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-いずみシンフォニエッタ大阪 第31回定期演奏会-
 吉松隆、12年ぶりの交響曲『鳥と天使たち』を語る

 作曲家、吉松隆の新作・交響曲『鳥と天使たち』が7月13日、いずみシンフォニエッタ大阪の第31回演奏会で初演される。吉松隆は1953年東京生まれ。「無調」「12音」が支配的だった現代音楽に疑問を抱き、ほぼ独学で作曲家としてのキャリアをスタート。現代音楽とは対極の鮮やかな調性感と叙情に満ちた作風で、独自の世界を打ち立てた。これまでに5曲の交響曲と10曲の協奏曲をはじめとするオーケストラ作品を中心に、数多くの作品を発表している。昨年はNHKの大河ドラマ『平清盛』の音楽を担当し、高い評価と多くのファンをつかんだ。さて、吉松にとって第6番となる『鳥と天使たち』は、どのような交響曲となるのだろうか。初演に先駆けて大阪を訪れた吉松の言葉を交えながら、その世界を探ってみたい

DSC_0785400.jpg 12年ぶりとか、新しい交響曲とか、大々的に言われると後ろめたい所があるんですが、還暦の60歳を迎えて、新しい交響曲を書く機会をもらったということですね。5番までは、大掛かりな交響曲を…要するにベートーヴェンだ、マーラーだっていう方向は、50までにやれてしまったので、シンフォニー作家としては、50歳で定年退職したような気分だったんですが、ちょっと違った方向で新曲というのもあるかなと思い立ったところに、ちょうどいずみシンフォニエッタ大阪の話をいただきまして、こぢんまりというとちょっと変ですが、室内楽的に精緻な感じで書いてみようと思ったわけです。タイトルの『鳥と天使たち』というのは子供の頃からイメージしてきたみたいな「鳥」と「天使」にかかわる、おもちゃの交響曲的なイメージ、それから自分の音楽の原点、それから、自分の子供時代のイメージ。そういうものをシンフォニーにできたらいいな、という発想でした。おもちゃ箱をひっくり返したような、という言い方がちょっと今回のキーワードになるかな、と思っています。
 
 実は当初は 、初音ミクを使ってっていうのを考えてたんですよね。そしたら冨田勲 さんに先にやられてしまいまして。ちょっとコンサートホールでやるのも難しいだろうと考えてそれはやめたんですけど。そんな風に歌が入るとかオーケストラではない編成でっていうことも頭をよぎったほどなんで、あまりシンフォニックな感じではなくアンサンブル的な作品に仕上がると思います。おもちゃ箱的な交響曲というよりはサウンドのおもちゃ箱的なイメージ。そしてそのおもちゃ箱の表に『鳥と天使たち』が書いてあるというようなイメージですね。たとえばおもちゃ箱に蜘蛛の絵が描いてあったり、怪獣の絵が描いてあれば、いろんな怪獣や蜘蛛が飛び出して来るかもしれないけど、今日のおもちゃ箱には「鳥」と「天使」が表に描いてある、そういう意味合いだと思って頂ければ幸いです。まあ開けても怖いものは出てきません。そのかわりいろんなベートーヴェンとか、マーラーとか子供の頃から影響されたものがいろんな形で飛び出してくるということも考えていますので、楽しみにしていただければ、と思っています。


■「鳥」と「天使」だけではなく、吉松隆の作品のタイトルには、詩的とも神話的とも言えそうなイメージ豊かな言葉の数々が登場する。『プレイアデス舞曲集』(ピアノ曲集)、『オリオン・マシーン』(トロンボーン協奏曲)、『サイバーバード』(サキソフォン協奏曲)『一角獣回路(ユニコーン・サーキット)』(ファゴット協奏曲)、『天馬効果(ペガサス・エフェクト)』(ギター協奏曲)etc…。.これらのタイトルは、彼の音楽と不可分に関わり、吉松隆の世界を形づくる大きな要素となっている。これまでに多くの演奏家…藤岡幸夫(指揮)、田部京子(ピアノ)、箱山芳樹(トロンボーン)、須川展也(サキソフォン)、馬込勇(ファゴット)、山下和仁(ギター)etc…たちがその世界を演奏した。

