「不安や迷いが吹っ切れて、心の底からお芝居って楽しいと思えた」
三池崇史監督最新作『神さまの言うとおり』で
ヒロインを務めた山崎紘菜インタビュー

――『悪の教典』以来、三池監督作品2本目の出演でヒロイン役！　抜擢された時の心境はいかがでしたか？

マネージャーさんから電話で連絡をいただいたんですが、あの、三池崇史監督の映画の、しかもヒロイン役なんて！　と、最初は信じられず呆然としてしまいました。もちろん役をいただけて心から嬉しかったんですが、ヒロインという大役に対するプレッシャーや責任の重さもその後感じて現場に入るまでずっとドキドキしていました。

――本作は、ジャンルを超えた今までにない新感覚エンタテインメント作品だと思うのですが、脚本を読まれたときはどのように感じましたか？

最初は、このお話が持つ独特の世界観にビックリしたんですが、読み進めていくと次の展開がまったく想像できない面白さに、先が気になって一気にすべて読んでしまいました。最初はとにかく世界観を楽しみ、その後からゆっくりと自分が演じるキャラクターについて考えながら何度も読み返すくらい、このお話に惹きつけられました。

――山崎さんが演じた秋元いちかという女の子をどんな女の子だと思って演じましたか？

とても活発な女の子なんですが、命の危機的状況になっても最後まで誰かのためを思って動ける、すごく正義感の強い女の子だなと思って演じました。

――なんとなく山崎さんご自身が放つ雰囲気と秋元いちかの印象が近い感じがしますね。

いちかちゃんは、強がって自分の気持ちに素直になれない部分があるんですけど、そこがちょっと自分と似ているかもしれません(照笑)。

――役づくりのために前もってやったことはありましたか？　

そうですねぇ。例えば、幼馴染に恋をするってどんな感じだろうと想像したり、すごく体力のいる現場だろうというのは事前に分かっていたので、近所をジョギングしたりしました。

――髪の色はこの役柄のために変えられたのですか？

監督から「(秋元いちかは)黒髪じゃないよな。思う色に染めてきて」と言われたので、一度軽く染めて監督に見てもらったら「もうちょっとやってもいいんじゃない？」と言われたので限界まで明るくしました。それでもう一度監督に見てもらったら、笑って「いいよ！」と言ってくださって。髪色を変えることで、自分ではない人間になることも出来た気がしますし、ひとつ自分の殻を破って、いちかの芯の強さを表現できたように思っています。

――そんないちかを演じる上で心がけていたことはありましたか？

“命を賭けた謎のゲーム”が進んでいくうちに人間たちはお互いを疑ったり、お互いを陥れようとする。でも、わたしが演じたいちかちゃんという女の子は、福士蒼汰さん演じる高畑瞬くんに密かに思いを寄せているので、瞬くんへの信頼や愛情が決してブレないように演じようと心がけました。

――福士さんとは初共演ですが、どんな方でしたか？

福士さんには本当にたくさん助けていただきました。すごくしっかりしていて、落ち着いていらっしゃる方です。現場でわたしが緊張していると話しかけてくださったり、さりげなくフォローをしていただいて、本当に頼れる存在でした。

――福士さんらは劇中でねずみの格好とかしていますよね。緊迫したシーンではありましたが、現場ではどんな雰囲気だったんですか？

あの場面でわたしはねずみの格好をしないので、本当に羨ましかったです。福士さんに「(衣装)交換しましょうよ～」とか、「いいな！いいな！」と、ずっと話していました(笑)。

――同世代のキャストが多いですし、撮影現場は楽しそうですね。

本当にみんな仲が良くて撮影の合間も、本当の高校の休み時間のような雰囲気でした。

――ある日突然、非現実的な世界に入ってしまう本作。設定は非現実的でありながらキャストのみなさんはとてもリアルな演技をされていますね。どんな風に感情を作っていかれたのですか？

設定だけを聞くと本当に現実的ではないのですが、登場人物にとってはこれが現実。ただ目の前の状況を潜り抜けなくてはいけない、理不尽だけどやらなければいけないことがある。という状況でキャラクターは動いていると思ったので、わたし自身もCGのキャラクターに対してもありえない状況という感覚はなく、もし本当に起こったらどうしようという意識で動いていました。

――血のりをいっぱい浴びたり、絶対に実際はない経験ができるのも楽しそうですね。

自分の日常生活に置き換えて考えることはまず出来ない状況の連続なので、頭の中でいろいろと想像するしかありませんでした。この映画に参加できて、ものすごく想像力が鍛えられたと思います。

――常にテンションが高めの演技を要求されたと思いますが、スムーズにできましたか？

わたしもいろいろと想像しながら撮影に望んだつもりだったんですが、なかなか最初のほうは監督が求めるテンションに至らないことが何度もありました。でも、監督は常に秋元いちかという女の子の感情やその行動にいたった経緯、今まで何を乗り越えてきたのかなどを細かく説明してくださって、それを踏まえて今はどういう気持ちでどういうテンションなのか、どういう表情をするのかを考える時間をくださるんです。撮影を止めても、決して焦らせることはなく、わたしが答えを出すまで待ってくださって。監督にテンションを引っ張ってもらった。監督がお芝居を伸ばしてくださったという感じがしています。

