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染谷将太にフリースタイルラップを要求!?
『PARKS パークス』瀬田なつき監督インタビュー

瀬田なつき監督・脚本・編集、トクマルシューゴ音楽監修、橋本愛主演の青春音楽映画『PARKS パークス』が5月6日(土)よりシネ・リーブル梅田、5月13日(土)より神戸国際松竹にて公開される。東京・吉祥寺にある井の頭公園を舞台に、ひとつの音楽によって結びついた“かつて”と“現代”を生きるそれぞれの若者の夢と愛を鮮やかに描き出す本作は、橋本のほか、永野芽郁、染谷将太といったフレッシュな若手キャストの共演が実現した注目作だ。来阪した瀬田なつき監督にインタビューを行った。

――2014年に閉館した東京・吉祥寺の映画館バウスシアターのオーナーだった本田(拓夫)さんの“映画への思い”から誕生した映画とのことですが、瀬田監督が参加された経緯について教えていただけますか?
 
樋口(泰人)さん(本作のゼネラルプロデューサー)から、「(バウスの)本田さんが今年100周年を迎える井の頭公園の映画を作りたいと話しているんだけど、“町の映画”に興味ありますか?」と、声をかけてくださって。それで「面白そうですね。やりたいです!」と、このプロジェクトに参加させていただきました。
 
――“町の映画”ってところがポイントですね。ある程度の物語はその時点であったんですか?
 
いえ、「公園がメインの話であれば物語の内容はお任せする」「公園の桜のシーンを入れてほしい」というオファーで。当初は何を撮ればいいのか分からなくって、実は1年くらい悩んでしまいました…。それまで、バウスシアターには何度も行っていましたが、吉祥寺に住んだこともないですし、公園を含め吉祥寺について詳しく知っているわけではなかったので。とりあえず公園に行くというところから始めました。
 
――そこからどういう風に物語を作っていかれたのですか?
 
何かを探すとか公園を巡るお話に出来たらいいなというイメージは漠然とあって、探しているうちに何かを完成させられたらいいなと。池に沈んでいた何かの半分を見つけてその半分を完成させるとか、池にレコードが浮かんでくるとかいう案も最初は出たんですけど、池に何かを捨てるとか公園的によくないんじゃないかという話になり、その流れで、このオープンリールを使って音楽を完成させる話になりました。
 
――そういえば今年公開された『牯嶺街〈クーリンチェ〉少年殺人事件』(1991/エドワード・ヤン監督)にもオープンリールが出てきましたね。
 
そうそう。偶然ですが、『牯嶺街〈クーリンチェ〉少年殺人事件』も60年代を描いていて、オープンリールも出てくるんですよね。ちょっと強引なんですが、エドワード・ヤンが20代のころがちょうど60年代なので、森岡龍くんが演じた役がエドワード・ヤンとして見たらっていう年表を勝手に作ったんですよ(笑)。エドワード・ヤンは59歳で亡くなっているので、永野芽郁さん演じるハルを娘としたら何年前かとか考えて(笑)。エドワード・ヤンの『ヤンヤン 夏の想い出』はいろんな世代が登場して回想する映画で、『PARKS パークス』は回想ではないけど、いろんな世代が出てくる映画。似ているわけではないけど、共通点があると言えばありますね。物語を作っていく作業に制約が全くなかったので、やりたいことをいっぱい入れました。
 
――60年代の場面を描くのにその時代の音楽を聴き直したり、その時代の映画を観直したり何かされましたか?
 
当時の公園の様子は資料を見せていただいたりしました。60年代の音楽に関してはトクマルさんと相談して。映画に関しては今回観直したりはしていないですが、今まで観てきた60年代の映画とかであったイメージを入れていきました。でもどれかを特別に意識したということはないです。ただ、橋本さんの台詞にもあるんですが、過去のものを再構成して現代に繋げていきたいというイメージはありましたね。
 
――60年代のキャストは森岡龍さんと石橋静河さんですね。
 
お二人とも古風というか今風ではなくて、すれてない感じが良くて。しかも歌もお上手だったんです。
 
――そうですよね。音楽映画なので歌えることが重要ですよね。60年代のキャストも現代のキャストも。
 
オーディションってわけではないんですが歌声が聞いておきたくて、撮影に入る前に橋本さんと石橋さんにはご自身が好きな歌を歌ってもらいました。お会いしたときに「歌ってもらってもいいですか」とムチャ振りをして(笑)。贅沢なことに橋本さんにはギターも弾いてもらいました。
 
――橋本さんはもともとギターが弾けるんですか。
 
趣味程度でもともとやっていらしたというのを聞いていたので「じゃあ是非弾いてください」とお願いしたんです。そのときのちょっと恥ずかしそうに歌う感じがまたすごく良くて。
 
――橋本さんに関しては「演技が出来るからつい難しい演技を求めてしまう」と、ある監督が話されていたんですが、この作品ではとても軽やかで、どの映画の橋本さんより可愛く見えました。
 
