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冒頭から美しさの連続!兵庫県立芸術文化センター
佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2024は
名演出とともに甦るプッチーニ『蝶々夫人』

兵庫県立芸術文化センターは7月12日より佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2024としてプッチーニの歌劇『蝶々夫人』を上演する。『トスカ』『ラ・ボエーム』と並ぶプッチーニの代表作であり、1904年2月、ミラノ・スカラ座における初演以来、120年にわたって世界中の劇場で愛されてきたオペラ史上屈指の名作でもある。物語は日本、長崎を舞台に、アメリカの海軍士官ピンカートンに嫁いだ没落士族の娘、蝶々さんの運命を描く。表面的な筋書きに留まらず、そこにはプッチーニが思い描いた日本、さらにはアメリカと日本の文化の相克などさまざまな要素が盛り込まれ、作品全体を重厚なものにしている。蝶々さんのアリア『ある晴れた日に』に代表される名旋律の数々は、聴く者を異国情緒豊かなオペラの風景へと誘うことだろう。

兵庫芸術文化センターでは開館間もない2006年に、名演出家であった栗山昌良の演出でこの作品の6回公演を行っている。この公演は2回の追加公演、さらに2008年春には7回のリバイバル公演も行われるなどの成功を収め、同プロデュースオペラの夏の連続上演という現在の方向性を決定する記念碑的な舞台となった。栗山昌良は2023年に世を去ったが、今回の再演に際してはその2006年の舞台を原演出とし、当時、栗山のもとで演出補を務め、国内外で活躍する演出家の飯塚励生(レオ)を迎えて、アップデートされた『蝶々夫人』の上演を目指すという。

蝶々夫人2006.gif
「栗山演出は冒頭の桜の場面から美しさの連続です」。1月11日に行われた制作発表記者会見の席上、佐渡裕はそのように語った。栗山演出による2006年の舞台は佐渡自身にとっても、この兵庫のホールで始まったばかりのオペラ上演に手応えを感じた最初の時間であったという。会見にはほかに飯塚励生、そして今回ダブルキャストで蝶々さんを務めるソプラノ、迫田美帆と高野百合絵が登壇。2019年、すでに『蝶々夫人』の題名役で藤原歌劇団デビューを果たし、兵庫の舞台初登場となる迫田、また兵庫の『メリー・ウィドウ』『ドン・ジョヴァンニ』で魅力を放ち、今回、初めて『蝶々夫人』を歌う高野がそれぞれのヒロイン像を語る中、佐渡裕は「蝶々さんの設定は第1幕で15歳。第2幕はその3年後です。全編が僕にはまるで彼女の短い人生の、大切な写真アルバムのように思えることがあります。2人の蝶々さんからもアイデアを受け取りながら、レオと一緒に新しい『蝶々夫人』を創り上げていきたい」と語り、公演への強い意欲をにじませた。


迫田100.gif迫田美帆:蝶々夫人という役は強い声のソプラノが歌うイメージが強くありますが、楽譜を開いてみると意外とピアノやピアニッシモといった繊細な表現が多く書かれています。そういったところに、彼女がまだ15歳~18歳の少女であるということを表現するための要素があるのではないかと、日頃から考えています。そうした表現を積み重ねて、皆さまの共感をいただけるような蝶々夫人として、初めての兵庫の舞台に立ちたいと思います。


高野100.gif高野百合絵:兵庫の舞台では、いつも"挑戦"という大きなプレゼントをいただいているような気がしています。今回また蝶々夫人という挑戦をいただいて、最初は不安もありましたが、今はそこから少しずつ、この役をこれから何十年も歌い続けたい、そしていつか蝶々夫人として世界の舞台を踏みたいという気持ちに変化しています。この挑戦を糧として、経験して、学んで、高野百合絵の蝶々夫人を創り上げていければと考えています。


飯塚励生③.gif飯塚励生:栗山先生のキャラクター作りには日本舞踊からの影響が強くあって、内面や心理からではなくあくまで形や動きから表現、表情を創り上げていくものでした。僕は兵庫で2回、その前は新国立劇場で先生と一緒に蝶々夫人の演出に関わらせていただいたんですが、その素晴らしさはもう圧倒的で、僕はそれを受け止め、宝物にしています。栗山先生の演出を崩さないことをまず第一に考えながら、今回の舞台を創っていきたいと思っています。


佐渡裕100-160.gif佐渡裕:栗山先生との出会いは僕がまだ関西二期会の副指揮者だった10代の終わりの頃でした。もともとこのホールが開館して20年目の2025年に栗山演出で『蝶々夫人』を再演したいという思いがあり、先生のお歳を考えて予定を繰り上げたんですが、間に合わせることが叶いませんでした。オペラを創るということがまず挑戦でしかなかった時代にこれだけ美しく感動的な舞台を創り上げ、残してくれた先生は本当にオペラへの愛情を持って生きた方だったと思います。シンプルな舞台装置ですが、栗山演出は冒頭の桜の場面から美しさの連続です。それをこの兵庫の舞台でぜひ、ご覧いただきたいと思っています。



                          取材、文/逢坂聖也(音楽ライター)




(2024年2月 1日更新)


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佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2024
歌劇『蝶々夫人』

【音楽】ジャコモ・プッチーニ
【台本】ルイージ・イッリカ
    ジュゼッペ・ジャコーザ
 全3幕/イタリア語上演
 日本語字幕付き/改訂新制作

【指揮】佐渡裕
【原演出】栗山昌良
【再演演出】飯塚励生

【装置】石黒紀夫
【照明】沢田祐二
【衣裳】緒方規矩子
【振付・所作】飛鳥左近
【合唱指揮】矢澤定明
【舞台監督】幸泉浩司
【舞台設計】荒田良
【衣裳コーディネート】林なつ子、
           小栗菜代子
【演出助手】橋詰陽子
【プロデューサー】小栗哲家

【出演/ダブルキャスト】

〔7/12.14.17.20〕
【蝶々さん】迫田美帆
【スズキ】林美智子
【B.F.ピンカートン】ノーマン・レインハート
【シャープレス】エドワード・パークス
【ゴロー】清原邦仁
【ヤマドリ】晴雅彦
【ボンゾ】斉木健詞
【ケイト・ピンカートン】
  キャロリン・スプルール(両組)
【役人】的場正剛


〔7/13.15.18.21〕
【蝶々さん】高野百合絵
【スズキ】清水華澄
【B.F.ピンカートン】笛田博昭
【シャープレス髙田智宏
【ゴロー】高橋淳
【ヤマドリ】町英和
【ボンゾ】伊藤貴之
【ケイト・ピンカートン】
  キャロリン・スプルール(両組)
【役人】湯浅貴斗


《両組共通》
【ヤクシデ】西村明浩
【書記官】時宗務
【蝶々さんの母】森千夏
【叔母】梨谷桃子
【従妹】南さゆり

【合唱】ひょうごプロデュースオペラ合唱団
【管弦楽】兵庫芸術文化センター管弦楽団

【公演日程】
7月12日(金).13日(土).14日(日).
15日(月・祝).17日(水). 18日(木).
20日(土).21日(日) 全8回公演  
各日14:00開演
A席-13,000円 B席-10,000円 C席-8,000円 
D席-6,000円 E席-3,000円(消費税込)
▼チケット:2月18日(日)一般発売
【会場】兵庫県立芸術文化センター
    KOBELCO大ホール
【主催】兵庫県、兵庫県立芸術文化センター
【制作】兵庫県立芸術文化センター

【問い合わせ】
芸術文化センターチケットオフィス 
0798-68-0255 

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