「僕にとっての活力となる作品です」
深夜ドラマから社会現象化した“チェリまほ”が遂に映画化!
『チェリまほ THE MOVIE』赤楚衛二インタビュー
200万部突破の豊田悠原作の人気コミックをドラマ化し、ピュアなストーリー展開と登場人物達の愛らしいキャラクター像がSNS上の話題をさらい、回を追うごとにファンが激増した“チェリまほ”こと「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」。国内のみならず海外でも配信され、今や200以上の国や地域で見られるなど社会現象となった本作を映画化した『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』が4月8日(金)より、TOHOシネマズ梅田ほか全国にて公開される。
赤楚衛二扮する童貞のまま30歳を迎え、“触れた人の心が読める魔法”を手に入れたサラリーマン・安達と、町田啓太演じる社内の人気者で仕事も出来る同期・黒沢、恋人同士になったふたりのその後が描かれる。赤楚や町田に加え、浅香航大、ゆうたろう他、ドラマでお馴染みのレギュラーキャストが続投し、安達と黒沢の物語を盛り上げている。そんな本作の公開を前に、安達を演じた赤楚衛二が作品について語った。
──ドラマの放送が終わって1年以上経っての映画化となりますが、映画化の話を聞いたのはいつ頃だったんでしょうか?
映画化するというお話を聞いたのは去年の夏か秋ぐらいだったと思います。
──と言うことは、ドラマの撮影中には映画化の話は何も聞いていなかったということですか?
ドラマは綺麗に終わったな、という印象でした。ドラマの撮影の環境が素晴らしかったので、この方達とまたご一緒したいとは思っていました。まさか映画になるとは思っていなかったですし、夢みたいな話だなと思いました。
──初めてドラマの脚本を読んだ時は、どのように感じられましたか?
台本を読む前は、安達と黒沢の感情を理解できるのかどうかは不安のひとつとしてありましたが、台本を読ませていただくと、人を好きになるのがどういうことなのかを、とても丁寧に書かれていたので理解できましたし、役として共感できました。
──ドラマ版は回を重ねるごとにどんどん反響が大きくなって、海外でも配信され、今では200以上の国や地域で見られるようになりました。ドラマの撮影中にはそのような反響の大きさを感じることはありましたか?
実は、2話を放送したぐらいで撮影は終わっていまして。ただ、1話を放送した後で「面白い」という反応が多くて、撮影の士気が上がったのは覚えています。撮影は終わった後でしたが、こんなに大きな反響をいただけるのかと驚きました。木曜日の深夜1時台のドラマだったので、平日後1日、これを見て頑張ろうと思ってくれる人がひとりでもいてくれたらいいなという思いでやっていたんです。世界に向けてとは全く考えていなくて、ただ見てくれた人の明日の活力になったらいいなと思ってやっていたので、反響の大きさを聞いてびっくりしました。
──実際に生の声は聞かれましたか?
イベントなどもありましたが、SNSなどネット上でしか味わえていないので、コロナが落ち着いたらそういう生の声を聞く場も体験してみたいですね。
──ドラマの撮影が終わって、1年以上経って再び安達を演じることになりましたが、一番気をつけたことは何でしたか?
安達の持っている柔らかさみたいなものを出すためにドラマの時も体重を増量していたので、今回も増量しました。去年の末頃はちょっと痩せていて、シャープになればなるほど顔の印象がきつくなってしまうので、丸みを身につけようとしましたね。
──振る舞いなどで特に気を付けたことはなかったのでしょうか?
振る舞いに関してはそこまで気を使わなくても、現場の人たちが僕を安達として見てくれるので、頭で考えなくても自然に安達として振る舞うことができるんです。
──映画の脚本を読んだ時はどのように感じられましたか?
心情描写の丁寧さはドラマの時から地続きだなと思いました。特に、安達と黒沢が遠距離になったことで、それぞれが変化していく様がすごく腑に落ちました。すごく良くできた脚本だと思いました。
──映画は、ドラマのラストから繋がるような始まり方になっていましたが、実際に撮影現場に立たれた時はどのように感じられましたか?
どの現場でもクランクインの前日までは色々考えてしまうものですが、現場に入ってしまうと帰ってきたな、という感じでした。特に現場の空気感が良かったからこそ、すんなりと安達になることができたと思います。キャストはもちろんスタッフさんも柔らかい雰囲気の方ばかりで、皆がこの作品を良くしたいという思いで同じ方向を向いているので、何度も話し合って、皆で参加して作品を作り上げていきました。
──ドラマの放送後1年以上経って映画化されるのはすごく珍しいことですよね。
映画化というのが僕にとっては初めてですし、ドラマの続編も今までやったことはありませんでしたが、すんなり安達に戻ることができました。
──『チェリまほ』がそこまで大きな反響を呼んで、世界でも人気になった要因について赤楚さんはどのように考えてらっしゃいますか?
