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大阪府茨木市を舞台にしたユニークな青春群像劇
『葬式の名人』で初共演を果たした
尾上寛之&奥野瑛太インタビュー

文豪・川端康成による複数の小説を原案に創作された現実とファンタジーが混じりあうユニークな青春群像劇『葬式の名人』が、イオンシネマ茨木にて先行公開中、9月20日(金)より、梅田ブルク7ほか全国にて公開される。大阪府茨木市を舞台に、突然亡くなった高校時代の友人の葬儀に参列した同級生たちの風変わりなお通夜体験をコミカルに描き出す。『旅のおわり世界のはじまり』など出演作の相次ぐ前田敦子が主演を務め、『シン・ゴジラ』『多十郎殉愛記』の人気俳優・高良健吾が共演し、白洲迅、尾上寛之、奥野瑛太ら個性派キャストが脇を固めている。そんな本作の公開を前に、前田演じる主人公の同級生で府議会議員の緒方を演じた茨木市出身の尾上寛之と、同じく同級生で、広告代理店で働く島村に扮した奥野瑛太が作品について語った。

――まずは、脚本を読んだ印象を聞かせてください。映画の全体像は想像できましたか?
尾上寛之(以下、尾上):全く想像できませんでした(笑)。台本自体はコメディぽい感じだったよね?
奥野瑛太(以下、奥野):僕も、最初台本を読んだ時はもっと明るいイメージでした。台詞などはおおむね台本通りだったと思うんですが、現場でコメディっぽい台詞の解釈が変わったような気がします。
尾上:現場の雰囲気でコミカルさを調節していった感じです。
奥野:やっぱり亡くなった方を目の前にして、そんなに明るくはなれないと思われたんじゃないでしょうか。

――完成作を観てどのように感じられましたか?
尾上:(前田さん、高良くん、白洲くん)3人の高校時代のシーンを観て、僕達が撮影していない裏でこんなに素敵なシーンを撮っていたんだなと思いました(笑)。僕らはみんなで集まってワイワイ賑やかにやっているシーンが多かったので、裏ではこんなにしっとりしてたんやと思いました(笑)。
奥野:僕たちが想像していた高校時代とちょっと違いましたよね(笑)。僕たちの育ちの悪さが出ちゃいましたね(笑)。

――尾上さんは茨木市出身ですが、大阪府内でも屈指の進学校である茨木高校(以下、茨高)での撮影はいかがでしたか?
尾上:僕は頭がよろしくなかったので、茨高に行くというだけでちょっと嬉しかったですね。学区で一番の高校で、外から見た事しかなかったので、中に入ってプールに行ったり中庭に入ったりして、茨高の生徒はこういうところで3年間過ごしているんだなと思いましたし、ここでトップクラスの人達が育って行ったんだなと感じました。映画の中では僕も茨高の卒業生なので、そういう風に見えたらいいなと思いました(笑)。

――キャラクターはどのように作っていかれましたか?
奥野:僕は、監督に広告代理店の社員のイメージでと言われました。
尾上:僕は、胡散臭い議員さんみたいな感じと言われました(笑)。胡散臭さを全面に出して欲しいと言われました。ほとんど据え置きのワンシーンワンカットで撮影していたので、寄りのカットがほとんどなくて、自分のキャラクターを説明できる場面がほとんどなかったんです。だから、キャラクターの出し方が難しかったです。

――通夜に集まった6人の関係性はどのように作っていかれたんでしょうか?
尾上:それはみんなで話をしました。俺たちは野球部なの? とか(笑)。
奥野:ふたりで、野球部ってことにしようと決めましたね(笑)。脚本家の方が茨高出身で、夜行登山や体育祭の演舞などの行事や校風をよくわかってらっしゃるので、きっとクラスが違っていても密な関係性を築ける校風なんだと思います。脚本を読んだ時にこういう6人の関係性が茨高らしさなのかなと思いました。
尾上:確かに、普通の高校でみんなで山に登ったりすることないですよね。

――大阪弁での演技はいかがでしたか?
尾上:僕は大阪出身なので大丈夫かと思っていたんですが、このイントネーションどっちやったかな? と分からなくなってくるところもありましたし、地域によって違うんだと思いました。僕もすごく悩みました。
奥野:尾上さんでもそうなんですから、大阪出身じゃない僕なんか全く分からないですよ(笑)。
尾上:バッチリだったよ。
奥野:ずっと尾上君教えてって言っていました(笑)。

