ホーム > インタビュー&レポート > 「今までの映画やテレビドラマとは 作品内容も撮影方法もひと味違う作品」(北乃) 『僕は友達が少ない』 瀬戸康史、北乃きい、及川拓郎監督インタビュー
――監督はライトノベルを実写映画化する上でどこを大事にして映像化したいと思われたんでしょうか?
及川拓郎監督(以下、及川監督):キャラクターのブレが無ければ原案の行間にあるちょっとディープな部分を膨らませてオリジナルにしてもひとつのエピソードとして一貫するなとは思っていて。とにかくキャラクターですね。こういうときこのキャラクターはこういう行動はとらない、こういう言い方はしないというようなことを原案を読んで分析してブレがないように心がけました。
――そのキャラクターたちはどれも個性的です。
瀬戸康史(以下、瀬戸):一番苦労したのは髪ですね。6時間かけて7回ブリーチしたので時間も掛かったけど、とにかく髪は死ぬし、頭皮は痛いし…。実は体毛も金髪にしていて。それらは大変でしたが、すごく楽しく演じることができました。何より小鷹は自分自身にすごく似ていたので。
――どういったところが似ているのですか? 演じる上で苦労した点、気を配った点はありましたか?
瀬戸:小鷹は「友達がほしい」と思いながら自分の時間も大切で、ひとりでいるのが心地よくてこのままでも「いいや」と思っている。そんな現状からなかなか一歩を踏み出すことができないような青年だと思います。隣人部に入ってからも各々がいろんなことをしているのを一歩引いて見ているような人。僕もそういった一面があるので。あと、実写化ということで僕ら生身の人間で演じることで漫画やアニメでは出せない細かな表情や醸し出す人間性などを意識して演じました。
北乃きい(以下、北乃):わたしはキャラクターを作るのに苦労はなかったのですが、小鷹はリアクョンの上にナレーションがかぶることが多くあったので、それを頭に入れて自分の台詞を出さなくてはいけなかった。それが今まで演じさせていただいてきた作品とは会話のキャッチボールの間の取り方などが違って苦労しました。あと、台本にト書きが少なくて。4、5ページあるシーンでずっと同じ場所で台詞を喋るのもなぁと。どうやって動きをつけるかは実際に現場で動いてみないと分からないという楽しさもありました。なので、考えないといけないことがたくさんありましたね。リハーサルとテストを何度も重ねて、監督やスタッフ、出演者みんなでワンシーンワンシーンを固めて作り上げていったという感じで。そういうところも今までの映画やテレビドラマの現場とはひと味違う。作品の内容も撮影の方法もひと味違う作品ですね。
――この映画に関わって“友達”に対する考えが変わったようなところはありますか?
瀬戸:ぼくも北乃さんも友達が少ないんです。友達と言えるのは業界に入る前からの幼なじみや同級生、同じ部活だった子たちだけです。でも、この映画で人と接することっていいなと改めて感じました。なので、撮影中には栗原類さんに積極的に話しかけたり食事に誘ったり。
北乃:わたしも共演者の女の子たちをボウリングに誘ったりしました。今までそういうことをしたことがなかったんですけど、この作品を機に“隣人部”のように積極的に接するようになりました。
瀬戸:僕らが演じた小鷹も夜空も映画の中で少しだけ成長しているんですが、僕らも勇気づけられて成長することができたなと思います。
北乃:ふふふ(笑)。
瀬戸:え、何で笑ってるんですか(笑)?
北乃:「この物語はちょっとした成長を描いている」と瀬戸さんはおっしゃいましたが、先日舞台挨拶で久しぶりにキャストが揃ったときにみんな人見知りが復活してたんです。
瀬戸:そうそう。すぐ戻っちゃった(笑)!
北乃:わたしと瀬戸さんは取材などで撮影後も何度も会ってるので大丈夫なんですがね。
――ハハハ(笑)! 業界に入ってから友達を作るのはやはり難しいんですか?
瀬戸:友達と言うより“仲間”という感覚なんですよね。
北乃:監督も友達少ないんですよね! 撮影中にみんなで食事をしたときに全員友達が少ないことが判明して(笑)!
及川監督:そうなんですよ…。
北乃:どこからを友達と呼ぶのかが分からないんですよね。知り合いなのか、仲間なのか、友達なのか。
瀬戸:僕らは友達と言えるハードルが高いだけかも(笑)。だからこそ作れた作品なんじゃないかなとも思うし。
北乃:女の子同士で一緒にプリクラを撮っただけで“うちら親友”とか“うちら永遠”とか書く子もいますからね。わたしは“親友”とか“永遠”とか言われると、一生守っていく覚悟が必要な気がしちゃうんです(笑)。10代、20代でそういう人付き合いに悩む女の子はいると思いますよ。
(一同:爆笑)
――では、本当の友達ってどんな人なんでしょう?