 DSC_07984002.jpg影響としては、宮沢賢治とか、パウル・クレーとかです。それからピカソとかミロにも、そういうちょっと、わかったようなわからないようなタイトルがあって、そういうのが割と昔から気に入ってたんですね。聴く人も、ただ交響曲って言われるよりは、何かタイトルがついていたほうがイメージを喚起しやすいと思うんですよ。ただ僕が『運命』とか『悲愴』とかって重厚なものをつけてしまうとまたちょっと方向が違うんで、できるだけ、わかったようなわかんないようなものをつけるっていうのが理想なんです。『ペガサス』ってつけると頭の中にペガサスだけがぽーんと浮かぶけど『ペガサス・エフェクト』って言われると“え、なんのことやら”ってなるわけですね。『オリオン・マシーン』っていうのもそうなんですけど、わかったようなわかんないような言葉をふたつつなげて、わかったようなわかんないような世界にするっていうのが基本ですね。それで自分でもわかったようなわかんないような世界をふらふらとふらつくといろんな音が寄ってくるんですよ。だから自分が作曲するときでも拠り所としてそういうちょっと不思議なポイントのイメージが必要であり、それから聴く側も多分…初めからくっきりとわかるようなものよりは“ど、どんなんだろう”っていう想像力が働く方が面白いんだと思いますね。で、昔は宮沢賢治的って言われてたんだけど最近は中二病って言われます(笑)。

 自分が曲を書く時っていうのは一生懸命書いたところは一生懸命聴いてもらいたいし、思いつきで書いたところっていうのはあんまり思い入れがないっていうことはあるんですけど、演奏家に渡すと一生懸命書いたところでも、ここつまんないって言われてすっ飛ばされますし、あまり本気で書いたんじゃないんだけど、ここ面白いよって言ってそこを拡大されることがあるんですよ。演奏家との共同作業っていうのはいつでもそういうことがあってとても面白いんです。その点、作曲家っていうのは、たとえば自分の子供はぶさいくなんだけど自分は世界一だと思っていてAKBに入れようとか思ってるお父さんと同じような存在なんですよ。だけどやっぱりプロデューサーに見せると、いやそのレベルじゃないよって言われるような感じで。この顔だったら演歌の方がいいかなとかそういう風な判断をする位置にあるのが、演奏家で、僕の音楽に対してプロデューサー的に関わってくる部分ですね。ですから自分が書いたものと演奏家の資質みたいなものがうまくバッティングすると非常に面白い。ピアノの田部京子さんの時もそうでしたし、サキソフォンの須川展也さんから話をいただいた時もそうでした。最初はサキソフォンの曲ってイメージがなかったんだけども、彼の資質と僕と、両方でぶつかり合って出来たっていうこともありますし、それから指揮者の藤岡幸夫さんの場合も…彼とは同じ慶応高校から大学まで同じ先輩、後輩の関係なんですけど当時、大学で会ってたとしても絶対友達にならなかったようなタイプなんDSC_0799300.jpgですね。音楽も全然違った方向でやってるんですけど、彼とは、なんか、ある意味でそういうぶつかり合いみたいなことがいっぱいあって、音楽のふくらみが出たということを、ずいぶん体験したのでなかなか面白いんですよ。ほんとは一生にひとり、そういう相手に出会えれば作曲家としては、非常に素晴らしいことなんだろうけど、僕の場合、本当に幸運なことにいろんな演奏家と会って、いろんな形で触発されたし、その結果、相手も違ったタイプの音楽をやるようになっていったということもありましたし。これは作曲家をやってて一番面白かったことですね。

■2012年。吉松隆はNHKの大河ドラマ『平清盛』の音楽を担当し、注目を集めた。 それらは現在3組のCDによって聴くことができる。平安末期という時代背景を物語る曲もあるが、ほとんどの曲は、いわゆる“劇伴”の枠を離れた自由なイメージに彩られ、力強さやはかなさといった吉松隆の作品に通低する独特の響きを聴き取ることができる。