――三池監督って強面ですが、優しくて熱い人なんですよね。

最初は厳しい方なのかなと思って凄く緊張していたのですが、現場では本当に優しくてカメラ前では監督の愛情を存分に感じていました。三池監督は、スタッフみんなを本当に大事にされていて、キャストを尊重してくださる優しい方です。

――だるま、まねき猫、こけしなど、本作はCGがたくさん使われています。グリーンバックでの撮影は難しかったですか？

CGを使うシーンでは監督が毎シーンごとにカメラ前に来て、その場面のCGキャラクターはどんな表情でどういう動きをするのか身振り手振りを使ったり、監督ご自身が走り回ったり、体を張って教えてくださったのでイメージが膨らませやすかったです。あと、台本のほかにものすごく細かい絵コンテが今回あったんです。その絵コンテをスタッフもキャストも全員で見て確認していたので、ひとつのイメージを共有することが出来たのが、撮影がスムーズに進んだ大きなポイントだったのかなと思います。

――では、完成したCG場面を観てどう思われましたか？

演技中は相手が見えないので、これで大丈夫かな？　と、不安にもなりましたが、実際に作品を観たら、そこにそのキャラクターが実際に存在して、一緒にお芝居をしているように観えました。本当にホッとしましたし、感動もしました。

――完成作品はいつご覧になったんですか？

実は、《ローマ国際映画祭》で上映されたときなんです。わたしは自分が出演した作品が形になっているということが、ただただ嬉しくて感動していましたが、ローマの方々が各ステージごとに大声で笑ったり、途中で拍手も起きたりして、心の底から楽しんでいただけたように感じました。終映後には、4分間のスタンディングオベーションまで起こって！　その反応は素直に本当に嬉しかったです。

――ローマでは映画祭以外にもどこか行かれたのですか？

取材をかねてローマの観光名所を福士さんとまわらせていただいたんですが、スペイン広場でオードリー・ヘップバーンさんがジェラートを食べる『ローマの休日』の名場面をどうしても再現したくて、福士さんに付き合っていただきました(笑)。福士さんを相手に、スペイン広場でジェラートを持った写真が撮れたときは、わたし今すごい贅沢をしてるなと思いました(笑)。

――ローマを訪れたらだれもが再現したくなる名シーンですもんね。『神さまの言うとおり』の中で思い入れのあるシーンはありますか？

まねき猫のステージがどのステージよりも思い出が残っています。他のステージよりアクションが多いので走ったり転げまわったりすごく大変で。撮影していた時期が真夏で空調も止めて窓も全部閉め切った中で走り回ったりしたのが体力的にも本当に大変でした…。

――山崎さんはアクション女優も似合いそうですね！

もともと体を動かすことが好きですし、アクション映画も大好きです。アクション女優にも憧れます！　今回の映画で初めてアクションに挑戦させていただいて、本当に難しかったですけどすごく楽しかったので、今後ももっともっと磨いてアクションもこなす女優さんになっていきたいです！

――アクション映画お好きなんですか！　憧れのキャラクターや憧れのアクション女優はいますか？

アクション女優さんで言うと『バイオハザード』シリーズのミラ・ジョヴォヴィッチさんとか、『キック・アス』のクロエ・グレース・モレッツさん、『グランド・マスター』のチャン・ツィイーさんとかカッコイイなと思って憧れています。

――では、今回の撮影は本当に楽しかったでしょうね。　　

アクションへの憧れはもともとありましたが、とにかく三池監督にアクションの芝居をつけていただけたことが本当に楽しかったですね。

――念願のアクションも経験できたということで、次はどんな作品に挑戦したいですか？

次は、打って変わって少女マンガの世界のようなキュンキュンする恋愛映画の主人公を演じてみたいです。今「orange(オレンジ)」という少女マンガがすごく好きで、この作品が映画化されるかとかまったく分からないんですが、もし「orange(オレンジ)」が映画化されることがあれば是非関わりたいなぁ。

――この映画で何か学んだことはありますか？

心の底からお芝居って楽しいなと思えた作品でした。今までは不安や迷いをどこかに抱えながらお芝居をしている部分があったんですが、そういうものは吹っ切れて、楽しんでお芝居をすることが出来た現場でした。

――現役の大学生なんですよね？　学業と仕事の両立は大変でしょう？

本当にすごく大変です…。この撮影中も学校があり、合間に行っていたんですが撮影に入ると撮影のことに集中したくって。でも、ほかの俳優さんなどで両立されている方はたくさんいらっしゃいますし、わたしも頑張らなきゃなと思っています！

――山崎さんが思う『神さまの言うとおり』の魅力はどこですか？

過激な描写や恐怖要素の中に笑いや恋愛、感動などの人間ドラマがたくさん詰まっています。あと、CGキャラクターの吹替キャストがものすごく豪華なので声にも注目してほしいです！

――では、最後にこれから映画を観る方へメッセージを。

福士さん演じる主人公･高畑瞬くんは、当初、単調で退屈な日々をつまらないと思っていますが、その日常がなくなって、初めてその大切さに気づく。当たり前のつまらない日々と思っていても、ただ周りに家族や友達がいるだけで素晴らしいんだよというメッセージが伝わればいいなと思います。ぜひ、劇場でご覧ください！！

（2014年11月12日更新）