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「映画って作り物の世界ではあるけれど現実を超える瞬間がある
 そんな魅力的な世界に自分もいるんだと思えることが嬉しかった」
『GONIN サーガ』桐谷健太インタビュー

鬼才・石井隆監督が、1995年に放った伝説的映画『GONIN』の続編、『GONIN サーガ』が9月26日(土)より公開。前作の抗争で命を落としたヤクザの息子らが、因縁の敵との激闘に身を投じていく。 前作は、指定暴力団五誠会系大越組から巨額の借金返済を迫られた男が、五人の男たちを集め、暴力団を襲撃したことを機に壮絶な殺し合いを繰り広げ、カルト的な人気を集めた。『GONIN サーガ』は、それから19年後の2014年が舞台。男達が遺したそれぞれの家族たちの血と宿命に彩られた物語が展開される。そこで、前作で命を落とした久松の組長・大越(永島敏行)の息子・大輔を演じる俳優、桐谷健太に話を訊いた。

――映画、本当に楽しませてもらいました。前作は、国内のみならず海外からも高い評価を受けたバイオレンス映画の傑作ですが、出演オファーが来たときは、どう感じられましたか?
お話をいただく前というか、大阪から東京に出て、役者としてデビューする前のころだったと思いますが、「面白いなぁ!」と思って、何度もレンタルで借りて観た映画なので、その続編ってどんな映画になるのだろう? というワクワクした気持ちが大きかったです。オファーがきたのは34歳のときでしたけど、そういう風に時間を経て、こういうお話がいただけたことが嬉しかったですね。
 
――プレッシャーのようなものはまったくありませんでした?
その世界観に入れることが楽しみで、プレッシャーみたいなものは感じませんでした。というか、プレッシャーって感じることは今までもないですね。どんなこともやってみないと分からないので。それより楽しみが大きかったです。演じるときもプレッシャーとか感じて緊張しているってことは、役に集中できていない証拠だなと思うんです。いつも、もっと集中しようって挑んでいるのでそちらには傾かないですね。
 
――続編と聞くと、前作のことを少し踏まえて、また新たな物語を展開するんだろうと勝手に思いがちですが、本作は物語も世界観もがっつり前作とリンクしている。最初は観たとき、頭の中に「人物相関図」を思い浮かべたりもしましたが、途中からそんなこと忘れてのめりこんで、単品としても楽しめました。桐谷さんは出来上がった作品を観てどう思われましたか?
自分が出ている映画って、何度か観ていたら客観的にも観られるようになるんですが、やっぱり初めて観るときはどうしても客観的に観られないことが多いんです。でも、この映画は、最後のエンドロールを観た時に、言葉では表せない独特の感覚におそわれました。
 
――たしかに、この映画の「すごいモノを観た!!」感は印象に残っています。
怒涛のように物語が進んでいきますからね。パート2であると思って観てほしくないんです。前作を観ていなくても楽しめるし、こいつが誰の息子で、こいつが誰の娘で、何年前にこういうことがあって…て頭で考えながら観る作品ではないので、感覚で観てほしいですね。俺も台本を読んだときは、いろいろと時系列とか考えたんですが、現場に入ってみると激流に突き落とされたみたいな感じで、いつの間にか入っていたという感じでしたから。
 
――大輔を演じるために、前もってしたことはありましたか?
やっぱり前作を観なおして、人物相関図を考えたりしましたよ。でも、たぶん大輔的にも頭で考えて(東出昌大演じる)勇人(ハヤト)と付き合っているわけではないだろうし。似たような境遇だから分かり合えるようなところもあるだろうし。だから、現場に入る前と入ってからの感覚が全然違いましたね。頭で考えて行動してる奴らじゃないから、そこもリンクして良かったです。
 
――大輔という役を演作り上げていく中で、石井監督と念入りなディスカッションをされたんでしょうか?
それがね、全然していないんですよ。たまにボソッと(ものすごく穏やかな口調で)「大輔もお母さんに優しい子だね」とか言うことはありましたけど、どんなイメージだとか、ここでこうしてみたいな指示はありませんでした。想像を超えてきてほしいんでしょうね。なので、そこも勝負ではありましたけどね。
 
――石井監督は、作品の雰囲気とは違って、優しい口調でお話される方なんですね。
そうですよ。どこか飄々としていて口調も穏やか。冷静な方で、大声を荒げることも一度もなかったですし、しかもチャーミングなところもあるんです。でも、モチロンご自身の作品である『GONIN』を愛されていますし、作品のビジョンが見えているんでしょうね。譲る譲らないというレベルの話ではなく、石井監督の世界観で成り立っていますしね。心の奥底には煮えたぎるモノをお持ちなんだと思います。そうでないとこんなヴァイオレンスは撮れないでしょうから。
 