 DSC_07874003.jpg作曲家と言っても、ずっとクラシックのオーケストラのジャンルで作曲をする、ということにこだわってきたので、ドラマとか映画とかポップスとかへは、50歳くらいまでは意固地に関わらなかったんですよ。お金をもらって書いちゃうとお金をもらわないで書けなくなるというのが大きくて、ずっとお金にならない方へ、ならない方へと無理やり自分を引き寄せていったようなところがある。それがちょうど50くらいの時に定年退職してから、そういうことに関係なく、もらえるんだったらもらおうという境地にようやくなりまして。で、いくつか映画とかアニメとかっていうことを始めたんですが、大河ドラマはそれの中のひとつとして…今まで別に来たのを断ってたっていうわけじゃないんで、ただ偏屈な作曲家だから頼みに来なかっただけなんでしょうけども…『タルカス』とかをやった関係でプロデューサーから声がかかって“やらないか”という話になったんですが。どうやら話聞いてると僕の既成の『タルカス』とか『5月の夢の歌』っていうピアノ曲なんかを使ってイメージ的に作るつもりだったようなんですね。で、僕にドラマがほんとに書けるのかどうかはあんまり信用していないようなところが、多少はあったような気がするんです。それでずいぶんケンカしたりバタバタしたりしたんですが、逆にそれが面白かったですね。今までなかったようなタイプの曲を書きましたし、それから…そうですね、最初は5、60曲と言われたんですが、130曲くらい書きました。頼まれもせずに書くというのが身に染みついてる感じで。だから自分としては非常に面白いことができたと思っているんですが、そこそこ好評で聴いていただけたかな、ありがたかったなと思います。視聴率が悪かったのは作曲家のせいだとは…一応表だっては…言われずに済んでよかったなと思います(笑)。

 個人的には今まで視聴者として大河ドラマを見た中でも、非常に面白い作品だったと思います。ただ時代背景的にこれはちょっと難しいんだろうなということは、史実としても、表現の仕方としても感じました。よく考え、よく作られていた番組だったと思うんですけども。難しかったのかなというのは音楽を作っていてもしみじみ思いました。
 音楽も最初は平安時代の音楽ですから雅楽、そして今様みたいなものが出てくるわけですね。それを現代風に書くと平安時代にこんな音階はないとか言われました。でもテーマ曲の冒頭がピアノから出てますので、そもそも平安時代にピアノはないんです。だからそれはもう最初の1音からそうだ、ということを言って始めたはずなのに、そういうことを言われることがあるんですね。これは今までの作曲家の方たちもきっと大変だったんだろうと思います。
 DSC_0800300.jpgとは言え、これは、観ている方が大勢いらっしゃるのでそんな反応があったんだろうということで、面白い経験だったと思います。反応も何もなければ、良かったも悪かったもないような仕事が今まで多かったもので、いちいち書くたびに面白い、つまらない、それはこうだ、という手応えがあるというのも珍しいことでした。それから今日のシンフォニーもそうですけど、書く前にどんな曲ですかって訊かれることも現代音楽の場合ほとんどないことですから期待されるっていうのは…うん、面白いような、ちょっと怖いようなっていうところがありますね。


■吉松隆を、現在、他のクラシックの作曲家と決定的に分かつのは、彼がロック、ジャズ、民族音楽など、クラシック以外の音楽的要素を強くバックボーンに持つことではないか。
 2010年、吉松隆は一枚のCDをリリースする。『タルカス~クラシックmeetsロック』。70年代を代表するイギリスのプログレッシブ・ロックグループ「エマーソン・レイク・アンド・パーマー」の代表作、組曲『タルカス』に全面的なオーケストレーションを施した作品である。暴力的なまでの変拍子と軋みを上げるシンセサイザーの音色が、オーケストラのフォーマットに見事に移し変えられている。演奏は盟友、藤岡幸夫(指揮)と東京フィルハーモニー交響楽団。『タルカス』の冒頭部分『噴火』は大河ドラマ『平清盛』でも繰り返し使用された。そして今年3月20日、『タルカス』は東京オペラシティで行われた吉松隆還暦コンサート『鳥の響展』のファイナルプログラムとしても演奏されている。


