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「大阪出身の主演ふたりで大阪から盛り上げて発信していきたい」
電撃小説大賞を受賞した同名小説を
なにわ男子の道枝駿佑と福本莉子のW主演で映画化!
映画『今夜、世界からこの恋が消えても』福本莉子インタビュー

2019年に電撃小説大賞を受賞した一条岬の同名小説を基に実写映画化したラブストーリー『今夜、世界からこの恋が消えても』が7月29日(金)より、TOHOシネマズ梅田ほか全国にて公開される。眠ると記憶を失ってしまうという、実在する難病「前向性健忘」を患っているヒロイン・真織と、彼女を支える主人公・透の姿を描く。『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の三木孝浩が監督を務め、なにわ男子の道枝駿佑が透役で映画初主演を飾り、東宝シンデレラグランプリの福本莉子がW主演を務めている。そんな本作の公開を前に、真織を演じた福本莉子が作品について語った。

──まずは、原作を読んだ時はどのように感じられましたか?
 
今回のお話をいただいた後にまず原作を読んだのですが、新幹線の中で号泣してしまって。中盤で泣いて、後半も泣いちゃって。真織を演じる中で何回か読み返しましたが、結末がわかっていても泣いてしまいますし、グッときてしまいますね。
 
──W主演でヒロインという重要な役を演じるにあたって、どのような気持ちで撮影に臨まれましたか?
 
ヒロインという重要な役で、時を経て三木監督とご一緒できるのはすごく嬉しかったですし、まさかまた呼んでもらえるとは思っていなかったので、あの頃よりも成長した姿を見せたいという気持ちはありました。さらに今回は、脚本が月川(翔)さんで音楽が亀田(誠治)さんと製作陣もすごく豪華なうえ、道枝さんも2回目だったので、信頼できる皆さんと一緒にお仕事できるのはすごく嬉しいと思うと同時に期待も感じて、身も心も引き締まって、より一層頑張らなきゃなと思いました。
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──眠ると記憶を失ってしまうという病を抱える真織を演じるのは難しかったですか?
 
今までにない役だったこともあって、記憶障がいについて真剣に考えましたし、すごく大変な戦いになるなと思いました。真織は透くんのことを毎日忘れてしまうので、朝、透くんの存在を知ることから始まって、疑似恋人という関係の中でもどんどん透くんに惹かれていく気持ちを表現するのはすごく難しいと感じました。
 
──そんな中で特に意識したことはありましたか?
 
物語の中ではふたりの関係がどんどん親密になっていくように見えますが、真織にとっては毎日が“はじめまして”だというのはすごく意識しましたし、毎回リセットする気持ちで取り組んでいました。でも、1ヶ月も撮影していると、道枝さんとも古川さんとも仲良くなって人となりもわかってくるのに、毎回真織としては“はじめまして”なので、自分と真織とのギャップがどんどん広がっていくのが難しかったです。
 
──物語の中でもどんどん仲良くなっていくのが普通ですもんね。そう考えると真織の辛さが実感できます。
 
真織の悲しみは私の想像以上だと思うので、わからないことを考え続けるのもまた苦しかったです。ずっと撮影中は日記に囚われていましたし、記憶って何だろう? と毎日考えていました。だから撮影が終わった時は日記に囚われなくていいんだという解放感がありました。
 
──真織の日記はもうひとつの脚本のようなものですもんね。
 
台本に書かれていない、出来事の前後のことが日記には書いてあったので、そこから知ることもあって。それが真織を演じる上で重要な要素のひとつになりました。それに加えて自分でも真織を演じている時に思ったことを日記に書いていました。演じる上で少しでもヒントが欲しかったので、できることは全部やろうと。撮影中はどっぷり真織という役につかっていましたね。
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──デートシーンなど楽しそうなシーンでも真織がふっと悲し気な表情をするのが印象的でした。
 
デートシーンでも楽しんでいるようで、その楽しい瞬間も真織は忘れてしまうので、真織にとってはどこか切ない。自分が悲しい顔をしていると周りが悲しむことを真織はわかっているから、どこか気丈に振る舞っている部分があって、空元気のような、辛いけど明るく振る舞うのが特に難しかったです。
 
──そんな真織にとって、透と出会ったことは大きな出来事だったと思います。
 
透くんの存在自体が真織にとって生きる希望であり、毎日の楽しみであり、且つ手続き記憶(同じような経験の繰り返しにより獲得される記憶。一旦形成されると、意識的な処理を伴わず自動的に機能し、長期間保存される記憶のこと)を教えてくれて、何もできないと思っていた自分にも蓄積できることがあると気づけたというのは彼女にとって、自分にもできることがあるという自信になったと思います。透くんとの出会いはハプニング的な出来事でしたが、確実に彼女にとってなくてはならない存在だったと思います。
 
──そんな透を演じた道枝さんとはTVドラマ「消えた初恋」に続いての共演でした。
 
初日がデートシーンの撮影だったのですが、全部アドリブで台詞がなかったので、それは一度共演している道枝さんとだったからできたシーンだったと思います。それでも、台詞がないので緊張しました(笑)。私がiPhoneを持って撮影しながらだったので、ふたりで手を叩いて「よーい、スタート」とカチンコをやって撮影していました。
 
──全く台詞がなく全てアドリブのシーンを初日に撮影というのはあまりないですよね?
 
