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【アメージングLOOKな歴史映画が集結!】
100年前の少女の夢を描く『スカーレット』日本初上映!
片渕須直監督来場の新企画「ヒストリカ お座敷」もスタート!

 毎年新しい切り口で歴史映画にフォーカスし、最新歴史映画を紹介する第15回京都ヒストリカ国際映画祭が、2024年1月23日(火)~28日(日)に京都文化博物館 3Fフィルムシアター、6F和室、1Fろうじ店舗にて開催される。映画ファンはもちろん、映画の作り手やアニメ、VRなどのクリエイターたちの交流や学びの場として、定評のあるヒストリカ。今回は、京都文化博物館6F和室を利用しての「ヒストリカお座敷」を新たに企画するだけでなく、ポーランドのNNW国際映画祭との連携企画もスタートするなど、15回を迎え、さらに映画祭の新たな可能性を開いている。  同映画祭プログラムディレクターの高橋剣氏が「映画を"新しいLOOK"という切り口から見てもらい、視点を広げる機会にしていただきたい」と語るとおり、今回のテーマ「LOOK」にちなんだ、見た目やトーンで惹きつけられるヒット作、秀作が揃った。コロナにより来場が制限されていた海外ゲストの4年ぶりとなる来場にも期待が高まるヒストリカ。今回の見どころを、部門ごとにご紹介したい。

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『ONE PIECE』ワノ国編 (C) 尾田栄一郎 / 集英社・フジテレビ・東映アニメーション

■ヒストリカスペシャル

~TVアニメ『ONE PIECE』ワノ国編のスタッフが登壇、ワノ国編を語る!~

 4年以上をかけ、2023年12月に終幕を迎えたばかりの大ヒットTVアニメ『ONE PIECE』ワノ国編。時代劇映画の記憶をふんだんに潜ませた江戸時代を舞台にし、通常のTVアニメの作画枚数を大幅に上回る作画により、その映像美や躍動感は放映時から大きな話題になっていた。今回のヒストリカスペシャルでは、ワノ国編のスタッフが選んだ2話を上映、冒険を描いたクリエイターたちが、ワノ国編製作の舞台裏や、その「LOOK」を生み出したポイントに迫るトークショーを開催する。
※1/13(土)より映画祭公式HPにて要事前申込み/入場無料

■ヒストリカ・ワールド

~LOOKで現在を感じさせる世界最新の歴史映画たち~

LOOKの宝庫である歴史映画の最新作を紹介するヒストカ・ワールドからは、日本初上映のヨーロッパ映画全4本がラインナップ。ポーランドのNNW国際映画祭との連携上映作『Filip』にも注目したい。

『スカーレット』(フランス・イタリア・ドイツ)
~ロシアファンタジー小説から着想を得たアメージングLOOKな物語~

『マーティン・エデン』(19)のピエトロ・マルチェッロ監督最新作。ロシアのファンタジー作家、アレクサンドル・グリーンの「真紅の帆」からインスピレーションを得た、第一次世界大戦の退役軍人である父親・ラファエルと二人きりで育ったジュリエットが魔女からある予言を告げられたことから始まる物語。音楽・歴史・フォークロアの要素が織りなすマジックリアリズムの世界観や、ルイ・ガレル、ノエミ・ルヴォウスキー、ヨランダ・モローというフランス人気俳優の演技も堪能したい。
「『アメリ』を思わせるファンタジックな雰囲気や、100年前のサイレント映画を着色して使用するなどユニークなLOOKに注目。上映後のマルチェッロ監督のオンライントークもお楽しみください」(高橋氏)

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『パーティー・オブ・フールズ』 (C) photo Cécile Burban Prélude

『パーティー・オブ・フールズ』(フランス)
~別の運命を夢見る女性たちのシスターフッド映画~

1894年のパリを舞台に、毎年、女性だけの精神病院に監禁されている母を救い出すべく、自主監禁され機会を伺う35歳のファニと、そこで築いていく女性たちとの友情が描かれるヒューマンドラマ。メラニー・ティエリー主演作。
「精神病院で開催される豪華で悪名高い「愚者たちの宴」に向かってドラマが進みますが、患者を演じる女優たちは皆ノーメイク。その素顔の質感がこのドラマの質感とマッチしているし、歴史映画のLOOKとしても新しさを感じます」(高橋氏)

