ホーム > インタビュー&レポート > 松岡茉優、磯村勇斗ら豪華俳優陣が登壇した 《おおさかシネマフェスティバル2024》イベントレポート
人気ジャズ漫画をアニメーション映画化した『BLUE GIANT』で音楽を手掛けた世界的ピアニストの上原ひろみが音楽賞を受賞。「原作漫画があるので、読んだ方の分だけ頭の中で鳴っている音楽がある。音楽を提示するのは大きな挑戦だった」と言い、「大好きな漫画だった『BLUE GIANT』の音を書けて幸せでした」と感無量の面持ちで語っていた。
撮影賞は、大阪芸術大学卒の近藤龍人が『怪物』で受賞。3度目の受賞となる近藤は「どうすれば現場で起こっていることをうまくお客さんに伝えられるのかを考え続けているだけです」と謙遜し、「映画に携わったたくさんのスタッフを代表して賞をいただいたと思っていますし、皆の思いが皆さんに伝わったことが本当に嬉しいです」とコメント。
そして、「ありがとう浜村淳です」50周年を祝し、長年本映画祭の総合司会を務める浜村淳に特別功労賞が贈られた。浜村は「何の賞ですか?賞金はないんですか?」とボケてみせ、司会に自腹で賞金を要求して観客を笑わせながら、「皆さんが応援してくださったお陰です」とお礼の言葉を述べていた。
監督賞は『月』の石井裕也が受賞。過去には新人監督賞や脚本賞も受賞している大阪芸術大学出身の石井監督。「大阪に来ると初心に帰った気持ちになる」と言い、「僕も含めて、誰もが見ることもない、見ようともしない世界を、どう広く深く見せるかが一番苦労しました」と『月』の撮影にまつわる苦労を真摯に語った。
新人女優賞は、『PERFECT DAYS』の中野有紗と『BAD LANDS バッド・ランズ』のサリngROCKが受賞。大阪で「突劇金魚」という劇団を主宰しているサリngROCKは、「演劇も映画も全ての要素が掛け算になっているので、私への賞であっても私に賞を獲らせてくれた作品への賞だと思っています」と語った。『PERFECT DAYS』が初演技で初映画だった中野は「何もかもが初めてだったんですが、心で通じ合うものがあった」とヴィム・ヴェンダース監督との撮影を振り返っていた。
新人男優賞は『怪物』で主人公のふたりの少年を演じた黒川想矢と柊木陽太が受賞。黒川は「『怪物』に出る前はこのような賞をいただける奇跡が起こることはないと思っていたので、この賞をいただけて是枝監督をはじめ、是枝組の皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです」と緊張の面持ちで語り、柊木は「京都出身なので関西の映画祭で賞をいただくことができて嬉しいです」と笑顔でコメントしていた。
助演女優賞は、『高野豆腐店の春』の中村久美が受賞。劇中、藤竜也にほのかな恋心を抱く役柄だったが、「お相手が藤竜也さんだったので、素敵だなと思いながらそのままやらせていただいた」と振り返り、芸歴45年を迎えることを明かすと、会場からは大きな拍手が。「最小限の人数と日程で大急ぎで撮った、小さな小さな愛おしい作品が多くの方に受け止めていただいて、45年もやっていてこのような場に立たせていただくことを有難く思っております」と感謝の思いを語っていた。
助演男優賞は、『月』の磯村勇斗が受賞。「大阪で舞台挨拶などの経験はありますが、このように映画祭に呼んでいただき、この賞を受賞できたことを嬉しく思っています。『月』という作品は非常に難解で、社会的なテーマが強い映画だったので、作っている最中はどういう風に届くのだろうかという怖さもありました。でも、こうして少しでも皆さんの心に届いていることが実感できて嬉しいです」と作品への思いを語った。
主演男優賞は、『エゴイスト』の鈴木亮平が受賞。撮影のために欠席となった鈴木は「『エゴイスト』は愛とエゴの物語ですが、私は人間賛歌の映画だと思っております。そんな『エゴイスト』を大阪の皆様に愛していただけたことを嬉しく思っています」とビデオメッセージを寄せた。
主演女優賞は、『愛にイナズマ』の松岡茉優が受賞。浜村から「「おはスタ」でおはガールをやっていたの見てましたよ」と声をかけられると「嘘だ」と笑顔で返し、「じゃあ問題です。私がおはガールで担当していたカラーは?」と問題を出すと、浜村は「白」と回答。すかさず松岡が「青です」と返すと、大きな笑い声と拍手が起きていた。
そして、大阪での映画祭にちなんで「(大阪の名物である)551ととん蝶をいただきました。お腹いっぱいです」と言うと場内からは大きな拍手が。『愛にイナズマ』で演じた映画監督の折村花子という役柄について「彼女のキレ具合というか泥臭さに共感しながら演じた」と振り返り、「この作品は、この世界には悔しい思いや理不尽な思いをした方がこんなにたくさんいるんだと感じた作品です。もし未見の方がいらっしゃいましたら、花子ちゃんに熱いエールをもらってください」とコメントした。
受賞者が受賞のコメントをする前に浜村に話しかけられ、受賞者が戸惑う姿が見られたり、浜村が昨年の受賞作と勘違いする場面もあり、この映画祭で表彰されるとぐんぐん良くなっていく縁起の良い映画祭だと浜村が自負するなど、マイペースで独特な浜村節に常に笑いが絶えない表彰式だった。
取材・文/華崎陽子
【2023年度個人賞】
【日本映画 個人賞】
主演男優賞 鈴木亮平(『エゴイスト』)
主演女優賞 松岡茉優(『愛にイナズマ』)
助演男優賞 磯村勇斗(『月』)
助演女優賞 中村久美(『高野豆腐店の春』)
新人男優賞 黒川想矢(『怪物』)
柊木陽太(『怪物』)
新人女優賞 サリ ngROCK(『BAD LANDS バッド・ランズ』)
中野有紗(『PERFECT DAYS』)
監督賞 石井裕也(『月』)
脚本賞 港 岳彦(『正欲』)
撮影賞 近藤龍人(『怪物』)
音楽賞 上原ひろみ(『BLUE GIANT』)
新人監督賞 金子由里奈(『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』)
阪元裕吾(『ベイビーわるきゅーれ 2 ベイビー』)
ワイルドバンチ賞『Winny』監督:松本優作
特別賞 大森一樹(著書「映画監督はこれだから楽しい わが心の自叙伝」に対して)
関本郁夫(著書「映画監督放浪記」に対して)
特別功労賞 浜村淳(「ありがとう浜村淳です」50周年を祝して)
【外国映画 個人賞】
監督賞 サム・メンデス(『エンパイア・オブ・ライト』)
主演男優賞 ブレンダン・フレイザー(『ザ・ホエール』)
主演女優賞 ケイト・ブランシェット(『TAR/ター』)
助演男優賞 ロバート・デニーロ(『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』)
助演女優賞 リリー・グラッドストーン(『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』)
【2023年度ベストテン】
◆日本映画◆
①PERFECT DAYS
②怪物
③月
④福田村事件
⑤ゴジラ-1.0
⑥愛にイナズマ
⑥せかいのおきく
⑧正欲
⑧春に散る
⑧BAD LANDS バッド・ランズ
◆外国映画◆
①TAR/ター
②エンパイア・オブ・ライト
③キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
④ザ・ホエール
⑤フェイブルマンズ
⑥SHE SAID シー・セッド その名を暴け
⑦エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
⑧イニシェリン島の精霊
⑨生きる LIVING
⑩パリ・タクシー
(2024年3月 3日更新)