あんまりないですし、初日にするものじゃないですよね(笑)。それぐらい信頼してくれていたのかな(笑)? 「消えた初恋」の反響が大きかったので、あの時のふたりに見えないようにと意識していました。
 
──真織の親友・泉ちゃんを演じた古川琴音さんとの共演はいかがでしたか?
 
真織は事故の前の記憶は残っているので、泉ちゃんはずっと真織の親友であり、頼れるお姉さんのような存在。古川さんとの共演は今回が初めてでしたが、実際の年齢も古川さんがお姉さんなので撮影中も撮影以外でも頼りにしていました。私が感情を出さないといけないシーンで、うまくできなくて悔しいと感じていたら「大丈夫だよ。伝わっているから」とおっしゃってくださったことがあって。すごく心強く感じました。
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──泉ちゃんは真織が唯一心を許せる相手でした。
 
一番真織が素でいられる関係ですよね。家族にも言えないことをきっと泉ちゃんには言っていたと思うし、こういう親友がいたらいいなという存在を古川さんが素敵に演じてくれました。
 
──本作の監督を務めた三木孝浩監督とは『思い、思われ、ふり、ふられ』に続く2回目のタッグでした。
 
『ふりふら』(『思い、思われ、ふり、ふられ』、以下『ふりふら』)は2020年公開ですが、撮影は4年前だったと思います。初めての大きな役でしたが、4人主演で浜辺(美波)さんや北村(匠海)さん、赤楚(衛二)さんもいらっしゃったので、まだ負担が少なかったというか(笑)。皆さんに助けてもらいながら、監督にも相談しながら撮影していたのを覚えています。
 
──三木監督の作品は視線の動かし方による感情表現が豊かだなと感じますが、三木監督の演出はどのようなものなのでしょうか?
 
三木監督はまず作品に入る前に声のチューニングが毎回あって、声の高さを調節するところから始まります。それは『ふりふら』の時も。今回でいうと、道枝さんはいつもよりも声が低めで、私はちょっと高めです。視線もすごく意識していて、『ふりふら』で私が演じた由奈はすごく人見知りだったので、どの台詞で相手を見るのかという演出もありました。
 
──やはり、視線は重要視されていたんですね。本作ではどのような演出があったのでしょうか?
 
真織は病気を周囲に隠しているので、普通を装っています。だから、普通じゃない、ちょっとした違和感みたいなものが欲しいと言われて、記憶障がいの方のドキュメンタリー映像を見ていたら、すごく相手のことを見てるのに気づきました。よく知っている人とは顔を見なくても話せると思いませんか? お互いの顔を見ずに話していることもあるぐらい。全く知らない相手だと、この人は何を思っているんだろう? と様子を伺いながら話しますよね。真織も人を観察していると思ったので、相手を見て話すようにしていましたし、視線は意識していました。
 
──声のチューニングというのは他の作品ではあまりないことなのでしょうか?
 
あまりないですね。三木監督は音にもこだわってらっしゃると思います。音楽にも詳しくて。作品に入る前に映画のイメージで三木監督がサウンドトラックを作ってくださるんです。既存の曲で映画のイメージを表現してくださって、私たちはそれを聞きながら台本を読んだりします。作品のイメージを音楽で知るんです。『ふりふら』の時もすごく助けていただきましたし、三木監督のことはとても信頼しています。
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──5月に公開された『20歳のソウル』も本作も命の大切さや1日1日を大事に生きることについて考えさせられる作品でした。
 
『君が落とした青空』も同じ1日を繰り返して彼氏を救う物語だったので、ずっと辛い役が続いているんですよね(笑)。どの作品にも通じているのは1日1日を一生懸命生きることや周りの人がいることが当たり前ではないんだと痛感させられることだと思います。普通に生きていてもそういうことは意識しませんが、でもそれがすごく大事なことだと映画を通じて考えさせられました。
 
──先日、東京で行われた本作のイベントの際に「大阪で初日を迎えたい」とおっしゃっていました。
 
W主演がふたりとも大阪出身というのはなかなかないので、どうせだったら大阪でやりたいです。大阪からふたりでばーんと盛り上げていきたいですし、大阪から発信していきたいです(笑)。
 
 
撮影/河上良
取材・文/華崎陽子



(2022年7月28日更新)


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Movie Data


(C) 2022「今夜、世界からこの恋が消えても」製作委員会

『今夜、世界からこの恋が消えても』

▼7月29日(金)より、TOHOシネマズ梅田ほか全国にて公開
出演:道枝駿佑(なにわ男子) 福本莉子
古川琴音 / 前田航基 西垣匠
松本穂香
野間口徹 野波麻帆 水野真紀 / 萩原聖人
原作:一条岬「今夜、世界からこの恋が消えても」
脚本:月川翔 松本花奈
音楽:亀田誠治
監督:三木孝浩

【公式サイト】
https://sekakoi-movie.toho.co.jp/

【ぴあアプリ】
https://lp.p.pia.jp/event/movie/227140/index.html


Profile

福本莉子

ふくもと・りこ●2000年11月25日生まれ、大阪府出身。2016年開催の第8回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリ、集英社(Seventeen)賞を併せて受賞し、芸能界デビューを果たす。2018年5月に『のみとり侍』でスクリーンデビュー、同年6月上演の舞台ミュージカル『魔女の宅急便』で初舞台にして初主演を務めた。『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020年)では、中心人物の一人としてカルテット主演を務め、これが映画初主演となり、翌年2021年公開の『しあわせのマスカット』で映画単独初主演を飾った。近年の主な出演作品に『君が落とした青空』(2022年)、『20歳のソウル』(2022年5月公開)がある。