――撮影は1年前の夏だったとお聞きしましたが、何か印象に残っていることはありますか?
ふたり:7月末だったので暑かったですね。
尾上:15分おきぐらいに5分休みますと言って僕たちもスタッフさんも水を飲んで、僕らは汗をかいちゃうと衣装に響くので車の中で涼ませていただいたんですがそれでも汗がダラダラでした。
奥野:めちゃくちゃ暑かったですね。
尾上:みんなで定食屋に行ってご飯を食べるシーンがあるんですが、あそこは大変でした(笑)。
奥野:暑かったのに、みんな温かいご飯を食べなきゃいけなかったんです。あれはキツかったですね(笑)。
尾上:しかも、ずっと食べ続けていないといけなくて…。
奥野:食べ過ぎちゃったんですよね。
尾上:瑛太くん、ずっと食べてたもん(笑)。タイミングが難しくて3、4回は撮影していたと思うんですが、そのたびにお店のお母さんがちゃんとしたご飯を作ってくださるんです。
奥野:本当にちゃんとしたご飯を用意してくださって。
尾上:真夏なのに、全員温かいメニューですよ。しかも、お昼ご飯を食べた後だったんだよね(笑)。こんなに食べるんだって思ったんですが、ずっと撮っているので食べないのもおかしいと思って、とにかく食べていました。さらに、「はいお待ち」からスタートするので、食べる前提での撮影なんです。瑛太くんは4、5玉食べてましたね(笑)。
奥野:汗も止まらないし、本当に大変でした(笑)。

――夜の高校での撮影はいかがでしたか?
奥野:茨高がめちゃくちゃ綺麗なので、イメージしていたようなおどろおどろしさというのはなかったですね(笑)
尾上:撮影中は照明もあるので、めちゃくちゃ暗いわけでもないんですよね。照明がなかったら怖いと思います。後は、人がたくさんいますからね。ひとりだったら怖いと思います。

――茨木市民の方にエキストラなどでご協力いただいたんでしょうか?
奥野:学校のシーンには茨木高校の生徒さんが来てくれていました。演舞を披露しているシーンも実際に茨木高校の方がやってくださったはずです。夏休みだったのに、出てきてくださって本当に感謝しています。
尾上:商店街のシーンは、ほぼほぼゲリラ撮影に近かったんです。でも、カメラでばれてしまって、そうすると皆さん避けてくださるので、改めて隠れてスタートして撮り直したんですが、たくさんの方にご協力いただきました。

――おふたりは、撮影後も一緒に過ごされていたんですか?
尾上:けっこうタイトな撮影だったので、撮影の終わる時間が一緒じゃなかったり、次の日の朝がめちゃくちゃ早かったりして、なかなか一緒にご飯にも行けなかったんです。
奥野:ご飯に行けたのは1、2回ぐらいでした。

――『3月のライオン』で同じ映画にクレジットはされていましたが、本格的な共演は今回が初めてだったと思います。共演した印象をお聞かせください。
尾上:ふたりとも『3月のライオン』に出演していて、僕がテレビで対局を見るシーンはあったんですが…。
奥野:でも、あのシーンはまだ僕の撮影が終わってなかったので、見ているふりだよね、たぶん。だから、ちゃんと向かい合ってお芝居をするのは今回が初めてでした。
尾上:そうそう。それで、『3月のライオン』の打ち上げで瑛太くんと朝まで飲みました(笑)。だから、今回共演できて嬉しかったです。瑛太くんと初めてお芝居できると思って。

――おふたりとも、どんな作品であっても、演じるキャラクターに光輝く瞬間をもたらしてきた印象があります。いつも、どのような意識で撮影に入ってらっしゃるんでしょうか?
尾上:僕は、そのキャラクターがどういう風に生きてきたのかや、どういうことが好きで今何をやっているのか、色々考えながら演じています。ここはこうやってやろうという風には考えていなくて、ただその空間で生きること、その空間に存在することを一番に考えて、それに加えて相手との関係性や空気感を考えて演じています。今回は胡散臭さを全面に出していきました(笑)。
奥野:僕は台本に書いてある通りのことを、できるだけ表現できるようにしています。台本通りにやるのって難しいんですよね。思っていてもできないですし。現場によっても監督によっても全然違ってくるので、毎回毎回もっとできるようになりたいなと思っています。

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取材・文/華崎陽子




(2019年8月28日更新)


Check

Movie Data

(C)“The Master of Funerals“ Film Partners

『葬式の名人』

▼イオンシネマ茨木にて先行公開中
▼9月20日(金)より、梅田ブルク7ほかにて公開
出演:前田敦子、高良健吾、白洲迅
尾上寛之、中西美帆、奥野瑛太
佐藤都輝子、樋井明日香、阿比留照太
有馬稲子
脚本・プロデューサー:大野裕之
監督:樋口尚文

【公式サイト】
http://soushikinomeijin.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/177339/


Profile

尾上寛之

おのうえ・ひろゆき●1985年7月16日、大阪府茨木市出身。1994年NHK朝の連続テレビ小説「ぴあの」で子役デビュー。その後もTVドラマ「白い巨塔」や「べしゃり暮らし」、映画『3月のライオン』、『億男』など、映像に舞台にと活躍の場を広げ、味のある演技で魅了する実力派俳優。


奥野瑛太

おくの・えいた●1986年2月10日、北海道生まれ。2009年、映画『SRサイタマノラッパー』でデビュー。シリーズ3作目『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』で映画初主演を務め、その後も『クローズEXPLODE』、『3月のライオン 前編』、『友罪』など出演作が続く印象的な存在感を発揮する個性派俳優。『アルキメデスの大戦』が公開中。最新作『タロウのバカ』(9月6日公開)の公開を控える。