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『舟を編む』の石井裕也監督、最新作
『ぼくたちの家族』
兄弟役で初共演の妻夫木聡&池松壮亮インタビュー

 昨年の映画賞レースを席巻した『舟を編む』の石井裕也監督が、早見和真の小説を映画化した『ぼくたちの家族』が5月24日(土)より、大阪ステーションシティシネマほかにて公開。突然告げられた母親の余命宣告によって、父親とふたりの息子がお互いの関係を振り返り、新たな“家族の形”を構築していく様が描かれる。妻夫木聡と池松壮亮が兄弟役を、長塚京三と原田美枝子が夫婦役を演じ、“死”というテーマを扱いながらも決して重くならず、生をポジティブにとらえた姿勢が魅力の1作だ。そこで、初共演にして兄弟役を務めた妻夫木聡と池松壮亮に話を訊いた。

――おふたりは本当の兄弟のような雰囲気がありますね。最初に、兄弟役を演じると聞いてどう思いましたか?

妻夫木聡(以下、妻夫木):(池松)壮亮とは以前から共演したいと思っていました。一度ご飯を一緒に食べたときにも「共演できればいいね」なんて話していて。でもこんなに早く共演できるとは思っていなかったので、本当に嬉しかったです。僕自身、壮亮にそういった思いがあったので、その思いをそのまま弟に変えれば良かった。演じる上で、そういう部分に助けられた部分は多かったですね。

 

池松壮亮(以下、池松):妻夫木さんに先に言われちゃいましたけど、たぶん僕の方が会いたかったですよ! 僕こそこんなに早く、しかも兄弟役で共演できるとは本当に思っていなかったので嬉しかったです。

 

――お互いどういう部分に惹かれていたのですか?

妻夫木:彼の持つ空気感ですよね。お芝居をお芝居と捉えていなくて、どこか生き物と捉えているような。主演だろうが主演じゃなかろうが、役柄も関係なくどの作品でも“生きたお芝居”をする人。そういう感じがしていました。

 

池松:僕は、10年位前かな、中学生の頃に「妻夫木さんに似ている」と地元でたまに言われて。同じ福岡出身なのもあり勝手にシンパシーを感じていたんです。なので、福岡にいるころから妻夫木さんの作品は全て観ていますし、東京に出てきてからは、ほぼ初日に映画館へ観に行っていますね。

 

――相思相愛ですね。では、共演してみていかがでした?

妻夫木:壮亮は、自分に嘘をつかずにいる姿勢が、何に対してかは分からないけど、抗っている感じがするんです。間近で見ていて見習わなければいけないなと思ったし、刺激をいっぱい受けました。すごいなって単純に思っています。

 

池松:妻夫木さんはカッコよかったですね~。男らしくて、僕には無いものをたくさん持ってらっしゃる。映画1本にここまで掛けられる人って僕は初めて見ました。だからこそ、いろんな作品に必要とされる存在で居続けられるんだろうなとすごく感じました。

 

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――兄弟役を演じるにあたって気を配ったところはありますか?

妻夫木:壮亮は野球経験があることを知っていたので、撮影初日の空き時間にキャッチボールしようと思って、まずふたりでグローブを買いに行きました。それでキャッチボールしていました。思いつきでしたことだけど(笑)、言葉じゃなくボールを投げ合うことで、言葉以上の繋がりを持てたような気が少ししています。

 

――それぞれ演じた役をどんな青年だとイメージして演じられましたか?

妻夫木:現状をどう打開して行けばいいか分からなくて、何もかも背負い込んでしまっている。そういう何もかも背負い込んでしまうところが、兄貴という存在なのかもしれないですね。僕自身は次男で、性格的にも(池松演じる)俊平っぽいですが、僕の実の兄が(妻夫木演じる)浩介っぽいので、最初に台本を読んだときはどうしても兄貴の顔が浮かびました。

 

池松:僕はいつもその役に対して「この人はどんな人か」ということは考えなくて、役よりも役割に徹したいと思っています。なので、今回は弟であることに意味があった。僕が演じた俊平は一見、楽観的に見えるけど全部分かった上で、時にはピエロとなるような態度をとっていたと思いますよ。だからこそ(妻夫木演じる)兄貴を見つめていようと思いました。

 

――家族の中で原田美枝子さん演じるお母さんが紅一点、太陽のような輝きを放っているように感じました。

妻夫木:家族はみな苦労を抱えていて演じていて僕も辛いこともありましたが、原田さんの笑顔だけが救いでしたね。原田さんはいつもニコニコしていて、本当のお母さんみたいでした。

 

池松:現場のお母さんを一手に引き受けてくださっていたように思いますね。

 

妻夫木:撮影が終わった今でも僕のことを「お兄ちゃん」って呼ぶんです。映画の中と同様にいつも本当に可愛らしい方なんですよ。

 

――妻夫木さんは、今回初めて石井監督と組まれていかがでしたか?

