといけないなっていう気はしますけど。日本語通じないぐらいの、もう無茶苦茶な人じゃないと(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
「ある意味それぐらいダメな奴じゃないと(笑)、成り立たんなぁと」
 
――逆に言うと何でこだわってたんでしょうね? ロックであったりバンドであることに。
 
「う~ん、まぁ好きでしたからね、ロックバンドが。そういう時代に育ってますから。一番夢がある仕事だったし。まぁ今はちょっと変わってきてますけど」
 
――それで言うと、ソングライティングはもちろん昔からやってて、自分の中でじゃあソロでやっていこうとなったときに、何か気構えだったりやり方が変わったりはした? それとも基本的なところは変わらないのか。
 
「意識の上ではそんなに変わってないと思いますね。でもアウトプットが違うんで、完成形のイメージは全然違いますね。メンバーが演奏してる姿を想像しながら作るのと、自分ひとりで歌うのを想像するのとではやっぱり違う。それは大きいかも」

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こういう音楽が必要だって、信じ込んじゃってるんですよね
 
 
――今作に入ってる曲っていうのは、だいたい昨年書かれた曲が多いということでしたけど、それこそ震災以降がやっぱりほとんどって感じかな?
 
「そうですね。7~8割は震災以降かな」
 
――やっぱり自分の中での使命感だったり伝えなければいけないことを、意識というか感じながら作っていた?
 
「結構…死生観みたいな、人の生き死にみたいなことは考えましたね。あと…具体的なメッセージを持ってる曲は避けようかと」
 
――というのは?
 
「俺はあんまりメッセージソング自体が好きじゃないっていうのもあるし、理想的なのは聴いた人が自分なりの答えを曲から見つけて、それがその人にプラスに作用する。歌が持つ力のひとつに、そういうものがあるんじゃないかなとは思ってて。具体的に“頑張れ頑張れ”とは言わないんだけど、なんか頑張りたい気持ちになってくるというか。ぬくもりなんですかね、人の。それは入れたいなぁと」
 
――ホンマにいろんなベクトルの曲が入ってるし、しかもほとんど自分で演奏してるというのもスゴいよね。
 
「そうですね。8割ぐらい」
 
――ちゃんと作品化出来るクオリティで各楽器をプレイ出来るっていう。でも、やることめっちゃ多くない?
 
「めっちゃ多いですよ、ホントに。すっごいしんどかったもん(笑)」
 
――普通だったらリズムを録り終わるまでに歌詞を書こうとか、そういう時間の使い方があるけど、自分でベースも弾かなきゃいけない、ギターも自分でダビングするとなったら、作業が勝手に進んでることはないじゃないですか。だから、自分が弾き終わらないと次が録れない(笑)。
 
「そう(笑)。全部自分待ちなんですよ。だから作詞作曲するぐらい、もう楽勝だと思いました。その後が大変(笑)。そこから音を決めて演奏して、ミックスも半分やっちゃったんで。結局、完成形まで全部自分で世話しなきゃいけないっていう」
 
――でも、今回は1回、全部自分でそうしてみたかったと。
 
「ほとんど自分で作ったものを聴いてみたかったのもあるんですよね。俺はいったいどういう音楽をするヤツなのか、自分自身への確認もあって。それで1回自分を客観的に見て、その上でいろんなことに手を出していこうと」
 
――なるほどね。でもやっぱり、それはプロデューサー的な視点やね(笑)。
 
「アハハハハ(笑)。バンドマンの意見じゃない。なんかこう、自分の作る音楽の感触が…何となく分かりましたね」
 
――ミックスまでやったのは今回が初めてだったということだけど。
 
「そうですね。ある意味ミックスってその道のプロの領域なんで。力試しもあるし、何だろう…俺自身がプロミュージシャンなのかどうかっていう、チャレンジでもありましたね」
 
――それこそ、さっき作詞作曲は楽勝だって言ってたけど、曲自体はスムーズに出来た?
 
「曲はもう常に。今もいっぱい出来てるし。たまに煮詰まるんですけど、気が付くともう何か出来てる」
 
――“よし作んなきゃ”っていうよりは、日常的に曲を作るタイプと。
 
「そうですね。じゃないともう逆にダメですね、不安になって」
 
――今作はブログでも、“良い意味で今の音楽シーンから完全に脱出できたと思います”“こういったアルバムは今現在ないです”みたいな記述がありましたけど、確かに!って。シーンの中で見たら異質なんだけど、1枚のアルバムとして見たら、なんかあって欲しかった音楽というか。
 