――作品からは監督の愛というより執念に近いものを感じます。準備段階や現場で監督やスタッフからそういった雰囲気を感じたことはありましたか?
もともとは、もっと長い期間をかけて撮りたかったと思うんです。でも、それを1ヶ月弱という短い期間でこれだけハードな作品を作られて、スタッフも役者も転がっていくしかないような状況でした。東出くんも言っていたんですが、撮影のときのことをあまり覚えていないんです。
 
――以前、当サイトで行ったインタビューで、“アドリブがぱっと出るくらい、現場でいくらでも変われる感じになれてれば(それがいい状態)。芝居ってそういうおもしろさと難しさがある”と話されていましたが、今回、想像するだけで、緊張感のある現場だっただろうなと思うのですが、アドリブがぱっと出るようなときはありましたか(笑)?
前回はどういう意味でそういうこと言ったんかな…。台詞で与えられたモノしか出てこないのはそこでしか生きていないということかな。自然と自由に動いたり出来るほうが役に入り込めているってことが言いたかったんかな。台本に書かれていないことでも、とっさに出たリアクションをしているか?というと、しています。でも今回は、アドリブどうこうというより、本当に突き進んで行った感覚が強くて、本当に“The 映画の現場”という感じでした。そこが強烈に面白かったな。
 
――東出さんが「今まで経験したことのないような現場だった」と仰っていた記事を拝見したのですが、まさにそういう感覚だったのでしょうか?
空気感はどの現場でもそれぞれ違うので、そこは今回に限らずどの現場でも「今までと違う現場だな」とは思うんですけど、やっぱり石井ワールドってものは確実に存在するんだなというのは感じました。
 
――石井監督と根津さんのやりとり等から刺激を受けたところもあったのでは?
刺激受けまくりでしたね。根津さんはお体を悪くされて車椅子に乗っている状態ではありましたが、思いっきりパッションも感じましたし。根津さんも石井監督の作品だからこそ気合を入れてらっしゃるというのも感じて、映画って、作り物の世界ではあるけれど、現実を超える瞬間があるんだな、そんな魅力的な世界に自分もいるんだなと思えることが嬉しかったです。
 
――東出さん、土屋アンナさん、柄本祐さん、それと桐谷さん、みなさんまるでタイプが違う役者さんで、イメージとしては桐谷さんがムードメイカーだったのかな?と思うのですが共演者の方々とは現場でいかがでしたか?
なんかね、現場でどんな話していたかも覚えていないんですよ。東出とも、あとになって、「どんな会話していたっけ?」って話すくらい。本当にずっと一緒にいたので会話をしていないわけではないんですよ。でもそれくらい怒涛の中にいたんだと思います。普段は、撮影の待ち時間に役者同士でする無駄話って大好きなんですけど、今回はそういうことをあまりしなかったんですかね。全く喋ってないわけではないはずなのに、なぜか覚えていないんですよ。
 

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――『GONIN サーガ』の“サーガ(伝説)”には“さが(宿命)”のような意味も含まれているのでは? と勝手に推測したりしていたんですが、諸先輩方の意地や覚悟、情熱といった宿命を継ぐ者として、桐谷さんがこの映画で得たものはありましたか?
あるんでしょうけど、それがコレですと今は言えないですね。時間が経って分かるものなんじゃないでしょうか。でも、やっぱり石井監督と会えたこと、根津さんの執念に近い情熱を見たときには、本当に役者をできて自分は幸せだなと思いました。そういうことを感じただけで自分は変わっていっていると思うし、これから映画が公開されて、映画が人の目に触れたことで変わるモノもあるだろうし、楽しみですね。
 
――最後にこの映画を楽しみにしている方へ一言お願いします。
前作を観ていただいた人も観ていない人も楽しめるかっこいい映画になっていると思います。エンドロールが流れるところで今までに感じたことのない感覚を僕は味わったので、是非みなさんにもそれを劇場で味わっていただきたいなと思います。どうぞよろしくお願いします!
 



(2015年9月26日更新)


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Movie Data




©2015『GONIN サーガ』製作委員会

『GONIN サーガ』

<PG12>
●9月26日(土)より、
 大阪ステーションシティシネマ
 ほかにて公開中

出演:東出昌大 桐谷健太 土屋アンナ
   柄本佑 安藤政信
   根津甚八 竹中直人/ほか
監督・脚本:石井 隆
劇中歌:「紅い花」歌:ちあきなおみ
    「ラスト・ワルツ」歌:森田童子

【公式サイト】
http://gonin-saga.jp/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/165535/