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「原作を読んだとき、人間と猫の関係が
 “生き物vs生き物”のぶつかり合いなのが良かった」
『猫なんかよんでもこない。』
山本透監督&原作者・杉作さんインタビュー

「猫飼いあるあるの宝庫」「大人が泣ける猫漫画」と、猫の飼い主(召使い?)たちを中心に、瞬く間に口コミが広がり、発売直後から異例の大増刷を繰り返す人気コミックエッセイがついに実写映画化。映画『猫なんかよんでもこない。』は、いよいよ1月30日(土)よりTOHOシネマズ梅田ほかにて公開される。元プロボクサーの漫画家・杉作さんの実体験を元に描かれた数々のエピソードは、既にテレビアニメ化も果たし、『猫よん。』旋風はますます拡大中だ。

物語の主人公は、漫画家の兄の家に居候する、崖っぷちプロボクサーのミツオ(風間俊介)。ある日彼が兄に突然押し付けられたのは、2匹の子猫の世話係。気まぐれな子猫に翻弄され、本気で喧嘩をしながらも、いつしか寄り添い、なくてはならない友へと昇格していく1人と2匹。微笑ましくも厳しい闘いの日々は、誰もの人生に潜む、家族の在り方の物語でもある。

メガホンをとったのは、『グッモーエビアン!』で思春期の悩める少女の瑞々しさを。『探検隊の栄光』でバカバカしくも熱き男たちの生き様を切り取った山本透監督。大の猫好きを公言する監督と、原作者の杉作さんにお話を伺った。

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――多くのイヌネコ映画にありがちな“人間の良き理解者”というスタンスではなく、人間と猫が、同じ土俵で“対等”に付き合っている。ネコ映画なのに、どこかハードボイルドというか。そういう空気に魅力を感じました。
 
山本監督(写真:右/以下、山本):そうなんです。僕も最初に原作を読んだとき“生き物vs生き物”のぶつかり合いがいいなと。しかも、ボクサーが漫画家を目指しているんですよ…。そんな設定、フィクションじゃまず思いつかない(笑)。1巻が出た時点で「これは映画にしなきゃ」と脚本を書き始めていました。
 
杉作(写真:左):そんなに早い段階から!? ありがとうございます。編集部から「映画化の話がある」と言われたときは、ビックリでしたけど、冗談だろって思ってました。ホント、猫様々ですね。
 
――杉作さんは、“原作者”という以上に、“自分自身”が映画になったわけですが、どんな風にご覧になりましたか? 恋のお相手ウメさんとの出会いのエピソードなど、原作と流れが違う部分もいくつかありましたね。
 
杉作:自分の頭の中をそのまま映し出されてるみたいな…。嬉しいけど、なんか不思議で、くすぐったいですね。ウメさんとのシーンは、純粋に「いいなぁ」って(笑)。現実の僕のほうもこうだったら良かったのに!
 
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――猫たちも、原作でイメージしたままの柄。よく見つけましたね! どのシーンもみんなとてもリラックスしていて、ドキュメンタリー? と、錯覚するようなシーンも多々ありました。何か秘策が?
 
山本:リラックスして見えました? それはうれしい! 子猫の2匹はスタッフが飼い始めた猫で、そのまま本名もチンとクロに。大人猫はいわゆるタレント猫たちですが、そうは言っても猫を意のままに動かす秘策はないので、「すべてを猫に合わせる」作戦です(笑)。お腹が空いたらご飯のシーン、眠たくなったら寝るシーン。せっかく照明をセッティングしたのに、急きょ別の場面に変わったりなんてことも度々。次にどのシーンのチャンスが来るかは誰にもわからないので、役者陣には「何があっても芝居は止めないで」と。
 
――人間の振り回されっぷりや、猫たちの生の反応。現場で生まれたんだろうなという奇跡のショットも多いように思いました。特にミツオに迫られたクロが、テレビからズルッと落ちるシーンが可愛かった(笑)。
 
山本:あそこは、風間君が本気でグイグイ来たから、圧倒されたんでしょうね。ジリジリ下がって…、画面から消えた(笑)。生き物同士、本気でぶつかれば必然的に対話が生まれる。僕は、ボクシングミットの奪い合いでシャーって威嚇しちゃうシーンがお気に入りかな。風間くん自身、役と同じで猫との触れ合いは初めてだったので、最初は抱き方もぎこちなかったけど、だんだん仲良くなって…。ホント、そのままリアルな成長が撮れましたね。
 
――実際に動物を飼っている人間にとって、この作品は共感以上に身に積まされるというか…、反省する部分も多々。これから飼う人も命を預かる意識が変わりそうですね。
 
山本:「猫って可愛いね」というだけの話には絶対したくなかった。疲れてるとき、飼い主側の状態が良くないときは、猫との関係性が悪くなることもあるし、避妊・去勢の問題、病気や生き死に。そういう目を背けたいこともたくさんある。でも、それをありのままに描く原作の良さをしっかり描けばいい映画になると思ったんです。ウチの3人の息子たちに映画を見せたら、その後、兄弟でミーティングをしてましたよ。「可愛がっていこう!」「大事にしなきゃね!」。彼らなりに、感じるものがあったんでしょうね。
 
 
取材・写真・文/hime@3匹の猫と同居中
 



(2016年1月28日更新)


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Movie Data


© 2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

『猫なんかよんでもこない。』

●1月30日(土)より、
 TOHOシネマズ梅田ほかにて公開

出演:風間俊介/つるの剛士/松岡茉優/内田淳子/矢柴俊博/市川実和子
原作:杉作「猫なんかよんでもこない。」(実業之日本社刊)
監督:山本透
脚本:山本透 林民夫

【公式サイト】
http://nekoyon-movie.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/168280/

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