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【特別企画】大阪3監督対談「3人の監督にとっての大阪、関西」
『Fly Me to Minami 恋するミナミ』リム・カーワイ監督×
『SAVE THE CLUB NOON』宮本杜朗監督×
『ソウル・フラワー・トレイン』西尾孔志監督

 現在、好評上映中の『Fly Me to Minami 恋するミナミ』、『SAVE THE CLUB NOON』、2014年1月18日(土)より第七藝術劇場、その後は京都みなみ会館にて上映予定の『ソウル・フラワー・トレイン』。この3つの作品には共通点がふたつある。それは大阪在住の若手監督による作品であるということ、そして“大阪”で撮ったということ。まったくタイプが違う3作だがこれも何かの縁! 3人の監督にとっての大阪、関西について自由に話してもらった。

 

なぜ関西なのか…


リム・カーワイ監督(写真左/以下、リム):僕は大阪人でも関西人でもなく、たまたま大阪の大学に通っていて関西の居心地の良さを知りました。関西の人はみんな冗談が好きだし、愛想が良い。それに僕の関西弁はまだまだ完璧ではないけど関西の人とは会話ができる。もう15年ほど前の話だけど、それが僕にとっての最初の日本のイメージに繋がりました。

宮本杜朗監督(写真中/以下、宮本):たまに何言ってるか分からんこともあるけどね(笑)。

リム:そういう、分かりにくい話し方をしても心で通じる感覚が大阪にはある気がするんです。大学卒業後、東京で就職して6年間サラリーマンをしましたが、東京はまったく違う場所でした。それで東京が悪いとは思わないですけど、東京の後に北京やアジア各国を周って久しぶりに大阪に戻ってくると、大阪がアジアに近いということに気づいて。最初に大阪にいたころは気づけなかったけど、逆に東京に一度行って東京からあちこち周ったからこそ気づけて、しかも居心地が良い。そんな経緯があって、まぁたまたまと言えばたまたまですが大阪で映画を撮ることになりました。

西尾孔志監督(写真右/以下、西尾):リムさんの『恋するミナミ』は今おっしゃった通りの映画ですよね。国際色豊かで、香港と韓国と大阪の人が普通に入り交じっている。オープニングに空港が出てくるし。おふたりの映画を観て、リムさんの描く大阪は外側というか旅行者から見たよそ行きのお洒落でアーバンな大阪という感じがして、一方宮本くんのは旅行者は知らないアンダーグラウンドの大阪にあるすごいエネルギーを感じました。それで自分のはどういうポジションになるかなって考えてみたら、僕のは実家が大阪にある大阪。こそばゆさ(笑)。この3人の中で実家が大阪なのは僕だけだし。

宮本:僕は京都出身やけど実は京都が苦手で。京都と言っても山科っていう京都の人からは「京都じゃない」と言われるところなんですけど(笑)。大阪来た瞬間「ここやー!」ってすごいしっくり来て、息がしやすくなりましたね。「静かで素敵」よりも「うるさくてでっかい」方が自分には向いてるっていうか。でも大阪はめっちゃ好きですけど、映画撮れたらどこでもいいですけどね。ずっと住んでるし、友達が大阪に多いから、自然とこうなってるだけで。景色じゃなくて精神性みたいなところを大事にしたいし、それはどこに行っても撮れると思う。

西尾:『太秦ヤコペッティ』(13)も太秦である必要はない映画やもんね。

 
 
場所を変えても通用する話だけど、出来上がった作品には大阪らしさが。
その大阪らしさって?

