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『ストロボ・エッジ』の廣木隆一監督×有村架純主演コンビが
再タッグを組んで贈る『夏美のホタル』有村架純インタビュー

写真家になる夢や恋人との関係に少し疲れた女性が、導かれるように向かった場所は、父との思い出の場所だった…。人気作家・森沢明夫が実体験をもとに書いた小説を映画化した『夏美のホタル』が、11日(土)より公開される。主演は映画、ドラマ、CMと充実した仕事のつづく女優、有村架純。さりげない日々に揺れる若い女性のひと夏を繊細に、でも生き生きと表現してみせる。

――原作は、高倉健主演の『あなたへ』(12年)や、吉永小百合主演の『ふしぎな岬の物語』(14年、原作題名「虹の岬の喫茶店」)などでも知られる森沢明夫さんの小説ですが、資料によると映画化の話がくる前からお知り合いだったとか。

そうなんです。3年前、共通の知人の紹介でお会いしました。そのときちょうど今回の原作「夏美のホタル」を読んでいて、これも実写化されるといいですね、そうなったら夏美を演じてみたいですと言ったら、森沢さんも「お願いします」なんておっしゃって。だから、出演のオファーを頂いたときには3年越しの願いがかなった、という感じでした。

 

――原作小説にはどういった感想をお持ちだったんですか?

私、こういった人と人とのつながりを大事にしたあたたかい物語が好きなんです。舞台が自然豊かな田舎で、おじいさんとおばあさんが出てくるお話とか。この小説にはそれに近いものがあって好きでした。

 

――有村さんに出演オファーがきたときには、監督はすでに廣木隆一監督に決まっていたのですか?

いえ、決まっていませんでした。だから、廣木さんになるといいなってずっと言ってたんです。廣木さんが撮る、こういうあたたかい作品が観たいという気持ちがあって。そうしたら、それも実現して。なんだかこの映画に関しては、いいことづくしでした(笑)。

 

――廣木さんとは昨年の『ストロボ・エッジ』で組まれていますよね。

私にとって廣木監督は信頼できる、とても大きな存在です。『ストロボ・エッジ』で私のお芝居は変わったと思います。あの後、出演した『ビリギャル』(15年)で賞をいただいたり、いろいろと評価してもらえたのですが、『ストロボ・エッジ』に出ていなければ、『ビリギャル』での演技も違ったものになっていたはずです。

 

――廣木監督の演技指導は、具体的に言うとどういったものだったのですか?

「余計なことするな」とよく言われました。お芝居は悲しいから悲しい表情をしたり、怒っているから怖い顔をしたりすることじゃないんだと。感情は目で伝わるから大丈夫、それ以上のわかりやすい表情や動きをするなと。そう言われて、それまで身についていたものが削ぎ落とされ、原点に戻って再スタートできたんです。役の掴み方も変わりました。

 

――今回2度目の顔合わせで、新たに言われたことがありましたか?

まず、「何も考えないで現場に来てくれ」と言われたんです。そう言われて、きっと前よりは信頼してもらっている部分があるんだろうなとは思ったんですが、やはり何も考えないでっていうのは怖かったし、勇気が要りましたね。ただ、現場に入ったら以前と同じで、愛情を持って指導してくださって、「はい、もう一回」「はい、もう一回」って感じでした。どう駄目なのか、なにが違うのかは教えてはくれないんです。自分で気づいてってことなんですよね。そういうところにも以前よりは信頼されている部分があったと感じました。

 

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――主人公の夏美という女性はどのようなキャラクターなんでしょう?

サバサバしていて男前なキャラですよね。思いたったらすぐに行動するし。友達にいたら楽しいタイプかな。私とは違いますね(笑)。でも、ここで描かれた彼女の悩みや行動は理解できます。誰でも、恋や仕事のことで壁にあたることはあるし、そういうとき、かつて父親と一緒に訪れたところに行って、なにかを見つけたいという気持ちになることはあると思います。

 

――彼女が訪れるその場所は、美しい渓谷のあるとても素敵なところですね。ロケ地は千葉県ですか?

