「是枝裕和監督作品と瑛太が大好きっ!」
《第2回 大阪韓国映画祭》 開幕作品『ケチュンばあちゃん』
韓国の国民的女優ユン・ヨジョン トークレイベントポート
11月3日(木・祝)~5日(日)まで、大阪市北区・グランフロント大阪 ナレッジシアターにて開催中の《第2回 大阪韓国映画祭》が大盛況。今年は「家族愛」をテーマに、日本初公開となる『おじいちゃんの古い自転車』『ミヌさんが来る日』ほか、計7本の作品を無料上映している(事前申込制だが当日券も少しは出るようなので要チェック)。開幕作品である『ケチュンばあちゃん』(関西初公開)では、本作の主演を務めた韓国の国民的女優ユン・ヨジョンを迎えてのトークショーも行われた。MCを務めた古家正亨による軽快なトークに、ベテラン女優ユン・ヨジョンの貫禄ある受け答えがウィットに富んでおり、会場は何度も大きな笑いに包まれた。
古家正亨(以下、古):(会場の大きな歓声と拍手を見て)アイドル並みの大きな拍手と歓声ですね。
ユン・ヨジョン(以下、ユ):拍手はそう感じますが、わたしはアイドルではありません(笑)。大阪に来たのは今回が2回目です。前回はイ・ソジンさんのイベントにゲストとして呼んでいただき大阪に来ました。日本語がまったく出来ませんので皆様に直接日本語でご挨拶ができないことを本当に申し訳なく思っております。どうぞよろしくお願いします。
古:日本で単独トークイベントを行うのは今回が初めてということですね。
ユ:通訳を通さないといけないもどかしさがあって、そんな中でお喋りするのは疲れますね(笑)。
古:開始早々、お疲れとのことですが(笑)。どちらかというと都会的でクールな印象があるユン・ヨジョンさんですが、『ケチュンばあちゃん』では正反対の役どころ。脚本を読まれてすぐにビジュアルイメージはできましたか?
ユ:仰るとおり今までは都会的なイメージで生きてきましたので、最初は何故わたしにこの配役をするのかなと正直嫌な感情もありました。だけど「イメージを変える役にチャレンジしてみてはどうですか」とプロデューサーが話してきて、それを面白いなと感じました。なので、この作品はわたしにとって“挑戦”という位置づけの作品になったと思います。
古:中でも『ケチュンばあちゃん』出演を決めた大きなポイントはどこだったんですか?
ユ:この役を演じる際、わたしが10歳のときに亡くなった曽祖母のことを思い出したんです。昔は噛んだものを子どもに与える習慣があって、それを子供心にも不衛生ですごく嫌だなーと思っていた。でも、50歳を過ぎたころからかその無二の愛を理解できていなくてごめんなさいという気持ちと、ありがとうという感謝の気持ちを持っていました。そういう中でこの作品に出会って、この役を演じることでわたしの曽祖母への愛を表現できるのではないかと思い、出演することにしました。
古:海女さん役ということで大変なことも多かったのでは?
ユ:役柄に関しては挑戦の気持ちだったし何の問題もありませんでした。ただ海女さんを演じる上で、実際の海女は数分~数十分ほど海に入るところを、わたしは丸1日あの衣装を身に着けて撮影しました。体力の消耗が激しかったですし、あの衣装を脱ぐだけで耳が切れたり、撮影は本当に疲れました。
古:女優キム・ゴウンさんの出演は、ユン・ヨジョンさんからの推薦だったとお聞きしたのですが。
ユ:シナリオをもらったときに「孫娘の役は誰がいいですかね?」とスタッフに聞かれ、ふたりの女優が思い浮かんだんです。そのふたりのうちひとりは30歳を超えているので学生は無理かなと。そして、もうひとりはキム・ゴウンさんだったんです。それで彼女なら若いしいけるかもと推薦しました。わたしが圧力をかけて彼女にしてほしいと言ったわけではなく意見を述べただけですよ(笑)。
古:キム・ゴウンさんの魅力とは?
ユ:すごく自然な女性だなと感じます。手術もしていないですし(笑)。実際に会ったとき彼女はものすごく緊張していました。それがまた彼女の自然さを引き出していた。わたしはそういう女性が好きなので、会った瞬間にこの子いいわねと感じました。
古:人気音楽グループSHINeeのメンバーで本作が映画初挑戦だったチェ・ミンホさんは、舞台挨拶で「この映画への出演が決定した際、震えた」と話されていたようですが、ミンホさんについてはいかがですか?