西尾:リムさんの話の逆で、大阪ってニュアンスで伝えてくるから正確なところがあやふやなまま話が進むところがあって。若い頃は、そういうところが嫌で東京に憧れてた時期が僕にはありました。標準語って正確に話す言葉だと当時は思ってて、関西弁はなぁなぁで伝わる。『恋するミナミ』も雰囲気とかニュアンスで伝えるシーンがありますが、海外の方と言葉が通じなくてもコミュニケーションがとれるのは関西の方のほうが得意で東京だと難しいだろうなとは思いますね。
 
リム:そうですね。表情と身振り手振りで伝えたりね。僕の映画で言えば、話自体は新宿でも他の場所でも通用するけど映画の持つ雰囲気はまったく違うものになったと思います。もしかしたら『ロスト・イン・トランスレーション』(03/ソフィア・コッポラ)みたいなクールな感じになったかも。
 
西尾:疎外感が出てる感じかな。
 
リム:そう! たぶんすごい疎外感が出ると思う。それも悪くないけど、ちょっと西洋っぽい映画になりそう。でも今回は大阪で撮ったことでアジア映画になったように感じますね。
 
西尾:宮本くんの『SAVE THE CLUB NOON』も、いとうせいこうさんや東京、北海道、いろんな土地のアーティストが出てくるのに不思議な関西感あるよね(笑)。
 
宮本:リムさんの『新世界の夜明け』(11)と『恋するミナミ』にしても、西尾さんの『ソウル・フラワー・トレイ ン』にしても、舞台として大阪を撮ってるんですよね。でも僕の『太秦ヤコペッティ』『尻舟』(09)は「この場所で撮ってますよ」みたいな風景カットはひとつも入ってないんです。ただ、自分はごちゃごちゃした猥雑なものが好きで、カメラもクリーンで綺麗なものではなく映像にノイズを乗せてるんです。単純にそれが“関西感”につながってる部分はあると思う。
 
リム:宮本さんがおっしゃることは分かります。僕も西尾さんも大阪を舞台装置として使ってる。大阪という舞台装置がまずあって、そこからストーリーを考えていく。『新世界の夜明け』を撮ったときも、新世界という町があってそこからストーリーを膨らませました。ミナミもそうです。
 
西尾:僕の『ソウル・フラワー・トレイン』が一番どこの場所でも成立する話かもしれない。ベタな例えで言うと『ローマの休日』(53)ってローマのベタな風景がふんだんに出てきますよね? 住んでる人間からしたら違和感あるかもしれないけど、大阪以外の人からしたら大阪のベタな風景とか「面白いと思うなら面白いと思ってくれ」という感じで。だからこれを名古屋に変えて名古屋のベタな場所で撮ってもありかもしれないですよね。
 
宮本:でも、あの劇中に出てくるやたら親切な女の子とか完全に関西人ですよね。東京を舞台にしたらあの子は出てこない(笑)。
 
西尾:宮本くんのは映画だけの話じゃなく、ボアダムスから脈々とある関西ゼロ世代と言われる大阪にあった音楽のムーブメントとか土壌、そこにある種の即興性やイマジネーションのどぎつさがあって。東京のアートシーンやカルチャーとは違う大阪独特のもので、そこに属してるからだと思う。だから僕はリムさんが撮った大阪に一番驚きましたね。大阪をお洒落に撮れるんやぁって(笑)。
 
宮本:『恋するミナミ』はすごくクリーンな映像で、映画の中のミナミと僕の知ってるミナミはだいぶ違いますもん(笑)。とくにイメージと違ったのがひっかけ橋(戎橋)の辺り。
 
リム:でも、あれ本当に実際にあそこで撮ってるんですよ。みなさんそれぞれのイメージはあると思います。ミナミといえば『ミナミの帝王』なんかのイメージが強いかもしれないですけど、切り取り方によって全然見え方が変わる。みなさん先入観にとらわれてお洒落な部分に気づいてないだけかもしれない。僕には御堂筋のライトアップとか実際そう見えてるんです。道頓堀川の橋もフランスのポンヌフみたいと思って撮っています。
 
西尾:僕の映画は撮影日数が少なかったのもあり、後ろに映りこんでいるおじさんたちは「撮りますけどいいですか?」って声がけだけして撮影しています。だから後ろに映っている地元民丸出しな感じのおじさんたちは呼んできた人たちじゃなくて、そこにいた人を言わばドキュメンタリーで撮ってるんです。僕、鶴橋に住んでるんですけど、『恋するミナミ』に出てくる鶴橋のシーンは地元っぽいおじさんやおばさんがひとりも映ってないのに驚きましたよ(笑)。
 
リム:それはたまたまいなかっただけですよ(笑)!
 
