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『MLMナショナル管弦楽団』が7月に全国ツアーを開催!
プロデュース・指揮・ピアノ演奏を務める反田恭平インタビュー

ピアニストの反田恭平がプロデュース・指揮・ピアノ演奏をし、同世代で活躍する若手実力派アーティスト17名(反田含む)が集まった『MLMナショナル管弦楽団』。昨年結成され、東京・サントリーホールでの公演は完売し、各地でも異例の動員数で注目を集めた。今年も全国ツアーが7月に繰り広げられ、23日(木・祝)に東大阪市文化創造館 Dream House 大ホールで大阪公演が開催される。反田に『MLMナショナル管弦楽団』の魅力、大阪公演の聴きどころや見どころを聞いた。

――『MLMナショナル管弦楽団』(以下、MLM)の大阪公演は初めてになりますね。まずは結成のきっかけを教えてください。
 
反田恭平(以下、反田):黒い服を着た男たちが、バリバリ足を広げてバッハを弾いたら格好いいだろうなと思って、コンサートマスターの岡本誠司くんに声をかけ、2018年に『MLMダブル・カルテット』を結成したのがきっかけです。岡本くんと、どういう音色を求めていくかにこだわりながら、「誰と一緒に弾きたいか」を推薦し合って集めていきました。翌年の19年に、管楽器のメンバーを加えて再編成したのが『MLMナショナル管弦楽団』(以下、MLM)です。
 
――コンサートマスターの岡本さんと反田さんは、どんな繋がりなのでしょうか。
 
反田:お互いの学校は違ったのですが、上手くて目立つ人は他校でも分かるので、「どこどこのバイオリン科のアイツが上手いらしい」とかあるんですよ。彼は高校生の時にバッハ国際コンクールに日本人で初めて優勝して、当時僕は「凄いヤツがいるんだなぁ」と刺激をもらったのを覚えています。その後機会があって一緒に弾くことになり、彼の音楽性の素晴らしさに惚れこみました。同時に彼も僕のことを尊重してくれているということがとても伝わってきました。
 
――MLMは若い方が多くフレッシュな印象を受けます。何か楽団のテーマは掲げていらっしゃいますか。
 
反田:僕を入れて17名で、平均年齢は25歳。ソリストとして海外で極めていっている方々と、オーケストラに所属するなど、アンサンブル能力に長けている方々とで、ちょうど中和されているいい感じのオーケストラです。楽団のキーワードとして、一つ目は“ソリスト”を掲げています。全員がソリストとして成り立つこと。二つ目は“室内楽”。一般的に室内楽のコンサートは、200席~300席というサロン風のイメージがありますが、1000席を超える会場で20代のメンバーだけで室内楽を演奏したら、とても格好いいんじゃないかなと思いました。メジャーな作品ばかりでなく、You Tubeで検索しても音源がなかなか出てこないような作品も取り上げて、室内楽の魅力を大きなホールで伝えられたらなと思います。
 
――大阪公演でも珍しい曲が披露されるのですか。
 
反田:ハイドン《交響曲 第45番“告別”》に挑戦します。人数が少ないMLMにとって、シンフォニーを演奏することはハードルが高いので、遊び心のある作品を選びました。最後の楽章で演奏を終えたメンバーがどんどん舞台から去っていき、ラストは指揮者と弦楽器奏者数名だけになってしまう。ハイドンが楽譜にそう指示を書き、お客さんが飽きないように様々な工夫をした曲で、見ていても聴いていても面白いのではないかなと思います。でも先に説明しておかないと「体調が悪いの?」と思われてしまうかもしれません(笑)。
 
――知らないお客様は本当に驚いてしまいそうですね。立ち去り方にも注目してみたいです。ほかにはどんな曲を演奏されるのでしょうか。
 
反田:今年はベートーヴェンのメモリアルイヤーなので、《ピアノ協奏曲 第2番》を演奏します。昨年演奏したモーツァルト《ピアノ協奏曲 第17番》と同じ編成の曲なので、我々にとっても馴染みやすいかなと思って選びました。古典的な編成ですし、まるで当時の宮廷で演奏されていたのを、再演みたいに大阪で披露できたらと思います。
 
――昨年演奏されたモーツァルト《ピアノ協奏曲 第17番》の映像を拝見しました。指揮・ピアノをされる反田さんを囲んで、楽団員の皆さんが演奏される姿はそれぞれ存在感があり、楽しそうな雰囲気がとても印象に残りました。
 
反田:昨年のツアーを通して仲が良くなり、花火大会をするなど和気あいあいとしています。仲が良くなったりご飯を一緒に食べたりした後によく起きる現象ですが、音楽が良くなるんですよね。これが非常に面白くて、千秋楽を終えてもっともっと可能性があるなと感じました。今年はフルートだけ違うメンバーになりますが、他のメンバーは奇跡的にスケジュールが合い、また一緒に演奏できることは嬉しいことです。
 