「それはすっごい嬉しいですね。自分的にはこの1stって寺尾聰の『Reflections』みたいな感じがしてるんですよ。『Reflections』は音楽的にめちゃめちゃレベルが高いアルバムなんですけど、あのアルバム全体の持つ雰囲気、独特さ…“シティ感”があるじゃないですか? でもそれは“寺尾聰のシティ感”であって(笑)。なんかそういう感じ」
 
――SONG COMPOSITEでもいろいろカバーしてたけど、日本の歌謡曲が持つ独特のムードだったり、この曲の良さは何なんだっていう。
 
「アハハハハ(笑)」
 
――作家さんとしての職業が成り立っていたぐらい音楽が作られていたし、歌に徹するプロもいたし。
 
「今の音楽との違いは何だろう?って考えたりもするんです。時代が違うからサウンドは当然違ってくる。ただその根本的なところの差は何なんだと聴き比べてみると、何かが決定的に違う。具体的にはちょっと分かんないんですけど、“歌う理由”のなのかなとは、何となく思うんですよ。その人が歌うことで、すごく意味を持つ。その人と曲の距離が離れてない。その整合性みたいなものが、今の曲にはあんまり感じられなかったりもしますね。この曲は別にこの人じゃなくてもいいよなとか、この曲はあの人が歌った方がいいんじゃねぇかとか」
 
――昔だったら、中森明菜に歌わせたときに最も破壊力がある曲を、みんなが一生懸命考えて渡すみたいな。
 
「まさに。だから、作詞作曲してなくても、なんかいいんですよね。誰が作ろうと、中森明菜の歌になる。なんかそういう音楽を作りたいなって。まぁ自分が出来てるかはちょっと分かんないですけど」
 
――言わば、中田裕二が歌ったときに最も意味のある歌。さっきの話の中に出てきましたけど、それで言ったら中田くんが歌う理由って何だと思いますか?
 
「俺が歌う理由…俺がなぜ歌うかというと、こういう音楽が必要だって、信じ込んじゃってるんですよね。今の世の中にないから、俺がやるしかないって思い込んじゃってる。思い込ませてるのかもしれないですけど。やっぱ俺、音楽が、歌が好きなんで、(日本の音楽が)このままいかれてはちょっと困るなと。このまま日本の歌がないがしろにされていくのが嫌だった。その小っちゃい使命感でやってますけど」
 
――だから今、作詞家/作曲家/プロデューサーの中田裕二が、歌手・中田裕二に曲を提供してるわけだもんね。
 
「そうですそうです」
 
――このアルバムで、最も歌うべき歌を。
 
「あとは“引き継いでいきたい”っていうのがありますね。やっぱり歌謡曲には…日本にはいい音楽がたくさんあるから、それをコンポジみたいにカバーして歌うやり方もありますけど、それを自分なりに解釈して、また違う形でこの先に遺せたらなぁと思ってるんですけどね」
 
――でも、孤軍奮闘じゃないけど、周りにいないよね。まぁバンドのときからそうだったけど、“志が一緒だよアイツは”って引き合わせたい人がなかなかいない(笑)。
 
「めっちゃ寂しいっすよ(笑)。ホンットにね~すごい話合わないんだよね~同世代と」
 
――アハハハハ!(笑)
 
「だから上の人たちはやっぱ、すげぇ話が分かるんですよ。俺が時代に乗れてないのか(笑)」

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完全なる幻想を書くでもなく、完全なる日常を書くでもなく
そこを行き交ってること自体が真理
 
 
――でも、こういう嗜好性っていうのは、別にソロになってから急にこうなったわけじゃなくて。
 
「あぁもう椿屋のときからです」
 
――自分の音楽が始まった頃からずっと何処かにあったわけで。となると、初めて思う存分やれたアルバムかもね。
 
「そうですね。やっぱバンドのときって、例えばフェスとかで、まぁまぁ浮くじゃないですか(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
「すごい疎外感を感じるじゃないですか。まぁ俺の責任でもあるけど、メンバーにもそういう寂しさを一緒に共有させなきゃいけないっていう、その申し訳なさ(苦笑)。今はもう、俺1人寂しい思いをすればいいんで。そういう意味では開き直っていけるかなっていうのはあるんですけど」
 
――そやね。ダイレクトに自分に返ってくる。評価も批判も。そう考えたらある種の覚悟を持ってね、それこそ自分の名前で看板背負ってやっていくという。
 
「でもね~、震災前は何かユニット名を付けようとかとか思ってた。打ち込み系で、しかもちょっと謎めいた感じで、ジャケットに写真を載せないとか。でも、そういうのがもう、“ダセー!!”と思っちゃって。ちゃんと、中田裕二でやろうと思って」
 
――オシャレで小賢しい感じにならなくてよかった(笑)。今回のアルバムを聴いて、4曲目の『迷宮』以降の流れが圧巻だなと思って。『sunday monday』(M-1)『リバースのカード』(M-2)とかはライブとかでもやってたよね?
 
