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音響を数理で描き出した20世紀音楽の巨人
バルトークとクセナキスに挑むいずみシンフォニエッタ大阪の
超絶プログラム。第48回定期演奏会「知の絢爛」

いずみシンフォニエッタ大阪(ISO)は近・現代の作品の演奏を主な目的に活動を続ける、住友生命いずみホールのレジデントオーケストラである。7月2日(土)の第48回定期演奏会は「知の絢爛」と題し、今年生誕100年を迎えたギリシャ出身のヤニス・クセナキス(1922-2001)の作品と、ベッラ・バルトーク(1881-1945)の『2台のピアノと打楽器のための協奏曲(川島素晴編/ISO版)』を取り上げる。数学と建築を学び、それらを援用した作風で20世紀の後半の前衛音楽の旗手となったクセナキスと、20世紀前半、リズムの構造に黄金比を採用するなど独自の音楽語法を確立し、その後の音楽界に大きな影響を与えたバルトーク。2人の作曲家の共通点はまた、並外れた演奏の難度の高さで語ることもできる。

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▲記者会見より。碇山典子と飯森範親(2022年5月19日、住友生命いずみホール)
 
公演に先立って行われた記者会見には、常任指揮者の飯森範親、ピアノの碇山典子が出席。プログラムアドバイザーの川島素晴、打楽器の山本毅がリモートで参加した。席上、碇山はクセナキスの楽譜に触れ「ラフマニノフやリストの手を以ってしても鍵盤を押さえることは無理。まずは何が可能かという謎解きから始めなければ」と語り、作品の性質を明らかにした。

碇20190301第41回定期演奏会-049(C)樋川智昭630.jpg▲碇山典子(第41回定期演奏会)(C)樋川智昭

今回『2台のピアノと打楽器のための協奏曲』を演奏する山本も「物理的に完璧な楽譜の再現は不可能な作品。40年以上取り組んで、毎回、どこまで詰められるだろうというチャレンジ精神でやって来た」と語った。その上で2人が声を揃えたのは「再現不可能にも思える楽譜と実演の距離を乗り越えていくことが、毎回の課題であり喜び」という演奏家としての実感。来年には50回という節目の定期演奏会を迎えるISOの在り方を再確認するような、印象的な発言だった。

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▲山本毅・中央奥(第38回定期演奏会)(C)樋川智昭
 
またこれまでマーラーの『大地の歌』、バルトークの『管弦楽のための協奏曲』などをISOサイズ(1管編成)へと編曲し、大きな成果ををもたらしているのが川島素晴。「今回はバルトーク自身がソナタを協奏曲へと作り替えた作品なので、編曲はその原型へ遡る作業と細部の再創造」としながら「国内有数のホールの響きとオーケストラの技量に支えられて、常に贅沢な挑戦をさせていただいている」と選りすぐりのヴィルトゥオーゾ集団であるISOへの信頼をのぞかせた。
 
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▲第37回定期演奏会より。いずみシンフォニエッタ大阪は来年50回目の定期演奏会を迎える。(C)樋川智昭
 
飯森範親は「こうした作品をひとつのコンサートで演奏してしまう団体は世界にも珍しい。これに匹敵するのはパリのアンサンブル・アンテルコンタンポランくらいじゃないか」と感慨を語った。さらに「バルトークとクセナキスは数学や建築を作曲に導入したけれど、彼らの本当のすごさはそういった手法を超えたところにある。楽譜を解読しつつ、われわれも“その先”にある音楽を目指すので楽しみにしてほしい」と語り、公演への自信をにじませた。

▶いずみシンフォニエッタ大阪:Youtubeページへ



(2022年5月31日更新)


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いずみシンフォニエッタ大阪
第48回定期演奏会「知の絢爛」

飯森範親(指揮)(C)山岸伸


川島素晴(編曲:バルトーク/2台のピアノと打楽器のための協奏曲)

●7月2日(土)16:00開演(15:15開場)
15:30~プレコンサート
15:45~プレトーク

住友生命いずみホール
一般-5,500円(指定)
Pコード 209-044 チケット発売中

【プログラム】
Ⅰ.クセナキス:ノモス・アルファ
     チェロ独奏/丸山泰雄
Ⅰ.クセナキス:リネア-アゴン
     トロンボーン/呉信一
     ホルン/松田信洋
     チューバ:潮見裕章
Ⅰ.クセナキス:アロウラ(1971)
Ⅰ.クセナキス:パリンプセスト(1979)
B.バルトーク(川島素晴 編):
2台のピアノと打楽器のための協奏曲
  【いずみシンフォニエッタ大阪版】

ピアノ:碇山典子、佐竹裕介
打楽器:山本毅、細江真弓

【問い合わせ】
住友生命いずみホールチケットセンター
■06-6944-1188

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