演技に対してとてもマジメな方なんですが、この映画ではなるべく力を抜いて「軽く」「楽しく」という話をしました。
 
――橋本さんだけでなく、永野芽郁さん、染谷将太さんもほかの映画で観る姿より、素に近いのかな? と思いました。
 
そうなればいいなと思って、キャラクターや細かい動きを作りこまないようにしました。「楽しそうに見えたらそれでいいんで!」くらいの軽い指示しかしてないんです。永野さんも撮影に入る前に一度お会いしているんですけど、普段からニコニコしていて、もの怖じしない自然な感じがとても良かったんです。
 
――3人が音楽を作るなかで、公園で聞こえる音をたくさん録っている場面がありますよね。
 
公園で録った鴨の鳴き声とか、演奏シーンで使っているんですが全然分からないですよね(苦笑)。サントラとかで聞いてもらえれば分かると思います。
 
――気づかなかったです。すみません!! 気をつけてもう1回観ないと。染谷さんは瀬田監督作品の常連ですが、瀬田監督にとっての染谷さんはどういう存在なんですか?
 
安心してなんでもお任せできて、間違いがない人という感じでしょうか。『TOKYO TRIBE』(2014/園子温監督)ですごくカッコよくラップを披露していたし、トクマルさんも「『TOKYO TRIBE』を観る限りかなりの技術を持ってる。歌詞とかなくても設定をあたえるだけでたぶんフリースタイルでできちゃう人だよ!」って話されていたので、現場で「ここ16小節フリースタイルで」ってお願いしたんですが、「そんなの無理ですよ!!」て返事でした (笑)。
 
――なんでもお任せできる人とはいえ、その場でフリースタイルラップしろというのは、さすがにお任せしすぎですね(笑)!
 
できると勝手に思い込んでそういうキャラクターにしてしまっていました(笑)。それで「ラップをやれと言われたらやりますが、さすがにフリースタイルはできないです」って染谷くんに言われて、一生懸命わたしと染谷くんとトクマルさんの3人で相談しながら作りました。映画の最後に出てくるラップは、吉祥寺に縁のあるミュージシャンceroの髙城さんに吉祥寺に対する思いを書いてもらって素敵なラップが出来たんで良かったですけどね。出演いただいたミュージシャンの方や劇中で使用している音楽を手がけているミュージシャンの方々もトクマルさんのつながりで吉祥寺あたりの中央線沿線に縁のある方々を中心に集めていただいて。映画に出てくるライブハウスもスターパインズカフェという吉祥寺の顔的なライブハウスなんです。
 
――たくさんのミュージシャンが関わっている中でも澤部渡さんの存在が目立っていて良かったです。
 
存在感も抜群ですが、その上、とてもいい曲を作ってくださって。もう本当にいろんな役を演じてもらいたくなってしまいました。
 
――橋本さん、永野さん、染谷さんが演じた3人がそれぞれ、元子役だったり、小説を書こうとしていたり、ミュージシャンを目指していたり。そういう人が多いのも吉祥寺という町の特色ですよね。
 
吉祥寺や高円寺、荻窪、阿佐ヶ谷辺りって東京の中でもカルチャー色が強い場所だなと感じていて、何かを目指しているけど、まだモヤモヤしている人たちが集まっているような物語になりました。あと、来たばかりで公園のことをよく知らない人と、大学から来ているからちょっと知っているという人と、ずっとそこに住んでいる人っていう違った目線が撮れればというのもありました。
 
――吉祥寺の雰囲気を知っている人と、関西の人とかで吉祥寺に行ったことがないような人ではこの映画の楽しみ方が違うのかもしれませんね。
 
井の頭公園だけの物語ではなくて、タイトルが『PARK パーク』ではなく『PARKS パークス』なのも、いろんな人にとっての公園という意味を込めています。それと、100周年ということでいろんな時代の公園という意味もあります。 “クス”って響きの力が抜けている感じもこの映画にあっている気がするし、カタカナで書くと“スパーク”に見えるっていうのも気に入っています(笑)。



(2017年5月 1日更新)


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Movie Data

©2017本田プロモーションBAUS

『PARKS パークス』 

橋本愛  永野芽郁  染谷将太
石橋静河 森岡龍 / 佐野史郎
柾木玲弥 長尾寧音 岡部尚 米本来輝
黒田大輔 嶺豪一 原扶貴子 斉藤陽一郎 / 麻田浩
谷口雄 池上加奈恵 吉木諒祐 井手健介
澤部渡(スカート)  北里彰久(Alfred Beach Sandal) シャムキャッツ 高田漣

監督・脚本・編集:瀬田なつき
企画:本田拓夫 
ゼネラルプロデューサー:樋口泰人 
プロデューサー:松田広子 
ラインプロデューサー:久保田傑
音楽監修:トクマルシューゴ

【公式サイト】
http://parks100.jp

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/170172/