宮本:俺、『恋するミナミ』の助監督やったから言わせてもらっていい? ミナミで撮影してる時に遠くでガヤガヤしてる人らがいたんですよ。ま、ミナミの真ん中やからそういう人もいるじゃないですか? でも、そういう人らはやっぱりちょっと移動してもらうんですよ。理由はその人らがノイズになってしまうからだけど、それでかも。あれはでも撮影の加藤さんの指示やったかな。
 
リム:そう、録音のために除けることはあるけど、そういう人たちを撮るのは大丈夫。『新世界の夜明け』も地元の人や自然に歩いている人も撮っています。戎橋でも自転車に乗ったおじいさんも映ってますし、お洒落でないものをわざと排除したわけではありませんよ(笑)。
 
西尾:結局、切り取り方ってこと。
 
リム:僕はお洒落な大阪が撮りたいと思ったんです。僕には大阪がお洒落に見えているから。逆におふたりが大阪をお洒落と思わないのが分からない。今日、肥後橋のフェスティバルホールの辺りから橋を渡って堂島まで歩きましたけど、あの辺とかすごいカッコイイと思わないですか? 僕はすごいカッコイイと思いましたよ。僕は、マンハッタンより大阪の方がカッコイイと思っていますよ。ああいうところでハードボイルドとかサスペンス映画を撮りたいって思いました。北浜の辺りとかもすごい雰囲気があって。
 
西尾:宮本くんと僕は逆にそういうカッコイイ大阪を避けがち。
 
宮本:そうそう。避けがちかも。
 
西尾:僕の場合はベタな大阪までは勇気出して撮ったけど、カッコイイ大阪までは踏み込めてない(笑)。『SAVE THE CLUB NOON』はクラブという場所がカッコイイ場所だし、あの切り取り方はかっこよかった。僕も自主映画でクラブのシーンを撮ったことありますけど、クラブの楽しさや空気をうまく映像にして見せるのは難しいと思うんですよね。それが『SAVE THE CLUB NOON』は出てるのがすごいですよね。
 
リム:六本木とかにもクラブはいっぱいあるけど、そこで撮ったら別の映画になっていたと思いますよね。それが大阪のかっこよさなんじゃないですか? 観客の人種が違うかもしれないですよね。服装とか。僕はああいうクラブに行ったことがないんですが、映画を見たら行きたくなりました。
 
宮本:嬉しいわ。そう思ってもらえたら、ひとつ勝ちやなって思ってるんで。今までクラブに行ったことがない人にも足を運んでみてほしい。
 
リム:あと、汚くないんですね。健康的な雰囲気。
 
宮本:いいとこばっかり撮ろうとしたわけではないんですよ。ほんまにありのままを映したかったから、喧嘩とかナンパがあったら映したかった。でもそういうのは無くて。「クリーンだぞ!」という主張をするつもりはなかったけど 結果的にああなったんですよね。
 
西尾:クラブのポジティブな面が出てて良かったですよ。クラブで楽しんでる人の顔を捉えてるのがすごい良かった。
 
リム:そう。それがすごい良かった!
 