及川監督:ただ心地良いだけの関係ではなく愛憎合わさった関係じゃないかと思いますね。説教というか苦言を呈してくれる仲という感じかな。
瀬戸:今までは愚痴や弱音を言える人が友達という感覚があったんですが、この作品をとおして、そして25歳になって迷惑をかけないのが友達かなと思ってきています。これからずっと一緒にいたいし、大切にしたい存在だから、こういう思いが生まれてきたのかなと。これから歳を重ねていけば友達に対する感覚も変わってくるとは思うんですがね。
北乃:同じ周波数を感じる人かな。わたし悩み事ができても人に相談とか出来ないんです。自分のことを話すのが苦手で、わたしは相談にのる側なんです。好きなものについては話せますが、マイナスなことはまったく語らない。こんなだから仲の良い友達に「頼ってくれないから友達って感じがしない」と言われることもありますが、そういうことを言わなくても友達とわたしは思っています。仲の良い友達とでも“友達”の定義が違うということですよね。
瀬戸:じゃあ自己解決派?
北乃:解決しなくて、ずっと抱えています。でも大丈夫なんです。人の悩みを聞いて、それを解決することに必死になれば自分の悩みはいつの間にか忘れちゃう。だから何も言ってくれない人とは友達になれないかもしれないですね。ま、親しき仲にも礼儀は必要ですけどね(笑)。
(一同:笑)
――共演して、お互いの印象はいかがですか?
瀬戸:すごく演じやすかった。周波数が同じでしたね。
北乃:ぴったり合いました。なかなかいないんですけどね。合わないのが良い現場もありますけど、この映画は間合いが大切で。順撮りでの撮影だったので、出会いのシーンが実際に出会いで、お互い友達がいないのもなんとなく分かるからト書きがなくても微妙な間や空気感が出せました。
――おふたり以外も若手キャストが揃った現場はどんな雰囲気でしたか?
瀬戸:みんな友達少ないんですよ。絶妙なキャスティング。
北乃:みんなお会いするまでの印象では友達いそうと思っていたけど、会ってみたら友達少なそうなのが分かりました(笑)。
(一同:爆笑)
北乃:今回のメンバーはみんなプロ意識が高くて真面目で。役に対する愛情もすごかった。
瀬戸:休憩時間でも隣人部のままの空気感がありましたね。各々がやりたいことをやっているんだけど、お互い気を使ったりするわけでもなくその場が成立していたと言うか。
北乃:変な気を使わなかったですね。
――では、本作で印象に残っているシーンやセリフはありますか?
瀬戸:夜空が表情だけで全部を受け止めるシーンにはいろんな感情が渦巻いていてドキッとするし、切なくもなって、僕の中ではとても印象に残っています。
北乃:完成作を観て印象に残ったのは小鷹が「夜空ッ!」と呼んで夜空が目覚めるシーンですね。わたしはその撮影の時、目を閉じているので彼の芝居を見ていなくて声しか聞いていなかったので。そのシーンを客観的に観て、ものすごく感動しました。これ、こんなに感動するシーンだったのかぁって(笑)。撮影では夜空になりきっているのでフワッと起きただけだけど、北乃きいとして観ると印象的なシーンでしたね。あと、撮影時に印象に残っているのは初日に撮ったふたりの出会いのシーンですね。あ、瀬戸さんとわたしとエア友達の3人か。3人のシーンだ(笑)。8時間もリハーサルとテストを繰り返して、長まわしで撮ったシーンでとても印象に残っています。
――原案となっている「ライトノベル」というものはなんとなく若い世代のものという印象があるんですが、監督から見たライトノベルの魅力とは? その原案を知らない世代以外の方へもメッセージを。
及川監督:僕も最初は先入観がありました。読書は好きだけどライトノベルというジャンルには触手が動かず…。ある日後輩からすすめられたのをきっかけに読んでみるとキャラクターがたっていて、とても面白かった。本作も強烈なキャラクターは出てくるけど、純粋でストレートな青春物語だと思うんです。ライトノベルが原案ということを抜きにしても、物語は成立していると思います。なので、先入観を持たずにひとつの映画として観に来てほしいですね。単純に青春映画と捉えていただければ、懐かしい気持ちを味わえると思います。よろしくお願いします。
(2014年2月 3日更新)
●梅田ブルク7ほかにて上映中
瀬戸康史 北乃きい
大谷 澪 高月彩良 神定まお
久保田紗友 山田萌々香
栗原 類 渡辺 大 石原良純
原案:平坂 読『僕は友達が少ない』(MF文庫J/株式会社KADOKAWAメディアファクトリー刊)
監督・脚本:及川拓郎
【公式サイト】
http://www.haganai-movie.jp/
【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/163035/