そうです。千葉県の大多喜町です。実は原作の舞台と同じ町なんです。映画の場合、いろいろな条件によって実際に撮影される場所は原作とは違うことが多いのですが、今回は原作に書かれた世界がほんとうにそこにありました。きれいな自然がたくさんある、ほんとうにいいところでした。

 

――花村也寸志カメラマンの撮影もすばらしかったです。小湊鐡道の月崎駅も出てきて、鉄道ファンを喜ばせそうです。そういえば、きれいな自然の中でカメラマン志望の学生である夏美がたくさん写真を撮るシーンがありました。『僕だけがいない街』(16年)でも、カメラマン志望の女性の役でしたが、ご自身もカメラが趣味だったりするんですか?

私は、写真はスマホで撮るぐらいです(笑)。今回は恋人と同じ写真の学校に通っている女子の役ですが、なぜか演じる役に、カメラマン志望という設定が多くて、私も不思議なんです。

 

――そうなんだ(笑)。今回の撮影中に、なにか思い出に残るようなことはありましたか?

昨年の夏の撮影だったのですが、とても平和な現場で、自然豊かな環境でなんだか夏休みを過ごさせてもらっているような感じでした(笑)。出演している子供たちとスイカ割りをやったり水遊びをしたり。

 

――共演者に、ベテランの、それも演技巧者の人たちが多いのですが、共演されてみていかがでしたか?

具体的に教わるというようなことはなかったですが、芝居の取り組み方だとか、現場への臨み方とか、同じ場所にいるだけで勉強になって、もうずっと観ていました(笑)。休憩時間でも、小林薫さんはかっこよくて、お酒のお話とかをなさっているときもそうだし、煙草を紙で巻いて吸われるのも素敵でした。吉行和子さんはいつも現場を和ませてくださるし、光石研さんは私服のセンスが抜群で、とにかく優しい。ほんとに素敵な方たちとご一緒できて幸せだったのですが、これほどのメンバーが集まるのも廣木監督の現場だからこそなんですよね。

 

――今回、恋人役だった工藤阿須加、少ない出演シーンだけど印象的な役柄で出演している村上虹郎の二人の若手俳優との共演はいかがでしたか?

楽しかったです。工藤君はすっごく真面目で礼儀正しくて、役柄の印象そのままの人で。虹郎君は感性が鋭くて、ちょっと他の18歳の少年とは違う感じでした。でも、可愛かったです(笑)。

 

――この映画は、心優しい人たちとの出会いを通して少しだけ成長する若い女性のひと夏の物語ですが、有村さん自身が一作ごとに成長しているような印象を受けました。

デビューして今年で6年目になるのですが、いますごく充実しているのは感じています。

 

――今後、どのような女優になりたいと考えていますか?

幅広い芝居ができる、息の長い女優になりたいと思っています。主役でなければ嫌なんていう気持ちはまったくなくて、どんなに小さい役でも呼んでもらえたら出演したい。今回の映画は、人と人とのつながりの大切さを描いた物語ですが、その思いは私自身ずっと感じていて、これまでお仕事でご一緒した方たちから声をかけていただいたら、いつでもぜひ出演したい。最近はスケジュールの都合でままならないこともあって悔しい思いもしていますけど。役柄としては、これまでどちらかというと正統派女子みたいなのが多かったので、例えば意地悪な女の子とか、ものすごく無愛想な女の子とか、そういう役もやってみたいですね。

 

取材・文/春岡勇二

ヘアメイク:尾曲いずみ
スタイリスト:瀬川結美子
衣装:グレースコンチネンタル ショールーム(03-5728-3633)




(2016年6月 9日更新)


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Movie Data

©2016「夏美のホタル」製作委員会

『夏美のホタル』

●6月11日(土)より、
 京都・イオンシネマ京都桂川
 大阪・イオンシネマ四條畷
 大阪・イオンシネマりんくう泉南
 兵庫・イオンシネマ加古川
 兵庫・OSシネマズミント神戸
 ほか全国にて公開

出演:有村架純/工藤阿須加/小林薫/光石研/吉行和子/淵上泰史/村上虹郎/中村優子
監督:廣木隆一
原作:森沢明夫
脚本:片岡翔/港岳彦

【公式サイト】
http://natsumi-hotaru.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/170124/