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「まだまだこれからです。いつか人生の大勝負を」
香取慎吾&白石和彌監督が登壇した
映画『凪待ち』大阪舞台挨拶&囲み取材レポート

ハイペースで新作を撮り続け、数々の映画賞に輝くなど今最も充実したキャリアを築いている白石和彌監督が、香取慎吾と初タッグを組んだ重厚な人間ドラマ『凪待ち』が、6月28日(金)より、TOHOシネマズ梅田ほかにて公開される。人生につまづき、落ちぶれたギャンブル中毒の主人公・郁男が、恋人とその娘と共に、人生を再出発させようと恋人の故郷である石巻に移り住み、なんとか人生をやり直そうと奮闘する姿を描く。引越し先で無事に仕事にも就き、生活が軌道に乗るかと思いきや、同僚の誘いで再びギャンブルに手を出したことから郁男の周りに悲劇が訪れる…という物語の本作の公開を前に、主演を務めた香取慎吾と白石和彌監督が登壇し、6月19日(水)、TOHOシネマズ梅田で完成披露上映会の上映前に舞台挨拶と囲み取材を行った。

舞台挨拶前にふたりが応じた囲み取材で、まずは白石監督に俳優・香取慎吾の印象を尋ねると「香取くんが、トップアイドルでエンターテイナーであることは重々承知の上だったんですが、単純に俳優としてのスキルが高いと思いました。そこかしこで今までに見たことのない、ゾクゾクするような表情を出してくれたので、映画の様々な部分を膨らませられるようなインスピレーションを与えられました」と絶賛。それを受けて香取も「今のように監督がおっしゃってくれる言葉や、観てくださった方があまり見たことのない香取慎吾だと言ってくださるのも全て、白石監督が作ってくださったものだと思います」と応じていた。また、俗に言うダメ男である郁男を演じたことについて香取に尋ねると「僕の中の良心や正義感をぐっとこらえて演じました。下を向いて苦悩する部分は僕の中にもありますし、下を向いてしまう瞬間は誰にもあると思うので、そういう部分には共感できました。この役の影響を受けて、もし今誰かに襲われても、ある程度平気なんじゃないかと勘違いしている部分はあると思います(笑)」と笑わせた。さらに、白石監督は作品の中で俳優を“いじる”ことで知られているが、本作ではどうだったのか聞いてみると「今回は暴力を可能な限り封印して、ヒューマンドラマを撮りたいという思いでスタートしたんですが、蓋を開けてみると香取さんがお芝居しながら僕を誘ってきたんです。台本に1行ぐらいしかないところを5行ぐらいの乱闘シーンにしたりして。そういう意味では、香取さんのこともいじらせてもらいました(笑)」とコメント。香取も「誘っていましたね(笑)」と応じ、重ねて白石監督は「香取さんは、必要とあらば奥歯を抜くことを厭わない人だと思います」と絶賛。香取も「監督に言われれば(笑)」と返していた。

nagimachi3.jpgそして、舞台挨拶で大阪について聞かれると香取は「稲垣と草彅と最近、ファンミーティングで大阪に来たんですが、何日かいたのに粉ものを食べられなかったんです。今日は映画館の楽屋にたこ焼きが用意されていたので、2秒でいただきました、8個を(笑)。2秒で」と場内を沸かせ、白石監督も「僕は見てなかったですね(笑)。ちょっと目を離したすきだったのかな(笑)」と驚いていた。また、香取が演じた郁男について白石監督に聞いてみると「辛い気持ちがずっと体の中に沈殿していく役なので、お願いしたのは僕なのですが、申し訳ない気持ちでいっぱいでした」と気持ちを吐露し、それを聞いた香取も「それでも、撮影終わった後にお食事に行ったり、飲みに行ったりするご褒美は一切なしでした(笑)」と笑わせ、白石監督が「時間がなかったんです」と謝ると、香取が「撮影が終わったらホテルに帰って、シャワー浴びて出発みたいな、素晴らしい働き方改革でした(笑)。でも、今日はたこ焼き8個食べられましたから(笑)」とその分、日本を縦断している今回の舞台挨拶を楽しんでいるようだった。それを聞いた白石監督が「たこ焼きでそんなに笑顔になってくれるんだったら、言ってくれれば毎日たこ焼きを差し入れしたのに(笑)」と主張すると、香取は「たこ焼きだけじゃダメですよ(笑)」と返し、場内を沸かしていた。

nagimachi4.jpgさらに、劇中で郁男が人生を賭けた大博打に打って出ることから、今までの人生で勝負に出たことを聞かれると、白石監督は「僕は20歳から映画の世界で生きてきたんですが、監督になれるかなれないかぐらいの時に、もうやめようかと思ったことがあったんです。その前に自主映画を撮ろうと思って貯金をはたいたので、博打はそこで打ちましたね。あの頃の自分に香取さんと仕事をする日が来るんだと教えたいですね。もうちょっとお金はったのに(笑)」と語った。一方、香取はなかなか答えが見つからない様子だったが「今はまだしてないですね。こ~んなに色んなことがあったのに、30年以上の芸能生活でまだ勝負していません。」と断言し、場内から大きな拍手を浴びていた。さらに、香取が「まだまだこれからです。いつか人生の大勝負をしたいですね」とコメントすると場内からは笑い声が起こっていた。

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最後に、白石監督が「ちょうど1年前に撮影していたこの作品をようやく皆さんにお届けできる日が来ました。心の中に波が立つ出来事がたくさんあると思いますが、多くの人の心に凪が訪れますように、という気持ちを込めて作りました」、香取が「この作品に参加できて幸せに思っています。そして、完成した作品を観た昨年の10月から、6月28日の公開を心待ちにしていました。こうやって皆さんにこの映画を観ていただくことを嬉しく思っています」と作品をPRし、舞台挨拶は終了した。

 

取材・文/華崎陽子




(2019年6月20日更新)


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Movie Data

(C) 2018「凪待ち」FILM PARTNERS

『凪待ち』

▼6月28日(金)より、
TOHOシネマズ梅田ほかにて公開
出演:香取慎吾、恒松祐里、吉澤健
音尾琢真、三浦誠己、寺十吾
佐久本宝、田中隆三、黒田大輔
鹿野浩明、奥野瑛太、麿赤兒
不破万作、宮崎吐夢、西田尚美
リリー・フランキー
監督:白石和彌

【公式サイト】
http://nagimachi.com/

【ぴあ映画生活サイト】
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