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今注目したい若手女性監督が対談を実施!
酒井麻衣監督×松本花奈監督

“音楽×映画”をコンセプトに、数々のコラボ作品を発表し毎年話題を集めている映画祭《MOOSIC LAB》で、昨年グランプリを含む6つの賞を獲得した注目作『いいにおいのする映画』が、4月30日(土)より大阪、京都、5月7日(土)より神戸にて公開される。

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可愛らしい女性がふたり並ぶこの写真、そして“音楽×映画”に関係するということは……、新しいアイドルユニットか何かか? と思った方もいるかもしれないが、右側にいるのが今回公開となる『いいにおいのする映画』を手がけた酒井麻衣監督(24歳)。そして、そのお隣が今年の《ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016》で2冠に輝き、本年度の《MOOSIC LAB》でも上映される『脱脱脱脱17』を手がけた松本花奈監督(18歳)だ。そんな、今後の活躍が期待される注目の若手女性映画監督ふたりに、お互いの作品について対談してもらった。
 
 
酒井:花奈ちゃんと初めて会ったのは、たぶん《ショートショートフィルムフェスティバル》(2015年6月開催)かな? たぶんお互いの作品(『笑門来福』『ワレモノ注意』)の上映時間が近かったからか、会場の廊下ですれ違ったよね。
 
松本:そうですそうです! 酒井さんのことは『いいにおいのする映画』のクラウドファンディングがきっかけだったと思うんですけど、以前から知っていたので「あれ? もしや?」と思っていました。
 
酒井:女子高生監督でしかもすごく可愛いし、お会いする前からもちろん花奈ちゃんの存在は知ってて。見かけたときにはわたしも「あ! 花奈ちゃんかな?」と思ってた。高校生で監督とかすごいよね。花奈ちゃんはどういうきっかけで映画監督を目指したの?
 
松本:わたしは…、高校生のときにKIKI FILMという学外のサークルみたいな団体と関わったことが大きいと思います。実はアイドルになりたいと思った時期もあったんですが、歌も踊りも下手なので、友達に全力で却下された切ない過去がありまして(笑)。
 
酒井:おーアイドルなれそうなのに!
 
松本:それでAKBとかのミュージックビデオを見ているうちに映像の世界に興味が沸いていったんです。酒井さんは?
 
酒井:わたしは高校3年生の秋。受験を直前に控えたころに監督を目指すことに決めた。芸術全般が好きでそれまでは絵画教室にも通っていたし、画家を目指してたんだけど、映画を通して伝えたいことがあって。
 
松本:映画で伝えたいこと?
 
酒井:わたし小さなころから、妖精、サンタクロース、魔法みたいな、ファンタジーの世界を信じ続けていて。実際に見たことはないけど、どこかに存在するものだと本当に思っていたの。でもさすがに中学生くらいからお友達との会話にズレを感じ始めて…。それくらいになると、みんな恋愛とかファッションに興味が変わってくるじゃない?
 
松本:そうですねぇ。
 
酒井:今まで自分が信じてきたものが実はないのかもしれないと思ったときに、自分の中の何かが崩れ始めて。それで自分を肯定するためにたくさんの本を読んで。グリム童話とか。グリム童話って、グリム兄弟がいろんな地方のお話を集めた童話集なんだけど、その話の内容の裏側って諸説あるんだよね。
 
松本:本当は怖いグリム童話、みたいな話ですね?
 
酒井:そうそう。「赤ずきんちゃん」とか、強姦を意味するような説もあって。でも怖いだけじゃなくて、例えば「サンタクロース」は、昔、聖ニコラウスさんが貧しい人や孤児院の子どもたちにプレゼントを渡したことが由来になっていたり。そうすると、わたしがずっと信じていたものが夢物語じゃないかもしれないんだと気づいて。そういう奇跡みたいな素敵なことが現実にもあるかもしれないよという話を伝えていきたい。
 
松本:ものすごく明確に伝えたいことがあるんですね。すごい。感動です。
 
酒井:漫画や絵本を作ることにも興味はあるけど、ダイレクトに現実味を出せて伝えられるのが映画かなと思って。『ハリー・ポッター』を観た後、魔法が使える気がするような。そういう気持ちになるような映画を作りたいなぁと。花奈ちゃんの映画は、『脱脱脱脱17』にはストリップ劇場、前作の『真夏の夢』には見世物小屋が出てくるよね? そこにちょっと共通点を感じた。花奈ちゃんは女優経験もあるし、見られることに対する意識が作品に出ているのかなぁって。
 