世界で通用した理由は、町田くんのルックスだと思っています。説得力がありますよね。黒沢という役は演じるのがすごく難しいと思いますが、黒沢を研究しつくした町田くんが演じると本当に黒沢なので。すごく紳士的でスマートで、かっこいい男性ですよね、黒沢は。さりげない優しさを自然に身に着けているようなかっこいい男性像への憧れというのは世界共通なのかな、と思います。それがひとつと、このご時世だったからこそ、人と繋がることや人を思うことを描いたこのドラマを受け入れてもらえたんじゃないかと思っています。
──昨年の10月~12月に放送されたドラマ「SUPER RICH」でも町田さんと共演されていましたが、本作で、黒沢と安達として町田さんと共演するのとは全く違う感覚でしょうか?
「SUPER RICH」では町田くんが演じていたキャラクターに怒りを直接ぶつけるようなシーンもあったので、まず安達と黒沢に戻れるかな? という不安はありました。でも、この映画のポスター撮影の時に町田くんが完全に黒沢になって戻ってきていたので、これこれ!と思いましたし、すっと戻ることができました。
──安達と黒沢の関係性が本作の魅力でもあると思いますが、赤楚さんが感じる町田さんの魅力とは?
黒沢とも繋がるところがありますが、町田くんの心の綺麗さは一緒にいて感じますし、すごく細かいところまで周りに気を遣う優しさもあって。気遣いと言うよりも気配りかな。色んなところに優しさが滲み出ていて、あんなにいい男性は中々いないと感じています。
──魔法によって触れると人の心が読めるという設定もあって、町田さん演じる黒沢が赤楚さん扮する安達に触れるシーンも多かったと思います。スマートに、丁寧に、かっこよく触れてらっしゃいましたね。
町田くんの触れ方は綺麗ですよね。本当にすごいと思います。黒沢を演じられるのは町田くん以外いないと思いますね。
──仮に赤楚さんが黒沢役をオファーされていたら?
仮に、黒沢と僕にリンクしている部分があって、それで僕にということならめちゃくちゃ頑張りたいと思うんですが、黒沢は町田くん以外考えられないです(笑)。
──映画の中には、ドラマを見ていた人が嬉しくなるようなアイテムや場所がたくさん登場しています。本作はドラマと地続きではありますが、映画ならではの贅沢な余白の部分を感じる場面もありました。
そこには細部に至るまでこだわっているので、あまり言いすぎるとネタバレになってしまうので言えませんが、色々なものが散りばめられているので、何度も観ると発見できる楽しさがあると思います。映画は、余白や空白を残しているので、そこは楽しんでもらえるんじゃないかと思います。
──映画ならではの特別感みたいなものは感じられましたか?
ドラマが1年前なので、会社のシーンや柘植と湊との関係性など、懐かしい部分もたくさんあるんですよね。そこに新しい要素や関係性が加わった化学反応は映画ならではだと思います。でも何よりも、ドラマはスマホやテレビで見ていたと思いますが、映画になると大画面で観られるので奥行きや迫力も魅力だと思います。
──ドラマでも映画でも、自分に自信のなかった安達がどんどん成長していく様が本作の魅力でもあると思います。赤楚さんは映画でどんな安達の姿を見せたいと思ってらっしゃいましたか?
演じている時は、こういう安達を見せたいとは全く考えていませんでした。ただ、今回安達を演じて、すごく頼もしくなっていると感じました。強さも備わってきて、子離れしていくような感覚ではないですが、もう安達はひとりで生きていけるんだな、と嬉しいような寂しいような気持ちになりました。
──でも、もうちょっと安達と黒沢を見ていたいな、という気持ちはありませんか?
安達と黒沢の絡みはずっと見てられますよね、面白いから(笑)。
──安達を演じたことで赤楚さん自身に変化はありましたか?
安達を演じて何か変わったと言うよりも、言葉にしてちゃんと伝えることが大事なのだと再認識させられました。すごく大事なことですが、意外と忘れてしまうので。ちゃんと伝えていこうと思いましたね。
──ドラマから映画を経て、赤楚さんにとって『チェリまほ』はすごく大きな存在になったのではないでしょうか?
本当に大きな存在です。ドラマが映画化されるのも初めてですし。『チェリまほ』という作品自体ももちろんそうなんですが、キャストやスタッフの皆さんと出会えたことが本当に宝物です。経験というよりも、僕が今後仕事をしていく上での糧というか、壁にぶつかった時などに振り返って寄り添ってくれるような作品になっていると思います。
──たくさんの人が『チェリまほ』に癒されていると思いますが、赤楚さん自身も癒されていた部分もあるんですね。
癒されていると言うよりは、僕にとっての活力になっています。
取材・文/華崎陽子
(2022年4月 7日更新)
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