宮本:お客さんの顔はいっぱい撮ろうって言って。
 
リム:カッコイイでもクリーンでもなく真実ということですよね? わざとはない。僕の撮ったお洒落な大阪もわざとはない真実。西尾さんが感じ取った大阪も真実で。大阪と一言で言ってもいろいろあるということですよね。
 
西尾:僕の場合は原作があるんですけど、『男はつらいよ』みたいなものを大阪で撮りたいと思ってて。20代のころは『男はつらいよ』とか観てなかったんですけど、歳を重ねてきてむちゃくちゃ重要な映画やなと気づいて。『男はつらいよ』も『釣りバカ日誌』もキャストが亡くなってしまって、こういう映画が無くなるの寂しいなと思ったんです。僕が東京行って柴又で撮るのも変やし、大阪でそういったものを撮ってみたいなと思って撮ったのが今回の映画なんです。
 
リム:柴又でも成立するかもしれないけど、やっぱりちょっと違ったでしょうね。
 
西尾:大阪の雰囲気、あつかましさね。いや、昔はこのあつかましさってどこにでもあったのかもしれないですけどね。どんどん他所では無くなってきて大阪だけ残ってるのかもしれない。みんなもっと大阪で映画撮ればいいのにね。
 
リム:北野武監督の『アウトレイジ』なんかは東京を舞台にした話だけど、ほとんどを神戸で撮影したらしいですね。東京の高層ビルやお金持ちの住むマンションなんかはだいたい天王洲アイルの辺りで撮ってるみたいだけど、そんなの大阪でも撮れるし。
 
宮本:でも大阪で撮ると大阪で撮りました感が前面に出るのが僕は嫌。大阪だけじゃなくて(レオス・)カラックスの『メルド』(08/オムニバス『TOKYO!』の中の1作)に映ってる東京にもそれを感じる。
 
西尾:宮本くんは若いから観てないかもしれないけど、昔、(ジム・)ジャームッシュが「ジャック・リヴェットがパリを撮ったようにニューヨークを撮りたい」と言ってて。
 
宮本:『北の橋』(81/ジャック・リヴェット)は観ましたよ。
 
西尾:宮本くんの映画ってジャック・リヴェットが撮る大阪みたいな感じやな。観光地が映るわけじゃなくて。
 
宮本:うわ。それはちょっと自分で言っていこ! ジャームッシュがやろうとしたことを自然とやってたって(笑)。
 
一同:(笑)
 
リム:僕は外国人ですが大阪で撮りたくなった。20年以上前、リドリー・スコットも大阪を選んでる(『ブラックレイン』(89))わけですから、海外の人から見ると大阪はシネマティックなんだと思う。川があるし。
 
宮本:リムさんは東京に6年住んで、外国から来てるからたぶんめっちゃフラットに見てるんやろな。僕は関西にしか住んだことないから、そこまで客観的に比較ができない。
 
リム:西尾さんが「東京に憧れた」と言っていましたが、映画にしても音楽にしてもみんな東京に行こうとする。それがみんなが目指す道になっている。そういうのが無ければそうはならなかったかもしれないですよね。
 
西尾:宮本くんなんかさ、『SAVE THE CLUB NOON』もやけど前作もさ、主人公に大阪のミュージシャン使ったりとかしてて、自分が面白いと思ってるものを紹介したいっていう衝動があるんじゃないの?
 
宮本:いやいや。そういうんじゃないですよ。ミュージシャンとしてじゃなく役者として出てもらってるし。むしろ登場人物の生き方やったり中身を描きたいから。
 
西尾:そうなんか。僕は、大阪を好きになってもらおうとか思って撮ったことはなくて。でも今回撮った映画を観たお客さんが「この映画を観て大阪行ってみたくなりました」とか言われるとやっぱり嬉しくなる自分を発見した。それで、俺、大阪好きなんやなって(笑)。逆に大阪大使みたいな感じでそんな風に撮りましたよってインタビューとかで言ってしまおうかなと思ったり(笑)。
 
リム:僕のも大阪を前面にアピールしてる。
 
西尾:リムさんの映画はほんまに海外の人が見て大阪ってこんなとこなんやって思う大阪やもんね。実際に海外からたくさんの人に来てほしいですしね。
 
宮本:『恋するミナミ』シリーズ化したら楽しいと思う。キャスト毎回変えて。『ミナミの帝王』と二本立てで。
 
 