 DSC_0796300.jpg交響曲みたいなものをやりたいっていうのは14歳くらいから決まってたんですけど、作曲家になった時には現代音楽全盛の時代で、交響曲なんて言うものは時代遅れでもう誰も書かない…。ドミソで終わるなんてのはバカかっていうような世界にぽんっと行ったもので、ちょっとこういうところで仕事をするのはどうなんだろうって思った時に、プログレッシブ・ロックというのが出てきて。で、あれはロックでありながらオーケストラと共演したりするのが可能なものなんですね。エマーソン・レイク&パーマーなんてのは『展覧会の絵』なんかもロックでやってますから。クラシックとのコミュニケーションというのは、あの世界にもあったんですよ。そういう方向なら、現代音楽みたいに意固地にああいう音楽じゃないと音楽じゃない、というような閉じられた世界よりは、ロックだろうがオーケストラだろうがクラシックだろうが全部取り込むっていうようなスタンスの方が、未来はあるかなとは思ったんですよね。ただ自分でロックバンドをやるとか歌うってことが想像できなかったんでまあちょっと…。そういう意味では僕は、プログレッシブ・ロックにもロックの方向にも行かなかったんですけど、ああいう音楽ができないかっていうのはずっと頭の中に残ってたんですよね。

 最初は『タルカス』も、東フィルでちょっと変わったコンサートをやらないかって話になった時に、ロックの曲をオーケストラでできないかっていうプロジェクトとしてやっただけだったんです。お金をもらって始めた仕事ではなくて、ただずっと40年間オーケストラにしたいと思ってきたので。自伝にはギリギリ間に合わなかったんですけど、ちょうどこの前の還暦コンサートの時にキース・エマーソン…エマーソン・レイク&パーマーの『タルカス』を作ったご本人です…彼がコンサートを聴きにわざわざ来日してくださって、彼もやっぱりロックの方法でクラシックがやりたかった、というようなことを話してくれたんです。彼自身は、クラシックのピアノ曲なんかも書いてたんだけど、ロックミュージシャンが書いた曲なんて、オーケストラがバカにしてまともに演奏してくれないっていう時代があったんだっていうような話をしてましたね。で、今回こっちがクラシックの作曲家でありながらフルスコアを書いて、しかもそれをプロのクラシックの演奏家が七転八倒しながら必死で弾く、というのにものすごく感激したらしくって、お互いにいい世の中になったなって。ほんとに素晴らしい一時でした。

 還暦コンサートの時にキース・エマーソンに、何でこの曲をオーケストラにしようと思ったのか?って訊かれたんですよ。だから、なんとなくこの曲を聴いたときに、これはオーケストレーションしてよって言ってるような気がしたんですがって答えたんですね。そしたら、あDSC_0796300-2.jpgれは本当に書いた時からオーケストラでやりたいって思ってた、と彼自身がそう言ったんです。それも非常に面白いと思いましたね。面白いし、不思議、というか…40年間お互いにオーケストラでやりたいと思っていたことが実現したっていうのは。言ってみれば好きでやった仕事ではあるんですけど、クラシックとポップスの側からお互いをリスペクトしながらやってきたっていうのが。面白い出会いでしたね。…なんだろう、だからあの還暦コンサートっていうのは、報われたっていうと変だけど、非常に面白い結果を引き寄せたっていう点ではほんとに不思議な体験でした。

■2001年に吉松隆が「交響曲第5番」を発表して以来、12年という年月が流れている。この12年は吉松の音楽が、ひとつの高みに達した時間であったかも知れない。あるいは、吉松の本質のようなものは何ひとつ変わらず、その音楽が多彩な意匠をまとって羽ばたいた時間であったのかも知れない。そこで再び、冒頭の問いに戻る。吉松にとって第6番となる『鳥と天使たち』は、どのような交響曲となるのだろうか、と。