「やってましたね、コンポジで」
 
――俺の最初の懸念事項は、『sunday monday』みたいな、ああいうめちゃくちゃジャジーでエロいアルバムに、もっとそっちにどっぷりいくのかなともちょっと思ってた。でも、このアルバムのバランスは、ジャズあり弾き語りありプログレあり、それこそロックチューンもありと、いろんなサウンドのフレーバーはあるけど、どれもが地に足着いて極端にならずに、ちゃんと歌がド真ん中にあるのが、この完成度の高さにつながってるなと。
 
「おぉ~ありがとうございます」
 
――なんか『ご機嫌いかが』(M-11)とかもそれこそ、今のシーンに逆にない感じのロックチューンというか。
 
「歌ってる世界観もどうだっていいことなんですよね。ただの男女のもつれ(笑)。別れた恋人のことをグチグチ想ってる、ちょっと情けない男。そういう誰にでもあるようなことを、すげぇデカいスケールでやりたいなと(笑)」
 
――アハハハハ(笑)。男女のもつれに壮大な鍵盤が鳴り響くみたいな(笑)。
 
「そんな大声上げて言うことか!みたいなね(笑)。まぁ人から見れば些細なことかもしれないですけど、そういう誰にも起こりうる出来事って、本人にとってはすごい衝撃だったりもするじゃないですか。そんな、人間の持つ極端な解釈のイメージの豊かさというか…なんかそれが“ロマン”ってことなのかなと思って、『école de romantisme』(=ロマン派)っていうタイトルにしたんです」
 
――“ロマン”って、なかなか今の時代にないというか、いつの間にか考えすらしない時代になってたっていう。
 
「もう現実で手一杯みたいな人が多いですよね、やっぱね」
 
――そういった意味で、音楽シーンにおいてもそうだし、そういうアティチュードの部分でみんな持ってたはずなのに、忘れちゃってたものを思い出させてくれる…そういうアルバムかもしれないですね。他のインタビューでも、夢物語じゃなくて日常的なことにスポットを当てて、その中に潜むロマンを歌いたいと言ってましたね。
 
「そうですね。最近、結構さだまさしさんとかを聴いてて」
 
――その嗜好性、30歳の口から一番に出てくるアーティストの名前じゃないなぁ(笑)。
 
「アハハハハ(笑)」
 
――ブログでも美空ひばりの良さを延々と書く、みたいな(笑)。
 
「そう(笑)。さださんの歌詞って誰にでもあるよなっていう世界なんですけど、すっげぇデカいんですよ。それってなんでだろう?と思って。完全なる幻想を書くでもなく、完全なる日常を書くでもなく、そこを行き交ってること自体が真理なのかなって」
 
――中田裕二のフォロワーが、何年後かに出てくるかな?
 
「何で公言してくれないのか分かんないんですけど、結構バンドくんたちが解散した後から言ってきたりするんですよ。“すっげぇ好きだったんですよ(小声)”、みたいな(笑)。それもっと他でも言ってよって(笑)」
 
――確かに聞かないもんな~(笑)。おかしいな、いい音楽やってたのに。
 
「アハハハハ(笑)。バンド名がバンド名だし…まぁいつか言ってくれるんじゃないかな。もうちょっとしたら(笑)」
 
――今作が出来上がったときに何か思いました?
 
「やっとね、ひとり立ち出来るかもと、なんか思いましたね。もちろんバンドのときも達成感はあったんですけど、やっぱりひとりでちゃんと中田裕二としてのアルバムを完結させられるのかっていう不安は、正直あったんですよね。でも、作り終わって初めて通して聴いたときに、“イケる!”って思えた。それは嬉しかったです」

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もっともっと、やるからにはね、上にいかねばならんなぁと
 
 
――年明けの解散の発表から震災、ソロとして初のアルバムを作ってということで言ったら、去年はホントに密度の濃い1年で。
 
「そうですね。暇な時間っていうのがほとんどなかったですね」
 
――忘れられない年ですね。
 
「ちょっと忘れられない年ですね、いろんな意味で。複雑ですけどね。いい1年だったとも言えないし、やっぱり。でも、自分がこれから何をしていくべきかはハッキリしたなぁ。この仕事、真剣にやっていこうって。ちゃんとそこにプライドを持って、やっていこうっていうのは思いましたね」
 
――逆に音楽を辞めようかと思ったことはあった?
 