大阪で撮る難しさについて


リム:大阪で映画を撮る難しさがあるのはやっぱり産業の地盤が無いからですよ。タレントとかモデル事務所はたくさんあるけど本格的に映画をやろうとする役者さんの事務所はなくて、東京に集中している。
 
宮本:でもしょうがないところもあると思う。このままでいいとは思ってないけど、東京に出るのは理由があると思うし。
 
リム:個人ではできないけどみんなが力を合わせて大阪でもやろうとすればできるんじゃないかと僕は思うし、今そのチャンスの時代がきてると思う。昔はありえなかったけど、アジアはもうみんな繋がっている。日本のマーケットで考えると東京中心かもしれないけど、視野を広げてアジアで考えると香港や韓国、台湾もある。大阪はそこを目指せばいいと思う。
 
宮本:なるほど!
 
西尾:東京へ行くというよりも韓国や中国か。
 
宮本:僕、ハリウッド行きたいんですけど。マジメな話。
 
リム:ハリウッドもいいですよ。東京を経由しないで直接ハリウッド行った方が早いかもしれない!
 
宮本:この間ロサンゼルスでラーメン食べてたら『47RONIN』の監督にスカウトされたという人がいて。 その人は元々プロデューサーになりたくてロスに渡った大阪出身の人やったんやけど。いきなり行ったところでもちろんそんな甘くないと思いますけど、それもありかなと思いますね。
 
リム:ありだと思います。
 
西尾:ハリウッドではないけど、リムさんはそういう状況ですよね。外国に来て映画を何本か撮るということを実現しているわけで。宮本くんとりあえずアメリカ行って今のペースで映画撮ってきたらええやん!
 
宮本:いやいやいや。もう貧乏臭いの飽きたんですよ。
 
一同:(笑)
 
宮本:この前撮った短編で車の爆発シーンを撮りたかったんですけど、予算の都合で出来なくて。もう場所がどうこうて言うより僕はそういうことがしたいんです。ハリウッドやったら車の爆発くらい出来たやろなって(笑)。そういう派手な男子映画を撮りたいと思ってるのはありますね。あと、『太秦ヤコペッティ』に全力投球してたから忘れてたけど、実際アメリカを舞台にした脚本もあって、ニューヨークにシナハン(シナリオハンティング)も行ったんですよ。それは隕石も爆発するし人間も爆発するから大変やろうけど、なんとか実現させたいと思ってます。話がずれてきましたけど。僕は東京がどう大阪がどうってそこまでの意識はしてない。でも確かにリムさんの言うようにこっちでももっと映画を撮る人が増えたらいいのにとは思う。スタッフは関西にもいますよね。
 
西尾:この3人の作品のスタッフめちゃくちゃかぶってるよね(笑)。
 
宮本:映画を撮るとなると連絡する人っておるよね。ほんまに有能な人。
 
リム:制作できる人が本当に少なくて。
 
宮本:制作がおらんのか。助監督もあんまりおらんな。技術部はいるけど。
 
リム:僕が撮ったのは12月ですけど、12月は大阪のインディペンデント映画界は忙しいんですよ。《CO2(シネアスト・オーガニゼーション大阪)》があるから。12月に3本~5本作らないといけなくてスタッフも絶対かぶるんですよね。だから大阪でスタッフ探したけど、みんなほかの映画の仕事が入ってて、東京から呼んだんですよ。
 
