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アニメ草創期から京都アニメーションまで
日本アニメ史に京都が刻んだ足跡を振り返る特別企画を開催
オープニング上映は周防監督最新作『カツベン!』に
《第11回 京都ヒストリカ国際映画祭》の見どころ紹介!

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『カツベン!』 (C) 2019「カツベン!」製作委員会


今年11回目を迎える歴史をテーマにした世界で唯一の国際映画祭、京都ヒストリカ国際映画祭(以下ヒストリカ)が、10月26日(土)から11月4日(月・休)まで京都文化博物館(3Fフィルムシアター/別館)で開催される。
 
今年はアニメ草創期から京都アニメーションまで、日本アニメ史に京都が刻んだ足跡を振り返る特別企画を開催する。京都で映像制作に携わる人材育成もテーマの一つであるヒストリカが、多彩なアニメーション関係者のゲストを招き、その魅力と貢献を検証、共有する試みだ。
「京都アニメーションの偉業を京都の映像文化の歴史の中で検証したい。それと同時に、東映動画の初期作品から、歴史物のアニメーションだからこそできる表現を味わってほしい」という京都ヒストリカ国際映画祭プログラムディレクターの高橋剣氏のコメントを交えながら各部門の見どころをご紹介したい。



■特別企画:今こそ語り合おう京都アニメーション、そして京都がアニメ文化史に刻んだ足跡を深掘りする。

第1部「京都アニメーション作品の魅力」
『涼宮ハルヒの消失』、『たまこラブストーリー』、『映画 けいおん!』『劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~』の4本を京都文化博物館別館で上映。特別企画のスペシャルトーク(入場無料)では、株式会社ピーエーワークス代表取締役の堀川憲司氏が来場する。
 
高橋氏コメント:京都アニメーションは、東京一極集中のアニメーション制作が地方でも作れることを証明しました。創作の哲学、人材育成から高度なモノづくりに至るまで、海外からも高い支持を得たことは皆さんご存知の通りです。京都アニメーションの背中を見て、富山でアニメーションスタジオを起ち上げたピーエーワークスの堀川氏に、地方からアニメーションを作る面白さ、難しさを含めて語っていただきます。


第2部「アニメ草創期―人材の苗床としての京都」
昭和初期、京都の学生集団が自主制作したアニメ映画『煙突屋ペロー』、日本アニメーションの父と呼ばれる政岡憲三監督の戦争末期ながらミュージカル調の代表作『くもとちゅうりっぷ』、京都で政岡憲三が設立した政岡映画美術研究所に入所した瀬尾光世監督の長編アニメーション『桃太郎 海の神兵』の3本を1プログラムで上映する。
 
高橋氏コメント:京都のアニメーションスタジオ、政岡映画美術研究所で学んだ人材が、戦中戦後の日本アニメーションを支えたという歴史を感じていただけるプログラム。特に『くもとちゅうりっぷ』は手塚治虫や松本零士が啓示を受けたという伝説的な作品です。お見逃しなく!


第3部「時代劇文化が日本のTVアニメを変えた」

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『白蛇伝』 (C) 東映

 
藪下泰司監督による日本初のカラー長編アニメーション映画『白蛇伝』、その翌年に制作した『少年猿飛佐助』、白川大作監督の『わんわん忠臣蔵』、勝間田具治監督の『アンデルセン童話 にんぎょ姫』を上映。『白蛇伝』のトークでは、アニメーター・作画監督の小田部羊一氏、プロデューサーの清水慎治氏も来場予定だ。



【ヒストリカ・スペシャル】
『カツベン!』(オープニング上映)
『祇園小唄絵日傘 舞ひの袖』(4Kデジタル復元版)活動弁士・伴奏付き上映
 
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『祇園小唄絵日傘 舞ひの袖』

 
100年ほど前、サイレント映画時代に、そのしゃべりで観客を熱狂させる活動弁士を題材に描いた周防正行監督最新作『カツベン!』が、今年のオープニングを飾る。
また、1930年のサイレント映画『祇園小唄絵日傘 舞ひの袖』4Kデジタル復元版を世界初上映。祇園小唄をフィーチャーして大ヒットした本作を、『カツベン!』で成田凌に実技指導をした片岡一郎氏による映画説明付きでお届けする。
 
高橋氏コメント:『カツベン!』はヒストリカの取り組みの一つ、京都映画企画市に応募された企画から生まれた作品。映画企画市では企画の評価者だった桝井省志さんが周防監督作品としてプロデュースされました。今回はゲストとして来場予定です。 『祇園小唄絵日傘 舞ひの袖』の祇園小唄は当時、各地の女性奏者や芸者が歌い、それを楽しみに見にくる観客が押し寄せ、日本中で大ヒットしました。ヒストリカでは上映前に、祇園の芸奴・舞妓をお呼びして祇園小唄を生で歌っていただきます。サイレント時代のイベント性の高い映画の楽しみ方をぜひ体感してください。



