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コロナの時代、オーケストラは生き残れるか?
関西フィルハーモニー管弦楽団の存続を賭けた戦い
《ONE KANSAIで「関西フィル応援プロジェクト」》

新型コロナウィルスの感染拡大により、厳しい運営を強いられるオーケストラ業界。そんな中、関西を代表するオーケストラのひとつ、関西フィルハーモニー管弦楽団が、自らの活動資金獲得のためのクラウドファンディングを立ち上げた。題してONE KANSAIで「関西フィル応援プロジェクト」。発起人となったのは同楽団首席指揮者の藤岡幸夫である。プロジェクトがスタートした8月19日、関西フィルは大阪市内で記者会見を行い、その詳細を発表した。
 
当日、姿を見せたのは藤岡幸夫、そして藤岡の人脈からこのプロジェクトに賛同した元阪神タイガース・阪神レジェンドテラーの掛布雅之、そして俳優の辰巳琢郎の各氏。会見に先立ってまず同楽団の浜橋専務理事から、関西フィルの現状が説明された。現在決まっている関西フィルの公演延期や中止は約60公演、経済的損失は2億に上ること。またコンサートを部分的に再開した現在においても、ホールなどの観客の収容を50%以下に制限する行政のガイドラインでは(満席であったとしても)赤字のみが拡大し続けることなど。こうした状況の中、藤岡はプロジェクトの発足に至った思いを「(関西フィルと)僕らはずっと民間の企業とお客さまに支えられるオーケストラのモデルを目指してやって来た。そのことを強みとしながら、このコロナ禍の中でできる最善のことをやらなければならないと思った」と語る。
 
クラウドファンディングとは一定の金額に対して「返礼品」を贈ることにより、寄付を募る仕組みだ。当日配布されたリストに目を移すと、豊富なスポンサーからの提供品に加えて掛布雅之、辰巳琢郎両氏からの
「掛布雅之仕様オーダーメイドグローブ(サイン入り)+専用グローブ袋
(サイン入り)¥400,000」
「辰巳琢郎サイン入り日本ワイン『登美の丘』(赤)引換券&著書『日本ワイン礼賛』¥28,000
といったアイテムが目を惹く。これらの品々は広く関西フィルの名前を一般にアピールするだろう。だが、やはり注目すべきは関西フィル自身が提供するオリジナルな返礼品の数々だ。

「関西フィル創立50周年記念チケットホルダー 
3.000」
「関西フィル指揮者(デュメイ・藤岡・飯守)サイン付き直筆メッセージ(コピー)
8,000」
オーギュスタン・デュメイ音楽監督によるヴァイオリン特別レッスン(60分) 300,000」
「あなたの会社の社歌、母校の校歌のオーケストラ録音 
1,000,000」
 
こうしたラインナップは“オーケストラがコンサートに拠らずにどのように収入を得るか”ということについて、ぎりぎりまで考え抜かれたものと言えるのではないか。自らの資源を見直し、その価値を最大限に活かすことで、ある種の覚悟を以って楽団の存続を図ること。それは一般企業と全く同じ構造であり、一切の甘い予測は切り捨てられている。


目標額は5千万。浜橋専務理事によれば、そこに届いてようやく2020年度の関西フィルが見えてくるという。記者会見の後半には藤岡、掛布、辰巳の3氏がコロナ終息後の“共演”を語り合う場面もあり、当日のTV、夕刊紙、スポーツ紙ほかで数多く取り上げられた。スポーツ界、芸能界からの応援がプロジェクトの周知に大きく力を貸した形だ。クラウドファンディングの終了は11月30日。寄せられた金額は9月14日現在、10,007,000円に達している。オーケストラの存続を賭けたプロジェクトは始まったばかりだ。


関西フィル藤岡(C)300s.jpg■関西フィルハーモニー管弦楽団
2020年12月に創立50周年を迎える関西を代表するオーケストラのひとつ。音楽監督に世界的なヴァイオリニストでもあるオーギュスタン・デュメイ、桂冠名誉指揮者に飯守泰次郎、そして首席指揮者に藤岡幸夫を擁し、地域との密接な関係を築きながら、クラシック音楽の魅力を伝える質の高い演奏活動を展開している。2014年10月よりスタートしたBSテレビ東京の音楽番組「エンター・ザ・ミュージック(毎週土曜日朝8時半)に藤岡幸夫と共に出演中。

(c)s.yamamoto





(2020年9月 2日更新)


Check

関西フィルハーモニー管弦楽団
これからの公演より

Meet the Classic Vol.42


指揮&お話:藤岡幸夫(関西フィル首席指揮者)
写真提供:大阪国際フェスティバル(C)森口ミツル


ソプラノ:並河 寿美  ソプラノ:石橋 栄実

2021年1月16日(土)15:00
住友生命いずみホール

※豪華プログラムによる
ニューイヤーコンサートを予定しています。

●全席指定・税込
1階席¥4,000 2階席¥3,000
学生席¥2,000(25歳以下、1階席のみ)


第58回大阪国際フェスティバル2020
飯守泰次郎×関西フィル
「ワーグナー特別演奏会」


指揮:飯守泰次郎 (関西フィル桂冠名誉指揮者)
(C)武藤章

2021年1月23日(土)16:00
ザ・シンフォニーホール

ソプラノ:リカルダ・メルベート  
バリトン:ミヒャエル・クプファー=ラデツキー

【プログラム】
リヒャルト・ワーグナー:
歌劇「タンホイザー」より
 序曲/歌の殿堂のアリア(Sop)
 /夕星の歌(Bar)
楽劇「トリスタンとイゾルデ」より
 前奏曲と愛の死(Sop)
楽劇「ニーベルングの指環」
『ワルキューレ』より ワルキューレの騎行/ヴォータンの別れと魔の炎の音楽(Bar)
『神々の黄昏』より ジークフリートの葬送行進曲/ブリュンヒルデの自己犠牲(Sop)

全席指定・税込み(10月14日発売)
SS席¥10,000 S席¥8,500
A席¥7,500 B席¥6,500

※ソーシャル・ディスタンス確保のため、客席は前後左右1席ずつ間隔を空けて配席します。チケット発売後の新型コロナウイルス感染状況の変化によって、ソーシャル・ディスタンス適用を解除し、空席にしてあった席を追加販売する場合があります。複数枚ご購入でもお連れ様と連席にならない可能性がありますが、あらかじめご了承ください。

【問い合わせ】
関西フィルハーモニー管弦楽団
■06(6577)1381
月曜~金曜10:00~17:00 
土曜10:00~16:00 ※日・祝は休業