柳内大樹の同名漫画を実写化した映画『軍艦少年』で
主演を務めた佐藤寛太インタビュー
「ギャングキング」「セブン☆スター」などで知られる柳内大樹の同名漫画を実写化した映画『軍艦少年』が、シネ・リーブル梅田ほか全国にて上映中。軍艦島の見える街に住む母親を失った父子の、喪失と再生を描く。監督は、『おっさんずラブ』の演出を務めたYuki Saito。主演は劇団EXILEの佐藤寛太が務め、加藤雅也、山口まゆ、濱田龍臣、赤井英和、清水美沙、大塚寧々らが脇を固めている。世界遺産登録後、今回が初となった軍艦島での映画撮影も話題の作品だ。そんな本作の公開に合わせて、喧嘩に明け暮れる気性の荒い主人公・坂本海星を演じた佐藤寛太が公開初日に作品について語った。
――まずは、オファーを受けた時の心境についてお聞かせください。
『軍艦少年』で主役のオファーが来ているとマネージャーさんから聞いて、その日の内に自分で原作を買って読みました。この作品の持つパワーと物語に共鳴して、ぜひやらせてほしいと思いました。オファーと言っても、僕に確定していたわけではなかったので、この役を演じることができたら何かが変わるんじゃないかと思いましたし、自分がキャスティングされた理由も聞いてみたかったので、監督とプロデューサーと話す機会を作ってもらって。その場で「僕を選んでもらったら絶対に後悔させない」と伝えました。
――その熱意が伝わって、主役の座を射止めたんですね。そこまで強くこの映画に出たいと思った理由は何だったんでしょうか?
原作の主人公の置かれた環境がこの時の自分にすごく響きましたし、こういう物語を今の時代に演じたいと思いました。映像として、作品として残したいという思いが強かったですね。実写化するなら絶対に僕がやりたいと。
――撮影はどのような雰囲気でしたか?
毎日、朝から晩まで撮っていたので、撮影期間はすごく短かったんですが、とても濃密でした。現場にいる時間がずっと繋がっているような感覚で。撮影が終わって宿舎に帰ってお風呂に行くと、必ず赤井さんが先に入っていて。キャストとはほとんど全員と裸の付き合いをしていました(笑)。
――父親役の加藤雅也さんとは共演シーンも多かったと思いますが、いかがでしたか?
今まで親子の話をあまりやってなかったのもありますが、父親役の俳優さんとふたりでじっくり話したこともなかったですし、こんなに年が離れていて、世代も違う俳優さんから演技の話を聞く機会があったのは、本当に有り難かったです。共演シーンもやりやすかったです。
――本作は、軍艦島の描写にも圧倒されるものがありましたが、軍艦島での撮影はいかがでしたか?
撮影まで軍艦島に行ったことはなかったですが、実際に上陸してみると、厳かな感覚になりました。軍艦島に近づいて行くとテンションが上がるんですが、いざ上陸してみると、物音ひとつしないんです。波の音はしますが、生活の音がしない。人がいないので。その島の景観を見て、文明のあった名残りを感じました。それは軍艦島でしか味わえない気持ちだと思います。
――厳かな感覚というのは、静かな神社や教会に行った時のような感じでしょうか?
それが一番近いかもしれません。神聖な感覚はありました。撮影の本番になるとカメラの前は自分しかいないので、スタンバイしていると物音が全くしなくて、こんな場所が地球にあるんだと。人間はいつか死んでいく。文明が終わったら自然に還っていくんだと感じました。
――軍艦島での撮影で印象に残っていることはありますか?
美術チームが、原作にもあった軍艦島の中の教室の黒板に父親たちが残した寄せ書きを再現していて。その空間が原作の風景そのものだったので、それに感動しました。そのシーンに、大塚寧々さんの手紙を読む声が被るので、監督がそれを流してくれたので、より感情が高ぶりましたね。
――公開を迎えた今の心境は?
年の暮れにこの作品を公開できることも有難いですし、自分のキャリアの中にこの作品が残ることも嬉しいと思っています。何事もなく、無事に公開できて良かったと心から思っています。キャストが誰も欠けることなく、全員揃って公開を迎えられることが役者チームの責任のひとつだと思うので、この作品を観てくれる方の手に届けられるのが嬉しいです。この作品にしかない魅力がある映画だと僕は信じているので、ぜひ劇場で観ていただきたいです。
取材・文/華崎陽子
スタイリスト/平松正啓(Y’s C)
ヘアメイク/KOHEY
(2021年12月22日更新)
Check