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ホーム > インタビュー&レポート > 宮崎駿と高畑勲も絶賛のジブリ最新作 主人公・杏奈の声を演じた女優・高月彩良、 主題歌を歌うプリシラ・アーン、 米林宏昌監督、西村義明プロデューサーが出席した 『思い出のマーニー』会見レポート

宮崎駿と高畑勲も絶賛のジブリ最新作
主人公・杏奈の声を演じた女優・高月彩良、
主題歌を歌うプリシラ・アーン、
米林宏昌監督、西村義明プロデューサーが出席した
『思い出のマーニー』会見レポート

 待望のスタジオジブリ最新作『思い出のマーニー』が、いよいよ7月19日(土)よりTOHOシネマズ梅田ほかにて公開される。そこで公開を目前に控えた15日(火)に大阪市内某所にて合同会見が行われ、主人公・杏奈の声を演じた女優・高月彩良、主題歌を歌うプリシラ・アーン、米林宏昌監督、西村義明プロデューサーが出席した。

――内気な少女・杏奈を高月さん、不思議な屋敷に暮らす金髪の少女・マーニーを有村架純さんがを演じている本作。どういうところが決め手となったのでしょうか?
 
米林宏昌監督(以下、米林監督):杏奈とマーニーの声は本作のとても重要なポイントでした。300人くらいのオーディションを行い、高月さんの声には何か引っかかるものがありました。杏奈は、自分を見えない輪の外側にいると感じていて、その輪の内側と距離を置いているんだけれど自分の存在を誰かに見てほしいという気持ちもある。とても複雑な難しいキャラクターですが、有村さんとの声の組み合わせがとても良かったんです。
 
高月彩良(以下、高月):杏奈は過去にトラウマを抱えていて、自分の気持ちを人に伝えるのが苦手。自分の感情を表に出せず怒るときも泣くときも心の中で叫んでる不器用な女の子。そのコントロールがとても難しかったです。自分の声をまだ客観的に聞けないのですが、やりきりました(笑)。
 
米林監督:今回彼女は初めての声優ということで最初はガチガチに緊張していました。それが心を閉ざしている杏奈の声にぴったりだったんです。それを「いい感じに(心が)閉じてるな」なんて思っていました(笑)。収録では、有村さんが途中から合流して、そこから高月さんの肩の力が次第に抜けていく感じが見ていても分かりました。そこからふたりの掛け合いを収録していくうちにどんどん楽しげになって。有村さんは先に収録を終えられたのですが、その後の高月さんは自信を身につけていました。高月さんの成長がリアルに杏奈の成長として録れたのでとても満足しています。
 
――杏奈とマーニーのふたりの触れ合いを描く上で気を配ったところは?
 
米林監督:マーニーは杏奈の空想の中の人物のように登場しますが、杏奈にとっては現実の世界以上にマーニーが実態感のある存在のように感じている。現実世界のことを考えるとマーニーが消えてしまい、マーニーとの幻想世界を考えていると現実の世界がぼんやりしてくるように描いています。この作品の原題は「When Marnie Was There」。すぐそばにマーニーがいるという実在感をどう描くかを第一に考えていました。今まで人とは距離を置いていた女の子が初めて同年代の女の子と寄り添う。そのドキドキ感が、ラストへ向かう中で大きな意味を持つと思い描きました。
 
――プリシラ・アーンさんは以前からジブリ作品の大ファンとのことですが主題歌に起用した経緯は?
 
西村義明プロデューサー(以下、西村P):ジブリ美術館の館長に薦められて、彼女の「DREAM」という曲を聴いたのが最初です。彼女の歌声の素晴らしさに惹かれたのはもちろん、彼女の詞には独特の孤独感があって、すぐに米林監督にも聞いてもらいました。
 
米林監督:この映画は主題歌、音楽、背景美術など全てにおいて杏奈の心を通じたものにしたいと思っていました。そういう意味でも、プリシラさんの「Fine On The Outside」という曲は9年前に書かれた曲ではあるんですが、杏奈の心を映したかのような内容で運命を感じました。
 
