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人気シリーズを新たな脚本で実写化した映画『地獄少女』
妖艶な主人公・閻魔あいを演じた玉城ティナインタビュー

2005年にTVアニメが放送開始され、その後も漫画化やドラマ化などで幅広い支持を集めてきた「地獄少女」シリーズを、新たに実写映画化した『地獄少女』が、11月15日(金)より、梅田ブルク7ほか全国にて公開される。『不能犯』や『貞子vs伽椰子』の白石晃士がメガホンを取り、午前0時に開く秘密のサイト“地獄通信”で依頼すると、地獄少女が恨みを晴らしてくれるという都市伝説から始まる報復代行=“地獄送り”の物語をスリリングに描き出す。そんな本作の公開を前に、“地獄送り”を実行する、妖艶な主人公・閻魔あいに扮した玉城ティナが作品について語った。

――玉城さんは、小学生の頃に原作を読んでらっしゃったそうですね。

小学生向けの「なかよし」という少女漫画雑誌に『地獄少女』が載っていて、他の作品がラブコメやギャグ漫画という中で、『地獄少女』だけが異彩を放っていたので、私の中でも強烈に記憶に残っていました。その当時は詳しくはわかっていなかったと思うのですが、大筋は理解できましたし、登場人物がどうしてそういうことをするのか考えながら読める作品だったので、楽しめていたんじゃないかなと思います。当時は、(閻魔)あいを取り囲む登場人物たちのことを、何でこの人たちはこういう風に恨むのだろうなと考えていましたが、あいを演じるお話を頂いてからは、映画では彼女のバックグラウンドまでは描かれていないのですが、あいがなぜ地獄流しをするのか、ただ地獄に流しているだけではないことを感じてもらえればいいんじゃないかと思っていました。

――確かに、玉城さんが演じた閻魔あいからは、“地獄送り”を願う人間への複雑な感情が伝わってきました。あいを演じるうえで一番大切にされたことは何だったんでしょうか?

私は、観てくださる方の受け取り方は様々だと思うので、あいが本当は“地獄送り”をやりたくないのか、進んでやっているのかというのは、あまり断定したくないと思っています。あいの家系は何百年も“地獄送り”の役割を任されて、人の恨みや負の感情に寄り添って生きてきた、そういう家系だと思うんです。劇中には“地獄送り”をしようとする人への、迷いや何かしらの感情が、台詞にも込められている場面もあります。それでも、ちょっとした感情の揺れ動きみたいなものを出しすぎてもいけないと思っていましたし、あまりにも出さないでいると、あいが心のない人間に思えてしまうのが私にとっては辛かったので、そこは一番気をつけていましたし、そのバランスを取るのが難しかったです。人間たちの関係性が変わっていくことによって、あい達のパートも成り立っていくので、そのバランスも映画として面白くなるんじゃないかと思いました。私がいないシーンも多いので、試写で初めて観て、気づくこともたくさんあって、ひとりの観客として楽しめました。今回は、台詞の数も少なかったですし、限られたシーンの中でどれだけ圧倒的な雰囲気を出すのかというのは難しかったですが、立ち姿やヘアメイク、カラコンなどであいに寄せていただいたうえで、視線や顔の動かし方ひとつで伝わるものが変わってしまうので、そこは細かく意識していました。それは、今までのお芝居に在り方とは全然違うもので、あいならではの演技だったと思います。

――あいは何が起こっても動じないので、目の前で起こっていることに反応しないという演技が必要だったと思います。それは難しかったですか?

今回は、異次元が組み合わさっている感じと言うか、血がかよいすぎていてもだめですし、あいが同情していても変なので、独立した“あい”という存在がいて、彼女に惑わされる人間たちという構図をはっきりさせたかったので、受けない芝居というのを心がけていました。目の前で泣き叫んだりしているので、つられそうになりましたが、とにかく客観視することを心がけて、意識は宇宙に飛ばすぐらいの感じで、ただ入れ物としてそこに存在しているような感覚だったので、すごく新しい体験でした。あいは可哀想な子ではありませんし、人間を思い通りにしたいわけでもないと思ったので、そういう場所に立たされたひとりの女の子だと、私自身はそういう風に思って演じていました。もちろん、存在感は圧倒的でないといけないし、今までにはないキャラクターへのアプローチの仕方だったんですが、彼女の見ている世界をありのまま伝えられればと思っていました。

――本作では、童謡を歌うシーンもありましたね。

ノリノリで歌うわけにもいかないですし、静かに、どこから聞こえているのか分からない、遠く異世界から聞こえてくるような印象を持ってもらわないといけなかったので、難しかったです。あんまり口を動かし過ぎても、不自然かなと思ったので、すごくお腹に力を入れて声を振り絞って、口はなるべく開けずに歌いました。白石監督も今回は音楽にすごくこだわっていたので、集中して声だけを録音することができたのも大きかったと思います。それでも、改めて歌ってみると童謡は難しかったです。