 作曲家を始めた時に、ちょうど鳥っていうのは歌を歌うっていう点では作曲家の大先輩になるわけだと思ったんです。人間がまだ音楽を知らない、歌を歌うことを知らない昔から鳥っていうのは、チッチチッチと鳴いてたっていう点では、作曲家の大先輩であるっていうこと。それから普通、我々が歌を歌う時はラーラーラーっていう長い息に乗せたようなものをメロディとするわけですけれども、鳥の場合は、ピピッとかチチッとかいうような断片的なもので構築していくっていう、その点にも非常に音楽的に興味があったということ。それからもうひとつは、僕は現代音楽とかクラシックとかロックとか、いろんな音楽に興味を持ったんですけど、鳥っていうのは翼を持ってるから、そういうのを隣へひょいって飛んで行けるっDSC_0035290-420.jpgていう、自由の象徴だったわけですよね。だからそういう点で鳥というのは…まあそんなに最初から鳥の音楽だけを書くっていうつもりは全然なかったんですけど…デビューしてからそういうメタファーがあったおかげで鳥に関する音楽っていうのを書くようになったんです。
 今回は、それの集大成。と言っても大きな方向の集大成じゃなくて、コンパクトに非常に原点に戻るみたいなかたちで描けないかってことです。で、天使っていうのは、そのもっと原点の、人間になる前の透明でふわふわ浮いてるようなっていうイメージが自分の中にあるので、鳥と天使が合体したイメージが生まれたということですね。前年に『清盛』の音楽とかもやってきて、そこでは、ちょうどいずみシンフォニエッタ大阪と同じように一管、ストリングス、パーカッションが入る、くらいのサイズで結構書いたんです。それをやってるうちに「清盛」のタイプでなく、その「編成」で書くってことにだんだん頭が向いていきました。『清盛』の世界っていうのは、やはりシリアスな方法で行ったので、もうちょっとコミカルで軽やかで突っ走るような音楽も書きたいなって思って。ドラマではできなかったものが割と今回できたってことなのかも知れません。ちょっと微笑むことができるとか、ちょっと笑っちゃうよねっていうような音楽が。
(2013年5月9日 記者会見の内容を再構成しました)
 




(2013年6月 4日更新)


Check

いずみシンフォニエッタ大阪    -第31回定期演奏会-

●7月13日(土)16:00
いずみホール
チケット発売中 Pコード 194-872
一般-5000円(指定)

【指揮】飯森範親
【トロンボーン】新田幹男

【プログラム】
モリコーネ:ヴィヴァルディのための4つのアナコルーティ
ロータ:トロンボーン協奏曲
吉松隆:鳥は静かに
吉松隆:交響曲 第6番『鳥と天使たち』
     (委嘱新作・初演)

※15:30よりプレコンサート、
15:45よりプレトークあり。

【問い合わせ】
いずみホールチケットセンター
■06-6944-1188


■吉松隆を巡るKey Word 

【プログレッシブ・ロック】
 

ブルースから出発したロックにクラシックやジャズなどの要素を持ち込み、進化・発展したロックの1ジャンル。1960年代の後半から70年代にかけ、イギリスを中心に多くのグループが登場した。幻想的な浮遊感を表現するもの、変拍子の多用により、音響的なスピード感を追求するもの、クラシック音楽からの引用をロックのフォーマットの中に展開するものなど音楽性は多様だが、いずれも高い演奏技術と実験的な精神性を特長とし、ムーグ・シンセサイザーなどの電子楽器の発達を背景に、ロックの表現領域の拡大を行った。代表的なグループとして、ピンクフロイド、キング・クリムゾン、イエス、エマーソン・レイク&パーマーなど。

【エマーソン・レイク&パーマー】
 

キース・エマーソン(キーボード)、グレッグ・レイク(ベース、ヴォーカル)、カール・パーマー(ドラムス)の3人をメンバーとする、イギリスのプログレッシブ・ロックグループ。ムソルグスキー、ヤナーチェック、バルトークなどクラシック音楽からの引用をロックの文脈の中に再構成する知的な音楽性と、それに相反するような攻撃的なパフォーマンスで1970年代に人気を博した。エマーソンのキーボードを主体とするトリオ編成(曲によりレイクがギターを担当)は、現在もロック史上に特異な位置を占めている。略称は「ELP」または「EL&P」。代表作に『タルカス』(1971)『展覧会の絵』('71)『トリロジー』('72)『恐怖の頭脳改革』('73)など。