宮本:あと、もっと人に報酬払えたらとは思いますね。
 
リム:そういうことも含めて我々が解決しなくてはいけないことですよね。
 
西尾:まぁ自分らの問題になるよね。予算取れる企画も無いことは無いと思う。僕らでもこっちで車の爆発が撮れるような企画もできると思うねんけどね。
 
リム:日本で車の爆発やカーチェイスのシーン撮ろうとしても出来ない現状もありますけどね。
 
宮本:車爆発はお金の問題は置いておいても、絶対安全な山奥とかでしか出来ないんですよ。でもそれやとワクワクしない。街中で爆発シーンが撮りたいんです。
 
西尾:僕が子どものころ放送してたテレビドラマ『西部警察』ではバンバンやってたけどね。
 
宮本:実は名古屋で撮ろうとしたんですけど『西部警察』の話がちょうど出て。港で爆発させたやつが後々問題になって名古屋ではそれから厳しくなったって。
 
西尾:ほんまに海外行って最初は小さくてもそこで注目を集めてそこから大きく行けば。
 
 
今後の活動について

リム:自分のベースとなるところを探していろんなところを周ってきましたが、これからは大阪をベースにしようかと思っています。でも、ずっと大阪にいるわけではなく、中国に行ったり、マレーシアに帰ったりするかもしれないですけどね。今後は一番近いので来年、中国で撮ることになると思います。他にも企画はいろいろありますが、また絶対大阪で撮りたいです。新世界、ミナミとこれまでに2本大阪で撮ったので、出来れば3部作にしたいですね。今、中崎町に住んでいて、すごく面白い町なので是非あそこを舞台にして撮りたいなという気持ちがあります。いつになるかは分からないですけども絶対撮ります。
 
西尾:僕は20代から黑沢清さんに憧れて追っかけてた自主映画⻘年でしたけど、昔京都の撮影所で働いていたことが あって。深作欣二さんや工藤栄一さんの組とか。言わば娯楽映画の(⻩金期から斜陽になってくるころの)⻩金期を知る時 代の映画の世界を一番下っ端のスタッフですけど、そういう空気を吸って見ていたので、30代後半になってきてエンターテインメントな映画を自分くらいの年代の監督がやる意味があるような気がしてて。それで撮ったのが『ソウル・フラワー・ト レイン』なんです。なので僕は昔からある娯楽映画を継承するようなものを探ってみたいなというのは思っていま す。昭和パロディみたいな感じじゃな く、自分の世代の感覚できちんと撮るってことを今後もやっていきたいですね。今短編を作ってるんですけどその次はまた大阪を舞台に長編娯楽映画を撮りたいなと思ってます。  
 
宮本:今やってる短編は東京発の《MOOSIC》っていう企画。全然知らんところで撮ってみようと思って、東京と名古屋とフィリピンと大阪で撮ってます。東京のTADZIOっていうハードコア・ポップ・バンドに出てもらって。そのあとはもう今まで通り行き当たりばったりですね。どこであれどんな話であれ自分が興奮できるように撮るのは可能やと思ってるんで、映画撮れたら何でもいいですね。あと、不可解なもの奇妙なものが好きやからその辺をね、どうしようかなというところですけどね。
 
 
――時間の関係で今回の対談はここで終了。3作品はもちろん、3監督の今後も応援しております! 貴重なお話、ありがとうございました。



(2013年12月27日更新)


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『Fly Me to Minami
 恋するミナミ』

©FLY ME TO MINAMI ―恋するミナミ― All Rights Reserved.

『新世界の夜明け』のリム・カーワイ監督による恋愛ドラマで、大阪のミナミを舞台に香港の女性と日本人男性、韓国人女性と在日韓国人男性という2つのラブ・ストーリーが時に交差しながら進展していく。6年ぶりに映画主演を果たす小橋賢児、スーパーモデルとして活躍するシェリーン・ウォンら国際色豊かな俳優の競演にも注目したい1作。

【公式サイト】
http://flyme2minami.com/

リム・カーワイ Profile(公式より)

