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日本初『るろうに剣心』全5作を2日間で一挙上映!
『鬼龍院花子の生涯』をはじめ、映画女優に注目の時代劇や、
世界の秀作歴史映画をシアターとオンラインでハイブリッド開催
《第13回京都ヒストリカ国際映画祭》の見どころご紹介!!

historica3.jpg 『るろうに剣心 最終章 The Final』 (C)和月伸宏/集英社 (C)2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final」製作委員会


2021年秋の開催が延期となった《第13回京都ヒストリカ国際映画祭》(以下ヒストリカ)が、2022年1月22日(土)から30日(日)まで京都文化博物館(3Fフィルムシアター)とオンライン(公式動画配信サービス MIRAI<ミレール>)で開催される。

世界でも類を見ない歴史にフォーカスした映画祭として、海外の映画祭とも連携し、年々内容が充実しているヒストリカ。コロナ禍で2度目の開催となる今回は、「歴史映画を通じて、未来へと繋がる」というビジョンを掲げ、【KYOTO HISTORICA】プロジェクト(京都ヒストリカ国際映画祭、京都映画企画市、京都フィルムメーカーズラボ、太秦上洛まつり、HISTORICA XR事業の総称)を表す新しいロゴも誕生した。

昨年同様、感染予防対策を万全にし、シアター上映とオンライン上映のハイブリッド型で開催。京都ヒストリカ国際映画祭プログラムディレクターの高橋剣氏は「今年は連携企画や提携企画も、オンラインでご覧いただけるようになり、視聴作品を選択する幅が広がったと思います。貴重なジャパンプレミア作品を、オンラインでもお楽しみください」とコメントを寄せている。

また今回、新企画として21時30分(予定)から、YouTubeLiveにて、観客参加型のオンライントーク「夜のヒストリカ」を実施。連日、企画ディレクターの西尾孔志(映画監督)氏と、『教養としての映画』著者で映画研究者の伊藤弘了氏が多彩なゲストと交流しながら、映画祭の企画や上映作品を深掘りする。

東映70周年にちなんだヒストリカ・フォーカスをはじめ、これから目玉になること間違いなしの新提携企画など、その見所を高橋氏のコメントと共にご紹介したい。

■ヒストリカスペシャル(シアター上映のみ)
~大友啓史監督や豪華ゲストと『るろうに剣心』全5作を味わい尽くそう!~

historica2.jpg大友監督

注目のヒストリカスペシャルでは、2012年、2014年と2度にわたりヒストリカで上映し、新しい時代劇の形を提示した『るろうに剣心』シリーズ全5作を、2日間で一挙上映する。ゲストに大友啓史監督をはじめ、美術監督の橋本創さん、時代考証の大石学先生をお迎えし、シリーズの魅力や裏話をたっぷり語っていただくトークも開催。10年をかけて伝説を築いた同作をファンと共に味わい尽くす貴重な上映になること、間違いない。
 
日本初となるこの一挙上映には、同シリーズと共に歩んできたとも言えるヒストリカの強い思い入れがあると高橋氏。「当初は国内向けの時代劇だったが、今はNetflixでも配信され、日本が誇るアクションアドベンチャーとして世界中で人気を博している。今回、ワーナーブラザーズ(配給)さんの協力のもと、来場したファンの方の記念になるようなパネル展示や企画もあるので、るろ剣ファンはぜひ集結し、一緒に思い出を語り明かしてほしい」

 
■ヒストリカ・ワールド(シアター上映後にオンライン配信)
~巨匠の最新作からファンタジー、コメディーと多彩な最新歴史映画に注目!~
 
例年、斬新なアプローチや製作国の多様さから根強いファンの多いヒストリカワールド。今年は『柳』『すべての月の夜』『Delicieux(原題)』『放蕩息子』『戦場のエルナ』『オシュラガ 魂の地』の5本がラインナップ、上映後はZoomによるQ&Aも予定されている。
 
historica3.jpg『柳』
 
<オープニング上映>
『柳』(北マケドニア共和国)
~妊活は時代を超えて
 
1994年、『ビフォア・ザ・レイン』でヴェネツィア金獅子賞を受賞した名匠、ミルチョ・マンチェフスキーが故郷に戻り、中世の北マケドニアを舞台に撮った最新作。母親になることを切望する女性たちの苦悩を、3部作の構成で時代を超えて描く、普遍的かつ胸に刺さる必見作。