プリシラ・アーン:主題歌のお話をいただいてから、実は何曲か書下ろしも作ったのですが、原作にある「杏奈は自分が輪の外にいると思っている」というくだりを読んで、自分が9年ほど前に書いた「Fine On The Outside」という曲の内容が原作の世界にすごく似ていたことに気づきました。それで、お送りしたら西村プロデューサーから「この曲すごい好きだよ」とLINEのメッセージが送られてきて。この曲はわたしにとってパーソナルな曲で何かのためにととっておいた曲だったんです。ですから、こうやって主題歌に選ばれたことを本当に嬉しく思います。
 
――ジブリの重要人物、高畑勲と宮崎駿が一切関わっていない初めてのスタジオジブリ作品ということですが、製作の過程で具体的な違いはありましたか?
 
米林監督:宮崎さんもこの原作が大好きなので、自分なりのイメージを持っていらっしゃり「こんな絵はどうだろう?」と、ちょくちょく持ってきてくださいました。それがすごく頻繁だったので、鈴木(敏夫)さんが危惧して一度スタッフを集めて“宮崎さんの話を聞く会”みたいな機会を作ったんです。そのときの宮崎さんは「舞台は瀬戸内で和洋折衷のお屋敷があって船がここに~」とホワイトボードにいろいろ書いてくださったんですが、それがどこか『崖の上のポニョ』みたいで、ぼくとしてはイメージと違うなと感じていたんですが(笑)、お話をされたらそれで満足されたのか、それ以来ノータッチなんです(笑)。その後、スタッフらと「どうする~?」という話にはなったんですが、以前から「舞台は北海道がいい」と話していたので、そのまま宮崎さんの話は聞かずに進めました(笑)。
 
西村Pスタジオジブリは高畑さん宮崎さんの作品を作るために出来たスタジオですから、スタッフみんなが高畑さん宮崎さんが何を考えているかを考えて、高畑さん宮崎さんが作りたいものを実現するために今まで動いていたんですが、今回はまったく違います。『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』の作画監督を務めた安藤雅司さん、タランティーノや三谷さんの映画など実写映画でも活躍している種田陽平さんというキャリア的にもかなり上の方と41歳とまだまだ若い米林監督が意見を出し合いながら製作したんです。これは高畑さん宮崎さんの現場では起きなかったことですね。
 
米林監督:『借りぐらしのアリエッティ』では宮崎さんが脚本を書いていますし、イメージボードも宮崎さんがいくつか書いていたところからのスタートでした。現場でも宮崎さんの目を意識して作った作品になってしまったところがあります。でも、今回はお客様のためを思って作りました。宮崎さんがどう思うかやスタジオジブリが今後どうあらねばならないか、みたいなことは意識せずに作りました。
 
――宮崎駿のアドバイスを無視して(!?)作ったような作品ですが、高畑さん宮崎さんは作品を観てどう言われていますか?
 
西村P:宮崎さんは「水がすぐそこにある表現が素晴らしい。麻呂(米林監督の愛称)は、1+1を3にも5にも出来る男だ」と仰っていました。高畑さんは「アニメーションの部分も背景の部分もさすがジブリというものを作った。米林宏昌監督は押しも押されぬジブリのエースとして、もてはやされるだろう。わたしもそれを認める」というような内容の長文メールをくださいました。
 
米林監督:1作目の『借りぐらしのアリエッティ』より2作目のほうがグレードアップしなければいけないなと思って、時間はかかりましたが一生懸命作りました。どうぞよろしくお願いいたします。



(2014年7月18日更新)


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高月彩良
米林宏昌監督
プリシラ・アーン
西村義明プロデューサー

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『思い出のマーニー』

●7月19日(土)より、
 TOHOシネマズ梅田ほかにて公開

声の出演:高月彩良/有村架純
原作:ジョーン・G・ロビンソン
   「思い出のマーニー」
   (松野正子訳・岩波少年文庫刊)
脚本:丹羽圭子/安藤雅司/米林宏昌
監督:米林宏昌
作画監督:安藤雅司 
美術監督:種田陽平
音楽:村松崇継
主題歌:プリシラ・アーン
   「Fine On The Outside」
    (ヤマハミュージックコミュニケーションズ)

【公式サイト】
http://www.marnie.jp

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/164193/