松本:どうなんでしょう。まだ自分でもよく分かっていませんが、映画に出てくる人を追い込みたい気持ちはあって。どう困窮させるかみたいな。もともと、寺山修二とか、昔の日本の雰囲気が好きなのと、刺激的な要素もほしくて。それが合わさってこんな映画になっているんだと思います。
 
酒井:花奈ちゃんが撮ったことにびっくりするような、ちょっと変態っぽい描写があったりして(笑)。
 
松本:揺れるおしりのアップがあったりですよね。撮影してるときは、すごく恥ずかしいんですけど冷静を装って演出しています(笑)。『脱脱脱脱17』は、ある事情で17年間高校を卒業できていないおじさんとクラスメイトの17歳の女子高生が家出する話なんですけど、自分が高校を卒業するタイミングだったり人生の転機の時期だったというのもあって“脱出”をモチーフにした青春映画を作りたいと思って撮った作品。でも大半は、おじさんに感情移入して撮った部分が多いかもしれません。主人公はコラボアーティストthe peggiesのゆうほさんですけど。
 
酒井:《MOOSIC LAB》は、プロデューサーの直井(卓俊)さんが各監督に「こういうアーティストがいるよ」と提案はしてくれるけど、アーティストのために撮るミュージックビデオじゃなく「監督がやりたいことをやる場にしろ」と言い続けてくださってて。そこが面白いよね。
 
松本:わたしの場合、お話が先に出来ていてイメージの合うアーティストと組ませてもらいました。それで、撮影の前にリハーサルの日を作って、そこからちょっとあて書きっぽく修正した部分もあって。ゆうほさんの繊細で突くと壊れそうな雰囲気をキャラクターに活かしました。
 
酒井:わたしは(過去作の)『棒つきキャンディー』が恥ずかしいくらいの青春映画なので、それっぽいアーティストを最初は紹介されたけど「ダークなファンタジーが撮りたいんです! マリリン・マンソンとかKISSが好きなんです!」て訴えたら、いくつか教えてもらったバンドの中のひとつがVampillia(ヴァンピリア)さんで。
 
松本:世界観がぴったりですね!
 
酒井:まず、ビジュアルとネット上で聞いた音楽でひと目惚れ。ひと聴惚れ。初めてライブに行って生で見たときは、ボーカルのモンゴロイドさんの歌がもう二度と会えない愛する人に歌っているように見えて大号泣して。仕事のこととかいろいろ悩みを抱えている時期だったけど、ステージの上に魔界の住人のような人たちがいてそれにも感動して。やっぱりファンタジーの世界はあったんだ! って。それでその日のうちに「映画を撮らせてください」とアタックした。
 
松本:バンドメンバーの役柄設定はどうしたんですか?
 
酒井:わたしはコラボアーティストを見つけてからお話を書いていったので、ライブを見たときに感じた印象をそのままあて書きにしてる。「キャラの希望とかありますか?」って聞いたら「こいつ影が薄いから透明人間にしてくれ」て要望が出てそういう役にしたり(笑)。micciさんはそのままだし、モンゴロイドさんは本当は面白いんだけどステージでは怖かったから。これまでVampilliaのライブを見たことがある人もない人も、映画を観てからライブを見たら「あ!好きな人に向かって歌ってる!あの話は本当だったんだ!」て思ってもらえたら嬉しいなぁ。
 
 
夢を見させてくれる両親の元で育ち、魔女になることを今でも夢見る酒井麻衣は、映画監督という道を選び、映像の魔法を手に入れた。魔法のかかった映画『いいにおいのする映画』は彼女にしか撮れない、撮りたいものが明確にあるからこそ撮れた奇跡がそこに映っている。その奇跡をぜひ、映画館で目撃してほしい。また、18歳という若さで妖艶な魅力を放つ松本監督の生み出す作品の公開も待ち遠しい。ただ可愛いだけじゃない、自分の世界観を持つ、ふたりの若手女性監督に今後も要注目だ。
 
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(2016年4月29日更新)


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Movie Data



©2015 Little Witch Production / MOOSIC LAB

『いいにおいのする映画』

[大阪] 第七藝術劇場
4月30日(土)~5月6日(金)
※初日舞台挨拶あり 
ゲスト:酒井麻衣監督

[京都] 立誠シネマ
4月30日(土)~5月13日(金)
※初日舞台挨拶あり 
ゲスト:酒井麻衣監督

[兵庫] 元町映画館
5月7日(土)~13日(金)

【公式サイト】
http://iinioi-movie.com/


 

『脱脱脱脱17』

《MOOSIC LAB 2016》で上映
日程は未定

http://spotted.jp/2016/04/dadadada17/


《MOOSIC LAB》
http://www.moosic-lab.com/