『Fly Me to Minami~恋するミナミ』
監督・脚本・編集・プロデューサー
1973年マレーシアのクアラルンプール出身。1998年大阪大学基礎工学部電気工学科卒業。通信会社で6年間エンジニアとして勤めた後、04年9月に北京電影学院の監督コースに入り、いくつかの合作映画の現場(『プラスティック・シティ』『墨攻』『夜の上海』)で助監督や製作コーディネーターとして参加する。05年、釜山国際映画祭主催のAFA(アジア・フィルム・アカデミー)に選ばれ、侯孝賢の下で演出を学んだ。09年、北京で撮影した『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』で長編デビュー。10年、香港国際映画祭、大阪アジアン映画祭、サンパウロ国際映画祭 に公式招待される。同年、第2作目『マジック&ロス』を香港で撮影し、釜山国際映画祭で初上映され話題を呼ぶ。同年、立て続けに撮った第3作目『新世界の夜明け』では CO2(シネアスト・オーガニゼーション大阪) の観客賞&技術賞をダブル受賞。13年、台湾台南国際映画祭にて『Fly Me to Minami~恋するミナミ』をはじめ、短編も含めて全作品は特集されることになる。どこにも定住せずに漂流を続けており、作品ごとに場所やジャンルを変える、多層的な作品を撮る鬼才監督である。

『SAVE THE CLUB NOON』

©2013 映画「SAVE THE CLUB NOON」製作委員会 All rights reserved.

2012年に大阪の老舗クラブ“NOON“が風営法違反として摘発された事をきっかけに発生したイベント“SAVE THE NOON“の様子を『太秦ヤコペッティ』の宮本杜朗監督が映し出すドキュメンタリー。熱狂のライブシーンだけでなく、ミュージシャンへのインタビューを通して半世紀以上も前に作られた風営法のあり方を考察し、クラブシーンのこれからを考える1作。

【公式サイト】
http://savetheclubnoon.com/

『SAVE THE CLUB NOON』
クラウドファンディングに関するNews
https://kansai.pia.co.jp/interview/cinema/2013-07/save-the-club-noon.html

『太秦ヤコペッティ』
宮本杜朗監督インタビュー
https://kansai.pia.co.jp/interview/cinema/2013-05/uzumasa-jacopetti.html

宮本杜朗 Profile(公式より)

『THE SAVE THE CLUB NOON』
監督・撮影・編集
1981年生まれ。独学で映画を作り始め、自身の全作で撮影、編集も務める。05年に初長編『吉村佳雄WALKING、SLEEPING』が中之島映画祭グランプリ受賞。07年『フリフリ坊主』が第3回CO2企画制作総合プロデューサー賞を受賞し、OSKARIADA(Poland)、ハンブルグ日本映画祭(German)などで上映。09年に『尻舟』を発表。高崎映画祭で上映され、劇場公開。11年『こぼれっぱなし』(MOOSIC)が恵比寿映像祭にて上映。13年春より、『太秦ヤコペッティ』が劇場公開。多数の海外映画祭への出品が決定している。オシリペンペンズ、DODDODO、似非浪漫、オニ、YDESTROYDE、トンチ、WATER FAI、山本精一のPVも制作。

『ソウル・フラワー・トレイン』

©ALEWO

1990年代に熱狂的なファンを獲得したロビン西の傑作同名短編漫画が原作で、大阪の大学へ通う娘を訪ねて田舎から出て来た父親の珍道中が描かれる西尾孔志監督による人情喜劇。愛する娘が心配でならない父親に扮したベテラン平田満の好演が味わい深い。

【公式サイト】
http://www.soulflowertrain.com/

西尾孔志 Profile(公式より)

『ソウル・フラワー・トレイン』
監督・脚本
1974年大阪生まれ、映画監督。10代の頃に京都の撮影所で録音見習いとして働き、深作欣二などの黄金期の監督たちの現場を体験する。20代からビジュアルアーツ大阪で学び、自主制作映画『ナショナルアンセム』が映画監督の黒沢清などから高い評価を得て、シネアスト・オーガニゼーション・大阪エキシビション(略称CO2)で第一回シネアスト大阪市長賞(グランプリ)受賞。その後、CO2の運営ディレクターを4年間務め、京都造形芸術大学やビジュアルアーツで講師を務める等、関西映画シーンの育成にも情熱を傾ける。