historica4.jpg『すべての月の夜』
 
『すべての月の夜』(フランス・スペイン)
~バスク発のバンパイア映画にみる少女の孤独
 
北米最大のジャンル映画の祭典、ファンタジア映画祭観客賞受賞作。1876年、スペイン北部の戦禍で、修道女たちが営む孤児院が爆撃され、瀕死の少女が謎の女性のキスによって蘇るが、少女は永遠の命と引き換えに、吸血鬼となってしまう…。その後、少女の母親として振る舞う謎の女性を、Netflix配信の大人気ドラマ『Money Heist(邦題:ペーパーハウス)』のイツィアル・イトゥーニョが演じているのも話題に。「ホラーテイストというより、ファンタジー、ラブストーリーで少女に寄り添っており、最初に上映を決めた作品。演出の手触りが確かで、狙いがよく見える」と高橋氏も太鼓判の一作。

historica5.jpg『Delicieux(原題)』 (C) 2020 NORD-OUEST FILMS―SND GROUE M6―FRANCE 3 CINÉMA―AUVERGNE-RHôNE-ALPES CINÉMA―ALTÉMIS PRODUCTIONS
 
『Delicieux(原題)』(フランス・ベルギー)
~フランス革命と同時期に誕生した世界初のレストラン
 
フランス革命前夜の1789年が舞台の、世界初となるレストラン誕生秘話。誇り高い料理人の男が、公爵に突然解雇されたことから一念発起して、一般人に開かれたレストランを営み、あっという間に評判となるのだが…。フランスならではの食文化の歴史も垣間見え、最後には痛快なカタルシスも得られる美味しい時代劇。(シアター上映のみ)

historica6.jpg『放蕩息子』 (C) «YELLOW, BLACK AND WHITE» JSC, 2019. (C) «MEM MEDIA» LLC, 2019. (C) «GPM KIT» LLC, 2019.
 
『放蕩息子』(ロシア)
~19世紀の農奴を体験せよ!バカ息子更生コメディ
 
ロシアのコメディ映画がヒストリカに登場!現代ロシアの成金のバカ息子が主人公と、設定からしてエンターテイメント色がプンプン。息子を更生させるため考えついた父親の秘策が、なんと、時代劇映画の撮影現場に放り込み、農奴解放前のロシアの農奴を体験させることだった。すでにリメイクも決定、ゲラゲラ笑えると評判のコメディは、今だから笑えるという社会風刺も効いている。

historica7.jpg『戦場のエルナ』 (C) 2020 NIMBUS FILM – NAFTA FILMS – ENTRE CHIEN ET LOUP
 
『戦場のエルナ』(デンマーク・エストニア・ベルギー)
~母の愛は戦場を越えて
 
デンマークを代表する女優、トリーヌ・ディホルムが母の愛を力強く演じる第一次世界大戦を舞台にした合作映画。ドイツ統治下のデンマークで、知的障害を持つ息子が徴兵され、心配でたまらない母のエルナは、息子を近くで見守るべく、男性兵士を装って息子の部隊に加わる。戦場の過酷さと母、息子の関係の変化にも注目したい究極の母子物語。

historica8.jpg『オシュラガ 魂の地』 (C) MAX FILMS (HTA) INC., 2017 Tous droits réservés

『オシュラガ 魂の地』(カナダ)
~京都府、ケベック州地域友好提携5周年記念、モントリオール国際歴史映画祭連携作品
 
最新作『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』が劇場公開中のフランソワ・ジラール監督による自国の歴史にフォーカスした注目作。モントリオールで、フットボールの試合中陥没した巨大な穴から、モホーク族出身の考古学者が先住民族の村を探索しはじめる物語は、古代のケベック州から中世、近世の歴史が垣間見える作品になっている。

 
■ヒストリカ・フォーカス
~撮影所の女性たち スクリプター田中美佐江と映画女優~
 
国内の名作に新たな光を当てるヒストリカ·フォーカス。今回は東映創立70周年にちなみ、60年に渡り撮影所で活躍したスクリプター田中美佐江さんが携わった、映画女優に注目したシアター上映10作品(フィルム上映)、オンライン上映34作品の時代劇を大特集する。

