ドイツを拠点に多彩な活動を
続けるチェリスト、オーレン・シェヴリン
ザ・フェニックスホールで待望のリサイタル
チェロ奏者のオーレン・シェヴリンが3月3日(水)、大阪のザ・フェニックスホールでリサイタルを行う。シェヴリンは昨年夏に来日が予定されており、関西でも複数回のリサイタルや日本センチュリー交響楽団定期公演への出演が決まっていたが、コロナ禍による入国規制のため断念。今回は自身にとっても待望のリサイタルであるという。イングランド出身。ロンドンのギルドホール音楽学校、およびケルン音楽大学を首席で卒業。1996年にヘルシンキのパウロ国際チェロ・コンクールで第2位を、また2001年のロストロポーヴィチ国際チェロ・コンクールでは第2位グランプリを獲得している。1998年以来、ソロチェリストを務めるケルンWDR交響楽団(旧・ケルン放送交響楽団)と幾度となくソロ演奏を行うほか、ヨーロッパのさまざまな主要オーケストラと共演。また、デュオのパートナーである芦川真理子とともに、ミュンヘン国際音楽コンクールのチェロ・ピアノ・デュオ部門で入賞するなど、精力的な活動を続けている。ドイツ、ボン在住のシェヴリンにメールでコメントを求めたところ、彼から届いたのはリサイタルに向けた、簡潔ながら感謝のこもった言葉だった。〔音楽ライター/逢坂聖也〕
■今回のリサイタルの開催を喜びたいと思います。プログラムについて説明していただきたいのですが、まずはシューマン、ブラームスと続く第1部が魅力的です。
Oren Shevlin(以下O.S):第1部は、シューマンを始点として、そのシューマンに多大な影響を受けたブラームスに移っていくという流れです。重厚で長いフレーズを持ったブラームスのチェロ・ソナタ第1番は、シューマンの”5つの民謡風小曲”の後の、ある程度耳が温まった状態で導入されるのが演奏者、そして聴き手の両方にとって良いのではと考えました。
■第2部のグリーグもとても素朴な美しさを持った作品ですね。シューマンの影響を少なからず受けた作曲家でもあります。
O.S:グリーグのソナタを選んだ理由は、大変にわかりやすく誰にでも愛される美しい曲想の作品だからです。グリーグの人間性そのものといった名曲ですがプログラムに上ることが少なく、もっと演奏されるべき作品だと思います。全体としてはシューマンの小曲はそれぞれの場面が持つキャラクターを忠実に(グリーグは更に大きなスケールで)表現し、ブラームスではもっと人間の複雑な心情の陰影を表現できたらと思います。
■そしてピアソラのル・グラン・タンゴで雰囲気が変わります。
O.S:最後は大いにお楽しみいただけるように、まったく雰囲気の違うものを持ってきました。みなさんどうか、ここからはネクタイを緩め、結った髪を下ろして(← for everyone to let their hair down “どうぞリラックスして”という英語表現)音楽をお聴きください。
■素晴らしい成果を上げている芦川真理子さんとのデュオで聴けることが、今回の楽しみのひとつです。芦川さんはシェヴリンさんにとってどのような存在ですか?
O.S:彼女とはケルン音大時代からレパートリーを築きながら共演してきているので、いつ合わせてもしっくりとくる土台がありますし、今でも演奏のたびにお互いの新しいアイディアをぶつけ合ったり採り入れたりしています。とてもよい関係が築けていると思います。
■このたびのコロナ禍で、日本での演奏が1年近く伸びてしまいました。お客さまにメッセージをいただけますか。
O.S:昨年、楽しみにしていた日本ツアーを、実現できるかどうかわからないまま準備するというのはとても難しいことでした。結局、すべてキャンセルということになってしまい非常に残念でした。今はまだ大変な状況が続く中ですが、こうして演奏する機会を与えていただいたことを、とてもうれしく思っています。また中止ではなく延期という形につなげてくれた日本のマネージメントに感謝しています。
大阪はいつ訪れても大好きな街です。
音楽を通して皆さまと時間をシェアできることを、とてもうれしく思います。
オーレン・シェヴリン
(2021年2月 2日更新)
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