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『カラヴァッジョの影』 (C) Luisa Carcavale

『カラヴァッジョの影』(イタリア・フランス)
~光と影を操った天才画家の伝記的作品~

イタリアの人気俳優、リッカルド・スカマルチョがバロックの巨匠カラヴァッジョを熱演した伝記ドラマ。共演にルイ・ガレル、イザベル・ユペール。優れた芸術家である一方、反逆者と見なされていたカラヴァッジョの波乱に満ちた後年を目撃して。
「それまでのボッティチェリ的神話の世界から、強烈な陰影を用い、ドラマチックな画を描いた天才画家カラヴァッジョ。その革新的な画法と同様の陰影に満ちたLOOKで作られた映画です。日本のカラヴァッジョ研究第一人者、宮下規久朗氏による上映後トークは必聴!」(高橋氏)

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『Filip』 (C) TELEWIZJA POLSKA S.A. AKSON STUDIO SP. Z.O.O. 2022

『Filip』(ポーランド)R15
~第二次世界大戦下、ユダヤ人男性が挑む復讐のゆくえ~

第二次世界大戦下のワルシャワ、ユダヤ人のゲットーで家族を皆殺しにされ、一人生き残ったポーランド系ユダヤ人のフィリップ。それから2年後、自らをフランス人と偽り、フランクフルトの高級ホテルのウェイターとなったフィリップは夫を戦地に送り出したナチス上流階級の妻たちを次々誘惑し、自らの復讐としていたが...。
「フィリップを演じるエリック・クルム・ジュニアの肉体がアメージングLOOK!踊れるしなやかさも兼ね備えたナイスガイです。NNW国際映画祭プログラムディレクターのスワヴォミール・チォク氏のアフタートークもあります。」(高橋氏)

■ヒストリカ・フォーカス

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『デッドマン』 (C) 1995 Twelve Gauge Productions Inc.

~LOOKが違う、世界が違う、刺激のレベルが違う挑戦者たち!~

過去の名作に新たな光を当てるヒストリカ·フォーカス。今回は独自のLOOKに挑み、評価された名作を、邦画のみならず洋画からもラインナップ。全8作品を特集上映する。(全て上映後トーク付き)
「近年大躍進しているアメリカのインディペンデント系エンターテイメント企業、A24は、 どの作品もLOOKに意識的で、そこが大きなクリエイティブのポイントになっています。今回のヒストリカ・フォーカスは、一般のお客さまはもちろん、クリエイターの方が改めて見直し、刺激を感じていただける作品をセレクト。
また、『どうする家康』」プロデューサーの村山峻平氏を迎え、CGで時代劇のどんな舞台でも作れるようになった現在において、どんな物語を語っていくかを伺う技術カンファレンスもご注目ください」(高橋氏)

【上映作品紹介】

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『用心棒』

●『用心棒』
明るく楽しい東映時代劇を一夜にして過去にした、黒澤明監督による伝説の時代劇。入江悠監督によるゲストトークあり。

●『ツィゴイネルワイゼン』
鈴木清順監督生誕100年を記念し、2023年全国劇場での4Kデジタル修復版上映も盛況だった、清順美学の真髄を堪能する「浪漫三部作」の第一作。

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『チャーリーとチョコレート工場』 (C) 2005 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

●『チャーリーとチョコレート工場』
ティム・バートン監督とウィリー・ウォンカ役のジョニー・デップがタッグを組んだ大ヒット作。ブラックでファンタジックな独特の世界は、清潔できれいなのに毒牙が潜む。昨年より絶賛公開中の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』とLOOKの違いを見比べるのも楽しい。

●『デッドマン』
ジム・ジャームッシュがジョニー・デップとタッグを組んだ独特な味わいを醸し出す西部劇。モノクロのLOOKと、ニール・ヤングの音楽が心憎い。

●『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
80歳で生まれ、若返っていく男をブラッド・ピットが熱演したデビッド・フィンチャー監督の感動作。言葉もない美しい画の数々に注目してほしい。

