次世代の巨匠たち、名曲の饗宴！
「クラシック・キャラバン2023 大阪公演
華麗なるガラ・コンサート」に出演する
松田華音(p)インタビュー

――松田さんは大阪とのかかわり、特に今回の演奏会の会場でもあるザ・シンフォニーホールとのご縁は深いようですね。

はい！　デビューリサイタルが大阪で、まさにシンフォニーホールでした。なので、今回お話を頂いた時、とても嬉しかったです。それ以降もシンフォニーホールさんには多くの機会を頂いていまして、ちょうど一週間後の7月29日に開催される「ラフマニノフ生誕150周年記念 熱狂コンチェルト2023 オール・ラフマニノフ・プログラム」にも出演させて頂きます。上原彩子さんが4番、福間洸太朗さんが3番、私が2番のコンチェルトを演奏します（インタビューは当演奏会前に行われた）。

――今回のガラ公演ではお祭りらしく、大栗裕作曲の「大阪俗謡による幻想曲」というご当地作品も演奏されるということもあり、客席はさらに盛り上がりそうですね。

大阪の皆さんにはいつも温かく迎えて頂いていて、今回も絶対に最初から最後まで盛り上がるに違いないと楽しみです！　クラシック・キャラバンに出演させて頂くのは今年で三回目ですが、毎回、お祭りのようなコンサートでとても楽しみにしています。今回はヴァイオリンの南紫音さん（メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲を演奏）、オルガニストの冨田一樹さん（サン＝サーンス 交響曲第3番「オルガン付」に出演）と初めてご一緒するのでお会いできるのが待ち遠しいです。

――ラフマニノフ・イヤーの今年、松田さんも圧倒的にラフマニノフ作品の演奏機会が多いと思いますが、あえてグリーグを演奏する新鮮味もあるのではないでしょうか？

グリーグの作品、特にピアノコンチェルトは独特な世界観、空気感があって、やはりチャイコフスキーやラフマニノフとは違いますね。ノルウェーの自然や大地の壮大さがストレートに感じられます。自然というものが作品全体の中心にあって、例え人間がその中に登場したとしても、ごく自然の一部でしかない、小さな存在なんだということを感じ、考えさせてくれます。

――第一楽章冒頭の滝が流れ落ちるような下降音型のくだりは印象的ですね。

自然の摂理というのでしょうか、何か運命のようなものを感じさせられます。この冒頭の数小節で一瞬にして壮大な世界観が呈示された後、第一主題以降は、その下の現実世界で起きている自然現象、例えば生き物たちのエネルギーの交わりだったり、大地に香り立つ匂いの混じり合いだったりと様々なプロセスが描かれていると私自身の中でイメージしています。

――全体を通して曲想の中で「北欧らしさ」が感じられる点は具体的にどのようなところですか？

全体的に北欧のヒヤッとした新鮮な空気感が、実際に一つの形になって表現されているようにも感じられますし、例えばフィヨルドの鏡のような非の打ちどころのない氷の輝きが描きだす美意識そのものが見事に音階などにも反映されていると思います。特に第二楽章では、そこに光が差した時の輝きの変化など、景色のうつろいが目に見えるように感じられます。第三楽章では、民族民謡的な要素もたくさん入っていますので、ノルウェーの民俗的要素もあり、色使いもとても鮮やかで華やかな感じになります。

――今回、共演指揮者は飯森範親さんです。

飯森さんとは2021年のNHK音楽祭で初めて共演させて頂いたのですが、その際、シチェドリンの「ピアノ協奏曲 第1番」をご一緒させて頂きました。私が飯森さんに「音楽祭なので、是非シチェドリンで！」と無理を言ってお願いしたのですが、快く受けて下さって、しかも、最初の打ち合わせで「こんなイメージだよね？」と話して下さった内容が、私が想像していた通りのものだったのですごく嬉しかったです。今回もご一緒できるのが楽しみで、今から心待ちにしています。

――最後にクラシック・キャラバン 大阪公演を楽しみにしているファンの皆さんにメッセージを。

グリーグのコンチェルトの世界観と魅力を皆さまにお伝えできるように心を込めて演奏したいと思っていますので、ぜひ会場にいらしてください。

取材・文：朝岡久美子

（2023年8月28日更新）