【ヒストリカ・フォーカス】
~「なつぞら」元ネタアニメーション祭りに、
 タランティーノに影響を与えた「子連れ狼まつり」も必見!~
 
1. 東映動画まつり− アニメーションの「なつぞら」時代

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 『長靴をはいた猫』 (C) 東映

 
ゲストとしてご来場いただく小田部羊一さんの奥様であり、初期の東映動画作品でアニメーターとして活躍された奥山玲子さんをモデルに描いたNHK連続テレビ小説「なつぞら」。今回は、「なつぞら」に登場したマンガ映画の元ネタとなった東映動画の初期作品と、今に語り継がれる傑作をデジタルルマスター版など5本上映。東映動画が作ったアニメーションの源泉が、今の日本のアニメーションにどこまで影響を及ぼしているのかという大きな視点でアニメーションの歴史を検証するゲストトークも開催する。
上映作品は『白蛇伝』『少年猿飛佐助』(いずれも藪下泰司監督)、『わんわん忠臣蔵』(白川大作監督)、『太陽の王子 ホルスの大冒険』(高畑勲監督)、『長靴をはいた猫』(矢吹公郎監督)。

高橋氏コメント:ドラマ「なつぞら」でも描かれましたが、長編マンガ映画がテレビマンガになる過程で、コマ数を間引いてどれだけ省力化するかがテーマになっていました。制作本数が激増したため、京都撮影所でマキノ雅弘や内田吐夢の助監督だった人を東映動画に移籍させ、そこで作られたのが「タイガーマスク」や「デビルマン」です。コマ数を減らしても話が成り立つ方法論を、時代劇の作劇から作り出したものが、日本のアニメーションのユニークな特色になっています。


2. 子連れ狼まつり− 劇画から妄想する時代劇の可能性 

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『子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる』 (C) 1972 TOHO CO.,LTD.


1970年代に大ヒットした若山富三郎主演の子連れ狼シリーズ。今でこそマンガの映画化は当たり前になっているが、劇画界を刷新する小池一夫の原作に惚れ込んだ若山富三郎が、原作者に直談判し、超人的な身体能力が必要とされる主人公拝一刀を演じて、テレビドラマ化もされた名シリーズだ。 その影響は日本だけに止まらず、ロジャー・コーマンの配給会社により、子連れ狼シリーズの2作品を1本に編集してアメリカで公開され、クェンティン・タランティーノら多くの映画人に大きな影響を与えた(『キル・ビル』のラストシーンは子連れ狼へのオマージュと言われている)。元祖スプラッター映画の真髄をぜひ味わってほしい。上映作品は、『子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる』、『子連れ狼 三途の川の乳母車』、『子連れ狼 死に風に向う乳母車』、『子連れ狼 冥府魔道』の4本。西尾孔志監督×京都造形大出身の女優・監督、辻凪子氏によるトークショーも開催される。
 
高橋氏コメント:70年代は、時代劇暗黒の時代でした。大映や松竹など、時代劇がメインの映画会社は苦境に追い込まれました。三隅研次監督×若山富三郎の子連れ狼シリーズでは、大映の黄金期を作って来た時代劇の職人たちが、エッジの効いた劇画の躍動感を見事に表現しています。乳母車に乗った3歳の大五郎の見事なスナイパーぶりや健気さなど、和製スプラッターの魅力が詰まった、広報スタッフ一押しのおまつり。伝説の乳母車を会場にて展示予定です。


【ヒストリカ・ワールド】
~クセがつよい!?日本初上映ホラーが勢揃い~


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『カーミラ ―魔性の客人―』


世界の最新歴史映画を紹介する<ヒストリカ・ワールド>では、ロバート・パティンソン&ミア・ワシコウスカ主演、アメリカのインディーズシーンで注目のゼルナー兄弟によるコメディ映画『ダムゼル とらわれのお嬢さん』。初長編作がアカデミー外国語映画賞にフィリピン代表で出品されたアドルフォ・アリックスJr.監督の、端正なホラー映画『ミステリー・オブ・ザ・ナイト』(監督来場予定)。イギリスの女性監督、エミリー・ハリスがヨーロッパで流行した女バンパイアのカーミラ伝説をモチーフに描く「可愛らしい」ホラー映画『カーミラ ―魔性の客人―』。新感覚ホラーのインド映画『トゥンバード』。4本中3本がホラー映画というラインナップだ。

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『トゥンバード』

 
上映作の中でも説明し難い余韻を与えるのが『トゥンバード』。民族性、文化性をしっかり捉えながら、普遍的な面白さも併せ持つ必見作。誰もが持つ恐怖を、驚きの視覚的効果でみせる、誰かと語りたくなる一本だ。ホラー映画に造詣のある映画評論家ミルクマン斉藤さんと、UE神さんによるトークショーもお楽しみに!



【京都フィルムメーカーズラボ スクリーニング】
~Talk with アミール・ナデリ~


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『楢山節考』 (C) 今村プロ・東映


世界中から集まった若きフィルムメーカーたちが、京都の撮影所で、ベテランスタッフと共に時代劇を撮るワークショップ、「京都フィルムメーカーズラボ」(以下KFL)。今年は新作『山〈モンテ〉』の公開も記憶に新しい名匠、アミール・ナデリ監督をゲストに迎え、今村昌平監督の『楢山節考』を鑑賞。上映後、ナデリ監督とKFL参加者によるトークセッションを開催する。

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『シャトー・イン・パリ』


また、KFL過去参加者の最新長編映画を上映する「カムバックサーモン・プロジェクト」では、セドリック・イド監督(2012年に参加)のフランス映画『シャトー・イン・パリ』を日本初上映。イド監督も来場予定だ。他にもヴェネチア国際映画祭提携企画や「HISTORICA×VR」も開催予定。詳しくは公式サイトを参照してほしい。



(2019年10月 3日更新)


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《第11回
京都ヒストリカ国際映画祭》

▼10月26日(土)~11月4日(月・休)
京都文化博物館(3Fフィルムセンター/別館)

【公式サイト】
https://historica-kyoto.com/