情熱的なヴァイオリンが、観客のハートを鷲掴み
若手実力派ヴァイオリン奏者として、ソロリサイタルや世界各地の交響楽団との共演など、輝かしい実績を持つ石川綾子。彼女は、そのエモーショナルな演奏ゆえ「デビルズアヤコ」の愛称を持っている。また、クラシック音楽のみならず、ボーカロイドの初音ミク、Jポップのきゃりーぱみゅぱみゅ、「アナと雪の女王」をはじめとする映画音楽などのレパートリーでも知られており、ジャンルの枠組みを超えた人気を博している。そんな石川が、10月30日に大阪のザ・フェニックスホールでソロコンサートを開催した。
コンサート第1部。石川は純白のドレスをまとって登場した。1曲目は『タンゴジェラシー』で、洗練されたリズムメロディーが魅力的な楽曲だ。2曲目の『木星』(ホルスト/組曲『惑星』より)では有名なフレーズを朗々と歌い上げ、3曲目の交響詩『死の舞踏』(サン=サーンス)では、真夜中に繰り広げられる骸骨たちの饗宴という怪しい世界を、高い技巧をもって表現した。
ここまでの演奏で分かったのは、静から動への振幅の大きさ、ポルタメントを効果的に使用した豊かな感情表現が、彼女の武器ということだ。また、1曲ずつ作品解説を行い、観客とコミュニケーションを取る姿も印象的だった。

4曲目の『白鳥の湖』(チャイコフスキー)、5曲目『オブリビオン』(ピアソラ)を経て、6曲目はヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲『四季』より『夏』、7曲目はハチャトリアンの組曲『ガイーヌ』より『剣の舞』だった。最後の2曲はハイテンポかつスリリングな楽曲であり、白熱の演奏で観客の興奮を誘い、大歓声と共に第1部は終了した。
続く第2部で石川は、美しい水色のドレスで登場した。これは2曲目に披露した『レット・イット・ゴー』(アナと雪の女王)を意識した演出である。第2部の楽曲は、黒うさPの『千本桜』やジョン・ウィリアムスの『デビルズダンス』などエンタテインメント色の強い作品が多かった。そしてクライマックスは、自身の楽曲『パッション』とモンティ作『チャールダッシュ』。石川は、アップテンポでテクニカルな楽曲をドライブ感たっぷりに弾きまくる。この2曲は、文字通り当日のクライマックスであった。

アンコールでは演奏途中で舞台奥のカーテンが上がり、梅田の高層ビル群を背景にヴァイオリンの調べを聴くという洒落た演出も。美酒のような余韻を残し、この日のコンサートは終了した。
取材・文:小吹隆文
(2014年11月11日更新)
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