日本を代表するヴァイオリニストから、ひさびさに届けられた
フランス音楽の花束“漆原朝子のフレンチ・コレクション”
デビュー30周年を来年に控え、充実した活動を続けるヴァイオリニスト、漆原朝子。名実ともに日本を代表するひとりである彼女が、9月8日(金)、大阪倶楽部に登場する。近年ドイツ=オーストリア作品への取り組みが多かった漆原が今回届けてくれるのは、フランスゆかりの作曲家を集めた“漆原朝子のフレンチ・コレクション”。フランス音楽の中に息づく「作曲家それぞれの個性を伝えたい」と語る。その表現力に満ちた演奏と、凛とした気品に溢れるたたずまいは、レトロモダンな大阪倶楽部の空間で一層の魅力を放つことだろう。ピアノは数多くの共演を重ね、漆原が信頼を置く鷲宮美幸。公演を前に漆原朝子に訊いた。
■リサイタルではひさびさのフレンチ・プログラムだと思います。抱負をお願いします。
漆原:フランスの作品というのは、若い頃から大好きで、私にとってはとても親しみを感じる音楽でした。2002年にシューマンを演奏・録音した頃から、ブラームス、シューベルト、ベートーヴェンといったドイツ=オーストリア作品への取り組みが続いたのですが、それは私にとってはひとつひとつが険しい壁をよじ登っていくような体験でもありました。だから今回、フランスの作品でプログラムが組めるというのは、懐かしい場所へ帰って来たようでとてもうれしいし、壁を登って学んだことを、どうやって表現につなげていこうかと考えているところです。
■作品としてみた場合、フランスのヴァイオリン曲の魅力というのはどのあたりにあるのでしょう。
漆原:ドイツ=オーストリアの作品と比べると、どうしても明るさや軽さがイメージされると思うのですが、作曲家によって作風は全然違います。フランスの作品という中でも、それぞれの個性をお伝えしていく演奏ができればと考えています。後半のショーソンやサン=サーンスなどの味わいはむしろ重厚で、聴き応えもたっぷりあると思います。
■東京藝大で2005年から准教授(17年より教授)として、昨年からは大阪音大でも特任教授として指導に当たっています。演奏家を目指す若い人たちに何を伝えていますか?
漆原:作曲家が楽譜に書き残したものから、その考えや思いを汲み取って音にしていくのが私たちの役目。だから私たちが練習するのは、上手だと思われるためだとか、褒められるためではなくて、正確に美しく音楽を届けましょう、ということをお伝えしています。上手く弾きたいとかよく思われたいという気持ちが強くなると、きれいな音が出なくなる。そうならないために心を磨きましょうって。でも、言うは易しで私自身もなかなかできないことだから、そこは自戒を込めて、といったところでしょうか(笑)。
〔取材・文:逢坂聖也/ぴあ〕
(2017年8月 9日更新)
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