――和やかな雰囲気が伝わってきて、演奏にも親しみを感じました。なかなか息の合ったメンバーを集めるのは難しそうですが、その辺りで反田さんが心掛けていたことを教えてください。
 
反田:オーケストラのチューニングはオーボエの『ラ』で始まり、オーボエがオケの中心にいる。なので、昨年木管金管を増やした時は、2016年度の『出光音楽賞』で僕と一緒に受賞した荒木奏美さんに推薦者を選んでもらいました。彼女彼らの演奏に僕が直接足を運んで、生演奏を聴いたり音源を聴いたりもしました。大体顔をみたら、どういう音楽をされるのか分かるんですよ。5分くらい話したら、人となりが分かるときもあるじゃないですか。明るい性格・暗い性格が、そのまま音楽に現れる。天真爛漫な方は音楽も明るく、ちょうどバランス良く集まりましたね。
 
――音に人柄が表れるとは面白いですね。こうしてお話させていただいて、反田さんの柔らかいピアノのタッチと話し方も結びつくように感じます。MLMでは、特にどんな音色を求めていらっしゃいますか。
 
反田:ベルリンフィルを超えるようなというのは、口が裂けても言えない……、言っちゃったけど(笑)。ドイツの音が欲しい。数年前に、ベルリンでベルリンフィルを聴いて本当に感動して、ああいった音楽を作れる集団を作りたいなと思いました。
 
――メンバーの中にベルリンで活躍されている方もいらっしゃいますね。
 
反田:ファゴット奏者古谷くんが、ベルリンフィル(ベルリンフィル『カラヤンアカデミー』)で吹いていますので、よく、ベルリンフィルの話も聞いています。
 
――楽団を一つにまとめることは大変そうですが、結成後は反田さん自身に変化はありましたか。
 
反田:メンバーの半分は海外組で特にドイツが多く、その他は日本組、そして僕はロシアやポーランドと、色々と環境が違うとスタイルも全然違うので、分かり合えないところもあります。でも「こういう見方もあるのだな」と聞くことは勉強になり、大分みんなの意見を聞き分けることが出来てきたかなと思います。
 
――MLMを通して、反田さんの人を束ねる力を感じます。小さい頃から、親分肌的な性格だったのでしょうか。プライベートの一面に興味があります。
 
反田:少年時代は走り回っていたり、一人でも歌っていたりするような子どもでした。スポーツ大会や運動会で応援団長をやり、高校では体育大会で委員長を、学級委員長もずっとやっていましたね。サッカー部のキャプテンだったのですが、みんなで点を取りに行くなど、そういう青春系が好きな性格なのかもしれないですね。
 
――MLMで指揮をされている姿に通じるところがありますね。「指揮者になりたい」と思ったことが音楽家になった動機だとプレスリリースで拝読しました。
 
反田:12歳の頃に、指揮者はどういう仕事をするのかというワークショップを受けました。70人のプロのオーケストラを相手に、指揮棒を振った瞬間に「僕は指揮者になりたい。こういう感覚をずっと保ちながら死んでいきたいな」と思いました。指揮者になるためにピアノを続けて、ある時からピアニストを目指しました。高校生になって副科で2年間指揮を学び、その頃からコンチェルトを弾ける機会も増えてきて、指揮者の真似をしながら勉強してきました。僕の指揮は好きなように振っているわけですけど、みんなには「分かりづらかったらすぐに言ってくれ。是非教えてほしい」と伝えています。みんなストレートに意見を言ってくれるので、僕にとってすごく勉強になるし、ある意味ギブアンドテイクで、みんながみんなを育てている。
 
――凄腕の仲間同士で育みあっているMLM。大阪公演でも、その魅力が客席に満ちあふれることと思います。これまで反田さんが演奏されてきて、関西の印象はいかがですか。
 
反田:(いい意味で)拍手が早い。「耐えられなかったんだろうな」という感じが伝わって、僕は好きです。今まで弾いてきて、一番サイン会に並ばれた人数が多かったのが関西でした。通常は300人くらいですが600人も並んでくださって、凄かったです。気迫に満ちたサイン会でした(笑)。

取材・文:金子真由



(2020年3月30日更新)


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反田恭平

Live

MLMナショナル管弦楽団

4月11日(土)一般発売 Pコード:181-276
▼7月23日(木・祝) 15:00
東大阪市文化創造館 Dream House 大ホール
S席-5000円 A席-4000円
[指揮]反田恭平(p)
※未就学児童は入場不可。都合により出演者が変更になる場合がございます。予めご了承ください。
[問]キョードーインフォメーション
■0570-200-888

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反田恭平 オフィシャルサイト