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『十三人の刺客』 (C) 2010「十三人の刺客」製作委員会

●『十三人の刺客』
三池崇史監督の2010年に公開された時代劇。その後のNHK大河ドラマ「龍馬伝」や大ヒット時代劇映画『るろうに剣心』シリーズにつながる時代劇のリアルなキャラクターづくりは必見。

●『シャーロック・ホームズ』
ガイ・リッチー監督が新たなホームズ像を探し得た、バディ・ムービーの先駆け的作品。世紀末のロンドンの描写が素晴らしい。

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『ノースマン 導かれし復讐者』 (C) 2022 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

●『ノースマン 導かれし復讐者』 監督:ロバート・エガース アメリカ|2021|137分
A24製作の『ウイッチ』『ライトハウス』で知られるロバート・エガース監督作品、LOOKに対して非常に意識的な監督であることは、作品から一目瞭然!

■ルキーノ・ヴィスコンティの『山猫』4K復元版を上映!イタリアの新鋭とカムバックサーモンプロジェクト、第14回京都映画企画市 優秀映画企画作品

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『山猫』 (C) The Leopard ý 1963 Twentieth Century Fox Film Corporation

ボローニャ復元映画祭―チネテカ・ディ・ボローニャ提携企画では、ルキーノ・ヴィスコンティが没落貴族を描いた豪華絢爛な代表作『山猫』4K復元版を上映。チネテカ・ディ・ボローニャのカルメン・アッカプート氏をお招きしてのトークショーを開催する。

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『カメのように』 Do Go & C. Srl

さらに、ヴェネチア国際映画祭の人材育成プログラムと提携したヴェネツィア・ビエンナーレ ビエンナーレ・カレッジ・シネマ連携企画では、俳優として出演もしているモニカ・ドゥーゴ監督の『カメのように』、キアラ・トロイージ監督のVR短編作品『MONO』を上映。両監督も来場予定だ。

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『桜色の風が咲く』 (C) THRONE / KARAVAN Pictures

「カムバックサーモンプロジェクト」では、「フィルメーカーズラボ」の時代劇ワークショップに参加経験がある松本准平監督の『桜色の風が咲く』が登場!世界初の盲ろう者の大学教授となった東京大学先端科学技術研究センター教授・福島智さんと母・令子さんの実話を基に描き、2022年11月より全国公開されたヒューマンドラマを、ヒストリカで凱旋上映する。
さらに、第14回京都映画企画市 優秀映画企画作品として、鹿野洋平監督のオリジナル時代劇『うつつの光、うつる夜』(パイロット版映像)の上映も行われる。

■松竹下加茂撮影所100年記念上映 上映作品『狂った一頁』 監督:衣笠貞之助

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『狂った一頁』

松竹下加茂撮影所100年を記念して上映されるのは、衣笠貞之助監督の前衛映画『狂った一頁』。衣笠監督自らが監修の音声付きバージョンで上映する。今から100年ほど前に、20~30代の作り手が同世代に向けて制作したという自由な時代劇をぜひ堪能して!

■クリエイターやお客さまが、ゲストと語る場に!「ヒストリカ お座敷」(参加無料)

映画祭ならではの交流企画として今回の新たに誕生したのが、京都文化博物館6F和室を利用し、車座になってゲストやクリエイター、観客が交流する「ヒストリカ お座敷」だ。
映画『つるばみ色のなぎ子たち』を制作中の片渕須直監督をお招きし、枕草子を描く新作アニメーション制作のプロセスで発見したことをお話いただく他、関連展示も開催する。
「日頃はひとりで活動しているクリエイターの、ネットワークづくりのハブ的存在になれば嬉しいです」(高橋氏)

クリエイターや観客に新たな交流の場を企画し、年々他映画祭間とのネットワークを拡充しているヒストリカで、歴史映画の新たな魅力に、ぜひ触れてみてほしい。




(2024年1月12日更新)


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《第15回京都ヒストリカ国際映画祭》

2024年1月23日(火)~28日(日)まで京都文化博物館(3Fフィルムシアター、6F和室、1Fろうじ店舗)で開催

公式サイト((ハッシュタグは、#時代劇はLOOKの宝庫だ! )
https://historica-kyoto.com/