「思わなかったですね。まぁ音楽しかないしね、出来ることって言ったら。やっぱ俺はコレだなと。まぁでもね~まだまだだなぁ。もっと売れてたら、もっといろんな支援が出来たのになぁとか。それは非常に悔しいですね。だから余計に売れてやろうと思ったし。やっぱりああいうときにホントに人気がある人って、力があるなぁと。長渕(剛)さんが行ったりしたら、やっぱり反響がすごいじゃないですか。みんな喜ぶもんね、絶対。だから、もっともっと、やるからにはね、上にいかねばならんなぁと、うん」
 
――それは2012年以降の課題ですね。
 
「そうですね。もう課題ですね、完全に」
 
――関西圏では3月1日(木)は心斎橋BIGCAT、11日(日)はKYOTO MUSEでライブもあります。ツアーに向けて何かあります?
 
「早く自分の、中田裕二のライブのスタイルみたいなものを、今年は確立したいなぁと。ソロになった俺の見せ方、ガーっとラウドな曲を立て続けにやるとかではないダイナミズムだったりそれ以外の楽しませ方を、勉強しなきゃなぁと思ってますね」
 
――まずはツアー、そして今年の動きも楽しみにしてますよ。
 
「よろしくお願いします! ありがとうございました!!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
Photo by 宮家秀明(フレイム36)

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(2012年2月28日更新)


Check

Movie Comment

中田裕二からの伝説の
萌え動画コメントはコチラ!

Release

初のソロアルバムにして最高傑作!
目まぐるしく表情を変える珠玉の楽曲

Album
『école de romantisme』
(エコール・ド・ロマンティスム)
発売中 3000円
ワーナー・ミュージック・ジャパン
WPCL-11011

<収録曲>
01. sunday monday
02. リバースのカード
03. LOST GENERATION SOUL SINGER
04. 迷宮
05. バルコニー
06. 記憶の部屋
07. ベール
08. 白日
09. 虹の階段
10. endless
11. ご機嫌いかが

Profile

なかだ・ゆうじ…'81年生まれ、熊本県出身。'00年、仙台にて椿屋四重奏を結成。'03年に初音源をリリース、'07年のメジャーデビューを経て、歌謡曲をベースにした新たなロックサウンドで多くの音楽ファンを獲得。'11年1月の突然の解散発表は大きな反響を呼んだ。3.11東日本大震災直後には、被災地/被災者に向けての曲『ひかりのまち』を中田裕二名義で配信リリース(収益は全て義援金として寄付)。6~8月にかけて行なわれた、カバー曲を中心に歌に特化したプロジェクト“SONG COMPOSITE”の全国ツアーは全17公演が即日SOLD OUT。これを機に、本格的なソロ活動に入り、同年11月23日には待望の1stアルバム『ecole de romantisme』を発表。その他の活動としては、'10年6月に田中ユウスケ率いるクリエイター集団・Q;indiviのミニアルバム『Q;indivi+』に参加。また、同年7月発売の杏子のミニアルバム収録曲では、初の楽曲提供&プロデュースも手掛けた。

中田裕二 オフィシャルサイト
http://yujinakada.com/


Live

いよいよツアーもクライマックス!
大阪公演が間もなく開催へ

『TOUR '11-'12
"tour de romantisme"』

【大阪公演】
チケット発売中 Pコード153-282
▼3月1日(木)19:00
心斎橋BIGCAT
オールスタンディング4500円
BIGCAT■06(6258)5008
※3歳未満は入場不可。3歳以上は有料。

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【福岡公演】
チケット発売中 Pコード153-236
▼3月3日(土)18:00
DRUM LOGOS
オールスタンディング4500円
BEA■092(712)4221
※3歳未満入場不可・3歳以上チケット必要。

【熊本公演】
Thank you, Sold Out!!
▼3月4日(日)18:00
LIVE HOUSE ジャンゴ
オールスタンディング4500円
GAKUONユニティ・フェイス■0985(20)7111
※3歳未満入場不可。3歳以上チケット必要。

【広島公演】
チケット発売中 Pコード152-715
▼3月8日(木)19:00
ナミキジャンクション
オールスタンディング4500円
夢番地広島■082(249)3571
※3歳未満入場不可。3歳以上チケット必要。

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【名古屋公演】
チケット発売中 Pコード153-021
▼3月10日(土)18:00
エレクトリック・レディ・ランド
オールスタンディング4500円
サンデーフォークプロモーション■052(320)9100
※3歳以上有料。3歳未満は入場不可。

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【京都公演】
Thank you, Sold Out!!
▼3月11日(日)18:00
KYOTO MUSE
前売4500円
KYOTO MUSE■075(223)0389
※3歳未満は入場不可。

【東京公演】
チケット発売中 Pコード158-165
▼3月14日(水)19:00
赤坂BLITZ
1F立見4500円 2F指定4500円
ソーゴー東京■03(3405)9999
※3歳未満入場不可。3歳以上チケット必要。