好評だった昨年公演に続きチェロの
オーレン・シェヴリンが来日。フランク、ドビュッシーほかを
取り上げ、ザ・フェニックスホールでリサイタル開催
昨年3月に来日し、スケールの大きな響きで聴衆を魅了したチェロのオーレン・シェヴリン。その好演も記憶に新しい彼が7月5日(火)、あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホールでリサイタルを行う。比較的短いインターバルでの来日の背景には7月1日、東京オペラシティでのNHK交響楽団との共演がある。シェヴリンは作曲家・岸野末利加の第69回尾高賞受賞作品《チェロとオーケストラのための『What the Thunder Said/雷神の言葉』》 (2021)の世界初演をケルンWDR交響楽団とともに行っており、今回はその日本初演におけるソリストとして迎えられたものである。リサイタルとは別の公演とは言え、これはシェヴリンが多くの関係者から信頼を寄せられる演奏家であることの証明であり、今後、彼の知名度はさらに上がることだろう。イングランド出身。2001年のロストロポーヴィチ国際チェロ・コンクールでは第2位グランプリを獲得。来日を控えたシェヴリンからは、いつも通り簡潔ながら心のこもった言葉が届けられた。〔音楽ライター/逢坂聖也〕
■昨年(2021)の来日公演はコロナの影響による困難を乗り越えてのものでしたが、素晴らしい内容であったと思います。シェヴリンさんから見て、お客さまの反応はいかがでしたか?
Oren Shevlin(以下O.S):ありがとうございます。昨年はあのような状況ではありましたが、温かい雰囲気の中で久しぶりに音楽をライブで共有でき、大きな喜びを感じました。
■今年は昨年以上に「凝った」感じのするプログラムです。第1部のドビュッシーの晩年のソナタには透明な美しさがありますし、プロコフィエフも晩年に近い作品ですが、こちらにはとても堂々とした主張が感じられます。
O.S:ドビュッシーのソナタは繊細な音楽の中にも反戦(第一次世界大戦)の思いが暗に反映された作品です。ドビュッシーと親交のあった私の師匠の師匠(モーリス・マレシャル/1892-1964)が若い時に、作曲されたばかりのこの曲が、実際チェロで演奏するとどんな風に聴こえるかドビュッシーに弾いてみせたという話を聞いており、特別な親近感のある作品でもあります。また2曲目、ウクライナ生まれのプロコフィエフ作曲のソナタは、小規模ながらバレエ組曲のようで場面展開も壮大です。
■第2部の始まりはフランク・ブリッジの作品からです。シェヴリンさんの母国の作曲家ですが、日本での知名度はいまひとつといったところかも知れません。
O.S:フランク・ブリッジは日本ではあまり知られていないということで、この機会にご紹介できるのはうれしいです。多くの秀逸な室内楽曲を残した作曲家です。今回は緩急のコントラストでこの2曲を選びました。
■プログラム最後はフランクのチェロ・ソナタです。もともとヴァイオリンのために書かれていますが、チェロで弾かれる時には、オリジナルとはまた別の味わいがあります。
O.S:セザール・フランクは今年が生誕200年ということで、迷わず選びました。ヴァイオリンのために書かれた曲ではありますが、どちらで演奏されても楽器の魅力がそれぞれ存分に引き出される、とても珍しい作品だと思います。ご期待いただければうれしいと思います。
■今回の来日には、岸野末利加さんの《チェロとオーケストラのための『What the Thunder Said / 雷神の言葉』》の日本初演(Music Tomorrow 2022/東京オペラシティ)という理由が大きいと思います。この作品の印象と世界・日本初演者としての気持ちを訊かせてください。
O.S:岸野末利加さんの『What the Thunder Said/雷神の言葉』は描写が素晴らしくカラフルで大変に魅力的な曲です。作曲される過程で、インスピレーションの元となった詩について、またチェロの可能性について岸野氏と話し合う機会を持てたことからも思い入れがあり、この作品を世界、そして日本で初演をさせていただくことは大変に光栄なことと考えています。
■大阪ではお客さまがシェヴリンさんの演奏を期待しています。メッセージをいただけますか?
O.S:また大阪に戻って来られること、演奏できることをとても感謝しています。
皆さまにお会いできるのを楽しみにしています。
Oren Shevlin/オーレン・シェヴリン
(2022年6月10日更新)
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