historica9.jpg『鬼龍院花子の生涯』 (C)東映
 
スクリプターとは、俳優を現場に迎え入れ、うまく着地させたり、編集と現場をつなぐ役割だという高橋氏。田中さんの功績について「田中さんの上司だった、東映の天皇と呼ばれた編集の宮本信太郎さんと、沢島忠監督、深作欣二監督など現場の人たちとのコミュニケーションをとる、まさに縁の下の力持ち。父は大映のキャメラマン、夫は大映撮影部で『雨月物語』『近松物語』など溝口健二監督の全盛期を支えた撮影チーフと、一家で太秦を支えてこられた。一緒に仕事もさせていただいたが、とても優しいお人柄だった」
また会場ロビーでは、2018年に亡くなられた田中さんの遺品より、俳優たちが役名欄を自筆で埋めた台本をはじめ、映画史的資料となる遺品を展示予定だ。俳優たちと現場でコミュニケーションを築いてきた田中さんの仕事ぶりを肌で感じてほしい。

historica10.jpg『女渡世人 おたの申します』 (C)東映
 
シアター上映作品は、80年代大ヒット作の夏目雅子主演作『鬼龍院花子の生涯』、松坂慶子主演作『蒲田行進曲』、吉永小百合主演作『華の乱』をはじめ、引退間際の藤純子の澄み切った美しさが堪能できる『女渡世人 おたの申します』、美空ひばり主演作『おしどり駕篭』、三田佳子の演技が光る山本周五郎の短編オムニバス『冷飯とおさんとちゃん』をラインナップ、さらには京都文化博物館所蔵フィルムの新丸太町通開通前に鉾を並べて撮影したスター映画『祇園祭』を含めた全10作品を上映する。上映後のゲストトークもお見逃しなく。

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『間諜』 (C)東映
 
オンライン上映作品では、時代劇全34本がラインナップ。高橋氏のオススメを聞くと、「『鳳城の花嫁』は、大友柳太朗ならではの快活かつ間が抜けたキャラクターが活躍し、胸キュンの素晴らしさ。沢島忠監督の『間諜』は製作費を贅沢に使ったアクション映画で、プロットの面白さで魅せるので、ぜひご覧いただきたい」
ヒストリカ限定作品パッケージでは、片岡千恵蔵や市川右太衛門、大友柳太朗、美空ひばりなどの俳優パッケージや、沢島忠、深作欣二の監督パッケージが用意されている。

 
■イタリア初の長編映画を伴奏付き上映!
 ヴェネチア国際映画祭提携上映でイタリアの新鋭とカムバックサーモンプロジェクト

historica11.jpg『インフェルノ』 (C) Cineteca di Bologna
 
 今回新たに加わったのが、ボローニャ復元映画祭提携上映だ。ボローニャは世界的に有名な映画の復元ラボがある街で、同映画祭では現地で復元した作品をオープンエア上映し、映画ファンのメッカとなっている。今回はダンテ没後700年にちなみ、2007年に復元、2021年に同映画祭で再び紹介された、イタリア初の長編映画『インフェルノ』を鳥飼りょうさんのピアノ伴奏付きで上映する。
「ボローニャは京都と似ており、職人や手工業、学生の街。ボローニャ復元映画祭とは今後より交流を深めていきたいと思っている。『インフェルノ』は3年越しで作られたアート映画で、見どころは特撮技術。日本では忍術映画などのアクション系で使われていたが、イタリアではアート系映画に使われていたという発見もある。山岳ロケシーンも楽しんでほしい」(高橋氏)
 
historica12.jpg『小さな聖女』 (C)Rain Dogs
 
ヴェネチア国際映画祭提携上映では、人材育成プログラムのビエンナーレカレッジシネマよりナポリの下町を舞台に、LGBTQの要素を絡めながら人間の本質に迫る『小さな聖女』が上映される。

historica13.jpg『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』 (C) 2020 Good People Inc.
 
「カムバックサーモンプロジェクト」では、「フィルメーカーズラボ」の時代劇ワークショップに参加経験がある、さかはらあつし監督の『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』を上映。「薬物テロにあった被害者が、オウム真理教の後継とされるアレフ幹部と語り合うドキュメンタリーで制作段階から協力した作品。25年間テロと共に生きるとは? 彼に取って贖いがなされているのか。被害に遭った本人が作っているので、とても力の入った作品になっている」(高橋氏)

 
多彩なプログラムから、歴史映画、時代劇の深さやポテンシャルを感じ、ヒストリカを楽しんでほしい。
 
取材・文/江口由美



(2021年12月23日更新)


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《第13回
京都ヒストリカ国際映画祭》

日程:1月22日(土)~30日(日)
開催場所:
京都文化博物館(3Fフィルムシアター)
オンライン(MIRAIL<ミレール>)

MIRAIL<ミレール>
https://mirail.video/

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