ユ:韓国のアイドルスターたちは日ごろからトレーニングを重ねていますし、やはりマナーや態度など完璧なんです。ただひとつ、チェジュ島にこんな洗練されたイケメンはいないと思いました(笑)。わたしのことを怖いと思っていたのかしらね、そりゃ怖いわよね。わたしは威厳がある女優だし。それはしょうがないわ、別にいいの(笑)。
古:ミンホくん、お気に入りな様子ですね(笑)。そんな、ユン・ヨジョンさんは今年デビュー50周年とのことで!
(会場:大きな拍手)
ユ:ありがとうございます。これまでいろいろな役を務めてきましたが、演技を長く続けてきたことよりも、長く生きてきたことへのお褒めの言葉じゃないかと感じています。ここにきて新人のように新しい役柄を新しい姿で演じることに挑戦していきたいと思っています。その一環としてこの映画にも出ました。今までと違ったものに挑戦することで新しい自分が見せられる。それをこれからも考えていきたいと思っています。本当の新人俳優はそういった選択ができないまま純粋なイメージで演じるしかないと思うのですが、長くやってきたからこそ自分から新しいことに果敢にチャレンジできることがあると今感じているんです。だからこそ新人のように新しい気持ちで演技に取り組んでいます。
(会場:大きな拍手)
古:作品選びで気にしていることは?
ユ:まずひとつめは前回とは違う役を演じる。これはわたしのポリシーです。わたしが今努力できることは与えられたイメージとはまったく違ったイメージを再生産していくことじゃないかと思っています。そして、ふたつめはお金をたくさん貰えるかです(笑)。
(会場:爆笑)
古:監督や脚本は決め手にならないんですか?
ユ:それは作品ごとに違います。長くやってきたので、例えば昔一緒に仕事をした助監督や作家がまた一緒に作りたいと言ってきたらそれを優先することもあります。
古:50年女優をされてきたベテラン女優のユン・ヨジョンさんでも演技を難しいと感じることはあるんでしょうか?
ユ:ベテランという言葉が自分に当てはまるとは思いません。何故なら役者は演技で観客の共感を得なければいけない職業だと思うからです。その共感は必ずしも100パーセント得られるものではない。数学の試験のように答えがあるわけではなくて、観た人それぞれの感じ方で答えが変わってくる。だからその共感をいかにして掴むかを考えたときにその答えは決してないからこそ演技はいつまでも頑張っていかなければならないものではないかと思います。
古:最新作『殺してあげる女』が10月に韓国で公開されて大ヒット、しかも《モントリオールファンタジア国際映画祭》で主演女優賞を受賞されたとか。
(会場:大きな拍手)
ユ:歳をとって自分がコントロールできなくなり「死にたい」と思った老人たちを、ナイフで刺して殺すわけではなくて違う意味で殺す、売春経験のある女性を演じています。
古:難しそうな役ですね。
ユ:この役は本当に難しくて、おばあさんだけど性を売ることを商売にしている女性の役ということで、メンタル的にとても滅入ってしまった時期もありました。
古:でも世界の映画祭で評価も受けて、演じた甲斐があったという感じでしょうか?
ユ:賞はまだ直接いただいていないのでまだ実感が沸いておりません(笑)。
(会場:爆笑)
古:この上映&トークに3000人の応募があったとのことですから、ユン・ヨジョンさんは日本でも大人気なんですよ。ドラマを通じてユン・ヨジョンさんのことをお知りの方が多いのかなと思いますが、会場に聞いてみましょうか。ユン・ヨジョンさんの出演作品で印象に残っている作品は何でしょう?
会場:「ホテリアー」!
ユ:「ホテリアー」って言った人はどうせヨン様目当てでしょ(笑)!
会場:「がんばれ!クムスン」!
会場:「コッチ」!
会場:「ハウスメイド」!
会場:「棚ぼたのあなた」!
古:出演作品が多いのでこのまま聞いていたら終わらないですね。ぼくは「ディア・マイ・フレンズ」がすごく良かったです。頑固な老人たちの物語なんですけど、キャストがユン・ヨジョンさんはもちろん、韓国ドラマでおなじみのお父さんお母さんばかりで。このドラマ、若い作家さんが書かれてるんですよね?