――白石監督とは『貞子vs伽椰子』に続いて、2度目のタッグとなりました。

白石監督の SNS をフォローしていて、監督の作品も追っていましたし、監督も私の姿を見てくださっていたようなので、あまり長い間会っていなかったような感じはしなかったんですが、まさか閻魔あいをやるとは思っていなかったです。今年は、まさか私があの役をというようなことが多くて、いい経験になりました(笑)。白石監督は独特な演出をなさる方で、監督には画が見えているんですが、それをどういう風に表現するのかは役者に任せてくれるタイプなので、私の時は、細かい演出というよりも全体像を見てくださって、後でちょっとした調整をする感じでした。撮影では、ものすごく困ったというようなこともなかったんですが、身体を動かさないことが大事だったので、割と体力勝負でした。ものすごく静かな“静”のお芝居に見えるのですが、動かないということにも身体を使うので、難しいお芝居だったなと、改めて思い返してみると感じます。首も動かさないようにしていましたし、瞬きも普段から少ない方ですが、瞬きもしないようにしていたので、撮影が終わった後は、伸びをいっぱいしていました(笑)。

――白石監督ならではの妖艶な色彩が印象的でした。

完成作を観ると、CG も多用していましたし、いい意味で裏切られた感じはありました。撮っている最中は、監督に説明してもらって想像力を働かせながらやっていましたが、予想以上のものが出来上がってきていたので、そういう色彩の面白さみたいなものも楽しんでいただけると思います。今回は音楽にもこだわっていて、白石監督の新しい一面が見られると思いますし、また新しい『地獄少女』になったんじゃないかと思っています。

――『地獄少女』は、原作が漫画でアニメ化もされている人気のある作品です。実写化に際してプレッシャーはありましたか?

お話をいただいたときは、大丈夫なのかなと思いましたし、私は原作にドンピシャの世代で、もちろん周りの人たちも知っているので、不安な気持ちもありましたが、決まってからはもう気にしてもしょうがないですし、監督が言っているから大丈夫だと思って、ドライに捉えながらやっていました。もちろん、満足のいくものを作りたいというのは、監督もキャストもスタッフさんも同じ思いですし、みんなが同じ方向に向かっていたので、それを感じてからは何も心配することなくやっていました。

――友だちのために“地獄送り”を依頼する美保、自分を傷つけた犯人への復讐のために使う早苗、彼女たちの周囲の人々も含め、玉城さんは登場人物の誰に一番感情移入できましたか?

今回の映画は監督のオリジナル脚本なので、すごく自由に監督も書かれたと思うんですが、こんなに若い女の子の気持ちがわかるんだと思って、すごく驚かされました。それぞれにすごく共感できる部分があるなと思いました。ひとりの観客として観た時に、女の子たちはもちろん、他の登場人物もそれぞれの持っている闇に触れられたので、一概に何が正しいのか決めることは難しいと思いました。誰に共感するのかは、自分の状態によって変わってくると思います。最初は私も、あいの目線で俯瞰して観ていたんですが、物語が始まるとすごく引き込まれていきました。

――2019年は、年初に公開された『チワワちゃん』から夏に公開された『Diner ダイナー』、9月に公開された『惡の華』、そして本作とそれぞれに全くキャラクターの違う作品が公開されました。今年1年を振り返ってどんな印象を持ってらっしゃいますか?

今年は公開作が多くて、撮ってきたものを皆さんに観てもらえて、たくさん反応をいただけて嬉しかったですし、それぞれが全く違う強烈な役柄だったので、今後に役立つ1年になったんじゃないかなと思います。20代前半に、すごく自由に、決まり事を作らずに様々な役柄を演じることができたので、これから女優としてどういう風にやっていくのかを考えた1年でもありました。来年はまた新しい面を見せられたらな、と思っています。

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ヘアメイク=今井貴子
スタイリスト=松居瑠里

取材・文/華崎陽子




(2019年11月15日更新)


Check

Movie Data

(C)地獄少女プロジェクト/2019映画『地獄少女』製作委員会

『地獄少女』

▼11月15日(金)より、梅田ブルク7ほか全国にて公開
出演:玉城ティナ、橋本マナミ、楽駆
麿赤兒、森七菜、仁村紗和
大場美奈、森優作、片岡礼子
成田瑛其、藤田富、波岡一喜
原案:わたなべひろし
監督・脚本:白石晃士
主題歌:GIRLFRIEND「Figure」

【公式サイト】
https://gaga.ne.jp/jigokushoujo-movie/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/176947/


Profile

玉城ティナ

たましろ・てぃな●1997年10月8日、沖縄県生まれ。講談社主催の「ミスiD2013」で初代グランプリに輝き、14歳で「ViVi」の最年少専属モデルとなり、昨年惜しまれながら卒業。2015年、『天の茶助』で映画デビューし、2018年には『わたしに××しなさい!』で映画初主演を飾る。主な出演作に、『オオカミ少女と黒王子』、『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』、『暗黒女子』、『PとJK』、『ういらぶ。』など。2019年は、『チワワちゃん』、『Diner ダイナー』、『惡の華』とメインキャストでの映画出演が相次ぐ。今後の公開待機作に『AI崩壊』(2020年1月31日公開予定)など。