【キース・エマーソン】
 

1944年生まれ。ロックミュージックにおけるキーボード奏者として代表的な存在であり、ムーグ・シンセサイザーをステージで最も使いこなした演奏家としても知られる。ELPのセカンドアルバム『タルカス』で行った驚異的な変拍子プレイは当時のプログレッシブ・ロックの高度な技術的水準を示すものとして、現在もなお衝撃的である。ELPの活動停止後はソロ活動と並行して映画音楽も数多く手がけ『幻魔大戦』(1983)『ゴジラ FINAL WARS』(2004)など、日本の映画にも楽曲を提供している。

【タルカス】
 

オリジナルはELPのセカンドアルバム(1971)に収録された組曲の題名(アルバムタイトルでもある)。火山の噴火から生まれた無敵の機械獣タルカスが、地上のあらゆるものと戦い、破壊してゆく姿が重厚なロックサウンドで描かれる。伝説上の怪獣マンティコアと対戦したタルカスは最後に傷つきながら海に帰って行くが、やがて音楽はタルカスの復活を暗示して終わる。オリジナルのアルバムジャケットに、イラストで描かれたアルマジロのようなタルカスの姿は、吉松隆のオーケストラ版(2010)では立体造形で再現された。

■吉松隆 作品集より 

『平清盛』サウンドトラック 第壱集 

発売中 2940円
日本コロムビア株式会社 COCQ84927

テーマ曲:
【指揮】井上道義
【ピアノ】舘野泉(ピアノ)
【演奏】NHK交響楽団
オリジナル・サウンドトラック:
【指揮】藤岡幸夫
【演奏】東京フィルハーモニー交響楽団
【ピアノ】舘野泉
【ヴァイオリン】木嶋真優
【歌】松浦愛弓
【雅楽】伶楽舎

■吉松隆の名を全国的なものにした大河ドラマのサウンドトラック。躍動感と詩情に満ちた響きは映像を離れても、独自の世界を感じさせてくれる。『第壱集』『第弐集』『全仕事』の3組のCDがリリースされているが、まずはこれから。


『タルカス~クラシックmeetsロック』  

発売中 2520円
DENON COCQ84832

【指揮】藤岡幸夫
【ピアノ】中野翔太
【演奏】東京フィルハーモニー交響楽団

1.タルカス《オーケストラ版》
2.BUGAKU
3.アメリカRemix
4.アトム・ハーツ・クラブ組曲第1番

全国のクラシックファンに衝撃を与え、ロックファンを狂喜させた吉松隆入魂の一作。吉松の作・編曲作品に加え、和楽器の音色をすべてオーケストラで再現した、黛敏郎による現代音楽の名曲『BUGAKU』を収録する。


『鳥たちの時代』/吉松隆 作品集  

発売中 2940円
カメラータ・トウキョウ CMCD50011~12

【指揮・ピアノ】井上道義
【演奏】新日本フィルハーモニー交響楽団

【指揮】青木明
【演奏】東京フルート・アンサンブル・アカデミー

【指揮】大友直人
【演奏】日本フィルハーモニー交響楽団

【指揮】外山雄三
【演奏】東京フィルハーモニー交響楽団

【フルート】甲斐道雄
【ピアノ】松谷翠
【クラリネット】四戸世紀
【ピアノⅠ】吉田慶子
【ピアノⅡ】麻生真紀(ピアノⅡ)

1.朱鷺によせる哀歌
2.チカプ
3.鳥たちの時代
4.デジタルバード組曲
5.鳥の形をした4つの小品
6.ランダムバード変奏曲
7.交響曲第2番「地球(テラ)にて」

■鳥のモチーフに彩られた吉松隆の初期作品を収めた2枚組。この後大きく飛翔する吉松作品の繊細な魅力がぎっしりと詰まっている。シンフォニー作家としての彼の本領が炸裂する、交響曲第2番「地球(テラ)にて」は必聴!