ユ:ノ・ヒギョンさんという若い作家さんなんですが、なんでこんなにわたしたちの気持ちが分かるんだろうというシナリオを書いてくださる。キャストが老人ばかりでわたしたち自身も視聴率は大丈夫かなと思っていたぐらいなんですが、各方面から良い反応をいただいています。これも作家が良いシナリオを書いたことにつきると思います。
古:老人世代の愛と友情を描いた老人版『スタンド・バイ・ミー』みたいないい作品なのでたくさんの人に見ていただきたいですね。ユン・ヨジョンさんは日本のドラマや映画をご覧になることはありますか?
ユ:是枝裕和監督の作品が好きで全作品観ていると思います。俳優では瑛太さんが大好きっっ! すごく前から知っていて大好きな俳優さんです。
古:瑛太さんのところ、なんか言い方が全然違いますね(笑)。
ユ:いいじゃない。好きなんだからっ!
(会場:爆笑)
古:是枝監督の映画とか出てほしいですねぇ。
ユ:でもわたし日本語ができないから…。
古:新しい役に常に挑戦するユン・ヨジョンさんなら!!
ユ:(そのときは)やるしかないですね!
会場からの質問:美容面で気をつけていることは?
ユ:皮膚があまり強くないので皮膚科に通っています。それと実は日光アレルギーがあるので、長く太陽の光を浴びると顔が腫れてきてしまうんです。今日も少し腫れてるんですが、何人かから「ボトックスされてるんですか?」と聞かれ、戸惑っています(笑)。
古:食べ物や水などで気をつけたりされてることはないんですか?
ユ:食べたいものを食べちゃうし、そんなの無理よ。決心できないわ。でも、ひとつありました。日本食が大好きなんです。日本食を食べるために日本に来ました。ただ、高価なものを食べるのではなく、セブン-イレブンで味噌汁とゆで卵を買って食べるような日本食ライフを日本では過ごしています。
(会場:爆笑)
古:今回大阪で美味しいものは食べましたか?
ユ:大阪に来て肉は食べました。あと寿司も食べました。でも事前にリサーチしていい店に行ったわけではなく、なんとなく入ってしまって満足できず。結局セブン-イレブンに行って味噌汁とゆで卵です。
(会場:爆笑)
古:家族を描いた作品に多数出演されていますよね。韓国における家族は親密度が高く、日本の家族は比較的ドライなイメージがあるんですが、ユン・ヨジョンさんが“家族愛”を演じるとき、気を配っていることはありますか?
ユ:個人的には日本の絶妙な距離感、韓国の気持ち悪いくらい“血”を意識した関係のちょうど中間くらいが理想の家族ではないかと思いますね。
会場からの質問:この映画が描く、血縁ではない家族の形についてどう感じて演じられましたか?
ユ:血縁関係だけが家族だとは思いません。自分自身を受け入れてくれる人はみんな家族ではないかと思うんです。
会場からの質問:チェジュ島出身なのでその点でもこの作品は興味深く拝見させていただきました。主な撮影場所はどのあたりですか? 記憶に残っている場所は?
ユ:観光で訪れたわけではございませんので今すぐにここのこれが良かったとは言えません。ちょっと思い出せません。すみません。
会場からの質問:これだけは教えて!菜の花畑が美しかったけど、あれもチェジュ島にあるんですか?
ユ:警察署とか一部を除いて、すべてチェジュ島で撮影しています。
古:(この反応を受けて)ツアーを組みましょうかね。
ユ:わたしはこれで観光客を誘致することに成功しましたね!
(会場:大きな拍手)
古:最後にメッセージを。
ユ:お招きいただき本当に光栄です。わたしの映画をこれだけたくさんの方にご覧いただき、一緒に時間を過ごすことが出来て本当に嬉しく思います。この映画をわたしと一緒に感じてくださったみなさんに心から感謝いたします。ありがとうございます。
古:ちなみに次の作品の情報などは?
ユ:今年はもう休ませてください。
(会場:爆笑)
古:では来年ですね!
ユ:来年まで生きていたら撮影に入っていきたいと思います。
(会場:爆笑)
(2016年11月 4日更新)
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