妻夫木:作品を通して役者と一緒に心中する覚悟を持った素晴らしい監督です。僕らの演技に対して「それでいいのか」という投げかけを常にしてくれるし、また一緒に悩んでもくれる。とにかく、いつもそばにいて一緒に戦ってくれる監督ですね。以前から、一緒にお仕事をさせていただきたいと思っていた監督だったので、壮亮と石井監督という僕の中の二大巨頭と一気にご一緒できた思い出深い作品になりました。

 

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――池松さんは今回が初めてではないんですよね。

池松:僕は3、4年前にWOWOWのドラマで1回ご一緒していて、本作が2回目です。石井監督はたぶんですけど、映画を芸術としてだけで捉えていなくて、その先を信じている人だと思うんです。だから石井監督が描く“家族”にすごく興味があったし、兄貴が妻夫木さんということでやる気が出ました。

 

――石井監督が描く“家族”に興味があったとは?

池松:家族って一言で言っても様々で、家族の映画って結局はドキュメンタリーに勝つことはできないと思っていたところがあったんです。だけど、石井監督自身が男ふたり兄弟の次男坊で、7歳のときにお母さんを亡くされていて。「そのとき何も出来なかった」という話をされていたのを聞いて、この映画でそれを取り返そうとしているんじゃないかなと思いました。そんな石井監督が描く、現代の新しい家族の話に興味があったと言うか。ダメな部分もあるけどチャーミングな平凡なひとつの家族を描くことで、小さな幸せがきっと広がっていくんじゃないかなという思いがありました。

 

妻夫木:僕自身、良いお父さんにはなりたいとは思うけど、良い家族・悪い家族ってはっきり区別をつけず、どっちも家族でそれでいいんじゃない? と思えるようになりました。「なんか良いことないかな~」なんて普段何気なく言っているけど、実は家族がいるだけで幸せなんですよね。僕自身、親に対して「本当に1日でも長生きしてほしいな」と改めて思ったし。

 

――妻夫木さん(33歳)と石井監督(30歳)は、ほぼ同世代ですよね。念願叶っての石井監督の演出はいかがでしたか?

妻夫木:意外と歳とか関係ないんだなって思えました。そういうことを感じさせない石井監督がすごいんでしょうね。演出は意外と古風で、たまに画角チェックをすることはもちろんあるけど、カメラ横に立ってモニターを見ずに直接僕らの芝居を見ていますし。この間「芝居が良ければどこを撮っても良いものが撮れると正直思っている」とおっしゃっていましたが、常に僕たちの芝居を見てくれているというのは、すごく安心感がありました。そういうカメラ横で(モニターを見ずに)芝居を見る監督って、僕は山田洋次監督と降旗康男監督と、あとは石井監督くらいしか今のところ経験してないですね。

 

 

 石井監督を含め、念願のタッグで生まれた本作に、ふたりは強い自信と手ごたえを感じているようだった。また、石井監督は次回作(12月公開予定)『バンクーバーの朝日』でも妻夫木と池松を起用。『ぼくたちの家族』で深い信頼と絆が生まれたことが分かる。そんな彼らの自信作『ぼくたちの家族』に是非ご注目を。

 

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(2014年5月19日更新)


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Movie Data



©2013「ぼくたちの家族」製作委員会

『ぼくたちの家族』

●5月24日(土)より、
 大阪ステーションシティシネマほか
 にて公開

出演:妻夫木聡/原田美枝子
   池松壮亮/長塚京三
   黒川芽以/ユースケ・サンタマリア
   鶴見辰吾/板谷由夏/市川実日子
原作:早見和真
監督・脚本:石井裕也

【公式サイト】
http://bokutachi-kazoku.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/162257/